アントニオ・アルテーゼ Antonio ArteseTrio「Two Worlds」
なんとなく美意識のもとでのエレガントさのあるピアノ・トリオ
<Jazz, Classic>
Antonio Artese Trio「Two Worlds」
ABEAT FOR JAZZ / IMPORT / ABJZ248 /2022
Antonio Artese - piano
Stefano Battaglia - doublebass
Alessandro Marzi - drums
Recorded at Il Cicaleto Studio, Arezzo, AR, Italy, March 16, 2022 by Francesco Ponticelli
イタリアのベテラン・ピアニスト、アントニオ・アルテーゼ(1961年モリーゼ州テルモリ生まれ)のなんと初となるピアノトリオによるリーダーアルバム。
本作は、ジャズとクラシック音楽の双方への愛着、フリースタイルの即興演奏と構成されたサウンド、更にイタリア文化とアメリカ文化をミクスチャーしたという彼の音楽の歴史の始まりから経験した世界を表現した作品という事で、どんな世界か聴きたくなったもの。
アントニオ・アルテーゼはピアニスト兼作曲家。ローマのサンタ・チェチーリア音楽院でピアノの修業証書を取得し、イタリアのキエーティ大学で理論哲学を学び、その後ボローニャ大学で音楽学に移った。 又カリフォルニア大学サンタバーバラ校でピアノ演奏のDMAをも取得し、ジャズの世界に接近した。そして音楽学者であり作曲家兼編曲家である彼は、さまざまな音楽プロジェクトを主導するいくつかのアルバムを録音し、米国とヨーロッパの両方で幅広く演奏している。彼はイタリアの多くのフェスティバルの創設者兼芸術監督なんですね。
一つ疑問はベースを担当しているステファノ・バターリア(下左)は、私の知る限りではイタリアのクラシックおよびジャズのピアニストと思ったのだが(同一人物か同姓同名か不明)その点未解決。そしてドラムスはアレッサンドロ・マルティ(下右)だ。
(Tracklist)
1. Two Worlds (Antonio Artese)
2. Julita (Antonio Artese)
3. Prelude (Antonio Artese)
4. Hymn (Antonio Artese)
5. Lila (Traditional Arr. Antonio Artese)
6. Icarus (Antonio Artese)
7. Niente (Antonio Artese)
8. Un Bel Dì (Giacomo Puccini Arr. Antonio Artese)
9. Voyage (Antonio Artese)
このピアノトリオのために作曲されたアントニオ・アルテーゼの7曲のオリジナル曲は、彼の目指すところはビル・エヴァンス・トリオのスタイルで、それに加えて北ヨーロッパのミニマリズムのムードにもインスパイアされていると語られている。
この「Two Worlds」のアイデアは、2つの世界について、彼は「私が音楽の訓練を始めてから参加してきた世界です。ジャズとクラシック音楽への愛情、即興と作曲、イタリアの文化、そして私が長い間住んでいたアメリカ、特にカリフォルニアの文化です。このアルバムは、これらの明らかな二元論の和解と克服を表したい7つのオリジナル曲と2つのアレンジのコレクションです」と。
彼の演奏は、美しいメロディー、重層的なハーモニー、繊細なリズムを、トリオとしての三者のものとして求め、M1."Two Worlds "は、さっそく美しいメロディーをベースと交互に演じながらも、ピアノ・トリオとしての自己の役割をかなり几帳面に演じている。
M2."Julita"のゆったりとした展開は、まさにクラシック音楽の域を意識している。
M5." Lila"は、トラデイッショナル(ウクライナの子守歌らしい)のようだが、ピアノの重低音から始まり、優しきピアノのメロディーが流れ、トリオの演ずるところもどこか郷愁的ムードを持っている。そして後半にはジャズ世界を忘れずピアノ、ベースの即興が色づけする。
M6."Icarus"は、このアルバムの中では特異で、ジャズを意識した展開。スイングし、メロディーとリズムの競い合い。ベースと相互作用が見事で、ドラムスの役割を生かしている。
M7." Niente" も、ドラムスのリードがかなり強い
M8." Un Bel Dì "はプッチーニへの芸術へのオマージュということで、ここではかなり技巧を凝らしたベースとドラムスのブラッシの音をバックに、ピアノがゆったりと、しんみりと聴きなれたメロディーを聴かせる。
全体にジャズジャズしていないところと、泥臭さが無いところは若干空しいところもあるが、こんな見事にまでクラシックの流れを尊重しつつのトリオとしてのリズムセクションとの関係を生かしたジャズの型はきちんと築いてゆこうとする真面目さというか、几帳面というか、・・・やっぱり先生のジャズって感じのアルバムでエレガントで嫌みが無い。そんなところで音楽的評価は専門的観点からみてのものを一度聞きたいと思っているところだ。
録音は、ベース、ドラムスも対等にクリアに聴きとれ、トリオとしてのたたずまいをきちんと作り上げていて現代的。その線は良好と言える。
(評価)
□ 曲・演奏 85/100
□ 録音 87/100
(視聴)
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コメント
BMWのアルピナとかメルセデスのAMGみたいなものでしょうか。
ファブリーニのチューンアップピアノというのは。
聞いても分かりませんでしたけど・・・。
投稿: iwamoto | 2023年1月18日 (水) 12時49分
Iwamoto様
コメント有り難うございます
見るところを見てますね・・・私もファブリーニが気になりました。イタリアもこんなところで音楽の伝統を訴えていますね。
この音を聴き分ける・・・録音が良く、再生装置がよく・・・その聴く環境がよく・・・聴く方の集中力もコンディションよく・・で、それでも解る人だけ解るという世界でしょうね。(笑)
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2023年1月19日 (木) 12時59分
で、その後いろいろと他で聞いてみたのですが、
確かに綺麗な音ですね。 聞き分けられるという意味ではなく。
綺麗さは感じるということです。 でも、それで良いのかどうかは分かりません。
西洋の音楽と楽器は、クリアで雑味の無い音を追い続けていても、実際の演奏は、そういうものばかりでもないですし、そこが難しいですね。
投稿: iwamoto | 2023年1月19日 (木) 14時43分
iwamoto様
いろいろとご研究、こちらも参考になります。まずそんなにファブリーニによって音が変わるのでしょうか・・・変わるような本体であることが立派なのでしょうか。
我々が耳にする音は、ライブの現場での響きでなく、CDやビニールそしてハイレゾDataなどからの再生の場合では、素晴らしいピアノの音とは、演者及び録音などの技術者のウェイトが大きく、更に加えて再生機器などの影響の方が高いと思ってますが・・・?
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2023年1月19日 (木) 16時57分