エスペン・エリクセン Espen Eriksen Trio 「in the mountains」
ライブでの演奏により充実感が増す
<Jazz>
Espen Eriksen Trio 「in the mountains」
Rune Grammofon / import / RCD 2227 / 2022
Espen Eriksen (p)
Lars Tormod Jenset (b)
Andreas Bye (ds)
Andy Sheppard (sax M.1,2,4)
エスペン・エリクセン・トリオは、私の注目バンドであるが、2007年に結成されたノルウェーのジャズピアノトリオで、エスペン・エリクセン(p , 1974年生まれ、下中央)、ラース・トルモッド・ジェンセット(b, 下右)、アンドレアス・バイ(d, 下左)で構成されている。彼らはノルウェーのレコードレーベルRune Grammofonから5枚のアルバムをリリースしてきた。
今作の7曲は、過去のアルバムからエリクセン作曲の6曲で、近年のライブにて収録された初のライブ・アルバムである。
下のTracklistのように全7曲で、そのうち5曲は2018年と2020年にオスロのNasjonal Jazzsceneで(M.1,2,3,4,5,)、1曲は2020年にオスロのPropeller Music Divisionで行われた特別親密コンサートでのもの(M.6)、1曲は2021年にポーランドのポズナンでライブ録音されたもの(M.7)。
更に特徴として3曲に英国ジャズ界を代表するサックス・プレイヤー、アンディ・シェパード(右)が加わってのカルテット版となっていることが注目される。
(Tracklist)
1 1974 #
2 anthem #
3 suburban folk song*
4 in the mountains #
5 perfectly unhappy *
6 dancing demons *
7 rosemary’s baby %
* 2020年
% 2021年
# 2018年 (Trio + Andy Sheppard )
ライブものとあって、過去のスタジオ・アルバムのものとはちょっと違って、楽器そのものが明快で演奏も感動的な変化が加わっている。
又シェパードをフィーチャーしたのは3曲であるが、主たるはM1."1974"のみで、ここでは彼の演ずるサックスが大きな役割をはたしていて。そして他の2曲(M.2"Anthem"とM3."In the Mountains)では、補助的な役割にとどまっている。ピアノ・トリオにサックスは実は私はあまり好まない。ピアノの美しい旋律音が薄れるためだ。しかし全曲でなくこうした色付けというかアクセントとして面白くしているという3曲のみの参加で、このトリオの味を失っておらず、かえってそれでよかったと思っている。
又全7曲はそれぞれスタジオ・バージョンを数分延長し、ほぼ1曲8-9分のライブ版独特の長さに延長され、じっくりと聴くものに気持ちを高め明るく導いたり、やや沈むところもあったりと、抑揚と盛り上がり、そして安定感と要素が豊富で聴きごたえある。
M1."1974"は、静かに幕を開け、シェパードのサックスは魅惑的なスローメロディーを奏で、中盤には一時ピアノにそれをゆずるも、次第にサックスの盛り上がりはやはり主役で、やや小さめの音の品のあるエリクセンの美旋律にそって、神秘的な音にに変わり曲を収めるという形をとる。
M2."Anthem"は、ここではシェパードがオリジナル・トラックのベース・メロディーを演じ、トリオ演奏のサポート役で味付けする。ここには至福の世界が。
M3."Suburban folk song"は、民族性の高いフォークソングをトリオで、そのリズムが気持ちを高めてくれる。
M4."In The Mountains"、アルバム・タイトル曲。静かな澄んだピアノの音・旋律をサックスがスリリングにサポート、深淵さの感ずる世界であるが暗さはなく、ムーディーに演じられたコンガのビートのドラムスと共にカルテットで盛り上がる。
M5."Perfectly unhappy" エリクセンのピアノの美世界。ゆったりした印象深いベース、シンバル音も美しい。
M6."Dancing Demons"は、ドラムスのリズムが主導にちょっとピアノの不思議なメロディー。ベースの低音とピアノ高音の相互作用が面白い。そして聴きやすい展開となり、不思議世界のコーダで幕を閉じる。
M7."rosemary’s baby" ヒット曲の登場、低音で不気味に、そして美旋律をベースのアルコで流し、おもむろにピアノに譲り、変化を持たせ反復し聴くものをぐっと不思議な世界に導いてゆく。ユーロ・ジャズの究極の美を8分を超える演奏でじっくりと。
相変わらず、このトリオは、心をちょっとスリリングに刺激し、感情を呼び起こしつつ、そして最後は癒しに導く手法が卓越で参りますね。
(参考)
<Espen Eriksen Trio : Discography>
2010: You Have Me At Goodbye (Rune Grammofon )
2012: What Taken You So Long (Rune Grammofon)
2015: Never End January (Rune Grammofon)
2018: Perfect Unhappy (Rune Grammofon), with Andy Sheppard
2020 : End of Summer (Rune Grammofon)
2022年: In The Mountains (Rune Grammofon), with Andy Sheppard
(評価)
□ 曲・演奏 88/100
□ 録音 88/100
(視聴)
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