ガブリエル・ラッチン Gabriel Latchin Trio 「 VIEW POINT」
まさに折り目正しく、正統派スウィンギン・ジャズのオリジナル曲集
<Jazz>
Gabriel Latchin Trio 「VIEW POINT」
Alys Jazz-Disc Union / Japan / DUAJ150070 / 2023
Gabriel Latchin (piano)
Jeremy Brown (bass)
Joe Farnsworth (drums)
Recorded in London at Livingston Studios on the 5th of May 2022
ガブリエル・ラッチン(英国、ロンドン生まれ。ピアニスト、作曲家 = 下左)は、これまでにリリースしたリーダー作3作品「Introducing Gabriel Latchin Trio」「Moon And I」「I'll Be Home for Christmas」で取り敢えず成功してきた。そしてこれらの3作品は同世代のミュージシャンと組んできたが、本第4作はメンバー一新、米ドラマーの大物ジョー・ファーンズワース(最近リーダー作品を楽しませてくれている = 下右)を迎え、ベーシストには英国のジェレミー・ブラウン(Stacey Kentとの共演で知る=下中央)というベテラン勢によるニュー・スペシャル・トリオによる作品で、全オリジナル曲集である。
とにかく「ここ数年で登場した最高の正統派ジャズ・ピアニスト」と紹介されているガブリエル・ラッチン。シダー・ウォルトンやハービー・ハンコックに捧げた曲を含めオリジナル11曲を収録している。
(Tracklist)
01. Says Who?
02. Prim And Proper
03. A Mother's Love
04. Train Of Thought
05. A Stitch In Time
06. Bird In The Hand
07. O Mito
08. Mr. Walton
09. Rest And Be Thankful
10. Just The Ticket
11. A Song For Herbie
ガブリエル・ラッチンは、"オスカー・ピーターソン、アフマド・ジャマル、ビル・エヴァンス等のピアノ・トリオからインスピレーションを得て、ハービー・ハンコック、バリー・ハリス、シダー・ウォルトンの演奏を見極めたピアニストで、その演ずるところは力強く、これらの影響を完全に吸収して、彼自身のサウンドを作り上げ、作曲を通して、最高級のストレート・アヘッド・ジャズを演ずる"と高評価を得ている。
確かにM01."Says Who?"からの快調なスウィングしての流れるピアノの音は心地よい。
そしてガブリエルがこの第4作は一つの余裕をもって作り上げたという内容で、それは子供たちのために書くという個人的な感情を作曲のインスピレーションとした人間的面を見せるところの娘に捧げる美しいバラードM3."A Mother's Love母の愛"と、子供二人をテーマにした明るい展開のM2."Prim And Proper"を早々に登場させている。
更に彼が個人的感情のオリジナル曲を堂々と展開したところには、彼が自らの心開いてゆくという一つの余裕を示しており、一方シダー・ウォルトンへのM8."Mr. Walton"、ハービー・ハンコックにM11."A Song For Herbie"などが、それぞれ自分が尊敬する先駆者に捧げているところにむしろみられる。
又 彼は、リズムの基礎を築くブラウンのベースに、ファーンズワースの推進力のブラシワークを展開させ、リーダーとしての活発なピアノ・ソロを乗せていったM09."Rest And Be Thankful"に見るように、トリオが如何に互いに反応しながら展開するかというトリオの味をも知り尽くして見事に構築している。
更にこの事は、M05."A Stitch In Time"では、三者の演ずるところを知らしめるべく、見事にそれぞれの演技を描く展開を忘れずに曲を構成しているところは、これまた聴きどころである。
こんな流れの中でも全体的に決してストレート・アヘッド・ジャズの基礎を忘れず堅守しているところに恐れ入るところだ。とにかくノリよく親しみやすく、しかもメロディーは豊かであってスインギーな流れが気持ちよい。
久々に正統派ジャズというものの快感を味わえる作品にお目にかかった。
(評価)
□ 曲・演奏 90/100
□ 録音 88/100
(視聴)
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