ブッゲ・ヴェッセルトフト Bugge Wesseltoft 「be am」
瞑想性の中に、哀しみを描きそして一方希望の光を描いている
<Jazz>
Bugge Wesseltoft 「be am」
JAZZLAND Recordings / Norway / 377 943 2 / 2022
Bugge Wesseltoft : Piano, rhodes, kalimba, effects
90 年代後半には、自身のレーベルJazzland Recordings を立上げ、エレクトロ/ アンビエント/ テクノとジャズを融合させる新しい潮流を創り上げたノルウェーのジャズ・ピアニストのブッゲ・ヴェッセルトフト。New Conception of Jazz、Sidsel Endresen、Henning Kraggerud、Henrik Schwarzなどのデュオ、Trialogue、Bugge and Friends、OKWorldなどのプロジェクトなど、数多くのグループプロジェクトやコラボレーションを演じ、ソロそしてトリオとしての活躍もしてきた。
そして今や、ヨーロッパ屈指の音楽創造家であり革新的な業績を残す彼が、97 年にリリースしたクラシックのイメージも湧いてくるソロ・ピアノ・アルバム『It’s Snowing On My Piano』(ACT 9260-2 / 1997 →)がロング・セラーを続け既に25年が経ったが、ここに究極と銘打ったソロ・ピアノ作品が登場した。 彼はそもそもデビュー当時は、ECM世界にて活動開始してきた経過があり、“沈黙の次に美しい音”と言われる世界をも持っている。
1 Resonate 1:29
2 Tide 4:03
3 State 4:46
4 Emerging 0:47 *
5 Roads 4:46 *
6 Messenger 4:23
7 Green 2:47
8 Be Am 1:09
9 Life 5:53
10 Gonna Be OK 2:06
11 Deeper 3:04
12 Sunbeams Through Leaves Softly Rustling 3:08
*印 hakon kornstad(tenar Sax)共演
今回はヴェッセルトフトのピアノ・ソロ・アルバムであるが、M4及び5にはテナー・サックスの色添えもある。かって私は衝撃を受けたアルバム『Out here. In there.』(JAZZLAND017368-2/2002 →)のSidsel Endersenとの共演作のような前衛的な世界、ボーカルとエレクトロニック・キーボードの即興演奏の叙情的な世界に詩を音楽のコンビネーションの一つとして扱いつつ現代クラシック音楽とジャズ世界の融合など圧巻だった。こんな世界から今に流れての近年の彼の美旋律ピアノ演奏だということを知って聴くと状況がよく理解できる。このCOVIDのパンデミックの中での不安な環境での瞑想的な色合いの濃い創造的衝動が作り上げたと思われる"孤独の中での平和と希望"がテーマの美旋律ピアノのように聴けてくるのだ。
M.1"Resonate ", M2."Tide"は静かにそして余韻の残したピアノの音が、心を落ち着かせ、瞑想にさそうように流れる。
M3."state" は、国レベルの展望に心を馳せる。
M4."Emerging",M5." Roads"テナー・サックスが歌い上げるをRhodesの響きが世界を広げる。
M6."Messenger"伝達者ということだろうか、ここでのピアノは、物語の語りの雰囲気。
M7."green"ここでの緑は北国の草原の姿か、M8."be me"のタイトル曲は、ほゞ1分の短編、自己の存在。
M9." Life" 鳥の声、そしてKalimbaが静かな美しい情景を描き、Rhodesが静粛性を更に助長。我々に展望に向かわせる。
M10."Gonna Be OK"美しく澄んだピアノ音で明るい展望が感じられる。
M11."Deeper" 重低音で深く、重く。ここでの不安な世界の描くところは ?。
M12."Sunbeams Through Leaves Softly Rustling" 樹木の葉を通しての太陽の日差しは自然界からの慰めか。ここに彼のメッセージが見てとれると思う。
やや憂鬱なバラードと一方美しさを交えたこのスケッチ思われる短編曲集は、全編を通しての作品であって一曲ごとの世界ではない。哀愁の感覚と彼が生き残るための喜びの感覚の交錯として描かれているのかもしれない。悲しいかとも思われる中に自然界から導かれる希望の光を感じて作られたアルバムであると思うのである。相変わらず思慮深く示唆を与える世界を構築しているが、彼の生きる決意の表明としても受け止められる。
彼はピアニストとして、テクニシャンというよりは、彼の独創的な発想と演奏表現に優れた面を感じている。
なお、このブッゲ・ヴェッセルトフトに興味があるなら、私のお勧めのアルバムがある。それは2016年にリリースされた彼のデビュー20周年記念のベスト盤(ここには過去の曲のニューバージョンも納められていて、単なるベスト盤とは違うのだが)で、2枚組の『Somewhere in between』(JAZZ LAND / Norwy / 377 917 9/2016 →)がある。ここには彼の20トラックスが納められ、トリオ演奏や多くの共演者との作品など含め多彩であり、又彼の世界が手に取るように解る。私からのお勧めだ。もちろん過去のアルバムとしては、先に紹介した『It’s Snowing On My Piano』も一枚のアルバムとして是非聴いてほしいものであるが、このアルバムは私は今でも最高に引き込まれる。
(評価)
□ 曲・演奏 : 88/100
□ 録音 : 88/100
(試聴)
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コメント
半分くらい聞いたところです。
1曲目は、アメリカン演歌の「ローズ」を思い出しました。
元ヤンキースのピッチャーが言ってましたよね「雪に耐えて梅花麗し」と。
わたしには、サックスとエレピの演奏は聞きやすかったです。
(これ、ローズつながりです)
ピアニストって、自分で音色が作れないことを、どうやって克服するのでしょう。
不思議でたまりません。
カリンバのところまで来ました。
投稿: iwamoto | 2022年8月21日 (日) 10時40分
iwamoto様
お付き合いコメント有難うございます^^
このエレクトロ/ アンビエント/ テクノとジャズを融合させるたブッゲ・ヴェッセルトフトは、結構クラシカルなピアノを聴かせてくれたり・・・なかなか広い感覚をもって演じてくれて、そのアルバムごとに楽しみなんですが、今回はCOVID19のパンデミックは他のミュージシャンと同じに、彼にとっても相当のストレスだったようですね。そんな中から生まれた彼の心のジャズとして聴くと聴き応えがあります。
投稿: photofloyd | 2022年8月22日 (月) 10時08分
全部聞きました。 11、12も良かったです。
投稿: iwamoto | 2022年8月22日 (月) 12時22分
iwamoto様
最後までお付き合い有難うございます
今は何とか視聴が出来るよい時代ですね。
そうはいっても、私なんかはまだまだ良い音でゆったり聴きたい方で、CDを手元に起きたい人間です。それでもHi-Resなどの良い音を求めてネットを通してダウンロードもしてハードディスクに保存もしています。
LP時代のように大きいジャケは良かったですね。^^
投稿: photofloyd | 2022年8月24日 (水) 00時04分