ジュゼッペ・マガニーノ Giuseppe Magagnino 「My Inner Child」
いかにも物語が見えてくる世界を描く端正なピアノ・トリオ・ジャズ
<Jazz>
Giuseppe Magagnino 「My Inner Child」
GleAM Records / Import / AM7014 / 2022
Giuseppe Magagnino (piano)
Luca Alemanno (double bass )
Karl-Henrik Ousbäck (drums )
Unknown (female voice on 5)
どうも私のイタリア好きの中では名前が初聞きのようであったが、イタリアの俊英ピアニスト、ジュゼッペ・マガニーノGiuseppe Magagnino(1977年生)がピアノトリオとピアノ・ソロで構成した叙情派ピアノ・ジャズの2022年作品で、これは彼のデビュー作となる作品であった。
この企画は2018年にスタートし、芸術的価値を求めつつ自分自身を完全に表現できるように磨きをかけてのリリースに至ったものらしい。2020年パンデミックによるロックダウンのため、当初予定されていた録音が延期され、その結果作品のコンセプトをより明確にし、自信を持ってプロジェクトを実現することができたと言う。
説明によると、アルバムに収録された楽曲は彼の人生の物語を語っているらしい。
彼のスタイルは、ジャズの伝統と北ヨーロッパのジャズの典型的なサウンドとアレンジして、イタリア音楽の特徴であるメロディーを生かしたものと説明されていた。
(Tracklist)
1. Mi Vida 8:33
2. Deja Vu 4:27
3. A Long Journey 8:26
4. Dancing With Shadows 5:14 (solo piano)
5. My Inner Child 4:19
6. Conversando Con George 3:40
7. Nelle Tue Mani 4:52
8. I Loves You, Porgy 3:35 (solo piano)
all composed & arranged by Giuseppe Magagnino except #8 G.Gershwin
(Track4&8 recorded in piano solo)
Recorded on August 9 & 10 2021 at Sudestudio di Guagnano Lecce (Italy) (#1, 2, 3, 5, 6, 7)
Recorded on November 18 2021 at Teatro Oratorio Don Orione di Arnesano Lecce (Italy) (#4,#8)
イタリアの伝統からか多くのミュージシャンを生んでいるが、ジャズに限らずそこにはメロディーの豊かさと歌心が存在して世界に愛されてきたことは事実だ。このジュゼッペ・マガニーノ(下左)も、そんな世界かと期待をしながらの初お目見えであった。
このアルバムのコンセプトは彼自身のジャズ界への初見参であり、パンデミックによるコンサートの中断期間中に生まれた一つの世界「マイ・インナー・チャイルド」である(2017から2021年まで生まれた曲を十分練ることが出来たという)。それは時間をさかのぼっての子供時代への回顧と当時の新鮮な感情を尊重した生き方の表現のようだ。大人の年齢であっても、子供がまだ私たちの一人一人の中に住んでいる状態で、好奇心、衝動と熱意を大切にすることの表現につながっている。
とにかく端正できめ細かく感覚豊かにして流麗に展開してゆくクリアー・タッチのピアノが、繊細で奥深い憂愁的情景やロマンティシズムを描き出す。これは実は私の描く現代イタリアものという世界からは少々異なっていて、襟を正した世界で、いい意味で裏切っている。そこには彼のクラシック勉学の味が根付いているのかも知れないが、コンテンポラリーな味付けも生きていて楽しめる。
特に私のお気に入りはM4."Dancing With Shadows"で、美しいメロディーを静かな演奏でつづってゆく彼のピアノ・ソロだ。
しかしその他のトリオ演奏でもM3." A Long Journey"の中盤のルカ・アレマーノ(上中央)のベース・ソロ、M6." Conversando Con George"のカール・ヘンリック・オウスバック(上右)のドラムス・ソロも節度の中でマガニーノのピアノの流れを崩さず見事であり、又ピアノに与える刺激性も適度にあって快演だ。
最後M8." I Loves You, Porgy"は、静かな落ち着いた心を描いてこのアルバムを締めるのであるが、そのあたりはなかなか練られたアルバム作りだ。
どちらかというとネッチリ歌心というイタリアものでなく、北欧風の牧歌的色も加味した端正にして回顧する詩的空間に誘導してくれた気品高いピアノ・トリオ・ジャズであった。
(評価)
□ 曲・演奏 : 87/100
□ 録音 : 87/100
(試聴)
*
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