ダイアナ・パントン Diana Panton 「BLUE」
ややあどけなさの感ずるヴォーカルはデビュー(17年前)以来健在
<Jazz>
Diana Panton 「BLUE」
muzak / JPN / MZCF-1453 / 2022
ダイアナ・パントン vocal
ドン・トンプソン bass
レグ・シュワガー piano
フィル・ドワイヤー saxophone
ジム・ヴィヴィアン bass
ペンデレツキ・ストリング・カルテット: ヤージー・カプラネック violin、ジェレミー・ベル violin、クリスティン・ウィワージク viola、ケイティ・シュライクジャー cello
ダイアナ・パントンは19歳の時にベーシストのドン・トンプソン(→)に見いだされた。トンプソンが務めるジャズ教室のワークショップに参加した彼女は、ジャズヴォーカルの虜になる。しかしその後フランスに渡り、パリ大学でフランス文学の学位を取得するという教養も積んでいるようだ。そしてカナダに帰国してから2005年に1stアルバム「・・・yesterday perhaps」でデビューしている。
既に17年の経過だが、その多くのリリースアルバムの中で、恋の始まりを歌った3rd『ピンク』(2010年)、成熟した大人の愛をテーマにした『レッド』(2013年)に続く3部作の最後を飾る作品となる。アルバム・タイトルから知れる儚い恋の終わりや別れを歌ったトーチ・ソング集『ブルー』が遂にこのシリーズとして久々の登場。
もともと彼女の特徴であるあどけなさを感ずるところと、素直な歌いまわしで、今回は愁いを帯びた歌声を披露。バックは、カナダの重鎮ドン・トンプソンはじめ、サックス奏者フィル・ドワイヤー、今年栄えあるカナダ勲章を受章した実力派ギタリストのレグ・シュワガーらが参加している。更に今回はペンデレツキ・ストリングス・カルテットも加わっての重装備。そして過去もそうだが録音が良いのも特徴で今回も期待が持てる。曲は彼女自身がセレクトしたあまりポピュラーでないものも含めて多く16曲だ。
(Tracklist)
1.メドレー:ホエア・ドゥ・ユー・スタート〜ある日ある時
2.イエスタデイ
3.ウィズアウト・ユア・ラヴ
4.ルージング・マイ・マインド
5.ディス・ウィル・メイク・ユー・ラフ
6.別れの始め
7.アイム・ゴナ・ラフ・ユー・ライト・アウト・オブ・マイ・ライフ
8.トゥ・セイ・グッドバイ
9.ミーニング・オブ・ザ・ブルース
10.想えば恋し
11.イッツ・オルウェイズ・4A
12.ジャスト・サムタイム
13.ハウ・ディド・ヒー・ルック?
14.ノーバディズ・ハート
15.春遠し
16.ユー・アー・ゼア
こうしたトーチ・ソングって、結構やるせなさの原点に女の痴情がちらっと見せたりするんですが、このパントンの歌やその醸し出す雰囲気は声の質のあどけなさとは裏腹に相変わらず知性感を十分に漂ったものとして仕上げられている。
女性の歴史として、若いときから『ピンク』、『レッド』と15年の経過の中で描いてきたところは、この『ブルー』に集結するところが、やっぱり人生の厳しさが浮き出てくる。
ジャズ・ボーカルものとして私はバラードに代表するしっとりと歌い上げるのが好きであるので、こんな悲しい歌であっても歌詞が十分理解できずに曲の演奏と歌ということで聴いていると、それなりに落ち着いて聴けて結構いいものである。もともと彼女は激しい展開の歌というのはないので、年齢的にもある意味充実感がある。
イントロは、アカペラで物語の始まりをしっとり歌い上げ、M1."Where do you start?"の聴き慣れた別離の歌でスタート、そしてM3."Without Your Love "の失恋の歌で、テナー・サックスも顔を出し"居ないと何も出来ない"と言いながらも結構明るい展開。
自分の愛を訴えるM5."This will make you laugh "。M6.M7.では別れの時が来たと、そしてM8."To say goodbye"は戻ってきて欲しい心の歌。昔の私の若い頃好きだったセルジオ・メンデスを思い出して懐かしい。ここではピアノの音と共に美しく歌い上げている。歌詞の意味は別としていいムードだ。
M10、M11、M12.でまだ思っていることを歌手上げ、M14."Nobody's heart"独りの寂しさ、しかしM15."Spring will be a little late this year"でこれから春に期待を持ち、M16."You are there"では落ち着いた自分の表現をする。
過去の曲から、郷愁、後悔、悲しみなどの喪失の複雑な感情を探り、かすかな希望、癒しへの道の難しさの複雑な思いを探求しているようだ。
とにかく歌詞が英語ですから私にはすぐ理解できないので・・聴いていると聴くものへの慰みにも聴こえ、そして子守歌的でもあって・・・私は再生時途中で寝てしまった。(笑い)
とにかく彼女のアルバムはドン・トンブソンの努力もあるのか、いつも録音というか音が良いので聴いていても気持ちがいい。バックの演奏力も派手ではないが、曲を意識して落ち着いていて快演。
(評価)
□ 選曲・演奏・歌 : 90/100
□ 録音 : 90/100
(試聴)
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コメント
ピンク、レッド、ブルーですか。
生涯を綴る企画ですね、素晴らしい着想。
演奏も丁寧。 個人的には、もう一癖欲しい気がいたします。
投稿: iwamoto | 2022年11月 1日 (火) 12時09分
iwamoto 様
コメント有り難うございます
解りますねぇーーー、このダイアナ・パントンは、なんとなくあどけない声で、ちょっと聴いていて間違いやしないだろうかと不安な気持ちを誘って、嫌み無く引きつけるんですね。
ジャズ・ヴォーカルといえば一癖も二癖もあっていいのですが・・その逆をいって十数年、ちゃんと人気を獲得している・・そんなタイプです。同じカナダのダイアナ・クラールとかホリ-・コールなどとは逆攻めですね。^^
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年11月 1日 (火) 12時37分
予約をし、到着を楽しみに待っているところです。
YOUTUBEで聴きましたが、大人の女に変身という感じですね。
投稿: 爵士 | 2022年11月 5日 (土) 23時10分
爵士さん
コメント有難うございます
もう彼女もアルバムデビューから17年のキャリアですね・・・これから円熟期、このアルバム「ピンク」、「レッド」を「ブルー」で締めくくって、次への大人の展開というところでしょうか。
女子ヴォーカル王国のカナダで更に磨きをかけて発展してほしいです。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年11月 6日 (日) 17時21分
風呂井戸さま、リンクをありがとうございました。
この作品は、女性の私でも、、、
彼女をそっと抱きしめたくなるような、情感の漂う作品でした。
静かに独りで聴きたいですね。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2023/01/post-0d1e83.html
投稿: Suzuck | 2023年1月26日 (木) 19時02分
Suzuck様
こちらまでわざわざ有難うございます
>彼女をそっと抱きしめたくなるような、情感の漂う作品でした。
そうですか、なんとなくあどけなさが発声に残って丁寧に歌うところが好感在りますね。ブルーですから・・・まぁそんなところなんでしょうね。
>静かに独りで聴きたいですね。
私は環境から、いつも一人で聴いています(笑)。
ちょっとジャズ・アルバムとしては珍しいタイプですね。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2023年1月26日 (木) 22時22分