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2023年7月23日 (日)

ピンク・フロイドの頭脳・ロジャー・ウォーターズ「新『狂気』」10月公開 Roger Waters 「The Dark Side Of The Moon REDUX」

50有余年、ロックと共に戦ってきた男の心のアルバム

<Progressive Rock>

Roger Waters 「The Dark Side Of The Moon REDUX」

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(この動物(犬)の目の中に、あのジャケのプリズムが光を分散している=クリック拡大してみると解る。にくい演出です)

   ロジャー・ウォーターズがロック界きっての名作『狂気 The Dark Side of The Moon』(1973)のオマージュ作品を温めていたが、その公開に踏み切った。この10月にリリースされる。

Rwrockdownsw  コロナ・パンデミックにてすべてが抑制された中での先ごろの話題のロックダウン・セッションThe Lockdown Sessions』(2022 →)としてリリースされたアルバムに納められた曲を、それぞれの過去の曲からアコースティックな雰囲気への削ぎ落とされた曲として録音した時、アルバム『狂気』のリリース50周年が間近に迫っていた。このアルバムは、オリジナル作品へのオマージュとしてだけでなく、アルバム全体の政治的、感情的なメッセージに再び取り組むためにも、同様のリワークの適切な候補になる可能性があると思いついたのだという。

362115349_807288040768w  ウォーターズはこのところの協力者と話し合いリリースに向けて製作にかかることにしたもの。それは彼が言うように、明らかにかけがえのないオリジナルの代替品でなく、それは79歳の男性が29歳の目に映り描いた世界から50年経た今日のその間を振り返り、ウォーターズのトラウマと言うべき幼少時に戦死した父親との対峙であり、私の詩を引用するために、「私たちは最善を尽くし、彼の信頼を保ちました、私たちの父は私たちを誇りに思っていたでしょう」と言う世界である。

 こうした作品のリリースにはD.ギルモアは例のごとく反対したが(もう彼の独占欲はいいかげんにしてほしい)、ピンク・フロイドのスタート時からのメンバーのニック・メイスンは、むしろ当時からの制作目的、心情を知っているがゆえに、その内容に大きな評価をして、ウォーターズ主導であった『狂気』(曲は10曲中8曲にウォーターズがクレジットされており、歌詞は全て彼の当時の心情で書かれている)の半世紀の経った現在の世界をオーバータブして描いたアルバムのリリースに賛同した。このことはリリースに大きな力になったのだ。

 そしてこの10月CD、LP、ストリーム等でリリースされるが、ここに来て現在その中の曲"Money"のみが公開された。(↓)


 これを聴いてみて、やはりこのところウォーターズのライブ『This is not a Drill』(下左)や、彼の国連での発言(下中央)、又ドイツの反ユダヤ主義としての反発事件とそれに対抗しての歓迎キャンペーン(下右)など、相変わらず彼の歩むところ、問題が起きてはいるが、これこそ彼の歩んできた道であり、そのようなミュージシャンとしては異色の行動からの反発に対してもめげずに戦っている80歳を迎える男の生きざまには圧倒される。

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 ロック界においては、いろいろな老け方があるが、レナード・コーエンのような"老紳士の味わい"を前面に出しての世界も素晴らしいが、ウォーターズのように今も「Resist CAPITALISM」、「Resist WAR」、「Resist FASCISM」を掲げて戦い抜いている姿も、これ又人それぞれの道であり、評価に値するところだ。
 10月のニュー・アルバムの内容におそらく彼の80歳男の心情が見えてくると思われるが、これは過去の名作『狂気』とは全く別の観点で描くところのモノであって、ニック・メイスンも共感した時代を見つめてきたロック活動家の姿をここに味わいたいと思うのである。

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コメント

半世紀、ですね。

来し方、行く末を思わざるを得ません。

投稿: iwamoto | 2023年7月23日 (日) 14時45分

iwamoto様 
こんにちは、コメント有り難うございます
あの名作『狂気』も、最後の曲"Eclipse"をこのロジャー・ウォーターズが造り、このアルバムのコンセプトが出来あがった訳ですが、当時は人間として未来志向の29歳、今こうしてその後、半世紀を生きてきて究極の処あくまでも「Resist」にこだわる80歳を迎える男の世界には興味がありますね。
出来上がった半世紀後のアルバムの重さに期待して楽しみにしているのです。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2023年7月23日 (日) 16時33分

エリッククラプトンとロジャー・ウォーターズの交流があったことは全く知らなかったことでビックリしました。「狂気」はピンク・フロイドの最高傑作と言われながらも、「おせっかい」までの音楽性が大好きだったRWはこのアルバムを購入しながらも全く違和感ばかりで売り飛ばしてフロイドとはおさらばしてしまいましうた。しかし若かった当時の思いこみで嫌いになってしまったことを反省し、この秋には「狂気」「あなにたにここにいてほしい」の2名盤を特集して本質の魅力を再発見しようと思っています。

投稿: ローリングウエスト | 2025年4月 2日 (水) 20時31分

ローリングウエスト様
コメント有り難うございます
エリック・クラプトンに関してブルース・ギター話も良いのですが、私はロジャー・ウォータースが最も血気盛んなピークを迎えたアルバム「ヒッチハイクの賛否両論」による共演が印象深いのです。人間の深層心理にも迫ったんですから。
ロジャーはこの後、「ブリーディング・ハート・バンド」という更に血の気の多い世界に突入し、原爆阻止を展開するのですが、クラプトンはウォーターズとのお付き合いは意味もわかり同調はしても、ついて行くには大変になったのは解りますね。ウォーターズの世界はウォーターズ以外は無理ですね。(笑)
(参考)http://osnogfloyd.cocolog-nifty.com/blog/2019/12/post-fdcddd.html

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2025年4月 2日 (水) 22時40分

「ピンク・フロイド」が1971年にイタリアのポンペイ遺跡で敢行した伝説のライブパフォーマンスをとらえた音楽ドキュメンタリー映画が公開されますね!
https://eiga.com/movie/25840/
(PS)昨年4~5月の世田谷・新緑ウォーキング(穴場探訪)のレポートを公開しましたのでまた覗いてみて下さい。

投稿: ローリングウエスト | 2025年4月20日 (日) 20時32分

ローリングウエスト様
コメント有難うございます
ピンク・フロイドのイタリアのポンペイ遺跡でのライブパフォーマンス映像は過去に何回かリリースされていて、そう新しいものは少ないと思います。
そもそも日本でNHKがテレビで取り上げて、日本でピンク・フロイドが注目されたのも、このポンペイの映像物です。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2025年4月22日 (火) 10時48分

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