「ジャズ批評」ジャズオーディオ・ディスク大賞2022の感想
相変わらずの茶番だが・・・でも面白かった
今年も例年のごとく当誌232号で「JAZZ AUDIO AWARD 2022」の発表が特集されている。私のような音楽的学問も無ければ技能もないが、いわゆるミュージックを聴くことを中心に愛している者としては、結構こうした番付記事は興味がそそられる。オーディオ雑誌などでは、同じように昨年発売された機器を中心に、評価をしてやはり順位を付けたりして一般ユーザーの興味を集めるのである。
さて、その「ジャズ批評」誌でのこの企画では、「ジャズオーディオ・ディスク大賞」として一年間にリリースされたアルバムを対象に、①インストゥメンタル部門、②ヴォーカル部門に分けて当誌の関係者を選考委員として投票によりそれぞれに順位を付けている。そしてその他③メロディー賞、④ジャケット賞、⑤特別賞、⑥ロスト・アンド・ファウンド賞が設けられている。
まず、ここでは①、②を中心に私の感想だ。
[総論] まず総論ですが・・・・
① インスト部門 金賞 Alessandro Galati / Portrait In Black And White (下左)
② ヴォーカル部門 金賞 Samara Joy / Linger Awhile (下右)
まぁ、順当なところですかね。
さて、毎年私が指摘している「評価基準」が曖昧なのは、まあしょうがないのでしょうかね?・・学問雑誌の評価ではないのだから。それでもこうした雑誌を見る者には、所謂、音楽に関しては好きでも素人というのが圧倒的に多いのでしょうから、これを見て高得点で聴いてなかったものがあれば何が良かったのかのポイントを知りたいところである。そしてCDなど購入して聴いてみようかとも思うきっかけにもなるでしょう。
"ジャズオーディオ"という表現なので、演奏だけでなく音の良さなどのオーディオ感覚の評価が入っているのは解るところ。しかしどうも評価ポイントが明瞭でない。例えば、音はそれほど高評価でなくても演奏が素晴らしければ、それも取り上げる要素であろう。従って私がいつも言っているように、最低のところ「演奏」と「音(録音、ミツクス、マスターリングなど)」ぐらいは分けての総合点評価を知りたいところだ(実際のところ「音」の評価も好みはいろいろでなかなか難しい)。その点が曖昧で"順位を付ける"というのは、茶番と言ってもしょうがないだろう。それでも私は決して否定しているわけでなく、こうして当誌を買って、毎年楽しんでいる素人ミュージック愛好者である事を知ってほしい。
具体的には、個々の審査委員も「オーディオディスク」というところに、いろいろな見方をしているようだ。
まず審査委員長の後藤誠一氏(右)だが、"演奏も録音も"と書いているところをみると、私の指摘した2面を中心に評価しているようだが、白澤茂稔氏は、面白いことに"ライブ演奏のように汗が飛び散り躍動感あふれたきらきら輝くような音が感じられる盤"と表現し"何を求めるか"は課題としている。寺島靖国氏は"オーディオ誌とジャズ誌"を区別して考えているようだし、林正儀氏は"オーディオグレード"と表現する点を意識しているようだ。又日比野真氏は"情熱、哀愁、高音質"という表現、更に藤田嘉明氏の"録音からミキシング、マスタリングにジャズ度"という表現が面白い。今回から参加の後藤啓太氏は"音質、メロディー、テクニック"というポイントを取り敢えず挙げている。各氏の考え方もそれぞれだ。
さてそこで、各自の評価はよいが、委員全体で"順位を付ける"となると若干問題が派生する。
審査委員長の後藤誠一氏は医学博士(科学者)ですから、少なくとも評価法は解っているでしょう。"演奏も録音も"と書いているところをみると、やはり両面からの評価をしているようだ。しかし選考委員各自考え方が少しづつ異なっている中で、基準を明快にしないこの曖昧な評価法にて順位をつけている事に疑問を持たないというところは、ちょっとナサケナイ。
更に問題点は、実は選考委員の中で、アルバムによっては点数を入れられない者もいるルールのようで(例えば、寺島靖国氏はアルバムリリース側として自己の関係アルバムには点数が入れられない為、0点だが(これも本来は空欄にすべき)、そんな状況下で単純に集計した点数で比較している非科学性=母数の違ったものを集計して比較)、その不自然に気が付かずにいる。それは総評で金賞と銀賞の差が"わずか1点差で"と僅少差を強調している論調に明白、仮に寺島氏が点数が入れられる立場なら、11点差になった可能性もあることに気づいていない(更に6位は上位に上がる可能性も)。これを完全無視しているんですね。これはほんとにナサケナイ(金賞と6位などは8人の合計点、銀から5位などは9人の合計点だ)。・・・ちょっとキツイことを書いたかなぁ・・・、でもこんな私の指摘も、"充実への期待から"のあくまでも"建設的意味での意見"として聴いてほしいです。
それはそうとして、この「ジャズオーディオ・ディスク大賞」では、「審査委員の総評」の個人的なものが面白いですね。又「MY BEST JAZZ ALBUM2022」もそれぞれの立場でのアルバム評価がリアルでやっぱり面白い。私には納得できる評価と全く異なった評価とがみられて、その違いも興味深いです。更に知らなかったものを知る事も多々で参考になります。
◆今回私が聴いてなかったものとして「インストゥメンタル部門」興味深く注目したものとして・・・
① Mario Laginha 「Jangada」(上左) 24位
日比野真氏推薦 どこか瞑想性を誘う計算された緻密な演奏、
17分に及ぶ曲演奏は圧巻
② Luca Poletti Trio 「Colors」(上左から2番目) 15位
後藤啓太氏推薦 ピアノ中心のスウィンギーなフリー・ジャズ
③ Subconscious Trio 「Water Shapes」(上左から3番目) 18位
白澤茂稔氏推薦 女性3人のピアノ・トリオ、直感的でエネルギッシュ
④ Wajdi Riahi Trio 「Mhamdeya」(上右) 36位
後藤啓太氏推薦 リズムカルで・・・人生の物語
◆そして今回完全に聴き落としていたアルバムを発見(↓)。
日比野、藤田、寺島各氏に感謝です。
⑤ Rotwelsch 「Die Welt Hat Das Genialste Streben」 (ジャケも面白い→)
Unit Records / Import / UTR5049 / 2022
Philipp Maria Rosenberg (p) Florian Kolb (b)
Lucas Johnson (ds)
チューリッヒ出身のPhilipp Maria Rosenberg(P)率いる新トリオ。ユーロ、ロマンチシズムですかね。
(Tracklist)
1. Die Welt Hat Das Genialste Streben
2. Schwarze Ninetta
3. Ich Knüpfe Manche Zarte Bande
4. Wenn Der Mund Schweigt
5. O Mädchen, mein Mädchen
6. Ebben, Ne Andrò Lontana
7. Variation Of A Theme By Anton Diabelli
8. O, Dass Ich Doch Ein Räuber Wäre
9. Du Bist Die Welt Für Mich
(試聴) Rotwelsch / Die welt hat das genialste streben
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コメント
よく知らないことには口を出さないのが鉄則(笑)
この試聴は面白かったです、楽しめました。
投稿: iwamoto | 2023年3月 1日 (水) 15時32分
毎年の事ながら本当に同感ですね。
好みが同じと言う事もありますが、私的にはこのブログが一番参考にしております。今日、紹介の聞き落としていたアルバムも早速、購入致しました(笑)
最近、ギターに浮気しすぎて、ピアノトリオが疎かになっておりました。
投稿: ランス | 2023年3月 1日 (水) 20時02分
iwamoto様
コメント有り難うございます
まあ、おっしゃるとおりですね・・・(笑)
しかし、いまやユーロ系のジャズが魅力がありますが、日本人にも向いているんでしょうかね。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2023年3月 2日 (木) 08時20分
ランス様
おはようございます、コメント有難うございます。
そうですか・・・ギターもの、この線ももう少しこうした雑誌で話題になっても良いと思いますね。
私は、ちょっとピアノ・トリオものに偏っていますが、今年は少し幅を広げたいとも思っているところでした。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2023年3月 2日 (木) 08時25分