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2022年12月16日 (金)

ビル・フリゼール Bill Frisell「Four」

牧歌的な中に人間性を追求した感すらある
  コロナ禍での蓄積した世界からの展望

<Jazz>

Bill Frisell 「Four」
Universal Music / JPN / UCCQ-1177 / 2022

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Bill Frisell :  el-guitar   ex.M10, 12  (ac-g M11 ,  baritone-g M12)
Gregory Tardy :  cl M1, 2, 8, 9, 11 ,    ts M3, 4, 5, 12, 13 ,  b-cl M6, 7
Gerald Clayton : piano
Jonathan Blake  : ds  ex. M10

120frizpromow   私はジャズ・ギターものはあまり聴かないのであるが、どちらかというとビル・フリゼール(1951年米国メリーランド州生まれ(→))はベテランだけあって、意外に落ち着いたじっくりと説得力あるギターを聴かせてくれるということもあり、又先日「ジャズ批評」のSuzuckさんも取り上げていたので、ここにニュー・アルバムを聴いてみた次第である。
 私はブルースは好きなので、かって彼のアルバム『Blues Dream』(2001)を聴いて、好感度があったし、近年アルバム『Music IS』(2018)も静かな説得力ある世界で、前作アルバム『Valentine』(2020)は、Tomas Morgan(Bass) 、Rudy Royston(Drums)とのトリオで現代的センスと音が溢れていて、しかも女性ヴォーカルが入ったり、聴きやすい演奏であって、馴染める世界であった。

 さて、今作はアルバム・タイトルが『Four』と変わったもので、何のことはない4人演奏(カルテット)ものという事なんですね。上に見るように、彼のギターと、ピアノ(Gerald Clayton(1984年生まれ、ジョン・クレイトンの息子)=下中央)、ドラムス(Jonathan Blake(1976年生まれ)=下右 ) そしてGregory Tardy(油ののった1966年生まれ=下左)のクラリネット、テナー・サックス、バリトン・クラリネットが加わるという私自身はあまり聞かない構成。どんな音の世界が展開するのかと、不安を抱きながら聴いた次第。

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(Tracklist)

1. Dear Old Friend (for Alan Woodard)
2. Claude Utley
3. The Pioneers
4. Holiday
5. Waltz for Hal Willner
6. Lookout for Hope
7. Monroe
8. Wise Woman
9. Blues from Before
10. Always
11. Good Dog, Happy Man
12. Invisible
13. Dog on a Roof

 曲はフリゼールのオリジナル13曲を収録。このカルテット構想はかなり前からあったようで、そうしている中での新型コロナ・パンデミック中に彼は友人を亡くすという経験を何度もしたようだ。そんなところも録音時までにはじっくりと曲に練り上げたという。
 M1."Dear Old Friend"は、亡くなった幼馴染に捧げた曲とか。冒頭からギターの音は聴こえず、クラリネットが愛しさを感ずる世界を開く。更に無くなった友人であり画家に捧げたM2." Claude Utley"、ピアノを全面に出しての演奏。そして2020年に亡くなった名プロデューサー、ハル・ウィルナーに捧げたM5."Waltz for Hal Willner"はピアノとサックスのユニゾンが美しい。これらの3曲は、どこか真摯な印象があるのはそのためと言うことが解った。

 とにかく驚いたことにもジャズ・ギタリストのアルバムといった印象が少なく、彼は結構サポート役を演じたり、カルテット4者の対等な立場でといった雰囲気が全体にある。集まってのその時の感覚で演奏を展開したようで、計算ずくでない4者の化学反応に期待しての演奏となったという。
   そしてアルバム全体の印象は、全く予想に反して詩情的であり、牧歌的であり、心を癒やすところがあって、なんか春の草原に自然と戯れ人間性を膨らませるという印象すらある。
 M10."Always"は、ピアノ・ソロの静かに美しいタッチが聴けるし、M4."Holiday"は、ドラムスもはつらつとしていて4者がここに合体して演ずる楽しさに満ち満ちている。M12"Invisible"は、静かなテナー・サックスの世界が全面に。最後のM13."Dog on a Roof"は、思索的に終わる。

 とにかく、米国ジャズの華々しさより、それぞれが真摯に人生に向き合ったような詩情を感ずるアルバムであった。

(評価)
□ 曲・演奏  87/100
□ 録音    87/100

(視聴)

 

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コメント

風呂井戸さま、リンクをありがとうございました。m(_ _)m

>彼は結構サポート役を演じたり、カルテット4者の対等な立場でといった雰囲気が全体にある。

そうなんですよね。
曲は全て彼の曲で、アレンジなんですけど、、
後は、流れとか自然発生な感じですよね。
特別、、彼のソロだけフィーチャーするってパターンではないのですが、、
でも、メンバーが尊敬しているので、そこは彼のことを大切に思ったアプローチって感じですかね。

>全く予想に反して詩情的であり、牧歌的であり、心を癒やすところがあって、なんか春の草原に自然と戯れ人間性を膨らませるという印象すらある。

そうなんです!!
アメリカの良き時代の牧歌的な風景が浮かんできますよね。
好きなんだなぁ。。

私のリンクです。よろしくお願いします。
https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2022/12/post-011df6.html

投稿: Suzuck | 2022年12月17日 (土) 09時35分

Suzuck様 
コメント有り難うございます
実は全く予想と違った内容でした。
アメリカのジャズ界でこうした世界は今や貴重ですね。
4人がしかも姿勢というか気持ちも演奏開始して一致したんでしょうね。そこが音楽のいいところですね。
 リンクも有り難うございました。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年12月17日 (土) 16時29分

あらら、こういうのも聞くのですか、と思われました。

地面から遠い音ですよね、高い所にある。
アメリカの伝統音楽を空中に持ち上げたような感じ。
ピックが弾いたら、そのあとで細工が少ないですね。
基本的にテレキャスタータイプの形状が好きみたいですが、
画像的にはいろいろなピックアップのものを持っている姿を見ます。
この形が彼には弾きやすいのでしょうね。

古いような新しいような、時間を超えた空間ミュージック。

投稿: iwamoto | 2022年12月18日 (日) 13時16分

iwamoto様
コメント有難うございます・・・ちょっと家を空けて居ましてResが遅れて失礼しました。
 そうですね・・・こうゆう世界が今のアメリカに健在とは・・・私も驚きでした。
 「60年ウッドストック」の時代の、音楽の一方のジャズの世界にみるものなのかと、思わせる世界でした。でも悪くないですね・・・現代的なニュアンスも無いでは無いですし。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年12月21日 (水) 21時34分

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