シモン・ウェストマン Simon Westman Trio 「MOVING FORWARD」
朗々と清々しく牧歌的に人間謳歌を演じ上げる
<Jazz>
Simon Westman Trio 「MOVING FORWARD」
Proforne Records / Sweden / PCD314 / 2023
Simon Westman (piano) (celesta on 2)
Magnus Bergström (double bass)
Magnus Gran (drums) (hand drum on 6)
Recorded 17-18 May 2022,at Svenska Grammonfonstudion by Ake Linton
スウェーデンの新鋭ピアニスト、シモン・ウェストマンのピアノトリオ作品。これは私にとっては初物だが、このトリオの第2弾であることのようだ。
ちょっと紹介を見ると、シモン・ウェストマンは1979年インドネシア・ジャカルタ生まれだが、スウェーデン北部のスンツヴァルで育った。そのため2000年、ヨーテボリ音楽大学に入学しスウェーデンのジャズピアニスト、アンダース・ペルソンらの下でジャズピアノを学び、卒業後、ドイツのケルン音楽大学でイギリスのジャズピアニスト、ジョンテイラーに師事した。シモンは作曲とピアノ演奏の両方でテイラーの影響を受けていると。そしてこのトリオは2010年からで、既に10年以上の経過があり、ヨーテボリのジャズクラブで演奏しているということらしい。
北欧からの叙情性をもったメロディアスなピアノ・トリオ作品という評価が出ているので、仕入れてみたアルバム。
1. Peace Please 2:35
2. Out For A Walk 4:59
3. Flying Kite 4:19
4. Turborelax 6:21
5. Moving Forward 5:21
6. Leaving Home 5:34
7. Siv och Gunne 4:07
8. Life Goes On 5:05
哀愁の北欧世界というのでなく、どちらかというと、ややフォーキーで朗らかといった暗さのない詩情の世界があり、時にダイナミズムな演奏の加味された作品といった方が良いかもしれない。彼らのオリジナリティ重視の曲展開で、主力のピアノの音は素晴らしいクリアな音が聴ける。またベース、ドラムスもサポートというよりはそれぞれをしっかり主張しているし、録音は現代風で三者しっかり聴きとれるリアルさがあって、かなり緻密感のあるインタープレイが十分楽しめるところにある。
M1."Peace Please"は、重厚なベースのアルコ奏法に乗ってピアノが明快なテンポで、なんとなく親しみやすい美しいメロディーだ。シンバル音も繊細で美しい。短い序奏。
M2."Out For A Walk " 牧歌的な世界に躍動感と開放感と。
M3."Flying Kite " 空を飛行する凧(タコ)?、鳶(トビ)? 、緊張感というより明るい溌溂の快調テンポ。
M4."Turborelax" 静かに落ち着いてゆったりと牧歌的広い空間の安定感。
M5."Moving Forward " ドラムスの快テンポと追従するピアノ、ベース。
M6."Leaving Home " 旅立ちなのだろうか、しかし明るい活発な展開。
M7."Siv och Gunne" めずらしく少々内向的で思索的。しかしそれほど暗さはない。
M8." Life Goes On" やはり究極の締めも朗々としている。
全体的には、内向的でなく開放的・牧歌的なかなり自然の中での明るい人間的営みが演じられているムードだ。不安感がなく陰影もなく躍動感のある清々しい様は、まさに正攻法の世界の演奏。まあ人間謳歌的で若干張り合いがないと言えば言えないこともない。
こんな情景は明るい春向きで、しかもタイトルの"Moving Forward"というのも今頃にピッタリだ。
演奏は、ドラムスの活動も繊細さからややスリリングなところまで演じて、ピアノのオーソドックスな流れに色をつける。ベースとピアノのユニゾン、ハーモニーも堂に入っていて聴きやすい。
なんとなく優等生的な世界であった。
(評価)
□ 曲・演奏 85/100
□ 録音 88/100
(試聴)
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