アントニオ・フスコ Antonio Fusco Trio「SETE」
独創性ある繊細なトリオ演奏による瞑想的な世界
<Jazz>
Antonio Fusco Trio 「SETE」
DA VINCI JAZZ / Import / C00696 / 2023
Manuel Magrini マニュエル・マグリーニ (piano)
Ferdinando Romano フェルディナンド・ロマーノ (double bass)
Antonio Fusco アントニオ・フスコ (drums)
イタリアの中堅ドラマーのアントニオ・フスコAntonio Fusco(1979年イタリアのソロフラ生まれ)がリーダーのピアノ・トリオ・アルバム。彼が探求する「スタイルの探求-独自の音楽言語の探求と開発」のテーマについては、その道では興味持たれているもののようだが、私にとっては初物であってちょっとおそるおそる聴いたというところであった。評価では確かにヨーロッパのジャズシーンでそれなりに興味深く、独創的なドラマーの一人とされているようである。音楽体験の共有によって人々を近づけることができるという信念を貫いた活動を積極的に行っているとの紹介がある。
又過去にもこのDa Vinci Jazzから日本人らとのクインテット作品を発表して好評を得、最近はドイツのボンを拠点に活動中とか。今回はペルージャ出身の大型新人ピアニスト:マニュエル・マグリーニをフィーチュアしており、又イタリアのベーシストで近頃リーダー・アルバムを初めて出したというフェルディナンド・ロマーノと組んでの自作曲が主である作品というところからも、実験的前進を期しての作品と見れる。
(Tracklist)
1. Wave
2. Quarantine
3. Alice In Wonderland
4. Peaceful Mind
5. Sete
6. The Happiness Tango
7. Pilgrimage
イタリアと言えば、歌心のある世界を想像するが、そんなところがどうも主力ではなく、コンテンポラリー・ユーロ系耽美派・詩情派の世界に陰影も描かれ、ドラマーのフスコのどちらかというと思慮深い作曲を通しての瞑想的な世界を描いている。
やっぱり私的には M5."Sete"のタイトル曲に最も関心を持った。なかでも最も美旋律系に属しての静かなピアノ・ソロからスタートして、ベースのアルコ奏法が、広大な地を描くが如く響き、ピアノがそれに乗ってゆく。そんな中にシンバル音が響くも静かな物思いにふける世界は続き、次第にドラムスがおもむろに曲の深みを更に誘うが、静かな中に心象風景の移ろいをトリオの繊細な音で仄暗く甘さよりはやや苦さの感じられる哀愁描写を展開。
そして続くM6."The Happiness Tango"が、思いの外ムードを反転して軽快なリズムを展開して、このあたりの下りはアルバムとしての曲のつながりの妙味を感ずるところで旨い。
(上 左Manuel Magrini、右Ferdinando Romano)
アルバム冒頭のM1."Wave"に戻るが、ここでは静かにして繊細な美しいピアノ、優しく響くシンバル音、それを支えるベースの響きに絶妙なトリオの交錯の見事な演奏がによって、瞑想的に迷入してゆくような流れに乗せられた領域に入る。
M2."Quarantine"では、単なるドラマー主導の曲展開でないことが十分感じられ、中盤のベースの演奏に惹かれる。
M3."Alice In Wonderland"のスタンダードで、アルバム中盤でほっとさせるところもなかなか上手だ。
全編を通じてパンチが十二分にきいていながら細かな味わいを聴かせるフスコの(ds)の展開に支えられての、結構雄弁に唄うロマーノの(b)の情味濃い演奏、そしてやっぱり重要なマグリーニの(p)の魅力は、なんといってもデリカシーなニュアンスに溢れるているところだろうと思う。そしていて鋭いキレのよさも有し流麗なアドリブの味は爽快で、このアルバムの重要な役をこなしている。コンテンポラリー・ユーロ系耽美派・詩情派の典型らしいなかなか味なトリオ作品だ。
(評価)
□ 曲・演奏 88/100
□ 録音 87/100
(試聴)
*
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