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2023年4月27日 (木)

フラッド・メルドー Brad Mehldau 「SOLO CONCERT AT BOZAR BRUSSELS 2023」

つい先月のブリュッセル(ヘルギー)でのソロ・ライブの様子が

<Jazz>

① Brad Mehldau 「SOLO CONCERT AT BOZAR BRUSSELS 2023」
STARGAZER'S FILE / SGF-00238 / 2023

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Recorded at Salle Henry Le Boeuf, Bozar, Brussels, Belgium, March 25th 2023 : Soundboard Recording

(参考) 
BRAD MEHLDAU  「BRUSSELES 2023」

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(こちらは2曲少ない)

  このところ2022年から継続的に各地で行われているブラッド・メルドーのソロ・コンサート盤。まだ1ケ月もたたないのにこうして2023年3月25日ベルギー、ブリュッセルにおけるソロ・ライブ録音盤が手に入った(上のように2枚のCDあり)。現地ラジオ・オンエアー・マスターのサウンドボード音源に、最新リマスタリングも施し1時間34分にわたりほぼフル収録したもの。

Writingw  このところもソロ・ライブ盤『Your Mother Should Know』がオフィシャルにリリースされたが、ビートルス・カバーを売り物にしてのもの。しかし実際のライブではラディオヘッド、デヴィット・ボウイなどの曲とうまくミックスされて演じられることが多く、そんな意味でも曲と曲のつなぎは大事で、近年のライブ録音のブートものは、その点パーフェクトでオフィシャル盤に劣らずの好録音盤として手に入り(『PLAY THE BEATLES MORE』(SGF-00127)など)納得。私としてはラディオヘッドの曲などの方が味わい深く好きで、それによりビートルズの曲を生かして聴かせている。その一環として現在もソロ・コンサートを続けているメルドーのプレイを、ここに楽しめるのだからうれしい。

 彼もある意味では従来のピアノ・トリオでは壁に当たっているのか、はたまた新展開に意欲的なのか・・その点は詳しくないが、どうもスタジオ・オフィシャル盤は凝りすぎの感があってあまり納得して聴いていない。むしろ私的にはこうしたライブでオーディエンスとのなんとなく繋がりをもって演じてくれるメルドーに親近感を持てるのである。

① Brad Mehldau 「SOLO CONCERT AT BOZAR BRUSSELS 2023」 
DISC 1 :-main set-
1. JOHN BOY
2. THE FALCON WILL FLY AGAIN
3. KARMA POLICE
4. Untitled
5. WALZ FOR J.B.
6. LA MEMOIRE ET LA MER
7. SHE SAID SHE SAID
8. HERE, THERE AND EVERYWHERE
9. IF I NEEDED SOMEONE
10. REMEMBERING BEFORE ALL THIS
11. UNCERTAINTY - SAINT ANNES REEL
12. HEY JOE

DISC 2 : -encore-
1. LIFE ON MARS
2. HERE'S THAT RAINY DAY
3. DON'T THINK TWICE, IT'S ALLRIGHT
4. HOW LONG HAS THIS BEEN GOING ON

 相変わらず、近年おなじみのロック・ナンバーをモチーフとしている。今回も中盤のビートルズのカバーを含め、レディオヘッドにボウイ、そしてジミヘンにもちろん自己オリジナルまで多様な楽曲を選んで楽しませてくれる。

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 Disc 1

 M1." JOHN BOY " やさしく、そしてM2."THE FALCON WILL FLY AGAIN " は彼自身のアルバム「High way rider」からのスタート、そしていつも通りM3." KARMA POLICE"ラディオヘッドの曲がメロデテアスに登場。
 M5."WALZ FOR J.B." 昔の彼のソロ、そしてM6."LA MEMOIRE ET LA MER"シャンソンまでも登場。 
 M7."SHE SAID SHE SAID"とビートルズの登場へと、M8."HERE, THERE AND EVERYWHERE "はラブソング、 M9."IF I NEEDED SOMEONE 恋をするなら"など続く。
 最後はジミ・ヘンの演奏で有名なM12." HEY JOE"十数分にわたるかなりの熱演だ。

  Disc 2  
 M1."LIFE ON MARS"しっとりとデヴッドホゥイの曲、 M2."HERE'S THAT RAINY DAY" 昔のミュージカルの曲が登場。 
   M3."DON'T THINK TWICE, IT'S ALLRIGHT "  ボブ・ディランの曲"くよくよするな"ですね。
 M4."HOW LONG HAS THIS BEEN GOING ON" 定番がつづきますね ガーシュインの曲、懐かしのオードリー・ヘップバーンを思い出させ締める。

 このところのメルドーの活動を見ていると、ロックをベースとしたこうしたソロ演奏活動に彼の歴史を描きながら、更にロックよりのジャズ・スタンダードを演じている。彼にとってはちょっと古すぎると思う曲もあるが、それでもそんなところにかなり充実感を感じているのではと推測するのだ。こうゆう時期を超えて、まあ又ジャズ・ピアノ・トリオに新展開してくれるだろうと待ちながら、こうしたオフィシャルではなかなか聴けないソロ演奏を楽しんでいる。

(評価)
□ 編曲・演奏  88/100
□ 録音     87/100

(参考試聴) この日のライブもののは見当たらないので参考までに ↓

 

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2023年4月23日 (日)

レベッカ・バッケン Rebekka Bakken 「Always On My Mind」

常に心にある曲を歌い上げるところはもうベテランの境地


<Jazz,adult contemporary>

Rebekka Bakken 「Always On My Mind」
masterworks / Euro / 19658737682 / 2023

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Bass – Tor Egil Kreken
Drums – Rune Arnesen
Guitar – Eivind Aarset
Keyboards, Vocals – Rebekka Bakken
Piano, Keyboards – Torjus Vierli
Piano, Organ – Jørn Øien


  ノルウェー出身の女性ジャズシンガー=Rebekka Bakken(レベッカ・バッケン)のニュー・アルバム『Always On My Mind』が久々に登場だ。このアルバムは、アニー・レノックス、ボブ・ディラン、ピーター・ガブリエル、エルトン・ジョン、ビートルズ、ランディ・ニューマン、ニック・ケイヴ他、彼女の"人生のサウンドトラック"と表現された過去の彼女の基盤となる曲群をノルウェーのセッションミュージシャンとの競演で収録した所謂カバー・アルバム。
Rebekkabakkenw  彼女は1970年生まれで、53歳、いよいよ充実している。ジャズ・シンガーと言われているも、私から見てのところそうは思っていない。ポップやロックっぽかったり、むしろフォーク、カントリーの味、R&B、ファンクの色などと彼女独特のアダルトコンテンポラリーと言いたくなる世界である。
 今回は、そんな中でも彼女の音楽人生の歴史的回顧を歌いあげていて、かなり大人っぽく仕上げていて魅力がある。

 彼女はこのアルバムについて「これらの曲は"常に私の心に"あり、私自身の作詞作曲に影響を与えました。それらは「私の人生のサウンドトラック」であり、それらのいくつかは私の子供の頃から固執しています。私はこれらの曲のいくつかを聴いて自分の声を発達させました、そしてそれらを私のやり方で再解釈するのにちょうどいいタイミングです」とレベッカ・バッケンは言っている。そんな気持ちと心を感じ取って聴くと味がでるというところだ。

 

(Tracklist)

1. Little Rebel (Casino Steel, Andrew Matheson)
2. Red Right Hand (Nick Cave, Michael Harvey, Thomas Wydler)
3. Break My Heart Again (Finneas O´Connell)
4. Why (Annie Lennox, Dave Stewart)
5. Vincent (Starry Starry Night) (Don McLean)
6. Here Comes The Flood (Peter Gabriel)
7. We Don’t Eat (James Vincent McMorrow)
8. Louisiana 1927 (Randy Newman)
9. Love Hurts (Boudleaux Bryant)
10. Where Teardrops Fall (Bob Dylan)
11. We All Fall In Love Sometimes (Elton John, Bernie Taupin)
12. Brand New Angel (Gregory Dane Brown)
13. (Everything I do) I Do It For You (Bryan Adams, Michael Kamen, Robert John Lange)
14. Yesterday (John Lennon, Paul McCartney)
15. It Must Have Been Love (Per Gessle)

 世界のポピュラー、ジャズ系音楽の歴史を聴くような構成だ。その中身はその音楽の質の高さとかスキルの重要性にアプローチしての自分の回答のような充実ぶりだ

 M2."Red Right Hand " Alternative RockのNick Cave & The Bad Seedsの曲。いっやー、ノルウェーのアイヴィン・オールセットのギター、ベース、ドラムスの重低音を引っ提げてのヴォーカルが、とにかくかっこいい展開。
 M3."Break My Heart Again "  おお新世代フィニアス・オコンネルの曲が、今度はしっとりと、心を歌い上げる。
 M4."Why"  英国社会運動家でもあるアニー・レノックスの曲、カントリーっぽく、見事な歌い上げ。
 M6."Here Comes The Flood" ピーター・ガブリエルを超えて、しっとりと歌い、盛り上がりは更に素晴らしく感動もの。
 M7."We don't eat" アイルランドのスピリチャルな歌のジェイムス・ヴィンセント・マックモローの曲、ソウルっぽくカントリーっぽく中低音のヴォーカルで響いてくる。
 M10."Where Teardrops Fall" ボブ・ディランのちょっとセンチな聖書とのかかわりのある曲。これを取り上げたかと彼女を見直す。
   M14."Yesterday " やっぱりビートルズのこれが出ないとおさまらないのでしょうね。しかしほかの曲と比べると意外にサラっとこなしていると思ったが、よく聴くとなかなか情感も溢れている。 

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 とにかく彼女は歌がうまい、低音部はややハスキーで説得力あり、中高音部にゆくと意外に透明感のある声が伸びてゆく。これで過去にも魅了してきたわけだが、前作『Things You Leave Behind』(2018)のほうがややジャズ寄りにも聴こえるが、今作の幅広さとバッケン節は又違った意味でコンテンポラリーさが濃く、そうでありながら懐かしさも訴えてきて広くカヴァーするところ聴き応え十分。
 昔ロックが開花した当時、特にビートルズはどうってことなくむしろC.C.Rに惚れ込んだ私にとっては何となく懐かしさも感ずる。

 今アルバム、彼女の実力にそったノルウェーの最高のスタジオミュージシャンとの共演も実現して、ギタリストのエイヴィンド・アーセットの音との交わりも見事で、ヨーン・オイエンとトルユス・ヴィエリのオルガンとシンセサイザーが巧みにオーケストレーションし、そこにピアノコードが生き生き旋律を聴かせる。ルーン・アルネセンのゆったりとしたドラムビートが心地よい。そこにレベッカ・バッケンのソウルフルな声のノリが訴えてくる。

 久々に彼女のアルバム登場であったが、これは彼女の歌手人生の回顧でもあり、これで一締めなんてことにならず、更に次への一歩であってほしいと願うところだ。

(評価)
□ 編曲・歌    88/100
□ 録音      87/100

(試聴)

*

 

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2023年4月18日 (火)

ギャビ・アルトマン Gabi Hartmann 「GABI HARTMANN」

ワールド・ミュージックに通じたジャズ・シンガーの登場
~ 自然体のヴォーカルが魅力


<Jazz>

Gabi Hartmann 「GABI HARTMANN」
Masterworks/ Import / 19658721872 / 2023

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Gabi Hartmann (vocal, guitar)
Julian Lage (guitar on 02)
Ghandi Adam (flute on 06)

  凄いですね、自らの名前がアルバム・タイトルであるフランス・パリ出身の新鋭女性ジャズ・シンガー(作曲家、ギターはじめマルチプレイヤー)=ギャビ・アルトマンGabi Hartmannのデビュー・フル・アルバムである。
 彼女は幼い頃からジャズとワールドミュージックに興味を持ち、パリで哲学と政治を学んだ後20歳になるとリオデジャネイロに渡りサンバとボサノバに没頭。その後ロンドンに移り民族音楽学を学びながら南アフリカ、ギニア、ポルトガルなど世界各国の音楽への旅へと出かけ、地元フランスの戻るとジャズを学びながらの音楽活動を展開という逸材。

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 フランス、アメリカ、ブラジル、アフリカ、ポルトガルといった多彩な音楽を知的な感性で磨き上げてきていて、既にNYで知り合った名プロデューサーのジェシー・ハリスJesse Harrisとともに2021年5曲のEPアルバム『Always Seems to Get Things Wrong』をリリース。これは彼女が今まで体験した様々な音楽が凝縮され、アメリカンルーツポップのエッセンスが注ぎ込まれた好評作品だった。
 そしてここに2023年1月には待望の1stセルフタイトルのフル・アルバム『Gabi Hartmann』をリリースしたという経過だ。とにかく英語・フランス語・ポルトガル語を巧みに使いこなし、ジャズ、シャンソンを基調とする楽曲に、これまで彼女自身が世界中を旅して体験してきたファドやボサ・ノヴァ、民族音楽なども詰め込まれていての作品。これもジェシー・ハリスのセンスが込められていて、なんとも身近なワールドミュージック的なジャズになった。

(Tracklist)

01. Buzzing Bee (Gabi's vo-cl-elg-p-b-ds-female chorus)
02. People Tell Me / Les Gens Me Disent (feat. Julian Lage) (Gabi's vo-elg-elg-marimba or xylophone?-b-ds-female?chorus)
03. Lullaby (Gabi's vo-elg/acg-key;celeste?elp?-b-per-backing female vo)
04. Une Errante Sur La Terre (Gabi's vo-cl/bcl-acg-p-b-ds)
05. Mille Rivages (Gabi's vo-elg/acg-key-b-ds-female chorus)
06. L'Amour Incompris / Azza Fi Hawak (feat. Ghandi Adam) (Gabi's vo-fl-acg-male vo)
07. I'll Tell You Something (Gabi's vo-fl-acg-org-b-per/ds-backing female vo)
08. Lonely (Gabi's vo-elg-key/org-b-female chorus)
09. Maladie D'Amour (Gabi's vo-ts-acg/elg-key-b-ds/per-female chorus)
10. Nos Contradictions (Gabi's vo-elg/acg-org/key-b-per/ds-female chorus-male voice-female voice)
11. Baby (Gabi's vo-ts...possibly as?-elg-key-b-ds-female chorus)
12. Coração Transparente (Gabi's vo-acg-strange noise)
13. La Mer (Gabi's vo-key-b-ds)
14. The End - Meditation (solo piano ; instrumental)

 収録曲の多くは彼女のオリジナル、あるいはジェシー・ハリスとの共作。英語とフランス語で歌われる自然体のヴォーカルや控えめなギターのサウンドを中心に、落ち着きを感じさせるが引きつける絶妙のアレンジで聴かせる。彼女の歌と音楽は明かに“ジャズ”だが、ポルトガルのファドやブラジルのボサノヴァの影も見えるし、なんといっても実に“フランス的”なのだ。このように世界のどこでもないポジションにあるようで、実際はパリ的な粋なところにある。

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 まずは、パリの陽気が滲み出るご機嫌なM1." Buzzing Bee"、最初聴いた時Madeleine Peyrouxが頭に浮かんだ。端麗クール・ヴォイスによる、自然体調子で優しく丁寧に語りかけてくる感じのソフトでテンダーな歌唱、ポップでありながら中身はちょっとセンチメンタルなところがあって、一方リラクゼーション・ムードも溢れている。独特で面白い。
 M2."People Tell Me / Les Gens Me Disent " ここにはギタリストのジュリアン・ラージが参加したジェシー・ハリス曲のカバーで、ムードはガラッと変わって、浮遊感のギターでセンチメンタルな歌そのものが、いやに魅力的。
 M3."Lullaby" これも又々変化して、今度はブラジル・ムード。更にM4."Une Errante Sur La Terre "は、いにしえのジャズ・ヴォーカルの哀愁の世界、なんなく懐かしい。
 ・・・・いやはや、抵抗なく多彩な曲の展開で圧巻。しかし一貫してインティメイト&ハートウォーミングな和気や憩いのムード。どこかおしゃれでソフィスティケートな居心地よさを展開。これはジェーシー・ハリスも惚れ込むわけだ。
 M6."L'Amour Incompris"は、フルート(Gandi Adam)が参加して、更に目先が変わって印象付ける。
 M8." Lonely "、M11." Baby"は、孤独な自分を歌い上げているようだが、暗くはない。
 M9."Maladie D'Amour" 再びブラジル世界が気分を更に休めてくれる。
 M13."La Mer" Keyが印象深く流れ、真摯なヴォーカル世界が心を打つ。最後の曲はインスト曲で締める。
 

  声の質も柔らかで、歌そのものの全体のムードに気品があって、リラクレーション・ムードが良いですね。どこまでも抵抗なく流れに身を任せるナチュラルな歌い回しがしっとりと清楚可憐さが満ち満ちている。サラリとちょっと淡泊なところがむしろ印象を高める不思議さがある。
 なかなか経験豊富な人生の歌も聴かせてくれるところも魅力で、自分自身の孤独が展望に繋がるムードをもつているところが好感。久々にインパクトのあるデビュー・アルバムであった。

(評価)
□ 歌・曲・演奏   90/100
□ 録音       87/100

(視聴)

*

 

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2023年4月13日 (木)

ラーシュ・ダニエルソンの異色作 Lars Danielsson 「Symphonized」

ジャズ・カルテットのクラシック・オーケストラとの競演

<Alternative Jazz,  Classic>

Lars Danielsson Liberetto「Symphonized」
ACT MUSIC / Import / ACT6023 / 2023

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Lars Danielsson(contrabass & cello)
Grégory Privat(piano)
Magnus Öström(drums & percussion)
John Parricelli(guitar)
Gothenburg Symphony Orchestra conducted by Peter Nordahl
Carolina Grinne(english horn / oboe d´amore)
Guests:
Arve Henriksen(trumpet on "Nikita‘s Dream" and "Yes to You")
Paolo Fresu(trumpet on "Africa" and "Scherzo")

Recorded by Nilento Studio at Gothenburg Concert Hall
Additional Recording by Bo Savik at Tia Dia Music Studios,Sweden

  スウェーデンが誇るベーシストのラーシュ・ダニエルソン(Lars Danielsson)率いるスーパーグループ「Liberettoリベレット」、前作アルバム『cloudland』(2021)はここでも取り上げたが、熟成されたカルテットのアンサンブルと北欧ジャズの新たな可能性が見事な融合を魅せるエレガンスとリリシズム溢れる4作目であったが、一年半ぶりの5作目の登場だ。今作は、ダニエルソン が、グレゴリー・プリヴァ(GregoryPrivat)(p)、マグヌス・オストロム(Magnus Ostrom)(ds,ex.E.S.T.)、ジョン・パリチェッリ(John Parricelli) (g)といった、現在のジャズシーンで最右翼の名手たちを揃えて10年以上となってのここに、なんとクラシックの伝統とジャズを融合させた新しいジャンルを創り出した。

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 もともとこの2012からのカルテットのグループ名「Liberotto」 とは、作曲の構成法・クラシック的性質・オペラに於ける叙情主義を示す「リブレットLibrretto」と、ジャズの基本原則でもある即興の"自由"を表すラテン語「リベLiber」を合わせた造語ということだが、めざすところクラシック音楽とジャズとが、ダニエルソンの音楽キャリアで決定付ける2 つの重要なポイントであることを如実に示していた。初代のピアニストとしてアルメニア生まれの天才ティグラン・ハマシアン(Tigran Hamasyan)を、ドラムスにはe.s.t.のマグヌス・オストロムを迎えるなど、国や地域性を超えクラシック音楽とジャズを融合させた作品は高く評価された。そしてついになんとオーケストラとの競演のかたちでここに新たな局面を実現したという事になる。

(Tracklist)

Larsdanielsson-by-jan-w Disc 1
1.Liberetto 5:03
2.Passacaglia 5:39
3.Africa 6:59
4.Sacred Mind 5:19
5.Lviv 4:47
6.Nikita‘s Dream 5:41
7.The Fifth Grade 8:20
8.Yes To You 4:04
Disc 2
1.I Affettuos 7:26
2.II.Elegi 7:50
3.Intermedium 2:08
4.III. Le Bagatelle 13:37
5.IV. Scherzo 7:55

  [Disc 1]は、もともとが究極的に美しいところを演ずるLiberettoだが、今回のオーケストラ・アレンジでそのサウンドはより深みを増した姿を披露し、選曲はダニエルソン自身の曲を彼自身により編曲したもので、『Liberetto』(2012年)からM1."Liberetto"、『Liberetto II』(2014年)からM2."Passacaglia"M3."Africa"、『Liberetto III』(2017年)からM5."Lviv"、『Cloudland』(2021年)からM6."Nikita’s Dream"など人気曲が並んでいる。
 [Disc 2]は今作のための書き下ろしの組曲が収録されており、ソリストとしてイングリッシュ・ホルン/オーボエ・ダモーレ奏者のカロリーナ・グリンネ(Carolina Grinne)をフィーチュアしている。

843dcfcd2437cedcw   いずれにしてもミュージシャンは常に何かを求めているというパターンが多いが、ダニエルソンもおそらくその一人という事であろう、この従来からのカルテットの演奏に飽き足らず、一歩又新しい試みを企てたという事になろう。彼の目指しているところの一つには、もともとのクラシックの世界があったというか、今もあるということだと思う。今回の競演オーケストラはスウェーデンの国立エーテボリ交響楽団Gothenburg Symphony Orchestra(↓) で Peter Nordahl (→)の指揮によるもの。

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 しかしここまで本格的クラシック世界を描くとは思っていなかったのだが、M4."Sacred Mind"は完全にオーケストラ演奏である。 
   全体に彼らのカルテット"リベレット"の演奏とオーケストラとの関係もいろいろな取り合わせがあるように思うが、M6."Nikita's Dream"ではピアノと管楽器、ベースとストリングスのユニゾンが不思議な美を描いて、成程と狙いがみえてくる。又協奏曲的手法による彼らのカルテットのオーケストラとの交わりもなかなか斬新でのめり込める。

 又、Disc.2に聴けるようにホルンやオーボエの美しさとストリングスの魅力に、彼のジャズ・ベースの響きが極めて新鮮にも聴こえて、又ドラムスが介入する姿なども、いかにも一つのジャンルを築いていることは称賛に値する。更に、オーケストラの描く荘厳な世界のジャズとの関わり合いを追求する姿なども垣間見え、二重協奏曲のスタイルを極めたことは興味深い試みであった。

   しかしジャズの世界において、ジャズ愛好家というものの求めるところ、メンバーそれぞれの演奏者の即興感覚とアドリブの楽しさとトリオやカルテットという小人数の描くところに独特な味わいを求めるとすると、大編成となるオーケストラとの競演では、ある意味では魅力が薄れてしまう事にもなりかねない。従って時にこのような異色の世界との交わりも良いが、もし仮にこのスタイルで進んでゆくと、果たして今までのファンがそのまま継続して支えてくれるかどうか・・・ふと、そんなことを考えながら鑑賞した次第だ。
 今は、どの音楽分野でもある過去に築かれた世界からの脱皮を試みて、"ポストクラシック"とか"オルタナティブ・ジャズ"とか試行錯誤があろうが、それぞれのミュージックの本質的な部分はやはり失わないことがある意味では大切なような気もする。

 いずれにしても、やはりダニエルソンの世界は、クラシックに留まらず各種ミュージックの感動的な世界を描こうとしているところがよく理解できたアルバムであった。

(評価)
□ 曲・編曲・演奏   88/100 
□ 録音        88/100

(試聴)

*

 

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2023年4月 8日 (土)

ストラウク、サルク、ストレンジャー Loco Cello「TANGOROM」

チェロの美とギターのマヌーシュの香りの融合が描く世界は素晴らしかった

<Jazz>

Loco Cello「TANGOROM : Abbaye de Noirlac」
Well Done Somone / France / AD6767c /2023

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Samuel Strouk (guitar)
François Salque (cello except 05, 11)
Jérémie Arranger (bass except 07, 09, 10)

Adrien Moignard (guitar on 01, 03, 04, 05, 11)
Biréli Lagrène (guitar on 02, 06)

  Loco Celloというのはギター、チェロ、ベースから成るフランスのコンテンポラリー・トリオ・プロジェクト(Samuel Strouk:g, François Salque:cello, Jérémie Arranger:b) で、今回はその上に更なる2人のギタリスト(Adrien Moignard , Biréli Lagrène )をゲストに迎えつつ作成したアルバムの登場だ
 もともとマヌーシュ・ジャズ的な民族性豊かな音楽を展開するとみて私はお付き合いを試みたところだ。それもそもそもギターを中心とした展開とふんでいたが、Loco Celloと名前を付けるだけあって、なんとチェロの流れが大きい役割を果たしているし、ベースの低音の響きが締めての展開が聴ける。 

16103119249w  まずギターのSamuel Stroukサミュエル・ストラウク(1980年生まれ →)は、フランス南部のモンペリエにてクラシックギターと室内楽の「パリ高等音楽院」を卒業し、その後即興音楽と伝統音楽にエネルギーを注いでいる。作曲家、編曲家、ギタリスト、通訳、音楽、芸術監督としての才能を必要とする多くのプロジェクトに参加し、世界中のジャズパーソナリティーと共演し作品を提供している。私の印象としては民族音楽・伝統音楽の探求派ですね。マヌーシュ・ジャズの道を確実にしている。

05cf109d5674a723d8f45c71d5f80b115d2ba0ca  更に注目はチェロのFrançois Salqueフランソワ・サルク(フランス →)で、名前は聞いている人も多いと思うが、私はチェロの演奏を聴くのは好きだが、詳しくないので調べると、イエール大学、及びパリ音楽院のディプロム(資格)取得。各種国際コンクールにて若い時より数々の賞、同時に特別賞を獲得。現代クラシック・チェロリストとしての活動が超一流。現在ローザンヌ高等音楽院とパリ音楽院で教鞭をとっていると。
 彼は諸々のクラシック・ミュージシャンと室内楽を演奏し録音しているし、又2000年から2004年までイザイ弦楽四重奏団で演奏し、多くの作曲家の演奏に通じている。亡くなったフランスの作曲家・名指揮者のピエール・ブーレーズに、「彼の繊細さと優雅さのある演奏」、または「桁外れのカリスマ」と賞賛される。すでに70カ国での演奏、そして数々の録音が残されている。
 ジャズ部門での功績も高評価で、現代作曲家の作品にも熱心にアプローチし、現代音楽と伝統音楽の融合にも力を入れている。彼の音楽性、そしてテクニック、電撃的な演奏は、稀に見るチェリストとして音楽界では一目おかれている存在であると。

(参考) 今回、私が頭に浮かんだ「マヌーシュ・ジャズ」(又はマヌーシュ・スウィング・ジプシースウィング)とは、ギタリストであるジャンゴ・ラインハルト(ベルギー人)が試みて作り上げられた音楽形式で、ロマ音楽とスウィング・ジャズの融合タイプのもの。そもそも「マヌーシュ」とはフランス北部やベルギーで生活をしているロマ民族の人を指す。英語圏では「ジプシー」と呼ばれているが偏見とか差別的な意味を含むため、人間という意味の「ロマ」を使うようになった。
 マヌーシュ・ジャズではソロをとるギターとそのサイドで伴奏をするギター数人、ヴァイオリンやクラリネットが入る編成が基礎にあって、その他アコーディオンやピアノ、金管楽器・打楽器など基本的なスタイルにこだわらず取り入れているアーティストも多数いると。短いテーマ(曲のメロディ)を演奏した後はアドリブによるソロを順番に行い、最終的にもういちどテーマを演奏し、エンディングという構成が基本らしい。

(Tracklist)

Lococellotrio5lyodow 01. Oblivion (feat. Adrien Moignard) 4:30
02. Armaguedon (feat. Biréli Lagrène) 8:07
03. Vuelvo Al Sur (feat. Adrien Moignard) 6:50
04. Upper East (feat. Adrien Moignard) 5:23
05. Clair De Lune (feat. Adrien Moignard) 3:53
06. Trucmuche (feat. Biréli Lagrène) 4:03
07. Csardas, Pt.1 4:15
08. Csardas, Pt.2 3:15
09. Prière 3:47 
10. Auf Einer Burg 3:22 
11. Tears (feat. Adrien Moignard) 2:28 

 このトリオLOCO CELLOは、チェロとギターとベースのトリオだが、M1.-M7.までとM11.の8曲はビエリ・ラグレーンとアンドレア・ムワニャールのギターが曲によってどちらかが加わる。従って編成は2ギター、1チェロ、1ベースのカルテット・スタイルだ。ただしM7-M10の4曲は、このトリオで演奏されている。
   マヌーシュ・ジャズがやっぱり基調としているんでしょうね、ただスペイン系民族音楽も頭に浮かぶところもあって、ジプシー奏法の香りのそのエキゾティックさはクリアなギターの音色でぐっと現代的に優しくロマンティックに迫ってくるところに、何とも美しいチェロの響きにうっとりの世界である。しかしそれに止まらず現代コンテンポラリーな世界が、なんと時にはチェロも含めてロック調まで出現する離れ業に圧倒されるのである。そのあたりはおそらくこの分野でも新しい試みとして評価されるところではないだろうか。

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   M1."Oblivion "は、あの新タンゴのアストル・ピアヒラの曲のようだが、とにかく美しいギターがテーマを弾いてチェロが次のテーマで柔らかく入ってくるなんとも気持ちの休まるうっとりのよい曲
   M2."Armaguedon" は、2ギターでスタートして、おもむろに加わるチェロはゆったりした主題を弾き、この美しさにもうっとり。中盤から転調してギターの合奏の迫力。チェロも高音よりで激しく展開、一大絵巻。
 M3." Vuelvo Al Sur"も、哀愁ある世界で迫ってくるチェロの流れが心地よい。静かなギターをバツクにチェロが歌い上げ、続いてギターが旋律を奏でる
   M4."Upper East" ストラウクのオリジナル曲で、どこか民族的でありながら現代調のギター展開
   M5."Clair De Lune"は、元祖ジャンゴ・ラインハルトの曲で2本のギターが美しく競演。
   M6."Trucmuche" 民族的ジプシー調のギターのテクニカルな演奏。さらにチェロもテクニカルな展開
 M7."Csardas, Pt.1" 現代調の民族色ある魅力的ギター・テクニック
   M8." Csardas, Pt.2"は転調して活発に チェロの早引きにギターがリズムを。
   M9."Prière" クラシックのエルネスト・ブロッホの曲らしい。これはチェロの旋律美がなかなか聴かせる。
   M10."Auf Einer Burg" トリオの味満開で、これまたチェロの美しさに痺れる。
   M11."Tears " 続くクラシック曲、ギターの美、ベースの色づけが納得。 

 とにかくこのマヌーシュ系のギター・ジャズにチェロがクラシカルな美から現代音楽の華々しさの色を添えた試みは、まさに現代音楽への一つの迫り方として、評価される点が高い作品であり、それが哀愁持って心に響いてくるのであるからたまらない。まさに傑作アルバムである。私にとっては今年の目玉作品。

(評価)
□  曲・演奏  95/100
□  録音    90/100

(試聴)

*

 

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2023年4月 3日 (月)

寺島靖国プレゼンツ 「For Jazz Vocal Fans Only Vol.6」

ジャズ・ヴォーカルは女性の独壇場

<Jazz>

Yasukuni Terashima Presents 「For Jazz Vocal Fans Only Vol.6」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1110 / 2023

598

 寺島靖国氏監修のジャズ・ヴォーカルのコンピレーション・アルバムだが、6巻目となってリリースされた。このジャズ・ヴォーカルの世界は、もう何年も女性の天下となって近年も相変わらずだが、やはり今年も全14曲全て女性ヴォーカルという結果だった。
 寺島氏のライナーでは、このジャズ・ヴォーカル集は、彼の注目した世界各国のレコード会社は関係なくしかもあまり耳にしたことのないヴォーカリストを近年のものに限って取り上げてという事のようだが、果たしてどんなものになったか注目してみてください。

(Tracklist)

1 The Old Country / Viktoria Tolstoy
2 I'm a Fool to Want You / Sarah Lenka
3 Beautiful Love / Anna Kolchina
4 Spring Will Be a Little Late This Year / Diana Panton
5 Histoire D'un Amour / Carin Lundin
6 What Is This Thing Called Love / Lisa Roti
7 Poor Butterfly / Peg Carrothers
8 Close Your Eyes / Ksenia Parkhatskaya
9 Alone Together / Johanna Linnea Jakobsson
10 Wild Is The Wind / Liane Carroll
11 Chez Laurette / Laura Anglade & Sam Kirmayer
12 Lili Marleen / Isabel Santol & Julian Joseph
13 Perfidia / Lauren Henderson
14 Wild Is The Wind / Lauren Henderson

 こんなところだが、結論的に私が聴いていたアルバムは丁度半分の7枚で、過去にこのブログで取り上げたのは3枚でした。しかしコロナ禍の為かその点は不明だが、このところ女性ヴォーカルものもちょっと下火であった印象だった。近年のものをと寺島氏は言っているが、意外に古いものも多いという印象だ。
 ジャズ・アルバムとしては、私も女性ヴォーカルものは結構聴く方だと思うが、このところの私の注目株というか、聴いてきたものは、もう誰もが知っているDiana Panton(下左), ちょっと本格派Viktolia Tolstoy, そしてAnna Kolchina(下左から2番目), Sarah Lenka。注目株としてLauren Henderson(下左から3番目)と最近のJohanna Linnea Jakobssonというところであり、ここでも紹介してきた。その他は殆ど聴いてこなかったわけで、確かに日本でそれほど聴かれていないヴォーカリストもさすが寺島靖国氏取り上げている。

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 とにかくヴォーカルものというのは、歌がうまくても声の質が気に入るかどうかなどと実力ばかりでないところと、好みの問題があってなかなか難しい。又このところ少々歴代の人気ヴォーカリストのアルバムが少なかったような気がする。コロナ・パンデミックで活動低下という事であったかどうか、そんな中でのコンピレーション・アルバムであった。

 私としてはM1."The Old Country "のViktolia Tolstoyは、人気と実力はそれなりだが、どうもあまり乗り気にならないのだが。
 M2."I'm a Fool to Want You"のフランス人のSarah Lenkaは興味があります。かって「Hush」(EMO121/2012)というアルバムをここで取り上げた、もう大分前だ。聴く者を引きつける。(2015.1.06)。
 又M3." Beautiful Love "のロシアのAnna Kolchinaはなかなか魅力的。彼女に関しては2018年に「Wild Is The Wind」(VHD01228/2017)を取り上げて高評価をした。
 M4."Spring Will Be a Little Late This Year "のカナダのDiana Pantonは、今や人気者というところだ、このアルバム「Blue」(MZCF1453/2022 下左)も最近ここで取り上げたが好評価の盤。
 M6."What Is This Thing Called Love "のLisa Roti (上右)は、彼女も聴いてこなかった歌手だが、曲を歌い込んでなかなかいいです。取り敢えず注目。
 

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 M5."Histoire D'un Amour"  Carin Lundinこれは知らなかったがなかなか魅力あり。
 M7."Poor Butterfly"のPeg Carrothersは素人っぽいところが良いと言えばいい。異色で興味が分かれそう。
 M8."Close Your Eyes " Ksenia Parkhatskayaは少々興味をもった
 M9."Alone Together " Johanna Linnea Jakobssonは、昨年ここでもアルバム「Alone Together」(DUATO112/2022 上中央)取り上げた新進気鋭アルト・サックス奏者・歌手で今後に期待。
 M10."Wild Is The Wind " Liane Carroll貫禄の魅力・・・聴いてこなかったのが不思議だ。
 M11."Chez Laurette"  フランスのLaura Anglade  知らなかった。少々興味持った。
 M12." Lili Marleen " Isabel Santol  なかなか旨いがどんな曲をこなしてきたか。
 M13."Perfidia",M14."Wild is the Wind" この Lauren Hendersonは、私の以前からの注目株で既に2回ここで取り上げてきた。なかなか不思議な魅力のある世界でこの「La Bruja」(CDB5609106462/2022 上右)は近作のアルバム。

 というところで、今回の「Vol.6」では私の一番のお勧めはLauren Hendersonですね。聴いてなかったLisa Roti、Laura Angladeは少々アプローチしてみたいと思った。いずれにしても女性ヴォーカルで占められた今回の「Vol.6」であり、男性陣はどうなっているのか、奮戦を期待したいところだ。

(評価)
□ 選曲  87/100
□ 音質  87/100

(試聴)
Lauren Henderson

*

Diana Panton

 

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