山本剛 TSUYOSHI YAMAMOTO TRIO 「BLUES FOR K」
懐かしの神成芳彦の録音での再会セッション
<Jazz>
TSUYOSHI YAMAMOTO TRIO meet Yoshihiko Kannari
「BLUES FOR K」
SOMETHIN'COOL / / SCOL-1062 / 2022
山本剛(ピアノ)
香川裕史(ベース)
大隅寿男(ドラムス)
エンジニア:神成芳彦 那須・スタジオ雷庵にて2022年録音
ジャス・ピアニスト山本剛(1948年生)が若き頃1970年代、当時ジャズ・ファン、ジャズ・オーディオ・ファンに圧倒的な支持を得たThree blind mice(TBM)レーベルからのトリオにてリリースしたアルバム『MIDNIGHT SUGAR』(初リーダー・アルバム:TBM-23/1974)(→)、『MISTY』(TBM-30/1974)は話題騒然の代物であった。好演奏はもちろんだが、その音質の素晴らしさも大きかった。その録音エンジニアはこのレーベルの看板として愛されたジャズ・サウンド革命児神成芳彦(1943年生)であった。現在もこれらのアルバムはCD化され音質も現代に引けを取らず人気である。 そしてこのアルバムは山本剛トリオの新プロジェクト、神成芳彦とのリユニオンセッションである。そして神成の那須にあるプライベートスタジオ「スタジオ雷庵」にての録音という涙物の企画がなされたのである。
(Tracklist)
1. You Go to My Head
2. Blues in The Closet
3. The Breeze and I
4. Darn That Dream
5. But Not for Me
6. I'm Glad There is You
7. Gentle Blues
8. I'm Getting Sentimental Over You
9. Love Theme from SUNFLOWER
10. Blues for K
11. Misty (Bonus Track)
12. Midnight Sugar (Bonus Track)
Bonus Track になんと50年前の記憶を呼び起こす"Midnight Sugar"、"Misty"の2曲が演じられていて、昔のアルバムと聴き比べてほしいと言っているのかもしれない。とにかく今年6月に「スタジオ雷庵」に集結、ドラマーは大隅寿男(1944年生)、ベーシストは香川裕史(1962年)だ。山本剛といえばブルースとバラードが定評あるが、大隅はスウィング、香川はビートあるドラムスに特徴を持ったレギュラー・トリオを結成している。
オープニングは、やはりバラードでM1."You Go to My Head"で、取り敢えず"Misty"代わりと登場するが、ムードあるピアノの音が早速登場。おおこれぞやっぱりかってのTBMの音がすぐ頭に浮かぶ。山本のピアノは昔よりはメロディーに素直になっているとはいえ、やっぱり彼の世界が見える。相変わらずの神成はやっぱりこの音に人生をかけてきたのだなぁーーと78歳の彼の人生が浮き彫りになる。
そして一転してアップテンポのブルースM2." Blues in The Closet"が現れ、その後は懐かしのM3." The Breeze and I"へとスウィングして移ってゆく。昔のジャズ・クラブのムードはしっかり演じてくれている。
こんな調子で、ジャズの哀感と快感を織り交ぜて楽しませてくれるアルバムを、あのピアノのみならずベース、ドラムを生かしての神成サウンドが作り上げてゆくのである。
そしてM10." Blues for K"で神成へ捧げるブルースの登場で一締めとし、最後に山本が日本に知られるようになった記念の例の2曲をBonus曲として演じてこのアルバムの幕を閉じるのである。
録音のマスタリングは、ここ10年70タイトルを超える「TBM復刻シリーズ」を、今日の世代に変遷をとげてきたジャズ愛好家の為に送り出してくれたソニー・ミュージックスタジオが手掛けて仕上げてくれている。
こうしてここに日本の一つのジャズ歴史を作ってきた決して若くないトリオの今の演奏・録音盤が出現するというのは、先般残念にもやはり当時のTBMレーベルを支えたベーシスト鈴木勲氏の新型コロナウィルス肺炎で亡くなられた悲報の後だけに、なかなか良い企画をしてくれたと歓迎するのである。
(評価)
□ 演奏 : 88/100
□ 録音 : 88/100
(試聴) 参考:山本剛トリオ
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