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2023年5月24日 (水)

[懐かしのアルバム] ハン・ベニンク  Han Bennink - Michiel Borstlap - Ernst Glerum 「3」

フリー・ジャズの新展開・・・自由なインプロヴィゼイションの競演

<Jazz>

Han Bennink - Michiel Borstlap - Ernst Glerum 「3」
VIA Records / Import / CD 992029.2 / 1997

920

Michiel Borstlap (p)
Ernst Glerum (b)
Han Bennink (ds)
1997年5月1日録音

  25年前のアルバムである。ピアノ・トリオ・スタイルであるが、リーダーは鬼才ドラマーのハン・ベニンクだ。私はピアノ・トリオ好きであるので、ピアノ好きという事になるのかもしれないが、ピアノ・ソロものより圧倒的にトリオものが好き、それはやっぱりドラムスの演ずる音の世界があっての事であろう。時にエネルギーが高まってくると聴きたくなるのがドラムスの世界なのである。
 このところ、どうも私の好みからはCDアルバムのリリースは低調。従ってストリーミングなどでいろいろと聴いてはみるが、やっぱり懐かしのCDが聴きたくなる。そんな中で、当時聴いたよりも今の方が納得できるアルバムの一つがこのアルバムなのだ。そんな訳で、このブログは2006年スタートで、それ以前のもので改めてここに記録しておきたいので取り上げることとした。

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 リーダーのドラマー・ハン・ベニンクHanBennink(上左)は、1942年オランダ生まれで、今も健在と思うが今年で81歳だ。このアルバムは1997年録音であるので当時彼は55歳、そんな円熟期の演奏が圧巻で迫ってくるのが聴けるアルバムなのである。
 とにかく彼は実験的な演奏スタイルで知られていた。従来のジャズ・ドラム演奏から非常に型破りなフリー・インプロヴィゼーションまで多岐にわたり、ステージ上の椅子、音楽スタンド、楽器ケース、そして自分の体(口や足)を奇妙に有効に使ったり、パフォーマンス・スペース全体(床、ドア、壁)を使っての音も取り入れていたという鬼才である。
 ボルストラップMichiel Borstlap(1966年生まれ)(上中央)はオランダのピアニストで、ジャズやクラシック音楽の要素を融合させた独自のスタイルで活躍している。過去に(1996年)彼の作曲「魔法の記憶」は、権威あるアメリカのセロニアスモンク/ BMI作曲家賞を受賞した。
 グレラムErnst Glerum(1955年生まれ)(上右)はオランダのベーシストで、ジャズや即興演奏の分野で幅広く活動していてアムステルダム音楽院の教官。
 こんな3人の集まったトリオ、如何に激しいフリー・インプロの世界か想像できるところであろう。

(Tracklist)
1 Round Midnight (Monk)
2 Huub (original)
3 Erroll   (original)
4 Take The A-Train (Strayhorn)
5 Masquelero (Shorter)
6 I Love You So Much It Hurts (Tillman)

  ライブ録音盤である。そして収録されたサウンドはクリアで聴き応えあり、かなりリアルだ。又ドラマーがリーダーということもあるのか、ドラムスの音がピアノ、ベースに劣らず迫力をもってして聴ける。とにかく圧巻。三者の共演というより競演である(笑い)。

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   M1." Round Midnight"は、冒頭のピアノの比較的弱い音の早弾きから、ドラムはブラッシでスネアドラムを叩く音で展開しうねるような強弱で、時にシンバルを入れ、ベースは落ち着いたメロディーを流す。流れとしてはドラムスが印象深い。
 M2." Huub"になって、ベースの軽快なリズムにピアノは前衛性を増し、ドラムスとともインプロが冴え渡る。
 M3."Erroll"ドラムスとピアノの競演の極み。終盤ドラムス・ソロが楽しめる。
 M4."Take The A-Train" 時に入るピアノの早弾きによる懐かしの旋律にほっとする。
 M5."Masquelero"  ここでも、ピアノとドラムスの競演が華々しく展開。ピアノのクラシック・ジャズ演奏と前衛性の競合がお見事。 
 M6." I Love You So Much It Hurt" ゆったりとピアノとドラムスの掛け合い。スティックによるリズムが冴え、シンバル音の響きが強烈。

 所謂オーディオ機器の性能を聴こうとするにも面白い。メロディーというより音が溢れて聴ける。鋭い音と激しい音とが入り乱れるが決してうるさいという感覚にならないところが、お見事。
 ベニンクのドラムス演奏は恐れ入るほど堪能できる。そして聴きどころは、ピアノの前衛的演奏の妙、ドラミングから押されての自由感覚から生まれる世界は見事。このアルバムを成功させた大きな因子であろうと思うところ。
 とにかくフリー感覚いっぱいのトリオ演奏だ。リリース当時、70年代のフリー系ピアノ・トリオが持っていたそれまでの「ザ・ピアノ・トリオ」という形を破壊した自由なインプロヴィゼイションと三者の相互関係における自由さが評判だった。
 今でも楽しめるアルバムである。

(参考) Han Benninkリーダー・アルバム
Instant Composers Pool (1968年、Instant Composers Pool) 
Derek Bailey & Han Bennink (1972年、Ictus) 
A European Proposal (Live In Cremona) (1979年、Horo) 
『円環の幻想』 - Spots, Circles, and Fantasy (1988年、FMP) 
『3』 - 3 (1997年、VIA Jazz) #
Jazz Bunker (2000年、Golden Years Of New Jazz) 
Free Touching (Live In Beijing At Keep In Touch) (2004年、Noise Asia) 
Home Safely (2004年、Favorite) 
3 (2004年、55 Records) #
BBG (2005年、Favorite) #
『Monk Vol.1』 - Monk Volume One (2008年、Gramercy Park Music) #
Laiv (2010年、Bassesferec) 

(#印 with Michiel Borstlap , Ernst Glerum)
 
(評価)
□ 選曲・演奏  90/100
□ 録音     90/100

(試聴)

*

 

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