アルメン・ドネリアン Armen Donelian 「FRESH START」
ベテランのピアノ・トリオ・アルバム
友情の再確認と、新たな音楽の創造へ
<Jazz>
Armen Donelian 「FRESH START」
Sunnyside / IMPORT / SSC 4036 / 2022
Armen Donelian (p)
Jay Anderson (b)
Dennis Mackrel (ds)
今年で 72 歳になるピアニストのアルメン・ドネリアンArmen Donelian(→)のピアノ・トリオ・アルバム。
彼はアルメニア人の両親のもとで、米国ニューヨークで生まれ育った今やまさに重鎮と言えるミュージシャン。彼のアルバムは殆ど聴いてこなかったが、それでもエディ・ゴメス(b)、ビリー・ハート(d)とのトリオで制作されたアルバム『Stargazer』(1981)は人気で、当時はどちらかと言えばまだ新進気鋭と言われたのではなかったか。この頃も既にオリジナル曲が豊富でありならもリッチー・バイラック、ビル・エヴァンス、チック・コリアのイメージを持っていると評判だったはず。それから40年も経過している。
とにかく彼はNYのウェストチェスター音楽院でクラシックを学び、その後リッチー・バイラークにジャズ・ピアノを師事したのち、70 年代半ばからプロ活動を開始。ラテン・パーカッションの巨匠モンゴ・サンタマリア、スピリチュアル・ジャズのカリスマ的サックス奏者ビリー・ハーパーのグループに所属したほか、ソニー・ロリンズ、チェット・ベイカーら伝説的ジャズ・ジャイアンツとも共演しているなど経歴は豊富と紹介されている。そして三十数年間、Sunnysideより多くの作品をリリースしており、一方、ジャズ研究者・教育者であり音楽史、音楽理論、作曲、合唱編曲、指揮などの活動の側面を持っている。
(Tracklist)
1.Noviembre *
2.Fresh Start *
3.Ferry Maiden
4.Madagascar *
5.Gale
6.Never Let Me Go
7.Tirado *
8.In The Western Night
9.Day Break
10.Janet Left The Planet *
11.I'm Stepping Out with a Memory Tonight
12.Tales In The Western Night *
(*印 original)
私的には、米国流のビック・バンドものには弱いのであるが、このアルバムのトリオ・メンバーは、ベーシストは、ウディ・ハーマン楽団、ボブ・ベルデン楽団、秋吉敏子=ルー・タバキン・ビッグ・バンド等で演奏を重ねてきたジェイ・アンダーソンJay Anderson(下右)、それからカウント・ベイシー楽団、マッコイ・タイナー・ビッグ・バンドやヴァンガード・ジャズ・オーケストラにも在籍経験があるドラマーのデニス・マックレルDennis Mackrel(下左)という、ビッグ・バンド歴の名手を共演者に迎えていて、実は恐る恐る聴いたという経過だ。しかしドネリアンのどちらかというとバイラーク流の落ち着いたピアノ・トリオものであり、ほっとして歓迎した次第だ。
又、コロナ禍にあって、しかも肩を痛めてピアノを弾くのは無理であったというドネリアンであり、こうして回復してのアルバム造りが出来ての本作品『Fresh Start』のコンセプトは、「以前から続いている友情の再確認と、新たな音楽の創造」という事だそうだ。
キャリア50 年にして新境地に達した作品と言われるが、ドネリアンのピアニズムは、右手を重んじた美しい音に叙情性をもたせる世界であり、トリオ合作の1曲を含む6曲が彼のオリジナル曲。
スタートのM1."Noviembre"は心に安定感を持たせ、中盤から聴く者に想像力を刺激するボサノバ曲、ムーディーな作品
M2."Fresh Start"のアルバム・タイトル曲は、メロディーが変化し若干難解。ドネリアンのピアノの技巧が生むトリオ交錯、アンダーソンも巧みなソロを展開し、マックレルのドラムスはまとめ上げるような役割。彼らはここにジャズの面白みを見ているのかも。
M3."Ferry Maiden"で再び美旋律と安定感と叙情性へ。 M4."Madagascar "は躍動的で楽しく明るい曲。
M5."Gale"(師バイラークの曲)そしてM6."Never Let Me Go"と、しっとりとして澄んだ音色の美しいピアノ演奏。優しくサポートし物語るソロ演奏のベース。
M7."Tirado "は優雅さが光る。 M8."In The Western Night"静かに説得力のバラード演奏。M9."Day Break"音の余韻を生かした"静"から、やや前衛性を秘めたトリオのそれぞれの主張が聴ける神秘性のある演奏。 M10."Janet Left The Planet"は、跳ねるような展開が、そして なんと彼のヴォーカルの登場のM11."I'm Stepping Out with a Memory Tonight"。
最後のM12."Tales In The Western Night"は、三者の共作曲で、それぞれの思いの語りのようで静かにフェイドアウト。
なかなか知的なムードの広がるちょっと教科書的な演奏で、癒しの感が結構強い中にジャズの醍醐味もしっかり浸ることが出来て、気持ちが休まると同時に達成感もあった。
(評価)
□ 曲・演奏 : 88/100
□ 録音 : 88/100
(試聴)
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