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2023年2月20日 (月)

ポール・レイ Paul Lay Trio 「BLUE IN GREEN」

アクティブなダイナミック・プレイと内省的な深みの演奏と
・・・自己の世界をしっかり描いて

<Jazz>

Paul Lay Trio 「BLUE IN GREEN - Tribute to BILL EVANS 」
 La Scala/ IMPORT / SMU006 / 2023

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Paul Lay (piano)
Clemens Van Der Feen (double bass)
Dré Pallemaerts (drums)

Recorded at La Piccola Scala in February 2022

Paullayw   フランスの新鋭ジャズ・ピアニストのポール・レイ(1984年生まれ →)は私にとっては初物。彼は仏トゥールーズの地方音楽院やパリ国立高等音楽院に学び、パリを主たる拠点として国際的に演奏活動、各種国際的なジャズ・ピアノ・コンテストで優勝している。そして着々とリーダー・アルバムを発表して評判を上げてきた、現在は母校のパリ国立高等音楽院でジャズ・ピアノ科のプロフェッサーも務めるという。
 本盤は、ベースのクレメンス・ヴァン・デル・フェーンはオランダ人、ドラムのドレ・パレマーツはベルギー人とのトリオでの、ビル・エヴァンスに捧げられた演奏が聴かれるパリのライヴ・スペースのLa Piccola Scalaでのライヴ録音盤。

(Tracklist)

1.Minority - 7:40 (Gigi Gryce)
2. Alice in Wonderland - 9:32 (Sammy Fain)
3.Interplay - 9:59 (Bill Evans)
4. Blue in Green - 10:04 (Bill Evans)
5.Peri's Scope - 6:26 (Bill Evans)
6. The Two Lonely People - 11:07 (Bill Evans)
7.Funkallero - 11-15 (Bill Evans)

  上のように、ビル・エヴァンス自身が演奏するのが好きなヒット曲と作曲した5曲で構成されていて、この両方を通してポール・レイ(ライと発音するのが正しいか)は「私たちに多大なインスピレーションを与えてくれたビル・エヴァンスの伝説的な人物を中心に、この私たちのトリオをより深く掘り下げてもらいたかったのです。このライブレコーディングは、即興がいかに魔法のようになり得るかを示している。このパンデミックの中で、私たちが事前にリハーサルすることができなかったし、このラ・ピッコラ・スカラでの録音は初めてでした」と言っている。
 レイは過去に何度もエヴァンスの曲を演奏し録音してきているが、ここではリハーサルなしの信頼あるメンバーとトリオで即興によることにより、エヴァンスへのオマージュとしているところが興味あるところだ。

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 エヴァンスの影響はやっぱりあるんでしょうが、巨大なアメリカのミュージシャンのなせるところを辿りつつ、自らの世界を確認してゆくという世界が感じられる出来である。
 冒頭のM1."Minority "からM3."Interplay"までの流れを聴くと、なかなかキレ味のよい硬質さと透明感を兼ね備えた力強いピアノが、エネルギッシュなダイナミックといえる演奏に圧倒される。哀愁漂う詩的なところはやはり感じられるが、スウィングを基調としてのパワフルなところは、エヴァンスというところの感覚が私の印象はちょっと違っていた。
 しかし、このアルバム・テーマ曲のM4."Blue in Green"では、このマイルス・デイヴィスの名盤『Kind of Blue』でリリースされた象徴的な曲となると、そこにはエヴァンスの世界に自らを投影して何かを掴んだ誇りのような深淵なるところに導くところは素晴らしい。成程、この姿が彼らのお互いの即興を信じあってのエヴァンスへのオマージュであると同時に、クレメンスのアルコ奏法をも交えての自らを主張する世界であるのだということが解る。ライブで10分を超えての演奏は素晴らしい。
 そしてその後に続く曲にも、ユーロ的リリカル派の内省的な因子も見え隠れして、彼らの目指すものは単に真似事の再現でないことが解って心地よい。なかなか味のある質の高いトリオ・ジャズ演奏として歓迎した。
 なお録音も良い線をいっていて良いアルバムであった。

(評価)
□ 編曲・演奏   90/100
□ 録音      88/100

(試聴)

 

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コメント

素晴らしい演奏ですね。
静かで気持ち良かったです。
初めて聞きました。

投稿: iwamoto | 2023年2月20日 (月) 16時12分

iwamoto様
コメント有難うございます
"Blue in Green"は、このアルバムでも彼らの実力から生まれる一つの世界を知る事が出来ましたね。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2023年2月22日 (水) 09時41分

風呂井戸さん、こんにちは。
私もこのアルバム、ジャズ友のご紹介で知り入手していて、聴いていますが、中々良いですね。
特に風呂井戸さんがおっしゃるように"Blue in Green"素晴らしく、他の曲も捨て曲なしで現状今年の私的ベスト候補作です。
一緒に入手している2010年のトリオ作「Unveiling」もフレッシュで勢いがある感じで良いのですが、洗練度や説得力などにおいて「BLUE IN GREEN」に軍配が上がる感じです。
あと2021年リリースされたベートーベンへのオマージュのsolo作「Full Solo」配信で聴いてみて良い感じです。しかしながら注文後入手不可のメールが届いて断念しています。
ジャケがちょっと怖いのもあって現状探すのはやめにしています。(そのうち安価に出品されているのでも見つけたら考えようと思います)

投稿: baikinnmann | 2023年2月23日 (木) 17時40分

baikinnmannさん
こんばんは、コメント有り難うございます
このところ獲物が少なくて(笑)、漁っていて手に入れたアルバムです。私にとつては、このPaul Layは初物でして、Bill Evansのトリビュートということでの興味もありましたが、手に入れてよかったアルバムです。
 特に単なる真似事でなくて彼らの極めんとするトリオ・ジャズが見えてきて納得しています。今後も楽しみという事でここに取り上げました。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2023年2月23日 (木) 22時54分

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