ゴーゴー・ペンギン GOGO PENGUIN 「Between Two Waves In CENON 2022」
新世代ピアノ・トリオが新メンバーでの今年のライブ盤
<Jazz, Electronica、New Jazz , Ambient, Experimental, Minimalist>
GOGO PENGUIN 「Between Two Waves In CENON 2022」
after-hours productions / ah22-125 / 2022
Chris Illingworth(p)
Nick Blacka(b)
Jon Scott (ds)
新世代ピアノ・トリオといわれるのGOGO PENGUINは英国マンチェスターで若き3人により結成された。2012年にアルバム『Fanfares』をリリース、2014年には2ndアルバム『v2.0』が権威あるマーキュリー・プライズにノミネートされ世界的な注目を集め、私が初めて接したのはこのアルバムだった。
2015年ブルーノートと契約し、アルバム『Man Made Object』(2016),『A Humdrum Star』(2018)をリリース、そして2,020年には『GoGo Penguin』(→) と自己名を冠したアルバムで話題に。そして今年『Between Two Waves』などの2枚のEP、そしてリミックス作品を発表している。
メンバーはクリス・アイリングワース(p)、ニック・ブラッカ(b)、ジョン・スコット(ds)(過去のメンバー : ロブ・ターナー (ds)グラント・ラッセル (b))である。
“アコースティック・エレクトロニカ・トリオ”として、各種のフェスへ出演し、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールやNYバワリー・ボール・ルームといった世界に知れる会場でソールドアウト公演を行って来た。
しかしこのところ、活動はコロナ禍やロブ(ds)の脱退で低迷していいたが、新たに実力者のジョン・スコットが加入してパワーアップして再始動を本格的に開始した。そして今年2022年の2月には最新録音シングル「Ascent」(→)を、独創的で革新的なインストに重きを置いた新レーベル「XXIMレコーズ」よりリリースし、7月には5曲入りのEP『Between Two Waves』を発表。この新作発表に伴い2年振りとなるツアーを開始したのであった。そしてそのツアーからつい先月2022年10月5日フランス、スノンのLE ROCHER DE PALMER公演を、80分に渡り完全収録したものがこれである (ブートではあるが、十分鑑賞に堪える録音。ちょっとドラムスの音が強く収録されているが)。
(Tracklist)
1.AllRes
2.Atomised
3.Signal inthe noise
4.Break
5.Bardo
6.Wave Decay *
7.The Antidote Is in the Poison *
8.Ascent *
9.Kora
10.Erased by sunlight
11.Kamaloka
12.Murmuration
13.Hopopono
14.Orotest
(*印 新アルバムより)
ジャズ、ロックの影響とともにエレクトロニックカルチャーやクラブカルチャーの雰囲気をミニマリストとして演じて見せて国際的に歓迎されたGOGO PENGUIN、ダンスフロアから瞑想的な世界にまで通ずる音楽を作成し、ピアノ・トリオによってアコースティックな新しい領域に我々を連れて行ってくれますねぇ。
M1."AllRes"のピアノの音・メロディー美しさからスタートして、あくまでアコースティックなピアノトリオの音世界に拘りながら最新のテクノロジーを駆使し表現の攻め続ける姿勢、特徴的なドラムスの展開が印象的なところは彼らの発想そのものだ。徹底した”人力”による機械的で規則的なリズムで勝負しようとするところも魅力的。
そしてその後の曲もこうしたところをベースとして、手を変え品を変え展開する。結構複雑なフレーズをピアノ・トリオの様式へと取り入れ、さらにインプロビゼーションをはめ込み、人間離れしたテクニックによるアンサンブルをライヴで披露してしまう。あくまでも生演奏の可能性に拘っているのも事実で、打ち込みは一切使用していない生演奏。
典型的なミニマムな展開でありながら、曲の流れが多様で美しさを備えた演奏は魅力的。新曲M8."Ascent"に聴けるように静の世界、そしてゆったりとしたリズムも味がある。
M9."Kora"のメロディアスな演奏、M10."Erased by sunlight"の深淵な美を描くピアノ、M12."Murmuration"のベースとピアノが美メロディーを流し後半の盛り上がりが聴きどころの曲などお見事。
彼らはやはりライブでの音世界がいい。クリスの演ずる叙情的・ロマンティックなピアノ音の世界に、アンバランスと思わせる機械的なドラムスの音の競合が新感覚に聴けるのである。
そんな世界がしっかり描かれたこのライブ録音盤、彼らの健在ぶりと更に前進している様が感じられ、なかなか気が利いたブートであった。
(参考)
最新作公式EP-Album『Between Two Waves』(2022) →
(Tracklist)
1Badeep
2Ascent
3Wave Decay
4Lost in Thought
5The Antidote Is in the Poison
(評価)
□ 曲・演奏 : 88/100
□ 録音 : 80/100
(試聴)
"Kora"
*
"Atomised"
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コメント
わたしは、もっと不協性のある音が好きですが、これは軽快な感じが楽しめます。 2曲とも。
ベースの音質は、わたしが録音するなら、もうちょっと触りたい気分です。
もう少し電気的にしたいと言いますか。
投稿: iwamoto | 2022年11月 6日 (日) 10時57分
iwamoto様
コメント有難うございます
>もっと不協性のある音が好きですが、これは軽快な感じが楽しめます
なんとなく好みの世界が解ります・・・まだまだ彼らは発展すると思います。
私が全くの同感と感じましたのは。ベースの取り扱いです。ドラムスの勢いが強いのは、彼らのもともとの一つの企みだということは解りますが、それにしても三つ巴という事では、そうですよね・・ベースの取り扱いも私はもうちょつと生かすべきと感じています。
それと電気的というところは・・・私的には、あまり気が進みませんが、どうなんでしょうか。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年11月 6日 (日) 17時54分
生音を考えると、ピアノやドラムの音量と、ウッドベースの音量がバランスするとは思えないのですが。
従って、現場でもブーストする必要がありますよね。
そこで、どのような音を作り出すか・・・。
誰かが決めて誰かが実行する。
音を管理する者としてはジャズベースを弾いて欲しいと思うかも。
フェンダーのね。
コントラしか弾けなければ、別室で録音?
ドラムと切り離されてはリズム隊とは言えない、と言う人も多いでしょう。
従って、人任せにせず、ピゥアップを付けるとか、演奏者が最初に決めたら良いと思います。
投稿: iwamoto | 2022年11月 6日 (日) 21時32分
iwamoto様
更なる詳しいコメント有難うございます
近年はライブものでなくスタジオ録音は、殆ど3者別に録音していますね
ライブでもマイクはそれぞれに・・・ピアノやドラムスは更に複数のマイクを配置してオーディエンスの音は避けていますね
そして音楽として構成するにはエンジニアのセンスと相当の力量が要求されているのでは・・・
ジャズでなくてもピンク・フロイドなどはもう古い昔からスタジオ盤は別に録音ってお手の物だったようですね・・・
鈴木勲のアルバムは、ウッド・ベースがしっかり前面に出て頑張っていますね
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年11月 6日 (日) 23時00分
すみません、打ち間違いを発見。
2回目のコメントの最後のところ、ピックアップですね。
失礼しました。
ベーシストやドラマーのリーダーアルバムでは、やはり自分の音を大きく録音させますよね(笑)
投稿: iwamoto | 2022年11月 7日 (月) 11時51分