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2023年1月23日 (月)

ロブ・ヴァン・バウェル Rob Van Bavel「Time For Ballards-The Studio Sessions」

ピアノに堪能するがトリオとしてはちょっと空しい

<Jazz>

Rob Van Bavel「Time For Ballards - The Studio Sessions」
Dox Records / Import / DU8192R001CD / 2022

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Rob van Bavel (piano)
Frans van Geest (bass except 03, 06, 09, 12)
Marcel Serierse (drums except 03, 06, 09, 12)

Recorded at Hilversum Studio,  Netherlands

19088518880_ee849d9d5bw  オランダを代表するピアニストのロブ・ヴァン・バヴェル Rob Van Bavel(1965年オランダ-北ブラバンド州のブレダ生まれ →)のピアノ・トリオ・スタイルによる「全ジャズピアノ好きへ贈る、ピアニストによるピアノ好きのための極上バラード集」といううたい文句のアルバム。
 昨年2022年の6月にバラード集のピアノトリオ作品『Time for Ballads-The Maene sessions』を発表し好評で、本作はその『Time for Ballads』プロジェクトの第2弾である。今やヴェテランの風格すら漂っている彼だが、意外に日本でそれほどポピュラーでなく、私は過去にのめり込むという事はなかった。しかし昨年こうしたアルバムをリリースして今にして話題になって聴く層も広がっていることはそれなりにいいことだと思うところだ。

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(Tracklist)

01. A Nightingale Sang In Berkeley Square 4:15
02. Manhattan 4:23
03. Two For The Road 3:25 (solo piano)
04. Always And Forever 4:33
05. Misty 4:52
06. Ballad Of The Sad Young Men / Largo 5:24 (solo piano)
07. Slow Boat To China 4:09
08. Hard To Say Goodbye / Three Views Of A Secret 4:58
09. Everything Happens To Me 5:07 (solo piano)
10. The Peacocks 4:49
11. Daydream 4:49
12. Love Dance 3:45 (solo piano)
13. Cinema Paradiso / I've Never Been In Love Before 5:38

  ロブ・バン・バウェルは、簡単に言うとチック・コリアから強い影響をうけていて、目指すところはビル・エヴァンスのリリカル派の世界だという事になるようだ。いずれにしてもこれはバラード集でなお聴きやすいものとして期待して聴いたところだ。しかも上のように彼のピアノ・ソロ演奏が4曲あり、ピアノがメインであるところは知れるところだ。
 実は聴いてみると、そのことは歴然で、ベース(Frans van Geest下左)、ドラムス(Marcel Serierse下右)は完全にサポート演奏。果たしてピアノ好きと言えどもここまで、トリオとしての味わいの少ない演奏に満足するのだろうか、ふとそんなことがまず気になった。

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 M1."A Nightingale Sang In Berkeley Square "から、M4."Always And Forever "へとその印象はやはりピアノ・プレイに集中する。それは透明感と潤いに富んだ流麗なピアノの音が流れ、それでありながらしっかりとした芯の強さと、演奏の正確性の備わったロマンテイッックな世界が展開する。そこには哀愁的情景をしっとり映しだす。
 そして期待のエロール・ガーナーによって作曲された名曲中の名曲M5."Misty "は、しっとり聴けるのかと思ったら、なんと意外にも本作ではジャズらしいところにアレンジしてアップテンポで軽やかに演奏していて予想外。
 M7."Slow Boat To China"は、中国の印象を描いているんだろうが、ブラシの音をバックに美しいピアノのメロディーがゆったりとした世界を展開。
 M10."The Peacocks"は、ピアノの美しい音の流れの独壇場。
 M13." Cinema Paradiso / I've Never Been In Love Before "はバラードというよりはスウィングして、ようやくベースの演奏も生きている。
 
 やはり結論的には、ロブ・ヴァン・バヴェルのワンマン・アルバムですね。ロマンティックで端麗で、そこに堅実性もそなわっている演奏にピアノ・ファンは喜ぶところだろうと想像するが、勿論私もそのジャズ・ピアノ・ファンではあるのだが、ちょっと違うのは私の場合はピアノ・トリオとしての味にこだわる方で、そんな意味ではベースやドラムスとの駆け引きの面白さという点ではかなり不満が残った。その点にこだわらなければ、それなりに良いアルバムと言えるだろう。


◆(参考)
 なお、現在はストリーミングの天下だが、そちらでのサービスで聴けるアルバムは少々曲構成が違っているので要注意(下に内容記載)。こちらは、M10."Let's make believe (featuring Deborah J. Carter)"は、がらっと印象が変わって、アメリカ出身で現在はスペインを拠点に活動している実力派シンガー、デボラ・J・カーターが、自身で歌詞を付けての情感たっぷりの歌が聴ける女性ヴォーカルものだ。最後に来てインスト・バージョンと違ったムードが堪能できるのだ。

(STREAMING版-Tracklist)
1.A Nightingale Sang In Berkeley Square 04:15
2.Manhattan 04:22
3.Misty 04:51
4.Hard to say Goodbye/ three Views of a Secret 04:58
5.Slow Boat to China 04:08
6.Day Dream 04:48
7.Always and Forever 04:32
8.The Peacocks 04:48
9.Cinema Paradiso/I've never been in Love before 05:38
10.Let's make believe (featuring Deborah J. Carter) 04:46

With a very special contribution by Deborah J. Carter who wrote & sang the lyrics on my song 'Let's make believe'
Recorded by Frans de Rond & Peter Bjørnild (www.soundliaison.com) at Studio 1 (MCO) in Hilversum on the 30th of September 2021

(評価)
□ 曲・演奏 85/100
□ 録音   87/100
(試聴)

*

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コメント

なかなか際どい音に聞こえます。
ラウンジミュージックとの境界線のような。
客席で、グラスを傾けながら聴くと心地良いでしょう。

「今晩、これからどうする?
じつは、部屋を取ってあるんだけど・・」的な。

投稿: iwamoto | 2023年1月23日 (月) 12時47分

iwamoto様
コメント有難うございました。
そうですか、そう聴こえるということは・・・私の求めているジャズのいいとこです。それなら合格ですね。^^

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2023年1月23日 (月) 19時10分

Mistyも、聞かせていただきました。
ドラムは素手で演奏しているのですか。
この録音は変わってますね。
わたしには、このバランスで録音出来ませんけど、
あらゆるものが試みられるべきと思ってますので、
その意味で楽しめました。

投稿: iwamoto | 2023年1月24日 (火) 11時49分

iwamoto様
ちょっと映像物追加しました。
 録音はホール感が強いですね。これはおそらく想像するに、この映像を撮ったところでの簡易なワンポイント録音でしょうね。
 さて、演奏ですが・・ピアニストの技術の高さは良く解りますが、ジャズ音楽としてのベースの味、ドラムスの味が生かされていない。自分だけが主役の演奏で、それが音楽だと思っている。リズム隊の彼らの演奏をも即興を加えて聴かし、そこにピアノが旋律をおもむろに加えてゆくなどの芸がない。そんな味わいが無いところが残念ですね。
 ドラムスの演奏はタムのボンゴ、コンガ風のタッチがいいですね。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2023年1月24日 (火) 16時06分

「studio session」、両方とも聴きましたが、おっしゃるとおり、ピアノのワンマンショー。ドラム、ベースはどこへ行ったんだという感は否めない。しかしピアノは流麗。これはこれでBGMとして楽しめますね。私的には「良」です。

投稿: 爵士 | 2023年1月27日 (金) 13時32分

爵士さん
こんばんは、コメント有難うございます
ピアノ・トリオと言っても・・・と、ピアノの重要性とリズム隊との曲の流れ・構成と・・どうも納得しなかったんですが、まあ、これも一つのパターンなんですかね。
ピアノ・ジャズの意欲をかって「良」というところですか・・・私も右ならえてしておきます(笑)。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2023年1月27日 (金) 23時05分

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