寺島靖国シリーズ「For Jazz Ballad Fans Only vol.3」
はずし物を掴んだ感の私の思う事・・・
<Jazz>
Yasukuni Terashima Presents「For Jazz Ballad Fans Only vol.3」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1105 / 2022
さて、寺島靖国選曲のオムニバス・コンピレーション・シリーズものでは新しい方の「ジャス・バラッド」ものの第3巻(第1巻は2019年リリース)が登場した。この寺島シリーズものは、ここでリリースの度に全て取り上げるという事はないのだが、今回はどうも私的には(あくまでも私にとって・・と、言う事で誤解のないように)、久々に外れ物を掴んだという事になった。
そもそも寺島靖国のコンピレーションものは「JAZZ BAR」が最も原点というか、最初のシリーズものと思うが、これは2001年から毎年リリースという21巻となるロングもので、今や確固たる地位を築ている。そしておおよそ年一巻のペースで、その他は「for Jazz Audio Fans Only」(14巻)、「For Jazz Vocal Fans Only」(5巻)、そしてこの「For Jazz Ballad Fans Only」(3巻)、更に「For Jazz Drums Fans Only」(2巻)とリリースされていて、おそらくこれらをこなすだけでも大変になってきているのではと、ふと思うのである。
私としては、まあ「Jazz Bar」と「for Jazz Audio Fans Only」の2シリーズでOKと思うのだが、その他も興味がないわけでなく結局のところ購入しているという事になって、こうして数えてみると目下全45巻全て持っているという形になってしまっている(やや、これで約十数万円になりますね)。
■バラッド(バラード)とは・・・・
その中で今回最も直近のものがこの「For Jazz Ballad Fans Only vol.3」なのだが、名前の通りジャズ・バラッド曲の目ぼしいものを集めている。そもそも「バラッド曲」とは何ぞやという事だが、ものの本によると「ミディアム・スローからスローなテンポによるゆったりとして叙情的な演奏」という事になるようだが、そもそもかってはイギリスでは舞踏曲を指す言葉であったが、やがて一般的にはロマンティックな歌詞の民謡を指すようになり、19世紀には上流社会で歌われた感傷的な歌曲を指すようになったという。そして現在は、「ミディアムからスロー・テンポのロマンティックで感傷的なラブ・ソングを一般的にはバラッド(バラード)と呼んでいる」ということにまとめられるようだ。
さてそこで、このアルバムの紹介だが・・・
(Tracklist)
01. Goodbye / Don Lanphere And New Stories
02. Joshua Fit the Battle of Jericho / Vincent Nilsson Quartet
03. End of a Love Afaier / Toni Sola & Ignasi Terraza Trio
04. What Are You Doing the Rest of Your Life / Eric Alexander Quartet
05. Emigrantvisa / Joonas Haavisto Trio
06. I'll Close My Eyes / Ian Hendrickson-Smith
07. The Nearness of You / Clark Terry
08. La Mer / Simon Chivallon
09. I Got It Bad (and That Ain't Good) / Steve Davis
10. I Will Wait for You / Karin Hammar
11. I Surrender Dear / Dan Barrett Trio And Quartet
12. We'll Be Together Again / Gary Smulyan
13. A Ghost of a Chance / Oliver Jackson
このシリーズは、寺島靖国選曲の究極原点"聴きやすく親しみやすいジャズ"ということでの「For Jazz Ballad Fans Only」のシリーズ3作目だ。バラッドを取り上げたというコンピレーション・アルバムだが一通り聴いてみると、これは今回は私にとってはどうも外れものだった。その理由の一つは、ほぼ選曲されたものは"ラッパもの"がほとんどあったということ。この"ラッパもの"というのは実は表現がよくないが、私流にはサックス(ts,as, bs)、トランペット(tp)、トロンボーン(tb)などを指しているんですが、所謂管楽器ですね。私の言うところは、昔のビック・バンドの煩(うるさ)いイメージものが好まないという事なんですね。しかし、バラッド調の温かみのあるサックスとか、ミュートの効いたトランペットの深淵なる音などは好きなんです。このあたりは私個人的な感覚の世界ですからお許しを。つまり普遍的な話ではないというところです。
そんな中で、M1."Goodbye"(上左)、M4." What Are You Doing the Rest of Your Life "とtsの登場で、バラッドは解るしムードもある。あとは好みですね・・・私はピアノの方が好きなんです。従ってピアノ・トリオものにどうしても期待するんです。M4.でも途中で響くピアノの調べの方に魅力を感ずる。
M2."Joshua Fit the Battle of Jericho "のtbそしてM3." End of a Love Afaier "のtsは、私にはバラッドには聴けない。
M5." Emigrantvisa ", M8." La Mer"にようやくピアノ・トリオが登場するが、M5.のJonas Haavisto Trio(上中央)は私のお気に入りトリオだが、彼らのコンテンポラリー・ジャズでのスロー演奏といっても所謂バラッドという世界のものでないし、M8.もバラッドとは私は言わない。
M6." I'll Close My Eyes "のas、M7." The Nearness of You"のtpもバラッドものとして納得しない。
M9." I Got It Bad"、M10." I Will Wait for You "(上右)、M11." I Surrender Dear "はtbものだが、M9.はロマンティックな感傷など感じないし、M10.は女性ヴォーカルものを主体にしておけばいいのに、後半のtbとtpの共演などバラッドものとは別物。M11.も私にはバラッドに聴けない。
M12." We'll Be Together Again "(下左)は、bsの登場、これは好みの問題だ。
M13." A Ghost of a Chance "(下右)はts(Danny Moss)のバラッドものでこのアルバムの終わりをしめている。
と、いったところであくまでも私的には選曲もバラッドとしては疑問が多かったし(バラッドというもの自体の解釈が異なるのかも)、こうして管楽器主体の曲群は私のピアノ・トリオ好みには少々合わなかったというところ。聴きようによっては、寺島靖国のこうしたシリーズの乱発によって、ちょっと充実感が薄れたのかもと思わせるところであった。
(評価)
□ 選曲 : 80/100
□ 録音 : 85/100
(試聴)
Don Lanphere "goodbye"
*
Karin Hammar "I will wait for you"
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コメント
言葉の言い分けをする時は、バラッドは詩で、バラードは歌、としています。
ですので、今回ご紹介のものは、わたしにはバラードです。
あるときに成立した、この手の歌音楽。
すみません、今回は、相当苦手のタイプでした(笑)
投稿: iwamoto | 2022年8月31日 (水) 15時55分
iwamoto様
コメントどうも有難うございます
バラッドとバラードの使い分けですか? うーんなかなか話は高度になってきましたね。^^
バラッド=ハラードとして使われてきている現状ですが、このアルバムもおそらくタイトルから言ってもそうなんでしょうね。
しかし、バラッド(Ballad)は英語、バラードはBalladeでフランス語とみるべきところでしょうか、それぞれの国の歴史からも実は異なっているのかもしれませんね。
今日は大変興味深いお話をいただいて、ちょっと少しは勉強してみたいとも思いました。
ところで、この手は苦手ですか・・・・
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年8月31日 (水) 19時02分