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2023年5月28日 (日)

ビル・エヴァンスの発掘盤 Bill Evans 「TREASURES」

ソロ、トリオ、オーケストラとの競演が楽しめる全30曲

<Jazz>

Bill Evans 「TREASURES - Solo Trio & Orchestra Recordings from Demmark 1965-1969」
Elemental/King International / JPN / KKJ-10013 / 2023

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Bill Evans Trio (下記Tracklist参照) 
The Royal Danish Symphony Orchestra & The Danish Radio Big Band

 ビル・エヴァンスに関しては、ここではあまり取り上げてこなかった。いろいろと書くには恐れ多いし、何を隠そう、私のジャズ愛好歴史の中で、それほどのめり込むという事もなかったのも事実である。そもそも私のピアノ・トリオ好きは、極めてオーソドックスな歴史的巨匠からはスタートしていない。面白さを知ったのはフランスのジャック・ルーシェの「プレイ・バッハ」以降で1960年代のことである。とにかく私がステレオというオーディオ装置を我が物に出来たのは1960年で周囲では持っている人もいなかった。当時ステレオ録音盤のLPなど田舎のレコード・ショップにはろくになく、探して聴いた時代である。LP一枚買うという事すら自分の経済環境からは大変なことであった。そんな中でまず続いて興味を持ったのはキース・ジャレットであった。それが私のピアノ・トリオ愛好のスタートなのである。

 余談であったが、ここ20-30年の経過でも、ビル・エヴァンスものを聴くよりは、ビル・エヴァンスを聴いて育った欧州ミュージシャンの演奏ものが多かった。そんな事のひとつにはビル・エヴァンスものの録音の悪さである。今思うに彼のトリオものでは『You Must Believe In Spring』(1977年録音の近年のリマスター・HiRes盤)ぐらいが、私にとっては今でも時に聴くアルバムなのである。このアルバムがエヴァンスものの中では、ちょっと抜きん出て音も良いし演奏もいいと思っている。
 原点的には『Waltz for Debby』(1961年)を聴けば良いような気がしている。

Ucgq9036_sdu_extralarge  又、ちょっと注目は、何回かリリースしているアルバム『TRIO64』(エヴァンスとゲイリ-・ピーコックとの明るい共演が聴ける →)だが、「Verve Acoustic Sounds SACDシリーズ」としてリリースされる。これはヴァ―ヴが所有する50~60年代の名盤を中心に、最高の音質めざしアナログ復刻するプロジェクト「Verve Acoustic Sounds シリーズ」があるが、その復刻時に作成したマスターをDSD化し、「Verve Acoustic Sounds SACDシリーズ」としてのリリースが決定。SACDとして何処まで音質が良くなるか取り敢えず注目。


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 そんな最近の経過での今回のエヴァンスの新アルバムの登場だ。彼が1965-69年にデンマーク各地を訪れた際の貴重な発掘ライヴ音源CDが登場したのである。中身は2枚組でヘビーだ(同時発売LPは3枚組)。ニールス・ペデルセン、エディ・ゴメス等が参加したトリオ演奏、そしてピアノ・ソロ、更にデンマーク・オーケストラとの共演等が楽しめる。
 とにかくなんだかんだと毎年のように発掘盤のリリースのあるエヴァンスで(以前ここで発掘アルバム『Some Other Time』(HCD-2019 / 2016)を話題にしたことがあった)、追いかけていても大変だが、今回のこの盤は60年後半のものであり、やっぱり録音にはそう期待は出来ない。幸いにして時代はサブスク・ストリーミングの時代であって、早い話が特別買うことなく、それなりの音質でこのアルバムを聴くことが出来る良き時代になった。結論的には思ったよりは当時のものとしては音はライブものの録音でありながら、かなり良い方に思う。モノ録音もあるのだが、ステレオ盤としての工夫も施してあるようだ。

「Treasures」(2CD) : (Tracklist)

■(CD-1) Bill Evans Trio & Orchestra
1. Come Rain Or Come Shine (Harold Arlen-Johnny Mercer) 4:35
2. Someday My Prince Will Come (Frank Churchill-Larry Morey) 4:31
3. Beautiful Love (Haven Gillespie-Wayne King-Egbert Van Alstyne-Victor Young) 4:18
4. I Should Care (Sammy Cahn-Axel Stordahl-Paul Weston) 4:08
5. Very Early (Bill Evans) 4:39
6. Time Remembered (Bill Evans) 4:53
7. Who Can I Turn To? (Leslie Bricusse-Anthony Newley) 5:59
8. Waltz For Debby (Bill Evans) 5:58
Orchestral Suite
9. Intro (Palle Mikkelborg) Into Waltz For Debby (Bill Evans) 5:13
10. Time Remembered (Bill Evans) 3:53
11. My Bells (Bill Evans) 4:45
12. Treasures (Palle Mikkelborg) 5:24
13. Waltz For Debby [Reprise] (Bill Evans) 4:19
14. Walkin’ Up (Bill Evans) 4:17

(M1-M3)
Bill Evans (p) , Niels-Henning Ørsted Pedersen (b) , Alan Dawson (ds)
Copenhagen Jazz Festival, Tivolis Koncertsal, Copenhagen, October 31, 1965.
(M4-M8)
Bill Evans (p) , Niels-Henning Ørsted Pedersen (b) , Alex Riel (ds)
Slotsmarksskolen, Holbæk, November 28, 1965.
(M9-M14)
Bill Evans & Palle Mikkelborg
Bill Evans (p) , Eddie Gomez (b) , Marty Morell (ds)
With The Royal Danish Symphony Orchestra & The Danish Radio Big Band Featuring Allan Botschinsky, Idrees Sulieman (Trumpet) , Torolf Mølgaard (Trombone) , Jesper Thilo, Sahib Shihab (Reeds) , Niels- Henning Ørsted Pedersen (Bass) , Palle Mikkelborg - Trumpet (Featured On “Treasures”) , Arranger & Conductor Tv-Byen,
Copenhagen, November 1969.

 

■(CD-2) Bill Evans Solo & Trio
1. Re: Person I Knew (Bill Evans) 3:21
2. ’Round Midnight (Thelonious Monk) 4:38
3. My Funny Valentine (Richard Rodgers-Lorenz Hart) 4:00
4. Time Remembered (Bill Evans) 3:19
5. Come Rain Or Come Shine (Harold Arlen-Johnny Mercer) 3:16
6. Epilogue (Bill Evans) 0:34
7. Elsa (Earl Zindars) 5:52
8. Stella By Starlight (Ned Washington-Victor Young) 4:19
9. Detour Ahead (Lou Carter-Herb Ellis-Johnny Frigo) 5:40
10. In A Sentimental Mood (Duke Ellington) 4:43
11. Time Remembered (Bill Evans) 3:31
12. Nardis (Miles Davis) 3:35
13. Autumn Leaves (Joseph Kosma-Johnny Mercer-Jacques Prévert) 6:44
14. Emily (Johnny Mandel-Johnny Mercer) 5:44
15. Quiet Now (Bill Evans) 3:42
16. Nardis (Miles Davis) 8:06

(M1-M6)
Bill Evans, Unaccompanied Piano.
Danish Radio, Radiohuset, Copenhagen, Late November, 1965.
(M7-M12)
Bill Evans (p) , Eddie Gomez (b) , Alex Riel (ds)
Danish Radio, Radiohuset, Copenhagen, Late October, 1966.
(M13-M16)
Bill Evans (p) , Eddie Gomez (b) , Marty Morell (ds)
Stakladen, Aarhus, Denmark, November 21, 1969.


 ノルウェーのジャズ・ミュージシャン、オーレ・マティーセンのプライベート・コレクションから厳選されたモノと言うが、本作は1965年、66年、69年に演奏旅行のためデンマークを訪れた際の各地でのライヴ演奏が収められている。

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🔳CD-1 (M1-M3) の1965年10月の演奏はコペンハーゲン、チボリのコンサートホールで行われた「コペンハーゲン・ジャズ・フェスティバル」に出演し地元ミュージシャンとのトリオ。 “Waltz For Debby” が当時の注目か。
 M9からは好き嫌いは別にしてオーケストラとの競演。ビル・エヴァンス (p) 、エディ・ゴメス (b) 、マーティ・モレル (ds) のトリオがデンマーク王立管弦楽団と更にトランペッター&アレンジャーのパッレ・ミッケルボルグが指揮するデンマーク・ラジオ・ビッグ・バンドと競演した注目音源。オーケストラのイントロから始まり(管楽器ビック・バンドがちょっと余分か)、途中から エヴァンスのピアノが絡む“Waltz For Debby”は注目。エヴァンスのピアノのメロディーが始まると、オーケストラも静かで聴きやすい。 この “Waltz ForDebby” はRepriseという形で今度はトリオの演奏を前面にバックにオーケストラが絡むという別アレンジもある(M13)。いずれにしてもピアノがオーケストラに埋没しないで良かった。さらにM8のトリオものと3バージョン聴けるところが嬉しい。

🔳CD-2 (M1-M6) には1965年11月にコペンハーゲンに訪れた際のピアノソロが6曲。 “My Funny Valentine” のこの曲のエヴァンスによるピアノソロ演奏は初めてらしい。
 M7からはエディ・ゴメス (b) 、アレックス・リール (ds) のトリオ演奏で1966年のコペンハーゲンもの、M13からは1969年にエディ・ゴメス (b) 、マーティ・モレル (ds) のトリオがオーフスで演奏した音源。おなじみ“星影のステラ”、勢いのある"枯葉" 、別編成のトリオでで二種の“Nardis” など聴き応えある。

 なかなか多彩で面白いアルバム。音質も私が思ったよりはかなりのリマスター苦労もあったと思うが、放送用音源らしく良好だった。そんな意味でブックレットも充実しているようで、取り敢えずお勧めアルバムである。

(評価) 
□ 選曲・演奏  88/100
□ 録音     83/100

(参考視聴)

 

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2023年5月24日 (水)

[懐かしのアルバム] ハン・ベニンク  Han Bennink - Michiel Borstlap - Ernst Glerum 「3」

フリー・ジャズの新展開・・・自由なインプロヴィゼイションの競演

<Jazz>

Han Bennink - Michiel Borstlap - Ernst Glerum 「3」
VIA Records / Import / CD 992029.2 / 1997

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Michiel Borstlap (p)
Ernst Glerum (b)
Han Bennink (ds)
1997年5月1日録音

  25年前のアルバムである。ピアノ・トリオ・スタイルであるが、リーダーは鬼才ドラマーのハン・ベニンクだ。私はピアノ・トリオ好きであるので、ピアノ好きという事になるのかもしれないが、ピアノ・ソロものより圧倒的にトリオものが好き、それはやっぱりドラムスの演ずる音の世界があっての事であろう。時にエネルギーが高まってくると聴きたくなるのがドラムスの世界なのである。
 このところ、どうも私の好みからはCDアルバムのリリースは低調。従ってストリーミングなどでいろいろと聴いてはみるが、やっぱり懐かしのCDが聴きたくなる。そんな中で、当時聴いたよりも今の方が納得できるアルバムの一つがこのアルバムなのだ。そんな訳で、このブログは2006年スタートで、それ以前のもので改めてここに記録しておきたいので取り上げることとした。

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 リーダーのドラマー・ハン・ベニンクHanBennink(上左)は、1942年オランダ生まれで、今も健在と思うが今年で81歳だ。このアルバムは1997年録音であるので当時彼は55歳、そんな円熟期の演奏が圧巻で迫ってくるのが聴けるアルバムなのである。
 とにかく彼は実験的な演奏スタイルで知られていた。従来のジャズ・ドラム演奏から非常に型破りなフリー・インプロヴィゼーションまで多岐にわたり、ステージ上の椅子、音楽スタンド、楽器ケース、そして自分の体(口や足)を奇妙に有効に使ったり、パフォーマンス・スペース全体(床、ドア、壁)を使っての音も取り入れていたという鬼才である。
 ボルストラップMichiel Borstlap(1966年生まれ)(上中央)はオランダのピアニストで、ジャズやクラシック音楽の要素を融合させた独自のスタイルで活躍している。過去に(1996年)彼の作曲「魔法の記憶」は、権威あるアメリカのセロニアスモンク/ BMI作曲家賞を受賞した。
 グレラムErnst Glerum(1955年生まれ)(上右)はオランダのベーシストで、ジャズや即興演奏の分野で幅広く活動していてアムステルダム音楽院の教官。
 こんな3人の集まったトリオ、如何に激しいフリー・インプロの世界か想像できるところであろう。

(Tracklist)
1 Round Midnight (Monk)
2 Huub (original)
3 Erroll   (original)
4 Take The A-Train (Strayhorn)
5 Masquelero (Shorter)
6 I Love You So Much It Hurts (Tillman)

  ライブ録音盤である。そして収録されたサウンドはクリアで聴き応えあり、かなりリアルだ。又ドラマーがリーダーということもあるのか、ドラムスの音がピアノ、ベースに劣らず迫力をもってして聴ける。とにかく圧巻。三者の共演というより競演である(笑い)。

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   M1." Round Midnight"は、冒頭のピアノの比較的弱い音の早弾きから、ドラムはブラッシでスネアドラムを叩く音で展開しうねるような強弱で、時にシンバルを入れ、ベースは落ち着いたメロディーを流す。流れとしてはドラムスが印象深い。
 M2." Huub"になって、ベースの軽快なリズムにピアノは前衛性を増し、ドラムスとともインプロが冴え渡る。
 M3."Erroll"ドラムスとピアノの競演の極み。終盤ドラムス・ソロが楽しめる。
 M4."Take The A-Train" 時に入るピアノの早弾きによる懐かしの旋律にほっとする。
 M5."Masquelero"  ここでも、ピアノとドラムスの競演が華々しく展開。ピアノのクラシック・ジャズ演奏と前衛性の競合がお見事。 
 M6." I Love You So Much It Hurt" ゆったりとピアノとドラムスの掛け合い。スティックによるリズムが冴え、シンバル音の響きが強烈。

 所謂オーディオ機器の性能を聴こうとするにも面白い。メロディーというより音が溢れて聴ける。鋭い音と激しい音とが入り乱れるが決してうるさいという感覚にならないところが、お見事。
 ベニンクのドラムス演奏は恐れ入るほど堪能できる。そして聴きどころは、ピアノの前衛的演奏の妙、ドラミングから押されての自由感覚から生まれる世界は見事。このアルバムを成功させた大きな因子であろうと思うところ。
 とにかくフリー感覚いっぱいのトリオ演奏だ。リリース当時、70年代のフリー系ピアノ・トリオが持っていたそれまでの「ザ・ピアノ・トリオ」という形を破壊した自由なインプロヴィゼイションと三者の相互関係における自由さが評判だった。
 今でも楽しめるアルバムである。

(参考) Han Benninkリーダー・アルバム
Instant Composers Pool (1968年、Instant Composers Pool) 
Derek Bailey & Han Bennink (1972年、Ictus) 
A European Proposal (Live In Cremona) (1979年、Horo) 
『円環の幻想』 - Spots, Circles, and Fantasy (1988年、FMP) 
『3』 - 3 (1997年、VIA Jazz) #
Jazz Bunker (2000年、Golden Years Of New Jazz) 
Free Touching (Live In Beijing At Keep In Touch) (2004年、Noise Asia) 
Home Safely (2004年、Favorite) 
3 (2004年、55 Records) #
BBG (2005年、Favorite) #
『Monk Vol.1』 - Monk Volume One (2008年、Gramercy Park Music) #
Laiv (2010年、Bassesferec) 

(#印 with Michiel Borstlap , Ernst Glerum)
 
(評価)
□ 選曲・演奏  90/100
□ 録音     90/100

(試聴)

*

 

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2023年5月18日 (木)

レイヴェイ Laufey 「A Night at the Symphony」

アイスランド出身の女流SSWのオーケストラとの競演版にまたもや話題騒然

 

<  Contemporary Jazz>

Laufey 「A Night At The Symphony」
Label: AWAL Recordings / Release Date: 2023年3月2日

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 Laufey : Vocals & Cello, Guitar
 Iceland Orchestra 

 時代は流れていますね、このところCDアルバムのリリースが低調で話題作も少ない。しかし一方SNSを中心にストリーミングによるアルバム・リリースなどが盛り上がっている。又さらになんとAudioファン向けとしては、ビニール盤(LP)のリリースが好調だ。

 そんな中で、ストリーミング時代の申し子というか、今や人気沸騰のアイスランド出身の女流SSWのレイヴェイLaufeyであるが、昨年に続いてのニュー・アルバムの登場だ。EP盤を含めると第3弾という事になる。

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1. Fragile*
2. Valentine*
3. Dear Soulmate*
4. I Wish You Love(Keely Smith)#
5. Night Light*
6. Ég Veit Þú Kemur(Elly Vilhjálm)
7. Falling Behind*
8. Best Friend#
9. Like The Movies#
10. The Nearness Of You(Hoagy Carmichel)
11. Let You Break My Heart Again(2021)
12. What Love Will Do To You*
13. Beautiful Stranger*
14. Every Time We Say Goodbye(Cole Porter)

*印: 1stフル・アルバム「Everything I Know About Love」から
#印: デビューEP盤「Typical Of Me」から

 現在はロサンゼルス在住の彼女が、去年10月、生まれ育った故郷のアイスランドはレイキャビクの歴史あるハルパ・コンサートホールでアイスランド交響楽団と共演したときのパフォーマンスをライヴ収録したアルバムである。
 昨年リリースし話題となっている1stフル・アルバム『Everything I Know About Love』(*印、アルバムは下に紹介)の自作曲を中心に、以前のデビューEP盤『Typical Of Me』(#印)からと、スタンダード曲のカヴァーなどが収録されている。
 まさにチェロやギターなどを弾きながらオーケストラをバックにしての相変わらずの魅力たっぷりの歌いっぷりは見事と言わざるを得ない。クラシックに通じている彼女としては、オーケストラとの競演はこれ又一つの目指すところであろう。ジャージーな味付けも忘れていないところが見事。
 しかし、私としては、このオーケストラ版も面白いが、やっぱり昨年リリースされたジャズ的味付けによるヴォーカル・アルバムの方が好みである。そこで、その人気アルバムを以下に紹介する。

                  - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 

<Jazz, Contemporary Jazz>

Laufey 「Everything I Know About Love」
(LP) LAUFEYLLC / Import / LAULP001R / 2022

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music Artist  :  Laufey

 CDリリースの空白感を感じている時に、このアルバムは、昨年ストリーミングとLP盤のみのリリースで話題が集中した。SNSでも評判のこのアルバムは、クラシックのバイオリニストである中国人の母親とジャズ好きのアイスランド人の父親をルーツにもつ女性チェロ奏者/シンガーソングライター、レイヴェイLaufey(1999年、アイスランド・レイキャビク生まれの23歳)のヴォーカル・デビュー・フル・アルバムだ。これはアナログ盤(LP)でのリリースなのである。
 デビュー盤としては、その完成度が高いこと、彼女の声やヴォーカル・スタイルが好評である事、曲も懐かしさと同時に新感覚の世界にあって、音楽好きには楽器の選定やアレンジの妙が出色で、しかもドリーミーな造りに共感した。そんなことでアナログ盤の良さを十分に感じ取れるという事で高評価を獲得している。

 彼女は2021年にバークリー大学を卒業。現在は本拠地をロサンゼルスに移して活動中とのこと(チェロ奏者、ギタリスト、ピアニスト)。今回のフル・アルバムは以前にミニ・アルバムをリリースして好評だった延長にあって、同様な音楽的資質と学習・研究成果を反映したものと受け止められたのであった。
 2021年にEP『Typical of Me』でデビューし、収録曲“Street by Street”が瞬く間にアイスランドのラジオチャートでトップに。さらに東南アジアとアメリカではTikTokから人気に火がつき同じZ世代の支持を獲得し、SpotifyのJazzチャートでは世界1位を記録した曲“Valentine”がある。

(Tracklist)

Maxresdefaultw_20230517124901 01.Fragile

02.Beautiful Stranger
03.Valentine
04.Above The Chinese Restaurant
05.Dear Soulmate
06.What Love Will Do To You
07.I've Never Been In Love Before
08.Just Like Chet
09.Everything I Know About Love
10.Falling Behind
11.Hi
12.Dance With You Tonight
13.Night Light
14.Slow Down
15.Lucky for Me
16.Questions For The Universe

  ちょっと前置きしておくが、私はアナログLPでなく、サブスク・ストリーミングのHi-Res版で聴いている。従ってM14-16の3曲はLP盤にはない(又M3.Valentineは初期LPには収録無し )。

 とにかく、彼女独特の優しさの上に何となく深みのあるロマンティックな美声の歌は、若さとは違ったむしろ大人っぽさのある歌いまわしで驚く。このアルバムの曲は、M6."初めての恋 I’ve Never Been in Love Before"以外はオリジナルであり驚く。クラシックで育ったこともあってか、さすがロック系でなくポピュラー、ジャズ、ボサノヴァといった曲との融合した世界であり、又バラード調も得意としているし、かなりの説得力だ。これなら、大人のジャズ・ファンもお気に入りになりそう。

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 往年のジャズボーカルのスタイルを現代風の表現で一部語り聞かせるところもあって、心憎いほどの親密感のある歌声をしっとりと聴かせる。ただヒットしたアルバムタイトル曲M9."Everything I Know About Love"は、ちょっと一風変わっていてクラシック・ストリングス演奏から入って、変調してBillie Eilischに歌わせても面白そうな現代調を感ずさせるバック演奏の曲で、"私は愛について何も知らない"と迫ってくる。
 スタートのM1."Fragile"はギターをバックにボサノヴァの展開を匂わせつつ、彼女の曲の特徴のとしてのクラシック調の味付けを交えての異なるジャンルの曲の融合が旨い。
 M2."Beatiful Stranger"M5."Dear Soulmate"の優しげなムードもなかなか出色。
 一方ジャズ・バラード調も得意で 人気曲M3."Valentine"(この曲はLPでは収録無かったり入ったりしているようだ)は女性コーラスとの交わりに味付けが旨い。ギターのみの弾き語りによるM11."Hi"などもしっとりとした歌が見事。
 又ジャジーな味付けもM6."What Love Will Do To You",M7."I've Never Been In Love Before"に聴かれるし、M8."Just Like Chet"のChet Bakerを哀しく描くところはジャズ心だ。
 M12."Dance With You Tonight"は、懐かしポピュラームード。M13."Night Light"は、LP締めの曲、ストリングスが入ってコーラスとの歌が見事。

 とにかく多彩な曲展開と、昔からのジャズ・ヴォーカルを思わせたり、物語を語り聴かせたり、クラシック調の味付けが心を休めさせたりと、彼女のめざすところの伝統的な音楽性と新世代ならではの感覚をうまく融合させた独自の世界を構築している。今後が楽しみだ。 

(評価)
□ 曲・演奏・歌  88/100
□ 録音      88/100

(試聴)


*

 

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2023年5月12日 (金)

ドミニク・ミラー Dominic Miller 「Vagabond」

南仏の自然の中から生まれた詩情豊かな作品

<Jazz>

Dominic Miller 「Vagabond」
ECM / Import / 4589048 / 2023

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Dominic Miller (g)
Jacob Karlzon (p)
Nicolas Fiszman (b)
Ziv Ravitz (d)

   これはドミニク・ミラーDominic MillerのギターによるECM作品である。2017年のアコースティックギターがメインの作品『Silent Light』(ECM5728484)に出会ってからもう5年以上になるのかと、ちょっと時間の経つのの速さに驚いているが、あの作品は繊細で美しい音色を奏でて、ECM的というか静かで穏やか、落ち着いた雰囲気が漂っていて素晴らしかった(マイルズ・ボウルドが時折パーカッションで参加しているがほぼ全編ソロ・ギタリストとしての作品)。そして2作目『Absinthe』(ECM6788468/2019=これはクインテット作品)を経て3作目となる作品だ。
 この今作『Vogabond』は、前作にも参加したベースのニコラ・フィズマン(ベルギー)に加え、イスラエル・ジャズ・シーンを牽引するドラマー、ジヴ・ラヴィッツとスウェーデンのピアニスト、ヤコブ・カールソンを迎えたカルテットのスタイルだ。そして全曲オリジナルで構成されている。

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   今作のタイトル"Vogabond"とは、"放浪者"という意味だが、ドミニクの亡き父が大切にしていたイギリスの詩人ジョン・メイスフィールドの同名の詩からとったものらしい。ドミニクは「私は自分を放浪者(ヴァガボンド)だとは思わないが、旅をする人々に共感しているし、一箇所に留まって毎日同じ人々に会うよりも、このライフスタイルを好む」と話しているが、実はその意味より"父親を回顧している"作品であるという事の意味が強そうだ。
 実際には、この2年はパンデミックもあって、ほとんど旅行する機会がなかったため、現在数年住んでいる南フランスの身近な環境に焦点を当て、新曲を書いたという。彼の説明では「このパンデミックの間、とても自然に私は南仏の周囲の環境に影響を受けました。私は何度も長い孤独な散歩に出かけ、田舎はいつの間にかこのアルバムにおける私のコラボレーターとなっていました。“Vaugines”(M4)は、私が歩いていた美しい小さな村のことですし、“Clandestine”(M5)は時々地元の人たちに会う隠れ家的なバーのことです。“Mi Viejo”(M7))は簡単に言うと、私のお父さんという意味です。」と。

Dm22w (Tracklist)

01. All Change
02. Cruel But Fair
03. Open Heart
04. Vaugines
05. Clandestin
06. Altea
07. Mi Viejo
08. Lone Waltz

  このアルバムは、2021年4月に南フランスで録音され、ECMマンフレッド・アイヒャーによるプロデュース作品となっている。スティングのドミニクを知る人からは、ロックからECMというとかなり不自然と思うだろうが、彼は1960年3月21日、アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ。バークレー音楽学校、ロンドン・ギルドホールスクールでクラシックを学んでいるのだ。ただ1991年にスティングのアルバム『ソウル・ケージ』に参加し、その後のスティングのツアー、レコーディングには欠かせないギタリストとなった。しかし彼の関心のある処、キース・ジャレットをはじめ、パット・メセニーやラルフ・タウナー、エグベルト・ジスモンチをはじめECM作がいろいろあったようだ。そうすると"成程、そうゆうことか"と、疑問も晴れてくる。

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  このアルバムでは、オープニングのM1." All Change"では、四者のそれぞれが一つの流れに向かって繊細にして多彩な演じ合いが、自己紹介的に聴きとれるが、M2." Cruel But Fair"でぐっと深遠な世界に入る。ギターのリードは決して技巧に凝った難しさというよりはその場をいかに描くかという状況の反映というところに音は流れる。したがって旋律を流すということよりもピアノ、ベースを誘って物語を始めるようなスタイルだ。ドラムスはあらゆる状況を丁寧にサポートする。
 M3." Open Heart "ギターに続いてピアノと静かな状況描写、シンバル音がささえる。
 M4."Vaugines" ギターの響きがローカルな美しいのどかな村を連想させる。
 M5." Clandestin" ギターとピアノが静から動へ。ドラムスとベースで築くリズムが力強く印象的。
 M6."Altea" は、静かな展開の中にギターとドラムスの掛け合いが面白い。そして中盤からはピアノが主流に変わって動的に変化し、かなりドラムスのパワーが生きてアクティブな展開も。最後再びギターの静かな世界に戻る。
 M7."Mi Viejo"は英語で言うと"my old man"という意味で父親のことらしい。ふと回顧的な静。
   最後のM8."Lone Waltz"は、再びカルテットのアンサンブルを楽しむ世界。

 繊細な表現に個々のプレイヤーが長けていて、そのセンスから生まれる優雅であり牧歌的であり詩的である世界の表現が見事である。フランスはそれなりにあちこち旅したことがあるが、考えてみると南フランスは未経験だった。このアルバムに接してみると、メンバーは実際に南仏に3日間滞在して演奏の核を感じてのアルバム作りであったようだ。それを聞いてなんとなく時間の余裕のある旅をしたくなる世界を想像することが出来た。

(評価)
□ 曲・演奏   88/100
□ 録音     88/100

(試聴)

 

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2023年5月 8日 (月)

アントニオ・フスコ Antonio Fusco Trio「SETE」

独創性ある繊細なトリオ演奏による瞑想的な世界

<Jazz>

Antonio Fusco Trio 「SETE」
DA VINCI JAZZ / Import / C00696 / 2023

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Manuel Magrini マニュエル・マグリーニ (piano)
Ferdinando Romano フェルディナンド・ロマーノ (double bass)
Antonio Fusco アントニオ・フスコ (drums)

 イタリアの中堅ドラマーのアントニオ・フスコAntonio Fusco(1979年イタリアのソロフラ生まれ)がリーダーのピアノ・トリオ・アルバム。彼が探求する「スタイルの探求-独自の音楽言語の探求と開発」のテーマについては、その道では興味持たれているもののようだが、私にとっては初物であってちょっとおそるおそる聴いたというところであった。評価では確かにヨーロッパのジャズシーンでそれなりに興味深く、独創的なドラマーの一人とされているようである。音楽体験の共有によって人々を近づけることができるという信念を貫いた活動を積極的に行っているとの紹介がある。

 又過去にもこのDa Vinci Jazzから日本人らとのクインテット作品を発表して好評を得、最近はドイツのボンを拠点に活動中とか。今回はペルージャ出身の大型新人ピアニスト:マニュエル・マグリーニをフィーチュアしており、又イタリアのベーシストで近頃リーダー・アルバムを初めて出したというフェルディナンド・ロマーノと組んでの自作曲が主である作品というところからも、実験的前進を期しての作品と見れる。

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1. Wave
2. Quarantine
3. Alice In Wonderland
4. Peaceful Mind
5. Sete
6. The Happiness Tango
7. Pilgrimage

 

 

 

イタリアと言えば、歌心のある世界を想像するが、そんなところがどうも主力ではなく、コンテンポラリー・ユーロ系耽美派・詩情派の世界に陰影も描かれ、ドラマーのフスコのどちらかというと思慮深い作曲を通しての瞑想的な世界を描いている。

 やっぱり私的には M5."Sete"のタイトル曲に最も関心を持った。なかでも最も美旋律系に属しての静かなピアノ・ソロからスタートして、ベースのアルコ奏法が、広大な地を描くが如く響き、ピアノがそれに乗ってゆく。そんな中にシンバル音が響くも静かな物思いにふける世界は続き、次第にドラムスがおもむろに曲の深みを更に誘うが、静かな中に心象風景の移ろいをトリオの繊細な音で仄暗く甘さよりはやや苦さの感じられる哀愁描写を展開。
 そして続くM6."The Happiness Tango"が、思いの外ムードを反転して軽快なリズムを展開して、このあたりの下りはアルバムとしての曲のつながりの妙味を感ずるところで旨い。

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(上 左Manuel Magrini、右Ferdinando Romano)

 アルバム冒頭のM1."Wave"に戻るが、ここでは静かにして繊細な美しいピアノ、優しく響くシンバル音、それを支えるベースの響きに絶妙なトリオの交錯の見事な演奏がによって、瞑想的に迷入してゆくような流れに乗せられた領域に入る。
 M2."Quarantine"では、単なるドラマー主導の曲展開でないことが十分感じられ、中盤のベースの演奏に惹かれる。
 M3."Alice In Wonderland"のスタンダードで、アルバム中盤でほっとさせるところもなかなか上手だ。

 全編を通じてパンチが十二分にきいていながら細かな味わいを聴かせるフスコの(ds)の展開に支えられての、結構雄弁に唄うロマーノの(b)の情味濃い演奏、そしてやっぱり重要なマグリーニの(p)の魅力は、なんといってもデリカシーなニュアンスに溢れるているところだろうと思う。そしていて鋭いキレのよさも有し流麗なアドリブの味は爽快で、このアルバムの重要な役をこなしている。コンテンポラリー・ユーロ系耽美派・詩情派の典型らしいなかなか味なトリオ作品だ。

(評価)
□ 曲・演奏   88/100
□ 録音     87/100
(試聴)

 *

 

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2023年5月 4日 (木)

イメルダ・メイ Imelda May 「11 Past the Hour」


愛を通して人間の真相にも迫らんとするイメルダ・メイの冒険性の結晶
(変身第2弾)

<Rock, Jazz, Blues>

Imelda May 「11 Past the Hour」
DeccaRecords / Import / B0033471-02 / 2021

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Back Musicians : Tim Bran(p,g,b), Charlotte Hatherley(g), Cameron Blackwood(k,Prog),Davide Rossi(Str), Charlie Jones(p,b),Matt Racher(d)

 どうもこのところ女性ジャズ・ヴォーカルもののリリースが量と中身が若干低調、そんな中で充実感と迫力でお気に入りだつたアルバムはやはり遅まきながら購入に至ったのでここに取り上げる。

Imelda_may_2018w  これは英国(と、言ってもアイルランド)のSSWのイメルダ・メイImelda Mayの6枚目のスタジオアルバムである。2021年4月のリリースで既に2年の経過があるが最近はストリーミングにより聴いていた。しかしやっぱり手元にCDとして置いておきたい思う濃いアルバムであり、意外に取り上げられていないのでここに紹介する。
 彼女に関しては、ここで何度か話をしてきたが、ジャンルはジャズというよりはロックだ。しかしジャズとして聴ける曲も多く、とにかく歌がうまい。私としては"アイルランドの美空ひばり"と名付けて以前から注目してきた。近年ではジェフ・ベックとの共演の"Cry me a River","Lilac wine"等が出色。そして、出産、離婚後の変身が凄くて前作『LIFE.LOVE.FRESH.BLOOD』(2017)でビックリ、その後のライブ活動も凄く、このアルバムも変身後の2作目で注目度も高かった。

  全曲彼女が共同プロデューサーであるティム・ブランとストリングス・アレンジャーのダヴィデ・ロッシらと共作しており、作詞も彼女自身による。そしてロニー・ウッド、ノエル・ギャラガー、マイルズ・ケインといったミュージシャンに加え、女性フェミニスト思想家、政治活動家ジーナ・マーティンなど驚きの顔ぶれが参加する。彼らをフィチャーした曲では、敢えてロックンロールを展開し問題提議しているのだ。
 バック・ミュージシャンは今盛んな多くが参加、曲により変化を付けているのも彼女のしたたかな冒険性である(末尾クレジット参照)。

 アイルランドにルーツを持つことの意義、かってあの反骨の歌手シネイド・オコナーをも仲良く良い意味で圧倒した彼女のパワーは健在だ。ここにはかってのバンドの拘束から切り放たれた彼女自身そのものの真の姿が浮き彫りされているところに魅力がある。この充実感高いアルバムは、自分の真の姿やアイルランドのルーツ、物語を伝え、魂を込めた愛の歌を展開いる。

(Tracklist)

01. 11 Past the Hour
02. Breathe
03. Made to Love(feat.Ronnie Wood etc)
04. Different Kinds of Love
05. Diamonds
06. Don't Let Me Stand On My Own(feat.Niall McNamee)
07. What We Did in the Dark(feat.Miles Kane)
08. Can't Say
09. Just One Kiss(with Noel Gallagher, feat.Ronnie Wood)
10. Solace
11. Never Look Back

 私はM1."11 Past the Hour"のタイトル曲(UKのSSWであるPedro Vitoとの共作)が大歓迎だ。ロカビリー色の欠如で彼女のファンからは異論があっただろうが、アダルトコンテンポラリーの世界は確実に魅力を倍増した。パワフルなゴスペル調(描くは失った人への思い)の曲で、Imelda Mayの圧倒的なヴォーカルが際立つ。ダークでちょっと暑いバラードだが、彼女の声がかっては考えられない重さでのしかかってくる。中盤からのきしむようなギターがこの曲の一つの焦点で悲しみと不安を描く。
 この曲は、失った世界から新しく旅する自分を赤裸々に訴えて、愛する人を失った人々に向けた慰めと希望を与える世界だ。背景には、社会から疎外されているコミュニティや制度的不平等に取り組む組織を支援することを目的にアイルランド政府の立ち上げた「Rethink Ireland」キャンペーンのために、彼女が書いた「You Don’t Get To Be Racist and Irish」という詩が、世界的に注目を集めた状況を思い出すと単純でない諸々が見えてくる。 重大なものを失った人々にその悲しみと孤独を共有し、同時に、時間が癒しの力を持つこと。しかし時間が過ぎ去っても、人間的思い出を忘れないでいることの重要性を訴えている。とにかく強い歌声と、力強く美しいメロディが圧巻。彼女の音楽性は、ロックやブルースをベースにしながらも、ジャズやソウルなどの要素を取り入れた独自のサウンドが結実している。

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ここに彼女の言葉を記す・・・・
「“11 Past the Hour”は私の真実です。私は常に意味を持って、心を込めて詩を書いています。それぞれの特別な瞬間に、自分の物語を介して人々と繋がることこそが私が書く理由であり、だからこそ、たとえほんのひと時でも、人々と繋がれることを願っているのです。私たちが折にふれて感じるものを、言葉や音楽にすることができるのだと思いたい。私たちは皆、笑い、歌い、愛し、泣き、踊り、キスをし、他人を大切に思っています。私たちは皆、欲望、怒り、喜び、心配、悲しみ、希望を経験します。時には静かに全てを抱え込み、時には踊りながら吹かれる風の中に全てを投げ出すこともありますが、一つだけ確かなことは、私たちは共にこの人生を歩んでいるということ。それぞれの歌は私の人生の瞬間です。それぞれの人生は時代の一瞬。一分一分が大切なんです」

その他一連の曲は・・・
M2."Breathe"
M3."Made To Love"(LGBTQ) とエネルギッシュでポップな曲が続く(Ronnie Woodをフィーチャー)
M4."Different Kinds of Love" 情緒豊かなヴォーカル
M5."Diamonds" ピアノのバックに叙情的スローバラード、深く美しき感謝の訴え(真純なる愛に感謝)
M6."Don't Let Me Stand On My Own" Niall McNameeとのデュオ、民族的、牧歌的世界
m7."What We Did in the Dark " Miles Kane とのデュオ。アップ・テンポで典型的ロックだがどこか切なさが・・・
M8." Can't Say" 説得力の優しさあふれるバラード。彼女の訴えの歌い上げが聴き応え十分。歌詞は重く印象的な曲。
M9." Just One Kiss" 典型的な懐かしロック(Ronnie Woodをフューチャー)
M10."Solace" かなり品格のあるバラード、彼女の美声に包まれる。人生の光明をみつけて・・・
M11."Never Look Back" 祈りに近い訴え

  このアルバムは、イメルダ・メイが、U2、ルー・リード、シネイド・オコナー、ロバート・プラント、ヴァン・モリソン、ジャック・セイボレッティ、エルヴィス・コステロら、各種そうそうたるアーティストたちとデュエットを果たし成功してきたこと、近年ではジェフ・ベック、ジェフ・ゴールドブラム、ロニー・ウッドらのアルバムやライヴ・ツアーにも参加した。こんな経験から。幅広い音楽的影響を反映した、ひとつの折衷主義作品となった。それは想像するに、彼女は、過去のロックンロール一途では国際的発展性に割り込むのはむずしいと判断したこともあり、又彼女自身のブルース、ジャズ、ラテン音楽など、多様なジャンルの要素を持ち合わせたことの創造結果かと思う。
 そしてアイルランドにルーツを持つ複雑な社会的経験が重なっての彼女のSSWとしての能力がこの重厚な内容のあるアルバムが作り上げられたと思う。ヴォーカル・アルバムとしはその中身の重さに、そして曲の多彩さに感動するアルバムであった。
 最近、女性ヴォーカルものが低調であるので、日本ではどうも一般的でないアルバムでありながら中身の濃いところを紹介した。

(参照 Credit)  クリック拡大

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(評価)
□  曲・演奏・歌  90/100
□  録音      87/100

(試聴)

*

 

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