ジュリアン・ラージ Julian Lage 「THE LAYERS」
ギター・アンサンブルの魅力
<Jazz>
Julian Lage 「THE LAYERS」
BlueNote Records / Import / 4866912 / 2023
Julian Lage (el-g)
Bill Frisell (el-g)
Jorge Roeder (ac-b)
Dave King (drums)
produced by Margaret Glaspy
Recorded and Mixed by Mark Goodell
Additional Producton by Armand Hirsch
Mastered by RAndyMerrill at Sterling Sound in Edgewater,NJ
現代ジャズを代表するギタリストの1人といわれる米国のジュリアン・ラージ(→)の高評価の前作『View With a Room』と同じセッションでレコーディングされていて、続編とも言うべきEP盤作品だ。
メンバーは、ジュリアン・ラージ・トリオといわれるベーシストはホルヘ・ローダー(ペルー)、ドラマーはデイヴ・キング(米国)とのトリオで、彼はアコースティックおよびエレクトリックの両方のギターを操り、6曲のオリジナル曲を収録している。そしてなんと今回もビル・フリゼールがエレクトリック・ギター中心に5曲でゲスト参加。
ジュリアン・ラージは1988年、アメリカのカリフォルニア州サンタローザ生まれの35歳。5歳よりギターをはじめ、12歳の時に全国でTV放送されたグラミー賞授賞式で演奏するなど、少年期より注目を集める。その後ゲイリー・バートンに誘われてステージを共にし、2003年にはゲイリーのアルバム『GENERATIONS』のレコーディングに参加。更に2005年にリリースされた『NEXT GENERATIONS』にも参加し、彼自身のオリジナル曲を複数提供するなどの活動は本格的で名を知らしめた。バートンのクインテットと共に演奏した公演は世界各地に広がり、チャールズ・ロイドとの共演があり、ハービー・ハンコックにも認められたと。ニューヨーク・タイムズからも「天賦の才」と称賛を受け、ブルーノートから2枚目のアルバム前作『Wiew With a Room』(2022)は傑作との評価。
メーカーインフォによると、ジュリアンは「この作品は、アルバム『View With a Room 』の前日譚のようなものだね。ビルとのデュオ、ホルヘとのデュオ、より広がりのある楽曲、デイヴとホルヘの素晴らしいリズムとオーケストレーションのセンスなど、前作の試金石となる音楽の種をすべて含んでいるんだ。前作は、僕たちがスタジオで探求することに興奮したこれらの音楽的な特質が包括的に表現されているし、今作はアンサンブルと制作チームのさまざまな関係性が表れていると思う」とコメントしていると記されている。そんな感じで聴くとよいのかもしれない。
(Tracklist)
1. エヴリシング・ヘルプス / Everything Helps
Julian Lage (el-g)
Bill Frisell (el-g)
Jorge Roeder (ac-b)
Dave King (drums)
2. ダブル・サウスポー / Double Southpaw
Julian Lage (ac-g)
Jorge Roeder (ac-b)
3. ミッシング・ヴォイセズ / Missing Voices
Julian Lage (el-g)
Bill Frisell (el-g)
Jorge Roeder (ac-b)
Dave King (drums)
4. ディス・ワールド / This World
Julian Lage (ac-g)
Bill Frisell (ac-g)
5. マントラ / Mantra
Julian Lage (el-g)
Bill Frisell (el-g)
Jorge Roeder (ac-b)
Dave King (drums)
6. ザ・レイヤーズ / The Layers
Julian Lage (ac-g)
Bill Frisell (ac-g)
Jorge Roeder (ac-b)
Dave King (drums)
ジャズ・ギターの味というのはいろいろとあるが、どうもこのアルバムではアンサンブルを重要視したのかと思われるところにありそうだ。その為ジュリアンは、主としてアコースティック・ギターを操り、そこにエレクトリック・ギターとしてビル・フリーゼル(→)を招請して、バック演奏でなく、アンサンブル・スタイルを重要しして、更にベースのホルヘ・ローダーとの三つ巴を楽しんでいるかの印象だ。しかも前アルバムのレコーディング・セッションにてカットされたものがここに納められているようだ。
曲数は少ないが、結構気持ちが安らぐ世界として聴ける。演奏内容がゆったりとしたメロディックな調和を大切にした演奏のせいだろう。
M1."Everything Helps"などエレキ・ギターの余韻を生かしながらのアコースティック・ギターとベースの調和の典型で気持ちがいい。
M2." Double Southpaw"は、ギター、ベースのアコースティック・デュオで、瞑想的。
M3."Missing Voices" ドラムスは刺激無く、お互いの弦のピッキングが折り合っての音が交錯を優先させ神秘の空間に。
M4."This World" ギター・デュオが複雑に。
M5."Mantra" 、M6."The Layers" は、カルテットの妙、前者は低音域をベースにした展開。後者は明快なメロディーによるアコースティック・カルテット音の味を主張。
とにかく複雑な音を演じている割には難しさを感じさせないところが名人芸にも感ずる曲群。久しぶりにジャズ・ピアノの一面を気分よく聴いたアルバムだった。
(評価)
□ 曲・演奏 87/100
□ 録音 87/100
(試聴)
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