アンダース・オールム Anders Aarum Trio 「OSLO PUZZLE」
北欧の味を持った中堅のピアノ・トリオ作品
<Jazz>
Anders Aarum Trio 「OSLO PUZZLE」
Ozella Music / Import / OZ105CD / 2023
ANDERS AARUM – piano
JENS FOSSUM – double bass
HERMUND NYGÅRD – drums
All compositions by Anders Aarum
Recorded at Muusikkloftet Studio 30 may 2020
私にとってはこれはノルウェーの初物ピアノ・トリオ作品。このアルバムは、リーダーはノルウェーのピアニスト、アンダース・オールムAnders Aarum(1974年12月17日、ノルウェー、モス生まれ 下左)で、もう20年も前の2001年にHot Club Records盤『LUCKY STRIKE』というアルバム(ピアノトリオ作品)がリリースされているということで、なかなか経歴あるあるミュージシャンだ。そしてこのOzella Musicから何枚かのピアノ・トリオ作品をリリースしているという事で、知らぬは私だけだったかもしれない。
しかし、このメンバーによるトリオ作品はこれが最初のようで、そんな意味ではやはりある意味初物である。何んといっても北欧らしい叙情味のある美メロものということで、聴くことになったものである。聴いて即、音質の良さに気づいた為取り敢えずCDを購入した。
メンバーのイェンス・フォッサム(Bass, 上中央)とヘルムンド・ナイガード(Drums, 上右)もノルウェー生まれで、3人は15年以上にわたり、伝説的なハー・ニルセン・ジャズ・クラブで毎週開催されるジャム・セッションで定期的なパートナーであったようだ。 2010 年、彼らはオスロの旧市街にスタジオ コレクティブを設立し、その場所から、共同プロジェクトや個別プロジェクトが数多く誕生させた。しかし、今回、このアルバムではそこから離れてオスロ郊外にあるノルウェー最大の精神病院のパーティーホールにある「Musikkloftet」の美しいスタジオで録音することにした。 3日間、彼らはこの奇妙だが美しい空間で働き、このレコーディングの最終日である3日目に、映画を作るために全曲を再録音した。かってそこに住んでいた失われた魂たちにコンサートを行っているような気分だったとか。 ミキシングのプロセスでは、最終的にこの最終日の録音のみを選択することになり、つまり、このアルバムの全曲は2020年5月30日日曜日に1時間半でレコーディングされたもののようだ。
(Tracklist)
1 Oslo Puzzle
2 El Jucan
3 The Wandering Lilly
4 Tune In, Drop Out!
5 Spaghetti Junction
6 Ivory Tower
7 Jason Paradisa & the Beautiful Fire
8 Subway Acrobat
9 Drachmanns Point of View
10 Pata Paso
よく解らないのだが、このアルバムのアイデアは、ノルウェーの首都の歴史に登場する魅力的な人々(住民)についての本「Oslo originals」を読んだ後にオールムが思いついたというのだが、そんなことでアルバムの各トラックは、注目した15人の肖像画を描くと彼は決めたというのである。
従ってタイトルの「Puzzle」というのが、良く解らないが「当惑、混乱、困らせる人」という意味なのだろうか。まぁそれを具体的に語る人、そしてその道に詳しい人に巡り合うという事も難しいし、又そのあたりの状況を解説してくれる人はどうも見当たらない。
取り敢えず、聴く方は状況を自分の世界で聴くしかないのでそんなところでの感想である。
M1."Oslo Puzzle" 低音でスタート、やや暗さの印象あるが、どこか回顧的な情景に聴こえてくる静かな落ち着いた世界、ピアノの澄んだ響きは美しい。
M2." El Jucan" エル・フカン、ファキール(イスラム世界において神秘的修行を行う者。アラビア語での貧者)になろうとした歌手でガラスを食べる奇人(?)を描いているのか。良く解らないがピアノの流麗な展開。
M3."The Wandering Lilly" ちょっとドラマックな展開。
M4."Tune In, Drop Out!" リズムカルな世界
M5."Spaghetti Junction" ベースの旋律の語りとピアノの旋律による対比で進行
M6."Ivory Tower" 北欧としては珍しいスローブルース調の曲。
M7." Jason Paradisa & the Beautiful Fire" 描くは、オスロのイースト・ビレッジでパレードして説教したジェイソン・パラディサのようだ。演奏はベースとピアノの掛け合い的な流れが面白く、なんとなく美しい世界だが・・・。
M8."Subway Acrobat" オスロの地下鉄で派手な衣装を着た体操ショーで知られる「ヘルマンセン弁護士」にインスピレーションを得たというが、曲展開は陽気な雰囲気。
M9." Drachmanns Point of View" 静かな美しい情景が目に浮かぶ曲。Drachmannというのは作家の名前か。
とにかく登場の対象人物の理解は難しいので、その点はおいおい解ってくるのもあるのだろうと思いつつ聴いたわけだ。トリオそれぞれの役柄がなかなか堂に行っているトリオで、お互い知り尽くしていて充実した展開で聴きやすい。ピアノの澄んだ音には魅力があるし、ベースのソロ展開、落ち着いたドラムスのリズムワーク・・・など、オスロの中堅ミュージシャンの実力の姿のように思う。なかなか優れたミュージシャンの多いノルウェーの一つの姿として聴くと良いのかも。ノルウェー・ジャズ・ピアニストと言うと私的には Helge Lien だが、美的感覚はこのオールムとは異なった世界であって、私の好みははLienの方かなぁーと言っておきたい。
(評価)
□ 曲・演奏 88/100
□ 録音 90/100
(試聴)
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