レベッカ・バッケン Rebekka Bakken 「Always On My Mind」
常に心にある曲を歌い上げるところはもうベテランの境地
<Jazz,adult contemporary>
Rebekka Bakken 「Always On My Mind」
masterworks / Euro / 19658737682 / 2023
Bass – Tor Egil Kreken
Drums – Rune Arnesen
Guitar – Eivind Aarset
Keyboards, Vocals – Rebekka Bakken
Piano, Keyboards – Torjus Vierli
Piano, Organ – Jørn Øien
ノルウェー出身の女性ジャズシンガー=Rebekka Bakken(レベッカ・バッケン)のニュー・アルバム『Always On My Mind』が久々に登場だ。このアルバムは、アニー・レノックス、ボブ・ディラン、ピーター・ガブリエル、エルトン・ジョン、ビートルズ、ランディ・ニューマン、ニック・ケイヴ他、彼女の"人生のサウンドトラック"と表現された過去の彼女の基盤となる曲群をノルウェーのセッションミュージシャンとの競演で収録した所謂カバー・アルバム。 彼女は1970年生まれで、53歳、いよいよ充実している。ジャズ・シンガーと言われているも、私から見てのところそうは思っていない。ポップやロックっぽかったり、むしろフォーク、カントリーの味、R&B、ファンクの色などと彼女独特のアダルトコンテンポラリーと言いたくなる世界である。
今回は、そんな中でも彼女の音楽人生の歴史的回顧を歌いあげていて、かなり大人っぽく仕上げていて魅力がある。
彼女はこのアルバムについて「これらの曲は"常に私の心に"あり、私自身の作詞作曲に影響を与えました。それらは「私の人生のサウンドトラック」であり、それらのいくつかは私の子供の頃から固執しています。私はこれらの曲のいくつかを聴いて自分の声を発達させました、そしてそれらを私のやり方で再解釈するのにちょうどいいタイミングです」とレベッカ・バッケンは言っている。そんな気持ちと心を感じ取って聴くと味がでるというところだ。
(Tracklist)
1. Little Rebel (Casino Steel, Andrew Matheson)
2. Red Right Hand (Nick Cave, Michael Harvey, Thomas Wydler)
3. Break My Heart Again (Finneas O´Connell)
4. Why (Annie Lennox, Dave Stewart)
5. Vincent (Starry Starry Night) (Don McLean)
6. Here Comes The Flood (Peter Gabriel)
7. We Don’t Eat (James Vincent McMorrow)
8. Louisiana 1927 (Randy Newman)
9. Love Hurts (Boudleaux Bryant)
10. Where Teardrops Fall (Bob Dylan)
11. We All Fall In Love Sometimes (Elton John, Bernie Taupin)
12. Brand New Angel (Gregory Dane Brown)
13. (Everything I do) I Do It For You (Bryan Adams, Michael Kamen, Robert John Lange)
14. Yesterday (John Lennon, Paul McCartney)
15. It Must Have Been Love (Per Gessle)
世界のポピュラー、ジャズ系音楽の歴史を聴くような構成だ。その中身はその音楽の質の高さとかスキルの重要性にアプローチしての自分の回答のような充実ぶりだ
M2."Red Right Hand " Alternative RockのNick Cave & The Bad Seedsの曲。いっやー、ノルウェーのアイヴィン・オールセットのギター、ベース、ドラムスの重低音を引っ提げてのヴォーカルが、とにかくかっこいい展開。
M3."Break My Heart Again " おお新世代フィニアス・オコンネルの曲が、今度はしっとりと、心を歌い上げる。
M4."Why" 英国社会運動家でもあるアニー・レノックスの曲、カントリーっぽく、見事な歌い上げ。
M6."Here Comes The Flood" ピーター・ガブリエルを超えて、しっとりと歌い、盛り上がりは更に素晴らしく感動もの。
M7."We don't eat" アイルランドのスピリチャルな歌のジェイムス・ヴィンセント・マックモローの曲、ソウルっぽくカントリーっぽく中低音のヴォーカルで響いてくる。
M10."Where Teardrops Fall" ボブ・ディランのちょっとセンチな聖書とのかかわりのある曲。これを取り上げたかと彼女を見直す。
M14."Yesterday " やっぱりビートルズのこれが出ないとおさまらないのでしょうね。しかしほかの曲と比べると意外にサラっとこなしていると思ったが、よく聴くとなかなか情感も溢れている。
とにかく彼女は歌がうまい、低音部はややハスキーで説得力あり、中高音部にゆくと意外に透明感のある声が伸びてゆく。これで過去にも魅了してきたわけだが、前作『Things You Leave Behind』(2018)のほうがややジャズ寄りにも聴こえるが、今作の幅広さとバッケン節は又違った意味でコンテンポラリーさが濃く、そうでありながら懐かしさも訴えてきて広くカヴァーするところ聴き応え十分。
昔ロックが開花した当時、特にビートルズはどうってことなくむしろC.C.Rに惚れ込んだ私にとっては何となく懐かしさも感ずる。
今アルバム、彼女の実力にそったノルウェーの最高のスタジオミュージシャンとの共演も実現して、ギタリストのエイヴィンド・アーセットの音との交わりも見事で、ヨーン・オイエンとトルユス・ヴィエリのオルガンとシンセサイザーが巧みにオーケストレーションし、そこにピアノコードが生き生き旋律を聴かせる。ルーン・アルネセンのゆったりとしたドラムビートが心地よい。そこにレベッカ・バッケンのソウルフルな声のノリが訴えてくる。
久々に彼女のアルバム登場であったが、これは彼女の歌手人生の回顧でもあり、これで一締めなんてことにならず、更に次への一歩であってほしいと願うところだ。
(評価)
□ 編曲・歌 88/100
□ 録音 87/100
(試聴)
*
| 固定リンク
« ギャビ・アルトマン Gabi Hartmann 「GABI HARTMANN」 | トップページ | フラッド・メルドー Brad Mehldau 「SOLO CONCERT AT BOZAR BRUSSELS 2023」 »
「音楽」カテゴリの記事
- レイヴェイ Laufey 「Bewitched」(2023.09.28)
- ミシェル・ンデゲオチエロ Meshell Ndegeocelle「The Omnichord Real Book」(2023.09.23)
- アロン・タラス Aron Talas Trio 「New Questions, Old Answers」(2023.09.17)
- カレン・ソウサ Karen Souza 「Suddenly Lovers」(2023.09.12)
- ビル・エヴァンス・リマスター・シリーズ Bill Evans 「Waltz for Debby」etc(2023.09.02)
「ROCK」カテゴリの記事
- ウィズイン・テンプテーション Within Temptation 「Wireless」(2023.08.12)
- ピンク・フロイドの頭脳・ロジャー・ウォーターズ「新『狂気』」10月公開 Roger Waters 「The Dark Side Of The Moon REDUX」(2023.07.23)
- ロジャー・ウォーターズ 2023欧州ライブ プロショット映像版 Roger Waters 「THIS IS NOT A DRILL - LIVE FROM PRAGUE 2023」(2023.06.23)
- イメルダ・メイ Imelda May 「11 Past the Hour」(2023.05.04)
- レベッカ・バッケン Rebekka Bakken 「Always On My Mind」(2023.04.23)
「JAZZ」カテゴリの記事
- レイヴェイ Laufey 「Bewitched」(2023.09.28)
- ミシェル・ンデゲオチエロ Meshell Ndegeocelle「The Omnichord Real Book」(2023.09.23)
- アロン・タラス Aron Talas Trio 「New Questions, Old Answers」(2023.09.17)
- カレン・ソウサ Karen Souza 「Suddenly Lovers」(2023.09.12)
- ビル・エヴァンス・リマスター・シリーズ Bill Evans 「Waltz for Debby」etc(2023.09.02)
「女性ヴォーカル」カテゴリの記事
- レイヴェイ Laufey 「Bewitched」(2023.09.28)
- ミシェル・ンデゲオチエロ Meshell Ndegeocelle「The Omnichord Real Book」(2023.09.23)
- カレン・ソウサ Karen Souza 「Suddenly Lovers」(2023.09.12)
- ニッキ・ヤノフスキー Nikki Yanofsky 「Nikki By Starlight」(2023.09.07)
- ウィズイン・テンプテーション Within Temptation 「Wireless」(2023.08.12)
「北欧ジャズ」カテゴリの記事
- ニルス・ラン・ドーキー Niels Lan Doky 「Yesterday's Future」(2023.08.17)
- トーマス・フォネスベック Thomas Fonnesbaek & Justin Kauflin 「Danish Rain」(2023.06.17)
- ガブリエラ・ガルーボ Gabriela Garrubo 「 Rodando」(2023.06.12)
- レベッカ・バッケン Rebekka Bakken 「Always On My Mind」(2023.04.23)
- ラーシュ・ダニエルソンの異色作 Lars Danielsson 「Symphonized」(2023.04.13)
「ユーロピアン・ジャズ」カテゴリの記事
- アロン・タラス Aron Talas Trio 「New Questions, Old Answers」(2023.09.17)
- ティングヴァル・トリオ Tingvall Trio 「BIRDS」(2023.08.23)
- ニルス・ラン・ドーキー Niels Lan Doky 「Yesterday's Future」(2023.08.17)
- ベーラ・サクチ・ジュニア Szakcsi Jr. Trio 「Easy to Love」(2023.07.18)
- トーマス・フォネスベック Thomas Fonnesbaek & Justin Kauflin 「Danish Rain」(2023.06.17)
コメント
美しいです。
Red Right Hand、カバーなんですね。
でも、世界観が構築されているな、と思いました。
投稿: iwamoto | 2023年4月23日 (日) 16時31分
iwamoto様
こんばんは、コメント有難うございます
彼女はキャリアも十分、音楽研究十分の・・そして諸々逸材ですね。
しかし今の北欧はその充実度に感心してしまいます。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2023年4月23日 (日) 21時58分