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2022年12月 3日 (土)

エンリコ・ピエラヌンツィ Enrico Pieranunzi & Jasper Somsen 「Voyage in Time」


クラシックをイメージした如何にもヨーロピアン・ジャズ世界

<Jazz>

Enrico Pieranunzi& Jasper Somsen 「Voyage in Time」
Challenge Records / IMPORT / CR73533 / 2022

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Enrico Pieranunzi - Piano
Jasper Somsen - Double bass

  近年のエンリコ・ピエラヌンツィ(1949年イタリアのローマ生まれ(下左))は、かってのピアノ・トリオやソロによる美旋律で私を喜ばせてくれた世界とちょっと異なったアプローチの為、私は若干敬遠気味であった。そしてこのアルバムもすぐに跳び付くこともなく経過していたが、最近CD以上の高音質のサブスク・ストリーミング・サービスが身近になり、私のオーディオ装置のネット環境も構築できたので、ほとんどの音源が聴ける環境も整ったため、このアルバムもしっかり聴くこととなった。

 70歳を超えても、むしろ精力的に挑戦的演奏アルバムをリリースを続けるピエラヌンツィだが、今回はオランダの「Challenge Records」から新たにリリースされたのは、2020年にリリースされここでも取り上げた『Commin View』(OCR73459)他、過去にも多数の共演を果たしてきたオランダのベーシスト、イェスパー・サムセン(1973年オランダのBennekom生まれ(下右))とのピアノ&ダブルベースだけのデュオ・アルバムで、なんとバロック音楽にインスパイアされた組曲というスタイルだ。

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(Tracklist)

1. Pavane (03:51)
2. Menuet (04:31)
3. Ballade (04:47)
4. Sicilienne (03:53)
5. Sarabande (04:50) 
6. Valse (03:51)
7. Air (04:48)     
8. Courante (03:38)
9. Finale (05:06)

  具体的には、このアルバムは、イェスパー・サムセン主導とみてよいものだ。彼が9曲作曲し、レコーディングの際にピエラヌンツィと共に一緒にアレンジした9つの楽章からなる組曲で、いやはや上のリストのようにパヴァーヌ、メヌエット、クーラント、サラバンド、シシリエンヌなど、クラシックのバロック音楽の舞曲がそれぞれのタイトルに付けられており、二人に共通するクラシック音楽への敬意と尊重が反映された美しい曲が展開する。クラシックの形式をみせても即興的アプローチが組み合わされ、どうも学問的音楽理論的においては私は弱いところだが、リズムやハーモニーの構成、アドリブ主体の演奏はジャズ世界に則ったスタイルで、現在の“ヨーロピアン・ジャズ”的な音楽となっていると評されてる。

 ドラム・レスの二人のデュオ・スタイルは、いかにもピアノの旋律と濃密なベースが全面的にフィーチャーされており、そこが二人のクラシックをイメージした目的であったようだ。確かにこの気品を感じさせる響きは、詩情性と共に懐かしさのある世界でヨーロッパの歴史をベースに典雅であって泥臭さがない。ジャズでの活躍は既に築かれているピエラヌンティであるが、クラシック音楽への深い敬愛を忘れない気品ある作品だ。これもクラシックをベースにしているサムセンとの対話によって築き上げられたのであろう。

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 M1."Pavane"は、両者のゆったりとした気品あるユニゾンでスタート。パヴァーヌは、16世紀のヨーロッパに普及した行列舞踏とか。 宮廷作法に息のあった品のある2人の競演。
 M2."Menuet"は、フランス発祥の宮廷舞曲で躍動感ある。
 M3."Ballade"はロマンティック。M4."Sicilienne"はちょっと私は消化不良 。
 M5."Sarabande"は三拍子の舞曲、ここではなかなか説得力のある心に訴える曲。ベースの響きも素晴らしい。私好み。
 M6."Valse"ワルツですね、美しく軽快。
 M7."Air"、アリア、その通りの叙情性。
 M8."Courante"クーラント、華麗な品格。
 M9."Finale" サムセンが本領発揮のアルコ奏法をも取り入れてのベース音が魅力的。ピアノもしっとりと纏める。
 
 ピエラヌンツィが曲の変化に対して百戦錬磨の技を流麗タッチな色合いで披露、そしてサムセンのクラシック色が生き生きとして本領発揮、そのパターンはピアノを盛り上げると同時に自己の世界もしっかり描く。聴いていてぐっとのめり込むというよりは、落ち着いた世界に据えてくれる。録音・ミックスも両者のバランスがとれていて良好。私にとっては最良のバック・グラウンド・ミュージックだ。

(評価)
□ 曲・演奏 :   88/100
□ 録音   :   88/100

(試聴)

 

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コメント

いい感じですね。
星空と蒸留酒、みたいな感じ。

投稿: 0011 | 2022年12月 3日 (土) 12時12分

0011様
コメント有難うございます
0011様はナポレオンソロとの関係がおありなんでしょうか^^、よろしくお願いします。
「星空と蒸留酒」ですか・・・おお、面白い表現ですね、なんとなく解りますね。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年12月 4日 (日) 08時33分

すみません、iwamotoでございます。
名前を間違えたのでした(笑)

投稿: iwamoto | 2022年12月 5日 (月) 17時45分

美メロ時代のピエラヌンツイを思い出しすね。もっとも彼はレーベルで使い分けているようで。EGEAレーベルからはクラシカルな美メロをリリースし続けています。

投稿: 爵士 | 2022年12月12日 (月) 17時52分

爵士様
コメント有難うございます
おっしゃるようにレーベルによって、その内容はいろいろと使い分けているのでしょうね。
 EGEAレーベルでしたね、かってのクラシカルな美メロものは、近年はありましたっけ・・?
印象では、CAM時代があって、このアルバムのCHALLENGEとか、SOLIDなどが近年ですかねぇーー。リーダーものでなくて競演なども含めて最近は多作ですが・・・なかなか私としては不消化が多いような・・・。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2022年12月13日 (火) 10時54分

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