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2023年8月 7日 (月)

ケイティ・ジョージ Caity Gyorgy 「You're Alike, You two」

クリーンヴォイスでジェローム・カーンに捧げるピアノとのデュオ作品

<Jazz>

Caity Gyorgy & Mark Limacher「You're Alike, You two」
MUZAK,fab / Japan / MZCF-1456 / 2023

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Caity Gyorgy ケイティ・ジョージ (vocal)
Mark Limacher マーク・リモーカー (piano)

2022年8月、The National Music Centre(カルガリー)録音

 昨年(2022年)5月、ここでデビュー・アルバム 『PORTRAIT of CAITY GYORGY』(MZCF-1448 / 2022)を取り上げたケイテイ・ジョージだが、日本でも比較的好評で早速ここにニュー・アルバムの登場である。

Licensedimagew_20230806172801  カナダのグラミー賞『JUNO Award2023』にて、「Best Jazz Vocal Album of The Year」を2年連続受賞という快挙を達成したようだが、巨匠ジェローム・カーン(→)に捧げたアルバムの登場となった。いずれにしてもシンガー、コンポーザー、アレンジャー、プロデューサーのマルチな技能で快進撃を続けるという才女ぶりだが、カナダでコンポーザー、オーケストラのアレンジャーとして活躍する注目の新世代ピアニスト、マーク・リモーカーを迎えてデュオ・スタイルで制作した今作は、彼女の一曲以外は全てジェローム・カーンの作品で埋め尽くされた。
 ジェローム・カーン(1885-1945)はアメリカ、ニューヨーク出身で、戦前流行のミュージカルの作曲家。ジャズのスタンダードとなった曲が多く、代表作には「煙が目にしみる」だが、「イエスタデイズ」「オール・マン・リヴァー」「アイム・オールド・ファッションド」「思い出のパリ」などがある。彼女がなぜカーンを取り上げたかは不明だが、ジャズ・スタンダード曲に好感を持っていたのかもしれない。どちらかというと瑞々しいクリーン・ヴォイスのケイティ・ジョージ(下左)とマーク・リモーカー(下右)の端正なピアノで綴った作品と言うところにある。 

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(Tracklist)

1 Nobody Else But Me 03:40
2 A Fine Romance 04:13
3 Yesterdays 02:47
4 I'll Be Hard to Handle 04:05
5 You Couldn't Be Cuter 03:30
6 Bill 04:23
7 I'm Old Fashioned 03:09
8 April Fooled Me 03:51
9 Pick Yourself Up 03:53
10 The Bartender 03:11

 ピアノとのヴォーカルというデュオ作品で、彼女の歌がバックに隠れるということなく十二分に楽しめる。選曲は意外にマニアックで一般にポピュラーなスタンダードという事ではないために、かえって新鮮である。しかし何となく曲風はオールド・タイプの雰囲気であり、前作のポピュラーよりの曲よりはジャズのニュアンスが強い。
  ただ今回の彼女の声質は録音のせいか、高音がきつくちょっと気持ちよく聴くというには刺激が強い。私のオーディオ装置としてはあまり相性が良くなかった。

 M1.M2.は編曲の関係もあるか、私の知らない曲で音質も固く落ち着いて聴いている雰囲気でない。
 M3."Yesterdays"は、中低音部が多いせいで、若干しっとりとした仕上げで声のきつさもとれて、ようやく聴きこむことが出来た。
 M4."I'll Be Hard to Handle"彼女のスキャットを生かしたヴォーカルで、ジャズとしては歌う方聴く方両者プロ好みかも、ただ私にとってはあまり魅力を感じない。
 M5."You Couldn't Be Cuter "やはりこうして聴いているとオールドタイプで、ミュージカルっぽい。
 M6." Bill "しっとりとしたこの曲となって、優しさも加わってなんとなく聴きこむ曲となりピアノとの関係も生きてこのスタイルで私はもう少し押してほしかった。
 M7.以下では、M.8 " April Fooled Me"あたりがなんとなく戦前の良き時代のムードの中での物語風で、バラード調に仕上げられていて私好み。ピアノも語り聴かせる演奏は抒情性と優美性があって気持ちが良い曲であった。

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 今回の演ずるところ、戦前のミュージカル・イメージで意外に溌溂していて、歌う本人にはそれなりに芸を要求されてジャズ心を刺激して張り合いのあるところにありそうだが、どうも聴く方の私にとっては時代的ズレと好みから一致できなかった。しかし一部のバラード調の曲では十分の歌唱力を示していた。今後の彼女の展開を占うようなアルバムだ。
 リモーカーのピアノは、時代を表現した躍動感ありの流れに極めて快調にリズムカルに流れ好感あり、一方のバラード調の曲ににおいては抒情性を表現してなかなかの展開。

 まあ彼女は芸達者と言える新人としての作風はかなりのものは感ずるが、私にとっては今後聴きたいヴォーカリストに入るかどうかは、まだまだ決まらない世界であった。・・・何といっても高音部の声の質と録音が快感でなかったことが問題だ。

(評価)
□ 選曲・演奏・歌  85/100
□ 録音       83/100

(試聴) 推薦曲"April Fooled Me"



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