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2023年3月30日 (木)

ジュリアン・ラージ Julian Lage 「THE LAYERS」

ギター・アンサンブルの魅力

<Jazz>
Julian Lage 「THE LAYERS」
BlueNote Records / Import / 4866912 / 2023

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Julian Lage (el-g)
Bill Frisell (el-g)
Jorge Roeder (ac-b)
Dave King (drums)

produced by Margaret Glaspy
Recorded and Mixed by Mark Goodell
Additional Producton by Armand Hirsch
Mastered by RAndyMerrill at Sterling Sound in Edgewater,NJ

Julianlage   現代ジャズを代表するギタリストの1人といわれる米国のジュリアン・ラージ(→)の高評価の前作『View With a Room』と同じセッションでレコーディングされていて、続編とも言うべきEP盤作品だ。
 メンバーは、ジュリアン・ラージ・トリオといわれるベーシストはホルヘ・ローダー(ペルー)、ドラマーはデイヴ・キング(米国)とのトリオで、彼はアコースティックおよびエレクトリックの両方のギターを操り、6曲のオリジナル曲を収録している。そしてなんと今回もビル・フリゼールがエレクトリック・ギター中心に5曲でゲスト参加。

 ジュリアン・ラージは1988年、アメリカのカリフォルニア州サンタローザ生まれの35歳。5歳よりギターをはじめ、12歳の時に全国でTV放送されたグラミー賞授賞式で演奏するなど、少年期より注目を集める。その後ゲイリー・バートンに誘われてステージを共にし、2003年にはゲイリーのアルバム『GENERATIONS』のレコーディングに参加。更に2005年にリリースされた『NEXT GENERATIONS』にも参加し、彼自身のオリジナル曲を複数提供するなどの活動は本格的で名を知らしめた。バートンのクインテットと共に演奏した公演は世界各地に広がり、チャールズ・ロイドとの共演があり、ハービー・ハンコックにも認められたと。ニューヨーク・タイムズからも「天賦の才」と称賛を受け、ブルーノートから2枚目のアルバム前作『Wiew With a Room』(2022)は傑作との評価。

 メーカーインフォによると、ジュリアンは「この作品は、アルバム『View With a Room 』の前日譚のようなものだね。ビルとのデュオ、ホルヘとのデュオ、より広がりのある楽曲、デイヴとホルヘの素晴らしいリズムとオーケストレーションのセンスなど、前作の試金石となる音楽の種をすべて含んでいるんだ。前作は、僕たちがスタジオで探求することに興奮したこれらの音楽的な特質が包括的に表現されているし、今作はアンサンブルと制作チームのさまざまな関係性が表れていると思う」とコメントしていると記されている。そんな感じで聴くとよいのかもしれない。

(Tracklist)

Julianlagetriow 1. エヴリシング・ヘルプス / Everything Helps
Julian Lage (el-g)
Bill Frisell (el-g)
Jorge Roeder (ac-b)
Dave King (drums)

2. ダブル・サウスポー / Double Southpaw
Julian Lage (ac-g)
Jorge Roeder (ac-b)

3. ミッシング・ヴォイセズ / Missing Voices
Julian Lage (el-g)
Bill Frisell (el-g)
Jorge Roeder (ac-b)
Dave King (drums)

4. ディス・ワールド / This World
Julian Lage (ac-g)
Bill Frisell (ac-g)

5. マントラ / Mantra
Julian Lage (el-g)
Bill Frisell (el-g)
Jorge Roeder (ac-b)
Dave King (drums)

6. ザ・レイヤーズ / The Layers
Julian Lage (ac-g)
Bill Frisell (ac-g)
Jorge Roeder (ac-b)
Dave King (drums)

120frizpromow_20230329205501   ジャズ・ギターの味というのはいろいろとあるが、どうもこのアルバムではアンサンブルを重要視したのかと思われるところにありそうだ。その為ジュリアンは、主としてアコースティック・ギターを操り、そこにエレクトリック・ギターとしてビル・フリーゼル(→)を招請して、バック演奏でなく、アンサンブル・スタイルを重要しして、更にベースのホルヘ・ローダーとの三つ巴を楽しんでいるかの印象だ。しかも前アルバムのレコーディング・セッションにてカットされたものがここに納められているようだ。

 曲数は少ないが、結構気持ちが安らぐ世界として聴ける。演奏内容がゆったりとしたメロディックな調和を大切にした演奏のせいだろう。
 M1."Everything Helps"などエレキ・ギターの余韻を生かしながらのアコースティック・ギターとベースの調和の典型で気持ちがいい。
 M2." Double Southpaw"は、ギター、ベースのアコースティック・デュオで、瞑想的。
 M3."Missing Voices" ドラムスは刺激無く、お互いの弦のピッキングが折り合っての音が交錯を優先させ神秘の空間に。
 M4."This World" ギター・デュオが複雑に。
 M5."Mantra" 、M6."The Layers" は、カルテットの妙、前者は低音域をベースにした展開。後者は明快なメロディーによるアコースティック・カルテット音の味を主張。

 とにかく複雑な音を演じている割には難しさを感じさせないところが名人芸にも感ずる曲群。久しぶりにジャズ・ピアノの一面を気分よく聴いたアルバムだった。

(評価)
□ 曲・演奏   87/100
□ 録音     87/100

(試聴)

*

 

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2023年3月25日 (土)

シモン・ウェストマン Simon Westman Trio 「MOVING FORWARD」

朗々と清々しく牧歌的に人間謳歌を演じ上げる

<Jazz>

Simon Westman Trio 「MOVING FORWARD」
Proforne Records / Sweden / PCD314 / 2023

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Simon Westman (piano) (celesta on 2)
Magnus Bergström (double bass)
Magnus Gran (drums) (hand drum on 6)

Recorded 17-18 May 2022,at Svenska Grammonfonstudion by Ake Linton

 スウェーデンの新鋭ピアニスト、シモン・ウェストマンのピアノトリオ作品。これは私にとっては初物だが、このトリオの第2弾であることのようだ。

 ちょっと紹介を見ると、シモン・ウェストマンは1979年インドネシア・ジャカルタ生まれだが、スウェーデン北部のスンツヴァルで育った。そのため2000年、ヨーテボリ音楽大学に入学しスウェーデンのジャズピアニスト、アンダース・ペルソンらの下でジャズピアノを学び、卒業後、ドイツのケルン音楽大学でイギリスのジャズピアニスト、ジョンテイラーに師事した。シモンは作曲とピアノ演奏の両方でテイラーの影響を受けていると。そしてこのトリオは2010年からで、既に10年以上の経過があり、ヨーテボリのジャズクラブで演奏しているということらしい。
 北欧からの叙情性をもったメロディアスなピアノ・トリオ作品という評価が出ているので、仕入れてみたアルバム。

138b82_94c48b7c2ca14ed884acf968ccc61741_ (Tracklist)

1. Peace Please 2:35
2. Out For A Walk 4:59
3. Flying Kite 4:19
4. Turborelax 6:21
5. Moving Forward 5:21
6. Leaving Home 5:34
7. Siv och Gunne 4:07
8. Life Goes On 5:05

 哀愁の北欧世界というのでなく、どちらかというと、ややフォーキーで朗らかといった暗さのない詩情の世界があり、時にダイナミズムな演奏の加味された作品といった方が良いかもしれない。彼らのオリジナリティ重視の曲展開で、主力のピアノの音は素晴らしいクリアな音が聴ける。またベース、ドラムスもサポートというよりはそれぞれをしっかり主張しているし、録音は現代風で三者しっかり聴きとれるリアルさがあって、かなり緻密感のあるインタープレイが十分楽しめるところにある。

 M1."Peace Please"は、重厚なベースのアルコ奏法に乗ってピアノが明快なテンポで、なんとなく親しみやすい美しいメロディーだ。シンバル音も繊細で美しい。短い序奏。
 M2."Out For A Walk " 牧歌的な世界に躍動感と開放感と。
   M3."Flying Kite " 空を飛行する凧(タコ)?、鳶(トビ)? 、緊張感というより明るい溌溂の快調テンポ。
 M4."Turborelax" 静かに落ち着いてゆったりと牧歌的広い空間の安定感。
   M5."Moving Forward "  ドラムスの快テンポと追従するピアノ、ベース。
   M6."Leaving Home " 旅立ちなのだろうか、しかし明るい活発な展開。
   M7."Siv och Gunne" めずらしく少々内向的で思索的。しかしそれほど暗さはない。
   M8." Life Goes On" やはり究極の締めも朗々としている。

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 全体的には、内向的でなく開放的・牧歌的なかなり自然の中での明るい人間的営みが演じられているムードだ。不安感がなく陰影もなく躍動感のある清々しい様は、まさに正攻法の世界の演奏。まあ人間謳歌的で若干張り合いがないと言えば言えないこともない。
 こんな情景は明るい春向きで、しかもタイトルの"Moving Forward"というのも今頃にピッタリだ。
 演奏は、ドラムスの活動も繊細さからややスリリングなところまで演じて、ピアノのオーソドックスな流れに色をつける。ベースとピアノのユニゾン、ハーモニーも堂に入っていて聴きやすい。
 なんとなく優等生的な世界であった。

(評価)

□ 曲・演奏  85/100
□ 録音    88/100

(試聴)

 

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2023年3月20日 (月)

ケンドリック・スコット Kendrick Scott 「Corridors」

コードレス・トリオのスリリングな展開はお見事

<Jazz>
Kendrick Scott 「Corridors」
Blue Note / Import / No.4552187 / 2023

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Walter Smith III (tenor saxophone except 8)
Reuben Rogers (bass except 4)
Kendrick Scott (drums except 4)

   ユーロ系のピアノ・トリオを中心とした美メロディーと哀愁ジャズに浸っていると、時にアメリカン・ジャズの世界に反動的に入ってみたくなる瞬間がある。そんな時に恰好のアルバムがリリースされた。それは現代ジャズ最高峰ドラマーと言われるケンドリック・スコットKendrick Scottのブルーノートから最新作のこのアルバムだ。ヒューストン出身のサックス奏者ウォルター・スミス3世と、ベーシストのリューベン・ロジャースによるなんとコードレスという体制のトリオ編成。8曲のオリジナル曲と、ボビー・ハッチャーソンの曲"Isn't This My Sound Around Me"1曲収録。

Kendrickscott_005w  ケンドリック・スコット(→)は1980年テキサス州に生まれ、名門校“High School for the Performing and Visual Arts”やボストンのバークリー音楽院を経て、2000年代から本格的なプロ活動。とにかく見事なテクニックと音楽性の多彩さでまたたく間に評価を確立した。

 ドラマーのリーダー作としては、従来はギター、ピアノ等のコード演奏をフューチャーしての作品作りであったが、ここに一つの冒険とか実験をしたのだろうか、それとも彼の目指すところがあっての企画か。
 
 前作の自身のバンド"オラクル"と共に2019年にリリースしたアルバム『A Wall Becomes A Bridge』も、一筋ならない世界だった。壁と橋をテーマに私には十分な理解まで至っていなかったが、音楽的探究に加えコミュニティーにおいての人種差別にかかわる問題を持ちながらの無実、受容、恐怖と不安、抵抗など、さまざまなテーマが探求されているといわれる内容であったが、そんなアルバムに続いたこの作品も、単に音の世界だけに止まらないないところ、そんな聴き所のポイントにも思いを馳せる必要がありそうだ。

(Tracklist)

1. What Day Is It?
2. Corridors
3. A Voice Through The Door
4. One Door Closes (overdubbed solo tenor saxophone)
5. Isn't This My Sound Around Me?
6. One Door Closes, Another Opens
7. Your Destiny Awaits
8. Another Opens (bass & drums duo)
9. Threshold

 コードレスのためだろうか、スリリングな展開がまず印象深い。オーソドックスな流れの中にコンテンポラリーな味付けによって思索感なところに導くところもあるが、サスペンスが支配してそこに聴く者に格好良さを感じさせる。スミスⅢ(下左)のサックスも美旋律を流す方向でなく、アドリブ演奏が適度な音で前面に出て、曲の展開をリードしたりサポートしたりで魅力的。とにかく力強くパンチ力のあるスコット(ds )や、なかなか両者を旨く支えるロジャーズ(b 下右)の活躍もテクニシャンの魅力を放つメリハリ充分な演奏を聴かせてくれる。

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  このアルバムもパンデミックの期間中に生まれたもので、スコットは「私はよく自分の経験したことをテーマにして曲を書くんだけど、このアルバムでは私の視点からズームアウトして、代わりにみんなの視点に立ちたいと思ったんだ。パンデミックによって、みんな自分が逃げていた影に向き合わざるを得なくなったからね。そして普段僕のバンドのオラクルではギターとピアノを中心にサウンドが構成されているんだけど、この2つの楽器を取り去ることで、聴覚的に何ができるだろうと思ったんだ。ベースのリューベンは純粋で愛情に満ちた方法でこのアルバムの世界をナビゲートしてくれたし、サックスのウォルターのサウンドはいつも美しく、私にインスピレーションを与えてくれる。いつも指針となる存在だよ」と語ってたという紹介があった。


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 とにかくスタートのM1."What Day Is It?"から、スコットのドラムが躍動する中、サックスがそのリズムに乗ってリード、この絡みがたまらない。
 M2."Corridors"はタイトル曲、一変してロジャースの意外な思索に導くソロ、答えるサックス。バックでシンバル音を伴ったスリリングなパンチ力のあるドラムス。そして次第にサックスの訴えが盛り上がる、こうゆうのは究極のジャズのジャズたる世界だ、痺れますねぇーー。
   M3."A Voice Through the Door" 静かなサックス・ソロ、思いの外、どこか哀愁ある演奏に。
 M5." Isn't This My Sound Around Me?"、サックスの響きにドラムスがスリリングな演奏。そしてベースが中庸を築く。次第にテンポ・アップしてトリオの交錯が見事。
 M6."One Door Closes, Another Opens" 心に優しく響くサックス。7."Your Destiny Awaits"ここでは冷静にしてリズムカルなサックス、後半のドラムソロのパンチが有効。
 M7."Another Opens"いやに優しいメロディアスなベース。
 締めのM8."Threshold"は、 圧巻のドラム・ソロでスタート、続くサックス、ベースのユニゾン、ドラムスが高速展開、ジャズ演奏の調和の妙。

 重厚な音にシャープなキレのある俊敏なるアタックをかけてくるドラムはやはり超一流。味わいと安定感たっぷりのベースの響き、なにはともあれソフトにして味のあるトーンと切れ味の妙を持つサックスとがドラムスとの調和を時に重厚、スリリングに、そして軽快に響かせる。これぞジャズの醍醐味を聴かせるアルバムだ。

(評価)
□ 曲・演奏 90/100
□ 録音   88/100
(試聴)

 

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2023年3月15日 (水)

シモーネ・コップマイヤー Simone Kopmajer 「With Love」

ジャズといういっても、聴きやすいポップよりの歌で・・・

<Jazz>

Simone Kopmajer 「With Love」
Lucky Mojo Records / Import / LMR232 / 2023

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Simone Kopmajer (Vocals)
Harry Allen (Tenor Saxophone)
John Di Martino (Piano)
Boris Kozlov (Bass)
Reinhardt Winkler (Drums)

Wesley Amorim (Guitar #1)
Gottfried Gfrerer (Guitar #7)
John di Martino (Vocals #13)
Sheila Jordan (Vocals #11)
Sara Caswell (First Violin)
Tomoko Akaboshi (Second Violin)
Benni von Gutzeit (Viola)
Mairi Dorman-Phaneuf (Cello)

*All Arrangements by John Di Martino

 既にここでも過去のアルバム2作の紹介で登場しているオーストリア出身の歌姫シモーネ・コップマイヤー(1981年生まれ)の2年半ぶりの新作登場。本作は彼女のオリジナル曲2曲を織り交ぜてのラブソングなどを主としてカバーしたアルバムで、グラミー賞を受賞したNYの弦楽四重奏を迎えたおり、ジョン・ディ・マルティーノのピアノにサックスの実力派ハリー・アレンもバックに参加して、いままでの中では、良いか悪いかは別として最もロマンティックな作品として仕上がっている。しかもレジェンド、シーラ・ジョーダンがゲストとして一曲参加している。

Ab6761610000e5eb45a82346e6c497bw  彼女は8歳で歌い始め、12歳で音楽学校のディレクターでありジャズの大ファンであった父親のバンドで歌い、16歳でグラーツの音楽演劇芸術大学に受け入れられ入学。在学中、彼女はマーク・マーフィー、シーラ・ジョーダン、ミシェル・ヘンドリックス、ジェイ・クレイトン、ニューヨーク・ボイスなどの多くの有名なアーティストと仕事をする機会を与えられたと紹介されている。
 2000年に彼女は米国でデビューし、エラ・フィッツジェラルド、フランク・シナトラ、ジョン・ヘンドリックスなどのジャズに影響されながらも、次第に歴史あるオーストリア・シュタイアーマルク生まれの彼女は、ユーロ的感覚の独自の世界を持つようになり、ジャズとポップの因子のある多様な世界にあって、2004年の『Moonlight Serenade』から始まって、2011年のアルバム『Nothing's going to Change』で現在の人気を作りあげた。

(Tracklist)
1.The Look of Love(Burt Bacharach / Hal David)
2.How Wonderful You Are(Gordon Haskell)
3.Until It ́s Time for You to Go (Buffy Sainte-Marie)
4.I Can ́t Make You Love Me (Mike Reid / Allen Shamblin)
5.Opposites Attract (Simone Kopmajer / Karolin Tuerk)
6.How Can You Mend a Broken Heart (Barry Gibb / Robin Gibb)
7.Cold, Cold Heart(Hank Williams)
8.I ́m Gonna Sit Right Down and Write Myself a Letter (Fred E. Ahlert / Joe Young)
9.For Once in My Life (Ron Miller / Orlando Murden)
10.Take It All In(Simone Kopmajer / Karolin Tuerk)
11.Everything Happens to Me (feat. Sheila Jordan)(Matt Dennis / Tom Adair)
12.Tell It Like It Is (George Davis / Lee Diamond)
13.You Don ́t Know Me(feat. John Di Martino)(Eddy Arnold / Cindy Walker)
14.Over the Rainbow ( Harold Arlen / Yip Harburg)

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 さてこのアルバムは、「Love」がテーマのようだが、オープニングはバカラックの人気曲M1."The Look of Love"からスタート、昔はセルジオ・メンデスで良く聴いて、近年はダイアナ・クラールの歌が印象深いが、ここではちょっと軽快さから離れて、シモーネらしいストリングスをバックにしたちょっとねっとりムードで仕上げている。
 M2."How Wonderful You Are"はサックスのバックでいわゆるジャズっぽい。そしてM3."Until It ́s Time for You to Go "は、ピアノの調べと共に、落ち着いたエレガントさと優しさのある彼女の味の良さの出たヴォーカルが聴ける。私はこっちの仕上げが良いと思うのだが。
 M4."I Can ́t Make You Love Me"もサックスが入り、しっとりと優しく、M5."Opposites Attract"は彼女のオリジナルだが、可もなく不可もなく、M6."How Can You Mend a Broken Heart "のバラード調に仕上げた歌いこみは聴きどころあり可
 M7."Cold, Cold Heart"ちょっぴりウェスタン・スタイル。M9."For Once in My Life "は、比較的低い音程の歌を美しいストリングスをバックに古めかしくゆったりと。
 M10."Take It All In"も彼女の曲、どちらかというとエレガントの方だ。
 M11."Everything Happens to Me"驚きの90歳代のジョーダンの貫禄の声とのデュオ、対照的で面白い。アメリカン・ムード。
 M12."Tell It Like It Is"ピアノとサックスのゆったりとしたバックでの味のある歌。
 M14."Over the Rainbow " なぜかこの曲で締めくくり。ストリングス・バックに美しく・・・と言ったところか。
  

 なかなか売れ筋のアルバムである。曲の仕上げが非常に聴きやすいし、彼女の歌声、テクニックは相変わらず良好で嫌みとかの因子は少なく、広く一般的に・・というスタイルだ。ただ表現が難しいのだが、私が彼女に描いていたところと若干違った方向に流れているようにも感ずる。それはもう少しユーロ的ニュアンスが増すのかと思ったのだが、そうでもなくさりとてアメリカン・ジャズに迫るという感じでもなく、極めてポピュラーな感覚に聴けるところだ。まあ、悪いことではないので良しとしておこう。

(評価)
□ 曲・編曲・歌  87/100
□ 録音      87/100

(試聴)

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2023年3月10日 (金)

セバスチャン・ロックフォード Sebastian Rochford & Kit Downes 「A Short Diary」

父親の死に悲しみと慰めの心の日記

<Jazz>

Sebastian Rochford & Kit Downes 「A Short Diary」
ECM / International / No.4534944 / 2023

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Sebastian Rochford (ds, composition)
Kit Downes(p)

  時に、ECMの世界に入りたいのですが・・・これも貴重なアルバム。
 イギリス人ドラマー、セバスチャン・ロックフォード Sebastian Rochford(下左 : 1973年生まれ)のECMからの初リーダー作品で、長年付き合いのあるピアニストのキット・ダウンズ Kit Downes(下右 : 昨年素晴らしいアルバム「Vermillion」(ECM2721)をここで紹介した)に協力してもらってのデュオ作品。

  ロックフォードは、この作品は"愛を持って、慰めの必要性から作られた音の記憶 "で彼の父親である英国スコットランド北東部の都市アバディーンに住むジェラルド・ロックフォード(1932-2019 詩人)の死に対して、父と家族に捧げられたものと説明しているようだ。
 彼は父の死後すぐにほとんどの曲を書いた。とにかく父親の無くなった後、彼はアバディーンにある実家の古い父親のグランドピアノに座り、創造の世界にいたようだ。そして曲を書きながら、原稿用紙にメモを取り、楽譜では表現できない細かい雰囲気や空気感を、必ず言葉で記録していったらしい。そして録音もこの実家で行われた。「作曲もこの時期の私にとっての慰めだったので、録音した音楽にはそれを反映させたかったんです」と。

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 そして気心の知れたピアニストのキット・ダウンズとともに、深い感情の込められた演奏で、このアルバムを制作した。そして最後の切ない曲"Even Now I Think Of Her(今でも私は彼女を考える)"のみは、父親が作曲したもので彼は「父が携帯電話に向かって歌い、私に送ってくれた曲です。これをキットに送って、僕たちは演奏を始めたのです」と。

  父親の死というのは、普通の人生では誰もが経験するものであり、それが人生の一つの区切りが感じられるほどの重大事件であることは私どももよく理解できる。そんな時に、それぞれの生き様での姿がどんなものなのかは人によって異なるのだが、ミュージシャンであるからの成しえたことに、敬虔な気持ちで私は向き合う事の出来たアルバムである。

(Tracklist)

01. This Tune Your Ears Will Never Hear
02. Communal Decisions
03. Night Of Quiet
04. Love You Grampa
05. Our Time Is Still
06. Silver Light
07. Ten Of Us
08. Even Now I Think of Her

 ECMおいては、彼はこれまでアンディ・シェパードのECM作品などでドラムスを担当していた経緯があり、マンフレート・アイヒヤーに、この『A Short Diary』の制作に前向きであるかどうか打診したようだ。そしてマンフレートはこの製作の経緯とこの音楽を理解し、綿密なプロダクションが行われ、ミュンヘンでミキシングが行われた。とにかくキッド・ダウンズのピアノも美しく仕上がっていて、そして制作の意図が十二分に汲まれたこの作品に納得しているようだ。

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 オープニングの曲M1."This Tune Your Ears Will Never Hear"は、起きたことの重大さを描くピアノとドラムの打音からスタートするも、次第に深く沈みこむピアノは、冷たく美しい。。
 M2."Communal Decisions"は優しい世界に。M3."Night of Quiet"静かそのものの夜。
 M4."Love You Grampa"は、郷愁に漂って、楽しく明るく、ドラムスのシンバル音ブラッシ音が響く。
 M5."Our Time Is Still" 静かに間をおいてのピアノが優しい響き。
 M6."Silver Light"では、ピアノの旋律が優しく光を見つけた如くメロディアスに。
 M7."Ten of Us"、ふと再び哀しさが襲う。
 M8."Even Now I Think of Her"は、父親の口ずさんだ哀しさに満ちた歌、Herは母親か(?)。

 父親の死に襲ってきたロックフォードの感情の日記のように作り上げられたアルバムで、聴くものの心をも打つ。最低限の音と響きで描いていて、このように感情を音楽として描ける彼などミュージシャンは羨ましくも思えるほどの出来で、"尊敬と感謝、悲しみと慰めと、過去の回想と未来への光"が描かれ、又ピアニストとしてキット・ダウンズの協力を得たのも成功している感動のアルバムであった。

(評価)
□ 曲・演奏  90/100
□   録音    87/100

(試聴)

*

 

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2023年3月 6日 (月)

ゴンザロ・ルバルカバ Gonzalo Rubalcaba & Aymee Nuviola 「Live In Marciac」

ピアノと女性ヴォーカルのデュオ・ライブ
圧巻のパフォーマンスで会場をラテン世界に

<Jazz>

Gonzalo Rubalcaba & Aymee Nuviola 「Live In Marciac」
5PASSION / US / 5P076 / 2022

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Gonzalo Rubalcaba : piano
Aymee Nuviola : Vocals

  キューバのその圧倒的なテクニックとセンス、そして独自のアプローチでグラミー賞を受賞の我が愛するピアニストのゴンサロ・ルバルカバ(キューバ・ハバナ出身1963年生まれ:下左)と、同じくラテングラミーを獲得するなど、キューバから羽ばたいている女流歌手アイメー・ヌビオラ(Aymée Regla Nuviola Suárez キューバ・ハバナ出身1973生まれ:下右)のデュオ・ライブ版。
 ラテンのスタンダードからオリジナル曲までを幅広く披露する圧巻のパフォーマンスが聴ける。
 ロックダウン後、2021年ヨーロッパ各都市でのライブ活動が出来るようになって披露された二人のラテンのスタンダードからオリジナル曲までを幅広く披露する圧巻のパフォーマンスが聴ける、更にフランスの南西部で開催されるジャズインマルシアックフェスティバルでの模様をも収めたアルバム。

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(Tracklist)
1. Besame Mucho
2. Lágrimas Negras
3. Mi Mejor Canción
4. Bemba Colorá
5. Dos Gardenias
6. El ratón
7. Nada es para ti
8. El Manisero
9. El Ciego

 透明感たっぷりの情感にあふれたルバルカバのピアノ、時には会場を圧倒するところまで盛り上がり、ヌビオラの歌と共鳴する。歌手とのデュオの方法論は、彼はピアニストとしての立ち位置、いつボーカルをリードするかを経験的深みを持って知り尽くしている。ボーカルの流れを妨げないだけでなく、ヌビオラが流れてゆく道を導いている。彼の左手は、ラテンリズムのリズミカルな流れ作り、右手では、リズムを刻むこともあるがメロディを美しく描いて会場のオーディエンスに語り掛け訴える。共に曲の世界に誘うヌビオラのパフォーマンスも板についていて、歌唱力の高さと相まって、ルバルカバのピアノの音をバックに、歌だけでなく歌と歌の間をピアノ演奏十分楽しませてくれるように導いたり、両者の息のあったところは凄い。パンデミックの間中、ルバルカバとヌビオラはデュオの共同作業を開始していたようで、かなりの充実ぶりが感じられる。

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 パンデミックを乗り越えてのライブが行えるようになって、ルバルカバは「再びライブで演奏することは、生き返ることです。それは私たちがそれを行う方法を知っているように再び生きることであり、アイメと一緒にそれをすることは神聖です」と語っている。

 この二人の関係の紹介を見ると、"もともと二人は生まれ故郷のハバナ出身の幼なじみ、ピアニストで作曲家のゴンサロ・ルバルカバ、歌手、女優、ソングライターのアイメ・ヌビオラは、どちらも音楽コンテンツの高い環境で育ちました。アイミーの母親は確かに歴史の教師であり、ピアノのレッスンを行い、古典的な音楽院の教訓に従い、ゴンサロは地元のクラブの多作なシーンに没頭し、オルケスタアラゴンやロスヴァンヴァン、オマラポルトゥオンド、エレナバーク、アイザックデルガドなどの有名人と肩を並べ、ビル・エヴァンスなどのマスターの和声の概念を研究しました"とある。昔から気ごころを知っての仲という事でその実績は既にベテランの域にある。

 聴き慣れた曲M1."Besame Mucho"では、ここまで歌い込むヌビオラに圧倒される。それはM4."Bemba Colorá"においても同様だ。
 M2."Lágrimas Negras"ではしっかり両者の技法の虜となり、ラテンの世界に会場は引っ張り込まれる。
   M3."Mi Mejor Canción"の心に訴える歌には感動ものだ。
 M5."Dos Gardenias"は、流れるようなルバルカバのピアノの音から始まって、しっとり歌い込むヌビオラ、そして語り聴かせるようなピアノが響き心に迫る。
 M6."El ratón"での跳ねるようにピアノの音とヌビオラのリードによっての会場との拍手と合唱が印象的。彼らのお気に入り曲のM7."Nada es para ti"の情感の入った歌い込みはやはり超一流。 
 最後のルバルカバがチャーリー・ヘイデンとフェデリコ・ブリトと一緒に名盤『Nocturne』で録音したM9."El Ciego"のしっとりとした演奏と歌で幕を閉じる。

 このデュオによる描く世界は、そこには人間の機微を描ききっていて、聴く者をして容赦なく彼らのラテン世界に没入させられる。まさにライブの素晴らしさが凝集している。

(評価)
□ 演奏・歌  90/100
□ 録音    88/100

(試聴)

* (参考)

 

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2023年3月 1日 (水)

「ジャズ批評」ジャズオーディオ・ディスク大賞2022の感想

相変わらずの茶番だが・・・でも面白かった

 今年も例年のごとく当誌232号で「JAZZ AUDIO AWARD 2022」の発表が特集されている。私のような音楽的学問も無ければ技能もないが、いわゆるミュージックを聴くことを中心に愛している者としては、結構こうした番付記事は興味がそそられる。オーディオ雑誌などでは、同じように昨年発売された機器を中心に、評価をしてやはり順位を付けたりして一般ユーザーの興味を集めるのである。

2356894_o  さて、その「ジャズ批評」誌でのこの企画では、「ジャズオーディオ・ディスク大賞」として一年間にリリースされたアルバムを対象に、①インストゥメンタル部門、②ヴォーカル部門に分けて当誌の関係者を選考委員として投票によりそれぞれに順位を付けている。そしてその他③メロディー賞、④ジャケット賞、⑤特別賞、⑥ロスト・アンド・ファウンド賞が設けられている。
 まず、ここでは①、②を中心に私の感想だ。

[総論] まず総論ですが・・・・
 ① インスト部門  金賞 Alessandro Galati / Portrait In Black  And White (下左)
   ② ヴォーカル部門 金賞 Samara Joy / Linger Awhile (下右)

          まぁ、順当なところですかね。

 さて、毎年私が指摘している「評価基準」が曖昧なのは、まあしょうがないのでしょうかね?・・学問雑誌の評価ではないのだから。それでもこうした雑誌を見る者には、所謂、音楽に関しては好きでも素人というのが圧倒的に多いのでしょうから、これを見て高得点で聴いてなかったものがあれば何が良かったのかのポイントを知りたいところである。そしてCDなど購入して聴いてみようかとも思うきっかけにもなるでしょう。

 "ジャズオーディオ"という表現なので、演奏だけでなく音の良さなどのオーディオ感覚の評価が入っているのは解るところ。しかしどうも評価ポイントが明瞭でない。例えば、音はそれほど高評価でなくても演奏が素晴らしければ、それも取り上げる要素であろう。従って私がいつも言っているように、最低のところ「演奏」と「音(録音、ミツクス、マスターリングなど)」ぐらいは分けての総合点評価を知りたいところだ(実際のところ「音」の評価も好みはいろいろでなかなか難しい)。その点が曖昧で"順位を付ける"というのは、茶番と言ってもしょうがないだろう。それでも私は決して否定しているわけでなく、こうして当誌を買って、毎年楽しんでいる素人ミュージック愛好者である事を知ってほしい。

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Seiichi_goto-1  具体的には、個々の審査委員も「オーディオディスク」というところに、いろいろな見方をしているようだ。
   まず審査委員長の後藤誠一氏(右)だが、"演奏も録音も"と書いているところをみると、私の指摘した2面を中心に評価しているようだが、白澤茂稔氏は、面白いことに"ライブ演奏のように汗が飛び散り躍動感あふれたきらきら輝くような音が感じられる盤"と表現し"何を求めるか"は課題としている。寺島靖国氏は"オーディオ誌とジャズ誌"を区別して考えているようだし、林正儀氏は"オーディオグレード"と表現する点を意識しているようだ。又日比野真氏は"情熱、哀愁、高音質"という表現、更に藤田嘉明氏の"録音からミキシング、マスタリングにジャズ度"という表現が面白い。今回から参加の後藤啓太氏は"音質、メロディー、テクニック"というポイントを取り敢えず挙げている。各氏の考え方もそれぞれだ。

 さてそこで、各自の評価はよいが、委員全体で"順位を付ける"となると若干問題が派生する。
 審査委員長の後藤誠一氏は医学博士(科学者)ですから、少なくとも評価法は解っているでしょう。"演奏も録音も"と書いているところをみると、やはり両面からの評価をしているようだ。しかし選考委員各自考え方が少しづつ異なっている中で、基準を明快にしないこの曖昧な評価法にて順位をつけている事に疑問を持たないというところは、ちょっとナサケナイ。

 更に問題点は、実は選考委員の中で、アルバムによっては点数を入れられない者もいるルールのようで(例えば、寺島靖国氏はアルバムリリース側として自己の関係アルバムには点数が入れられない為、0点だが(これも本来は空欄にすべき)、そんな状況下で単純に集計した点数で比較している非科学性=母数の違ったものを集計して比較)、その不自然に気が付かずにいる。それは総評で金賞と銀賞の差が"わずか1点差で"と僅少差を強調している論調に明白、仮に寺島氏が点数が入れられる立場なら、11点差になった可能性もあることに気づいていない(更に6位は上位に上がる可能性も)。これを完全無視しているんですね。これはほんとにナサケナイ(金賞と6位などは8人の合計点、銀から5位などは9人の合計点だ)。・・・ちょっとキツイことを書いたかなぁ・・・、でもこんな私の指摘も、"充実への期待から"のあくまでも"建設的意味での意見"として聴いてほしいです。

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 それはそうとして、この「ジャズオーディオ・ディスク大賞」では、「審査委員の総評」の個人的なものが面白いですね。又「MY BEST JAZZ ALBUM2022」もそれぞれの立場でのアルバム評価がリアルでやっぱり面白い。私には納得できる評価と全く異なった評価とがみられて、その違いも興味深いです。更に知らなかったものを知る事も多々で参考になります。

今回私が聴いてなかったものとして「インストゥメンタル部門」興味深く注目したものとして・・・
 ①   Mario Laginha 「Jangada」(上左) 24位
     日比野真氏推薦 どこか瞑想性を誘う計算された緻密な演奏、
              17分に及ぶ曲演奏は圧巻
   ② Luca Poletti Trio 「Colors」(上左から2番目)  15位
              後藤啓太氏推薦 ピアノ中心のスウィンギーなフリー・ジャズ
   ③ Subconscious Trio 「Water Shapes」(上左から3番目) 18位
     白澤茂稔氏推薦 女性3人のピアノ・トリオ、直感的でエネルギッシュ
   ④  Wajdi Riahi Trio 「Mhamdeya」(上右) 36位
     後藤啓太氏推薦 リズムカルで・・・人生の物語

1008620182そして今回完全に聴き落としていたアルバムを発見(↓)。
  日比野、藤田、寺島各氏に感謝です。
 Rotwelsch 「Die Welt Hat Das Genialste Streben」 (ジャケも面白い→)
         Unit Records / Import / UTR5049 / 2022
          Philipp Maria Rosenberg (p) Florian Kolb (b) 
          Lucas Johnson (ds)

       チューリッヒ出身のPhilipp Maria Rosenberg(P)率いる新トリオ。ユーロ、ロマンチシズムですかね。
(Tracklist)
1. Die Welt Hat Das Genialste Streben 
2. Schwarze Ninetta
3. Ich Knüpfe Manche Zarte Bande 
4. Wenn Der Mund Schweigt 
5. O Mädchen, mein Mädchen 
6. Ebben, Ne Andrò Lontana 
7. Variation Of A Theme By Anton Diabelli 
8. O, Dass Ich Doch Ein Räuber Wäre 
9. Du Bist Die Welt Für Mich
(試聴) Rotwelsch / Die welt hat das genialste streben

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