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2023年10月29日 (日)

アンダース・オールム Anders Aarum Trio 「OSLO PUZZLE」

北欧の味を持った中堅のピアノ・トリオ作品

<Jazz>

Anders Aarum Trio 「OSLO PUZZLE」
Ozella Music / Import / OZ105CD / 2023

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ANDERS AARUM – piano
JENS FOSSUM – double bass
HERMUND NYGÅRD – drums

All compositions by Anders Aarum
Recorded at Muusikkloftet Studio 30 may 2020

  私にとってはこれはノルウェーの初物ピアノ・トリオ作品。このアルバムは、リーダーはノルウェーのピアニスト、アンダース・オールムAnders Aarum(1974年12月17日、ノルウェー、モス生まれ 下左)で、もう20年も前の2001年にHot Club Records盤『LUCKY STRIKE』というアルバム(ピアノトリオ作品)がリリースされているということで、なかなか経歴あるあるミュージシャンだ。そしてこのOzella Musicから何枚かのピアノ・トリオ作品をリリースしているという事で、知らぬは私だけだったかもしれない。
 しかし、このメンバーによるトリオ作品はこれが最初のようで、そんな意味ではやはりある意味初物である。何んといっても北欧らしい叙情味のある美メロものということで、聴くことになったものである。聴いて即、音質の良さに気づいた為取り敢えずCDを購入した。

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 メンバーのイェンス・フォッサム(Bass, 上中央)とヘルムンド・ナイガード(Drums, 上右)もノルウェー生まれで、3人は15年以上にわたり、伝説的なハー・ニルセン・ジャズ・クラブで毎週開催されるジャム・セッションで定期的なパートナーであったようだ。 2010 年、彼らはオスロの旧市街にスタジオ コレクティブを設立し、その場所から、共同プロジェクトや個別プロジェクトが数多く誕生させた。しかし、今回、このアルバムではそこから離れてオスロ郊外にあるノルウェー最大の精神病院のパーティーホールにある「Musikkloftet」の美しいスタジオで録音することにした。 3日間、彼らはこの奇妙だが美しい空間で働き、このレコーディングの最終日である3日目に、映画を作るために全曲を再録音した。かってそこに住んでいた失われた魂たちにコンサートを行っているような気分だったとか。 ミキシングのプロセスでは、最終的にこの最終日の録音のみを選択することになり、つまり、このアルバムの全曲は2020年5月30日日曜日に1時間半でレコーディングされたもののようだ。

(Tracklist)

1 Oslo Puzzle
2 El Jucan
3 The Wandering Lilly
4 Tune In, Drop Out!
5 Spaghetti Junction
6 Ivory Tower
7 Jason Paradisa & the Beautiful Fire
8 Subway Acrobat
9 Drachmanns Point of View
10 Pata Paso

 よく解らないのだが、このアルバムのアイデアは、ノルウェーの首都の歴史に登場する魅力的な人々(住民)についての本「Oslo originals」を読んだ後にオールムが思いついたというのだが、そんなことでアルバムの各トラックは、注目した15人の肖像画を描くと彼は決めたというのである。
 従ってタイトルの「Puzzle」というのが、良く解らないが「当惑、混乱、困らせる人」という意味なのだろうか。まぁそれを具体的に語る人、そしてその道に詳しい人に巡り合うという事も難しいし、又そのあたりの状況を解説してくれる人はどうも見当たらない。
 取り敢えず、聴く方は状況を自分の世界で聴くしかないのでそんなところでの感想である。

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 M1."Oslo Puzzle" 低音でスタート、やや暗さの印象あるが、どこか回顧的な情景に聴こえてくる静かな落ち着いた世界、ピアノの澄んだ響きは美しい。
 M2." El Jucan" エル・フカン、ファキール(イスラム世界において神秘的修行を行う者。アラビア語での貧者)になろうとした歌手でガラスを食べる奇人(?)を描いているのか。良く解らないがピアノの流麗な展開。
 M3."The Wandering Lilly" ちょっとドラマックな展開。
   M4."Tune In, Drop Out!" リズムカルな世界
   M5."Spaghetti Junction" ベースの旋律の語りとピアノの旋律による対比で進行
 M6."Ivory Tower"  北欧としては珍しいスローブルース調の曲。
 M7." Jason Paradisa & the Beautiful Fire"  描くは、オスロのイースト・ビレッジでパレードして説教したジェイソン・パラディサのようだ。演奏はベースとピアノの掛け合い的な流れが面白く、なんとなく美しい世界だが・・・。
 M8."Subway Acrobat" オスロの地下鉄で派手な衣装を着た体操ショーで知られる「ヘルマンセン弁護士」にインスピレーションを得たというが、曲展開は陽気な雰囲気。
   M9." Drachmanns Point of View" 静かな美しい情景が目に浮かぶ曲。Drachmannというのは作家の名前か。

  とにかく登場の対象人物の理解は難しいので、その点はおいおい解ってくるのもあるのだろうと思いつつ聴いたわけだ。トリオそれぞれの役柄がなかなか堂に行っているトリオで、お互い知り尽くしていて充実した展開で聴きやすい。ピアノの澄んだ音には魅力があるし、ベースのソロ展開、落ち着いたドラムスのリズムワーク・・・など、オスロの中堅ミュージシャンの実力の姿のように思う。なかなか優れたミュージシャンの多いノルウェーの一つの姿として聴くと良いのかも。ノルウェー・ジャズ・ピアニストと言うと私的には Helge Lien だが、美的感覚はこのオールムとは異なった世界であって、私の好みははLienの方かなぁーと言っておきたい。

(評価)
□ 曲・演奏   88/100
□ 録音     90/100

(試聴)

*

 

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2023年10月24日 (火)

ケヴィン・ヘイズ HAYS STREET HART 「Bridges」

刺激を抑えた旅情や叙情性の流れがハイレベル

<Jazz>

HAYS STREET HART 「Bridges」
SMOKE SESSIONS RECORDS / Import / SSR2307 /2023

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Kevin Hays (piano)
Ben Street (bass)
Billy Hart (drums)

2023年4月13日米NYのSear Sound Studio 録音

  ピアニストのケヴィン・ヘイズ(1968年米ニューヨーク州生まれ)は、 Kevin Hays Trio 、そして近年 Kevin Hays New Day Trio などで知られるところだが、 先ごろのベーシストのベン・ストリート(米メーン州生まれ)、ドラマーのビリー・ハート(1940年米ワシントンD.C.生まれ)と組んだトリオによるこれは第 2 作目となる『Bridges』が リリースされた。
 このメンバーの前作『All Things Are』(SSD-2102/2021)を取り上げたのは2年前だが、元々、これはビリー・ハートの80歳という誕生日を祝うために集まった即席セッション・ライブを行ったもの。そしてパンデミックの最中、ストリーミング配信のためのライブ演奏であったが、リハーサルの時間もほとんどなかった 1 回きりのコンサートのつもりだったようだ。しかし、この3 人のミュージシャンが、なんとこのトリオの世界を探求に向く方向に一致して、2021 年に3人名義でのトリオのデビュー作『All Things Are』を発表した経過だ。それの評価が良かったせいか、ここに2ndが登場することになった。この世代を超えたトリオが、多分相性が良かったのだろうと思うが、どこか抒情的な中に何となく温かみみたいなものがあり、そうかといって甘くは無く冷静な世界が構築されていて聴き応えあるアルバムを老獪に造り上げている。今回は環境の良いレコーデング・スタジオでの録音である。

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(Tracklist)

1. Butterfly (Kevin Hays) 6:16
2. Capricorn (Wayne Shorter) 5:52
3. Song For Peace (Kevin Hays) 4:31
4. With A Little Help From My Friends (John Lennon / Paul McCartney) 4:34
5. Row Row Row (Kevin Hays) 4:28
6. Throughout (Bill Frisell) 5:24
7. Irah (Billy Hart) 5:44
8. Bridges (Travessia) (Milton Nascimento, Fernando Brant & Gene Lees) 6:34

 どうも"Bridge"というタイトルは、"架け橋"の意味で、このトリオ結成後、相性の良さから継続的な取り組みの成果で実現したアルバムとしての意味に繋がっているようだ。現代の巨匠3人によるアンサンブルの繊細さハーモニーの美しさは、完成度が高くまさに、現代NYピアノトリオの実力を聴かせてくれる感がある。

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 M1." Butterfly" は叙情的なヘイズのピアノが地に付いたリズム隊の流れをベースに暖かさを感ずる世界を描く。昔ハンコックのファンク時代に同じ名の曲があったが、同じなのかあまりにイメージが違って解らない。
 M2."Capricorn"はウェイン・ショーターの曲で、後半にかなり3者それぞれのマニヤックな世界が展開して面白く刺激的。しかし沈み込んでゆくが如しで旨く最後はまとめる。
 M3."Song For Peace"  ヘイズの曲で、バラード演奏は静の中に息をのむようなスリルもあって見事。このアルバムの注目曲。
 M4."With A Little Help From My Friends" ビートルズの登場、ヘイズのロック心、まあこんなところか。
 M6."Throughout " 静に宿す神秘性が描かれる。
 M7."Irah" ハートの曲、変調するリズムの味付けはやはりドラマーか。
   M8."Bridges" 締めはアルバム・タイトル曲、ピアノの優しく美しい響きでスタートして、なんとなく心にしんみり響いてくる。

  結構スウィングする中に、刺激度の抑えた演奏で温かみとか優しさというか人間愛が感じられる世界を構築している。なんといってもむしろ難解にしないところにハイレベルを感ずる演奏である。やはりストリートとハートの曲の流れを作り上げる展開に、悠々とヘイズが余裕のピアノ・プレイで聴か̪し、それはどこか人間的なところに迫ってくるところがあって、前作に続いて、かしこまらずに余裕で聴けるところが良い。

(評価)
□ 曲・演奏  88/100 
□ 録音    87/100

(試聴)

*

 

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2023年10月19日 (木)

秋の夜長は「ショパン夜想曲」 (Jan Liieski, Koji Oikawa, Maurizio Pollini & Vladimir Ashkenazy)

<Classic>

演奏者の違いを楽しむ ??・・・フレデリック・ショパン 「夜想曲」

  秋になっても、今年もまだまだコロナ感染症から卒業したわけでもなく、諸々の行事の再開はあっても、まだまだ自粛ムードがただよっていてなんとなくちょっと寂しい夜になる。そんな秋の夜長には、毎年のことではあるが、その美しさの中にどこか憂いもあっての人気曲「ショパンの夜想曲」を聴きながら過ごすのが一番良いのでは・・・そこで今夜はよく聴いているアルバムを紹介する。

①    ヤン・リシエツキ 「夜想曲全集」 MQA-CD(88.2kHz/24bit)
       Jan Lisiecki  「Frederic Chopin COMPLETE NOCTURNES」
       Deutsche Grammophon, Universal Classics / JPN  / UCCG45019/20 / 2021

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録音: 2020年10月 ベルリン

(ディスク: 1)
1 3つの夜想曲 作品9 第1番 変ロ短調 (第1番)
2 3つの夜想曲 作品9 第2番 変ホ長調 (第2番)
3 3つの夜想曲 作品9 第3番 ロ長調 (第3番)
4 3つの夜想曲 作品15 第1番 ヘ長調 (第4番)
5 3つの夜想曲 作品15 第2番 嬰ヘ長調 (第5番)
6 3つの夜想曲 作品15 第3番 ト短調 (第6番)
7 2つの夜想曲 作品27 第1番 嬰ハ短調 (第7番)
8 2つの夜想曲 作品27 第2番 変ニ長調 (第8番)
9 2つの夜想曲 作品32 第1番 ロ長調 (第9番)
10 2つの夜想曲 作品32 第2番 変イ長調 (第10番)
11 2つの夜想曲 作品37 第1番 ト短調 (第11番)
12 2つの夜想曲 作品37 第2番 ト長調 (第12番)
(ディスク: 2)
1 2つの夜想曲 作品48 第1番 ハ短調 (第13番)
2 2つの夜想曲 作品48 第2番 嬰ヘ短調 (第14番)
3 2つの夜想曲 作品55 第1番 ヘ短調 (第15番)
4 2つの夜想曲 作品55 第2番 変ホ長調 (第16番)
5 2つの夜想曲 作品62 第1番 ロ長調 (第17番)
6 2つの夜想曲 作品62 第2番 ホ長調 (第18番)
7 夜想曲 ホ短調 遺作 作品72の1 (第19番)
8 夜想曲 ハ短調 遺作 KK IVb/8 (第21番)
9 夜想曲 嬰ハ短調 遺作 KK IVa/16 (第20番)

 このところ一番聴いているのがこのアルバム。これはHi-Res88kHz/24bitのいろいろと話題が絶えないMQA-CDである。幸い私のオーディオ装置はMQA対応であるため、その高音質を楽しんでいる。とにもかくにも非公開の技術的部分を持ってのMQAで、その音質の良さから支持者は多いが、果たしてこれが純粋にオーディオ的に評価されるのかと疑問を投げかける勢力もあって、支持は2分してきたところである。しかし現在高音質をうたったSACDと比較して、廉価とそのデジタル・データの小ささから便利であることは間違いなく、又実際の聴き比べでも劣っていないため支持者とアンチ勢力の渦の中にある。

0407_janlisieckiw  さてこのアルバム、演奏者ヤン・リシエツキは、1995年、ポーランド人の両親のもとカナダで生まれた天才ピアニスト。13歳&14歳の時の音楽祭での演奏が、ポーランド国立ショパン協会からリリースされCDデビュー、15歳でドイツ・グラモフォンと契約し、17歳でショパン:練習曲集(全曲)をリリース。天才的ショパン弾きによる待望の夜想曲全曲録音(25歳)であった。
 21曲のショパンの夜想曲(ノクターン)は、20歳から晩年に至るまで作曲されたもので、その時々の人間的、芸術的深みがあって作風の変遷もあり人気を誇るショパンの代表作であり、演奏者の評価にも関心がもたれるところだ。
 今回取り上げた4人の演奏者のものの中でも、最も一曲一曲の演奏時間が長く、ルバートが最も効かせているように聴けた。強弱、緩急の表現に心を注いで若いなりきのリリシズムの追及にも力を注いだ演奏だ。このあたりの評価はプロフェッショナルにまかせるが、なかなか現代的ともいえる。

 

②   及川浩治 「ショパン ベスト」SACD (Stereo / Multi-ch)
  Koji Oikawa  「THE BEST OF CHOPIN」
      AVEX CLASSICS / JPN / AVCL-25097 / 2006

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 録音 : 2006年1月 兵庫県立芸術文化センター  

   このアルバムは、下のリストのように、夜想曲に限ってのものではなく、練習曲、円舞曲、ポロネーズ、前奏曲そして子守歌などが収められている。CDは、SACDハイブリッド盤で5Chサラウンドでも聴ける。
 アルバム自身の音質も良好であるので、彼の比較的硬さよりでない柔らかな音も澄んでいて気持ちが良い。今回取り上げた4枚のCDではやや現代的解釈が入った方に入るのかという程度のところで、ダイナミックさも極端なところが無く音の強弱、ルバートなども昔の演奏者よりは意識された感があるが、近頃の標準的かと思わせる演奏だ。

 及川浩治は1967年生まれで、これは40歳前後の作品となる。90年に20歳少々で第12回ショパン国際ピアノ・コンクールで最優秀演奏賞を受賞。95年にデビューリサイタルを行っている。又99年のショパン没後150年には、「ショパンの旅」というタイトルのコンサート・ツアーを行い大成功している。

Sddefaulttrw (Tracklist)
1 夜想曲 第1番 変ロ長調 作品9-1
2 夜想曲 第2番 変ホ長調 作品9-2
3 練習曲 第3番 ホ長調 作品10-3 ≪別れの曲≫
4 練習曲 第4番 嬰ハ短調 作品10-4
5 練習曲 第5番 変ト長調 作品10-5 ≪黒鍵≫
6 練習曲 第12番 ハ短調 作品10-12 ≪革命≫
7 ワルツ 第9番 変イ長調 作品69-1 ≪別れのワルツ≫
8 ワルツ 第1番 変ホ長調 作品18 ≪華麗なる大円舞曲≫
9 ワルツ 第6番 変ニ長調 作品64-1 ≪子犬のワルツ≫
10 夜想曲 第20番 嬰ハ短調 (遺作)
11 幻想即興曲 嬰ハ短調 作品66
12 夜想曲 第8番 変ニ長調 作品27-2
13 ポロネーズ 第3番 イ長調 作品40-1 ≪軍隊≫
14 前奏曲 第4番 ホ短調 作品28-4
15 前奏曲 第7番 イ長調 作品28-7
16 前奏曲 第8番 嬰ヘ短調 作品28-8
17 前奏曲 第15番 変ニ長調 作品28-15 ≪雨だれ≫
18 前奏曲 第16番 変ロ短調 作品28-16
19 ポロネーズ 第6番 変イ長調 作品53 ≪英雄≫
20 子守唄 変ニ長調 作品57

 

③   マウリツィオ・ポリーニ 「夜想曲集(第1-19番)」CD
      Maurizio Pollini 「CHOPIN NOCTEURNES」
      Deutshe Grammophon, Universal Music / Japan / UCCG9647/8 /  2005

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録音 : 2005年6月 ミュンヘン

(Mauriziopollinitrw Tracklist)
(Disc-1)
1-3  3つの夜想曲 作品9 (第1-3番)
4-6  3つの夜想曲 作品15 (第4-6番) 
7-8  2つの夜想曲 作品27 (第7-8番 )
9-10 2つの夜想曲 作品32 (第9-10番) 
(Disc-2)
11-12 2つの夜想曲 作品37 (第11-12番) 
13-14 2つの夜想曲 作品48 (第13-14番) 
15-16 2つの夜想曲 作品55 (第15-16番) 
17-18 2つの夜想曲 作品62 (第17-18番) 
19 夜想曲 ホ短調 遺作 作品72の1 (第19番)

  マウリツィオ・ポリーニは1942年生まれであるからの60歳過ぎのノクターンの録音である(現在は81歳)。若干18歳で第6回ショパン国際コンクールで優勝という才能の持ち主である。やはり演奏は美しいですね、音楽の歴史の深いイタリアの芸術・文化からの結晶を感じます。感情の爆発の名演というのでないために意外にあっさりした印象を持つが、楽曲の本質を理解し感情的深さを見極めた誠実な演奏といった方がいいのかもしれない。そんな世界を十分堪能できるアルバムである。それぞれの曲の演奏時間も上の2枚のアルバムより若干短く中庸を得ていることが解る。

 

④ ヴラディミル・アシュケナージ 「夜想曲選集」CD
  Vladimir Ashkenazy「CHOPIN NOCTURNES」
      LONDON / Polidor / JPN /  POCL-5035 / 1993

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録音 : 1970-1983

Ashkenazytrw (Tracklist)
1 夜想曲 第1番 変ロ短調、Op.9-1
2 夜想曲 第2番 変ホ長調、Op.9-2
3 夜想曲 第3番 ロ長調、Op.9-3
4 夜想曲 第4番 ヘ長調、Op.15-1
5 夜想曲 第5番 嬰ヘ長調、Op.15-2
6 夜想曲 第8番 変ニ長調、Op.27-2
7 夜想曲 第10番 変イ長調、Op.32-2
8 夜想曲 第13番 ハ短調、Op.48-1
9 夜想曲 第15番 ヘ短調、Op.55-1
10 夜想曲 第16番 変ホ長調、Op.55-2
11 夜想曲 第19番 ホ短調、Op.72-1
12 夜想曲 第20番 嬰ハ短調、遺作

 幅広いレパートリーを持っていて、日本では人気のピアニスト。1937年ソビエト生まれだが、エリザベート国際コンクールやチャイコフスキー・コンクールなどで優勝という経歴で、西側で演奏活動をするようになった。
 このアルバムは、彼が十数年かけて全てのショパン作品の録音が完成してのその中のノクターン集。今こうして聴いてみると、①のヤン・リシエツキとはかなりの違いがあることに気が付く。40-50年の変化というのは面白いですね、ここではアシュケナージは個人的特徴を出すのでなく、むしろ標準的な世界に優雅さと哀愁と優しさと華麗さを求めているように思う。基本的な演奏だ。

* *

 クラシックの中でも非常にポピュラーな「ショパンの夜想曲」に、丁度夜長の秋を迎えて聴くチャンスもあって焦点を当ててみたが、ちょっと座右にあるCDだけでも聴いてみると、その違いが明瞭で聴き応えある。ここに昔のLPも復活させてみると、これも又近頃のLPとの違いが楽しめそうだ。
 又、録音や再生方式の進歩などによって、音質の高度化もこうした作品で聴くのも楽しいことである。

(視聴)
Jan Lisiecki

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2023年10月13日 (金)

ステイシー・ケント Stacey Kent 「Summer me, Winter me」

多彩な世界を、誠実感のある歌いこみに好感

<Jazz>
Stacey Kent 「Summer me, Winter me」
Naive / Import / BLV8224 / 2023

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Stacey Kent (vocal)
Jim Tomlinson (tenor saxophone, flute, alto flute, clarinet, guitar, percussion, keyboard)
Art Hirahara (piano)
Graham Harvey (piano)
Tom Hubbard (double bass)
Jeremy Brown (double bass)
Anthony Pinciotti (drums on 01, 02, 03, 04, 05, 07, 09, 10)
Joshua Morrison (drums on 06, 08, 11)
Aurélie Chenille (first violin on 05)
Claire Chabert (second violin on 05)
Fabrice Planchat (viola on 05)
Gabriel Planchat (cello on 05)

#06, #08, #11:2019年5月6日英国ウェスト・サセックス(州)アーディングリー=ArdinglyのCurtis Schwartz Studio録音
#01, #04, #09, #10:2019年8月2日米ニューヨークシティのEastside Studios録音
#02, #03, #05, #07:2019年12月12日米ニューヨークシティのSpin Studios録音
(追加録音)米コロラド州カーボンデイルのStirling Studio、米ヴァージニア州アーリーズヴィルのLake Studios

 ステイシー・ケントもここで取り上げるのも久しぶりだと思いましたが、2年前にピアノとのデュオ・アルバム『Songs from Other Places』(2021)が出ていたんですね。今回もなかなかバックは小コンポで、彼女の充実したヴォーカルがじっくり聴けるアルバムの登場である。
 なんとそれは、彼女のコンサートでアルバムとしてリリースされていないが高評価の人気曲を集めたというまさにファン・サービス・アルバムで、古いレパートリーであったり新しいものもあり統一感というよりは、聴きたいという希望に答えている。しかもフランスのレーベルNAIVEからのリリースである。

 彼女は、ニュージャージー州サウスオレンジ出身(1965年生まれ)のアメリカのジャズ歌手だが、父方の祖父はロシア人で、フランスで育った。サラローレンス大学を卒業した後、彼女はロンドンのギルドホール音楽演劇学校で音楽を学ぶためにイギリスに渡航し、そこで1991年に結婚したサックス奏者のジム・トムリンソンに会ったという事だ。

 過去にグラミー賞にノミネートされ、2009年にフランス文化大臣から芸術文学勲章シュヴァリエを授与されている。夫のジム・トムリンソンは彼女のアルバムをプロデュースし、彼女のために曲を書いたりしている。もともとフランスでの人気が先行して今やインターナショナルにファンがいる。

 

O0460069114486459352 (Tracklist)

01. Summer Me, Winter Me (vo-fl-p-b-ds)
02. La Valse Des Lilas (vo-ts-p-b-ds)
03. Thinking About The Rain (vo-afl/cl/fl?/key?-p-b-ds)
04. Under Paris Skies (vo-fl/ts-p-b-ds)
05. If You Go Away (vo-cl-p-b-ds-strings)
06. Happy Talk (vo-fl/ts/acg-p-b-ds)
07. Show Me (vo-p-b-ds)
08. Postcard Lovers (vo-afl-p-b-ds)
09. Corcovado (vo-fl/ts/acg-p-b-ds)
10. A Song That Isn't Finished Yet (vo-ts-p-b-ds)
11. Ne Me Quitte Pas (vo-p-b-ds)

  彼女はもうベテランの範疇だが、声は全く衰えることもなく以前からのままであるが、歌いっぷりはやはり充実していて、いろいろという事が憚れるといったところ。バックの演奏もヴォーカルものにぴったりの小コンポで、ピアノ・トリオにフルート、テナーサックス、ギターなど曲により加わりいいムードである。
 アルバム・タイトル曲であるM1."Summer Me, Winter Me"は元々、ミッシェル・ルグランが作曲した映画「おもいでの夏」のテーマ曲"Summer Song"に後付けで歌詞が付けられたもので、シナトラや、エラ・フィッツジェラルドなどの大物がカバーしている名曲らしい。ケントは軽快なバックに優雅に歌い上げていて歴史を感じられる曲だ。
 M2."La Valse Des Lilas" ゆったりしたフランス・ムードの情景豊かな曲で聴いていて気持ちがいい。
 M4."Under Paris Skies"は、誰でも知っているという名曲だが、快適なテンポでパリの華やかさと明るさを歌い上げていてこれも気持ちが良い。

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 M5."If You Go Away"は、彼女の歌うコンサートでは人気曲のようで、このピアノのバックでしっとりと歌での味付けとムードはさすがである。これが収録されてファンは大喜びというところだ。
 M8."Postcard Lovers"は、カズオ・イシグロ氏の作詩、なかなか落ち着いた大人の歌が聴ける。
 M9." Corcovado"は、彼女が尊敬しているというジョビンの曲で、リオデジャネイロのコルコバードの象徴的美しい場所を見てのブラジルの自然の美しさや愛情を歌った曲で、しっとりと歌いこまれていて聴きごたえ十分。
 M11."Ne Me Quitte Pas"は、これはフランス語の歌詞で、英語では"If You go away"(いかないで)と歌われる。このアルバムではM5.と同一曲のフランス語版。なんと、かってシンディ・ローパーが見事に歌って私は驚いた曲である。アルバム締めくくりとして、ケントはスタートはアカペラで歌い上げ、控えめなピアノと共にしっとりと歌いこんで切ないムードを盛り上げる。

 彼女のヴォーカルは、不思議なのは、年齢とは別のなんとなくあどけなさも感ずるところがあったり、しっとりと大人のムードで包容力があったり、パリ・ムードの華やかさを若々しく歌ったり、このアルバムの選曲によって多彩で至れり尽くせりといったところにある。とにかくなんとなく彼女が一つの節目として誠実真摯に変な色付けなく自然なムードで歌い上げたアルバムのような感覚になる。取り敢えず推薦アルバムだ。

(評価)

□ 選曲・演奏・歌  88/100
□ 録音       88/100
(試聴)

 

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2023年10月 8日 (日)

ロジャー・ウォーターズ Roger Waters 「The Dark Side of The Moon Redux」

50年の歴史を経て・・ここに帰ってきたモノは、深淵にして壮大な世界

<Progressive Rock>

Roger Waters 「The Dark Side of The Moon Redux」
Cooking Vinyl / Import / SGB50CD / 2023

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Credits:
Roger Waters: Vocals, Bass on Any Colour, VSC3 / Gus Seyffert: Bass, Guitar, Percussion, Keys, Synth, Backing Vocals / Joey Waronker: Drums, Percussion / Jonathan Wilson: Guitars, Synth, Organ / Johnny Shepherd: Organ, Piano / Via Mardot: Theremin / Azniv Korkejian: Vocals / Gabe Noel: String,Arrangements, Strings, Sarangi / Jon Carin: Keyboards, Lap Steel, Synth, Organ / Robert Walter: Piano on Great Gig // Produced by Gus Seyffert and Roger Waters // Art Direction and Design: Sean Evans // Photography: Kate Izor


   ロック史に輝く名盤中の名盤、ピンク・フロイドの最高傑作と言われる『The Dark Side of the Moon 狂気』(1973)を、ロジャー・ウォーターズがオリジナル・レコーディングから50年、80歳を迎えるに人生の区切りに再解釈した壮大な世界をここに公開した。
 そもそもピンク・フロイドの歴史の中で、全曲をウォーターズが作詩して彼の出してきた基本的なコンセプトにメンバーが肉付けして音像を作り上げた最初のアルバムで、その流れは以降彼が在籍した最後のアルバム『Final Cut』(1983)の5作にまで続くことになった。このアルバムは当初"Eclipse"というタイトルで進行したが、謎めいたウォーターズのアイデアは人間の問題、社会の問題、個人的トラウマ、シド・バレットの狂気などを常にはらんでいて難解であると同時に聴くものの感性に訴える世界でもあった。

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 大学時代、ロック・ミュージツクを通じて夢を描いて結成したPink Floyd。それはニック・メイスン、リチャード・ライトと共に、ウォーターズは高校時代の友シド・バレツトを呼び込んでの4人バンドで、サイケデリックと言われた世界で花咲かせた。最大の難関は音楽的リーダーのシドの精神状態の悪化からの脱落であった。しかしウォーターズの執念は、ギタリスト・デヴット・ギルモアを呼び込んで更にプログレッシブな流れに重きをおいてバンド活動を続け、『Atom Heart Mother』(1970)にて一つの価値観を築き、遂に29歳のとき、Pink Floydとしてレコーディングした『The Dark Side of the Moon』は、彼の独特な人間の経験、時代の暗部、狂気への恐怖、などの彼の異常ともいえる常人の感覚を超えた世界を描くことにより圧倒的な支持を得たのだった。

Rogerwaterstr1w (Tracklist)
1. Speak to Me
2. Breathe
3. On the Run
4. Time
5. Great Gig in the Sky
6. Money
7. Us and Them
8. Any Colour You Like
9. Brain Damage
10. Eclipse

 このアルバムは「老いた男の記憶、それは全盛期の男の行動である」という冒頭の言葉から始まる。ご存じでしょうか、この"Speak to Me"では、なんとアルバム『Obuscured by Clouds雲の影』の曲"Free Four"の詩が登場しているではないか、驚きましたね、彼の繋がっているコンセプトの世界には。既にウォーターズは20歳代に老人への世界にまで想いを馳せていた。そして『The Dark Side of the Moon Redux』で、この50年に及ぶ経過を歩み、彼自身のトラウマ、歩んだ道、哲学、年齢という諸条件新たな視点を持って、彼自身のコンセプトで築いたオリジナルの創作物を見直し回顧し新展開を試みる。彼の近年の人生の重みを感ずるヴォーカルは、Pink Floyd時代から変わらない謎めいた表現で脚色しながら、彼の若き時代の歌詞に深遠さのあるコンセプトの拡大の味を加え、彼の哲学的風貌すら感ずる創作をここに結晶させたのである。

 制作にあたってWatersとGus Seyffertによるプロダクションは、壮大な深淵な宇宙的サウンドにウォーターズのの80歳の男としての心のつぶやきを乗せて、サイケデリックな味とプログレッシブな味とクラシックな味を乗せたオーケストレーション築き、かってのアルバムにはなかった世界を対比的に聴かせてくれる。

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 「オリジナルの『The Dark Side of the Moon』は、ある意味、人間の現状に対する年長者の嘆きのように感じられる。しかし、曲を作ったとき、Dave、Rick、Nick、そして私はとても若かった。だから、80歳の知恵が再解釈に何をもたらすかを考え始めたんだ。最初にGusとSeanに『The Dark Side of the Moon』の再レコーディングの話をしたとき、みんな私が狂っていると思った。でも、考えれば考えるほど、『肝心なのはそこじゃないよね』と思ったんだ。半世紀の時を超えて手を取り合い、堂々とオリジナルと並べることが出来る作品に仕上がったことを、私は非常に誇りに思っている」とRoger Watersは語る。

Pinkfloydrogerwatersnickmasondarjsideoft  そしてこのアルバム・リリースの試みは又してもPink Floydメンバーのデヴィット・ギルモアの猛反対という憂き目にあった。これは若き当初のこのアルバムのコンセプトの世界に存在していなかったギルモアであったことを露骨に暴露した。哀しいことに、これは真の作者にしか解らない半世紀の経過を経た人生が如何に人間の重きを築いているかが理解出来ないのである。もっともこれはアメリカ商業主義の独占欲の強いギルモアの女房のポリー・サムソンの仕業なのかもしれないが。
 しかし一方、Pink Floydのニック・メイスンはリリースに大賛成した。そこが学生時代の男の夢をバンド結成という一つの手法の下で、互いに共に築いてきた人格を持っている事の違いであった。ウォーターズはかっての『The Dark Side of the Moon』にとって代わろうなどとは全く考えておらず、勿論否定しているどころか、むしろ若き時代の結晶として評価していることが今回の「Redux」の発想に繋がっているのだ。メイスンは、あれから半世紀経過した人生の作り上げたものを確実に表現したことを理解し、更に音楽的完成度についても感動し後押ししてくれたのである。それによってウォーターズはリリースを決意したのであった。

 今や、人生の総決算に入っているウォーターズにとっては、パレスチナ支持イスラエル批判、戦争の無意味さの国連発言、彼の作品やライブの意味が理解できない反ユダヤ主義やナチス礼賛のという濡れ衣に対する反発など、常に政治思想が取り巻いているが、その中でも何につけても父親の死にまつわるトラウマを背負っての戦争否定につながる活動・運動はいまだに続いている。そんな中で、むしろ若き時代を礼賛し、そして年老いた現在の存在を確認しているのだと思う。ここまで来ると、このアルバムの評価はいろいろと言う世界を超越しているのである。

(評価)
□ 企画・演奏・歌   95/100
□ 録音        90/100

(試聴)

*

 

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2023年10月 3日 (火)

オリヴィア・メイセル Olivia Maisel 「A Moment In Time」

大人のジャズ・ヴォーカルを精神性を込めたスタイルでしっとりと聴ける

<Jazz>

Olivia Maisel 「A Moment In Time」
OLIVIA MAISEL / Canada / OLIVIA2301 / 2023

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Olivia Maisel - vocals
Thélonius Garcia -piano
Luc Herrmann - guitar
Alex Le Blanc - upright bass
John Buck - drums

 フランス・トゥールーズ出身、現在はカナダ・モントリオールで活躍するフランス系アメリカ人女性シンガーのオリヴィア・メイセルが、スタンダード中心に歌う、ソフトで透明感溢れる1枚。彼女の自己出版のデビュー・アルバムだ。

 彼女は、シューリッヒ・スクール(マギル大学)でジャズ・ヴォイス・パフォーマンスの学士号を取得し、モントリオールのシーンで活躍するカナダの偉大なジャズ・シンガーたちと共演してきた。音楽活動に加え、オリヴィアはニューヨーク大学(NYU)で音楽療法の修士号も取得している。
 そして在学中、カナダの偉大なジャズ・マスターたちとの関係を持ち、ジャズの即興演奏や作曲、そして編曲技能も習得した。一方ブラジリアン・カルテットのリーダーとして演奏したり、更にシンガーとしての技能の取得に努力したという。
 従って、このアルバムはデビュー盤であるが、かなりの遅咲きである。

(Tracklist)

1. Crazy He Calls Me 6:23_bp15643trw
2. My Foolish Heart 6:10
3. The Nearness of You 6:34
4. Send in the Clowns 7:23
5. Easy to Love 5:26
6. Embraceable You 5:30
7. Que Reste-T-Il De Nos Amours? 6:01
8. Last Time for Love 5:16

  M1."Crazy He Calls Me" 静かなギターの音から始まりおもむろに彼女の歌が始まる。どこか自己を振り返っての静かな中に意思の感じられる様を描くがごとくソフトなヴォーカルが好感だ。ピアノの美しい旋律のバックも頂きというところ。
 M2."My Foolish Heart" ピアノのしっとりとしたムードの前奏でぐっと静かに迫るヴォーカルは大人のムード。適度な編曲とインプロが光る。中盤のベース・ソロとピアノの味付けも味がある。

 このアルバムは彼女の何十年にもわたる個人的な経験を反映しているとのことで、「団結の物語、私たちが共通する過去、私たちが一緒に経験できる現在、そして希望と変化の未来」という彼女が伝えたい物語に基づいて曲を選んだという事を語っているようだ。
 そしてそのの背後にある彼女の意図についてあまり多くを明かしておらず、彼女は誰もがここで自身の物語のバージョンを見てもらう事を望んでいるようだ。そんなことをふと考える年齢になってのファースト・アルバムだということを知りつつ聴くのも良いことだ。

 M4."Send in the Clowns"には、フランク・シナトラを思い出すところだが、どこか明るさ・楽しさも感じられるところが良い。
 M6."Embraceable You" このラブ・バラードを、ベースのアルコ奏法の音とともに、ただ明るいだけでなくちょっと憂いを感じさせしっとりと描くところは大人の世界だ。
 
 いやーーしかし久しぶりに芸術性のある中に、精神性を感ずるしっとりとしたヴォーカル・アルバムに出会った感がある。その声には透明感があるし表現力も見事、スタンダード曲を自分の世界に取り込んで、フランスの洒落たところも取り入れつつ一つの世界を描き切ったところは納得である。
 バックの演奏も、ピアノ、ギター、ベースなどが歩調を合わせてのジャズ世界をしっとり描いていて好感がもてる。

(評価)
□ 選曲・演奏・歌   90/100
□ 録音        87/100

(試聴)

 

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