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2023年8月17日 (木)

ニルス・ラン・ドーキー Niels Lan Doky 「Yesterday's Future」

デンマークの騎士のピアノ・ジャズ・プレイ

<Jazz>

Niels Lan Doky 「Yesterday's Future」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1114 / 2023

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Niels Lan Doky (piano)
Tobias Dall (bass except 04,10,12)
Nikolaj Dall (drums except 04,10,12)

Live at the Louisiana Museum of Modern Art

  寺島レコードから寺島靖国氏の推薦と言っていいのだろうデンマークの人気ピアニストのニルス・ラン・ドーキー Niels Lan Dokyのアルバムがリリースされた。(本国ではLPのみで、日本でCDリリース)

 実はちょっと意外でもあったのは、彼の演ずるところ寺島氏は果たして好みなのだろうかと言うところであった。私も実は彼のアルバムは以前にも聴いているがあまり気合が入らない。2021年にここでアルバム『Improvisation On Life』(2017)を取り上げたが、彼のデンマーク生まれの体質を感ずる美メロディーが生きていたのを評価したが、私の好みとしては今一歩、ジャズの味に満足感が得られず、評価としては良好標準80点として一段上げて85点としたのだった。

202109080900w  今回、取り敢えず寺島氏のライナー・ノーツでどんなことを書くのか、それも興味で取り敢えず手に入れて聴いてみたというところである。
 ニルス・ラン・ドーキー(→)は1963年デンマークのコペンハーゲン生まれで、ニューヨークからパリでの活動を経て母国デンマークへ戻り(2010年)、地道に更なる研鑽を重ねてきた国際派の人気ヴェテラン・ピアニストである。今回はトリオ編成によるデンマークのルイジアナ近代美術館でのコロナ明け2022年の公演の模様を捉えたライヴ・アルバム。寺島氏によるとこのアルバム作成は彼の方から申し入れてきたという事のようだ。ちょっとこんなところからも内容は若干懐疑的な気持ちで聴いたところであった。

(Tracklist)

01. Children's Song
02. Farewell Song
03. Forever Frank
04. Where The Ocean Meets The Shore (solo piano)
05. Sent From Heaven
06. Just Do It
07. Yesterday's Future
08. Free At Last
09. Rough Edges
10. December (solo piano)
11. High Up North
12. Afterthought (solo piano)
13. Are You Coming With Me?
14. Misty Dawn
15. Yesterday's Future - studio version - (*bonus track)

  やはり相変わらず端正なピアノの響きである。評価は"落ち着きや安定性を感じさせると同時に鋭いキレのよさや適度な尖り感をも湛えた、澄みきったクリスタルの如き潤いある鮮明タッチのピアノが響く"と表現されている通りだが、曲展開はアクティヴィティ溢れるメロディック・プレイと叙情性あるメロディーある曲の取り交ぜたアルバム構成で変化に富んでいる。
 しかし、自然の情緒ある世界や心情の表現の哀愁ある世界の表現である曲が私にとっては納得の世界であって、ダイナミック・スウィギング・アクションを求めた曲では、トリオとしての何かジャズの不思議な味わいにもう一歩満足感が無かった。例えば、M8."Free At Last"などでも、あらゆる種類の解放感を祝う曲と言うのだが、トリオならでの楽しさがあまり感じられないのだ。


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 そんなことから、私的に於ける推薦曲はM1." Children's Song"のどこか子供たちに愛着あるメロディーの快感、M4."Where The Ocean Meets The Shore"のソロ・ピアノで描く自然への心情などが・・
 又タイトル曲のM7."Yesterday's Future"が、やはり聴きどころで、人の心情の陰影が感じられて納得。しかしベース、ドラムスは単なる添え物で味気ない。
 その他は、M14."Misty Dawn"の神秘的な美しさに迫ろうとした印象は悪くはなかった。

 全体的な印象は端麗さとクラシック的真面目さがとこかに目立って、泥臭い人間性と言う世界には迫り切れていないし、又一方哲学的深淵さも至っていない。そんな点が究極中途半端的で、はっきり言って寺島靖国氏のお気に入りのジャズの楽しさも、スタンダードの世界が無いだけに、薄いのではないかと思ったところだ。更にトリオといってもピアノのためのトリオであって、3者で築くトリオというニュアンスが少ないところが空しいのかもしれない。
 寺島氏にとってもこのニルスのアルバムは一つのテスト的アプローチであったと思う。この後にアレサンドロ・ガラティのように何枚かのアルバムに繋がってゆくという事はないだろうと思った次第。

(評価)
□ 曲・演奏 87/100
□ 録音   87/100

(試聴)

 

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