オリヴィア・メイセル Olivia Maisel 「A Moment In Time」
大人のジャズ・ヴォーカルを精神性を込めたスタイルでしっとりと聴ける
<Jazz>
Olivia Maisel 「A Moment In Time」
OLIVIA MAISEL / Canada / OLIVIA2301 / 2023
Olivia Maisel - vocals
Thélonius Garcia -piano
Luc Herrmann - guitar
Alex Le Blanc - upright bass
John Buck - drums
フランス・トゥールーズ出身、現在はカナダ・モントリオールで活躍するフランス系アメリカ人女性シンガーのオリヴィア・メイセルが、スタンダード中心に歌う、ソフトで透明感溢れる1枚。彼女の自己出版のデビュー・アルバムだ。
彼女は、シューリッヒ・スクール(マギル大学)でジャズ・ヴォイス・パフォーマンスの学士号を取得し、モントリオールのシーンで活躍するカナダの偉大なジャズ・シンガーたちと共演してきた。音楽活動に加え、オリヴィアはニューヨーク大学(NYU)で音楽療法の修士号も取得している。
そして在学中、カナダの偉大なジャズ・マスターたちとの関係を持ち、ジャズの即興演奏や作曲、そして編曲技能も習得した。一方ブラジリアン・カルテットのリーダーとして演奏したり、更にシンガーとしての技能の取得に努力したという。
従って、このアルバムはデビュー盤であるが、かなりの遅咲きである。
(Tracklist)
1. Crazy He Calls Me 6:23
2. My Foolish Heart 6:10
3. The Nearness of You 6:34
4. Send in the Clowns 7:23
5. Easy to Love 5:26
6. Embraceable You 5:30
7. Que Reste-T-Il De Nos Amours? 6:01
8. Last Time for Love 5:16
M1."Crazy He Calls Me" 静かなギターの音から始まりおもむろに彼女の歌が始まる。どこか自己を振り返っての静かな中に意思の感じられる様を描くがごとくソフトなヴォーカルが好感だ。ピアノの美しい旋律のバックも頂きというところ。
M2."My Foolish Heart" ピアノのしっとりとしたムードの前奏でぐっと静かに迫るヴォーカルは大人のムード。適度な編曲とインプロが光る。中盤のベース・ソロとピアノの味付けも味がある。
このアルバムは彼女の何十年にもわたる個人的な経験を反映しているとのことで、「団結の物語、私たちが共通する過去、私たちが一緒に経験できる現在、そして希望と変化の未来」という彼女が伝えたい物語に基づいて曲を選んだという事を語っているようだ。
そしてそのの背後にある彼女の意図についてあまり多くを明かしておらず、彼女は誰もがここで自身の物語のバージョンを見てもらう事を望んでいるようだ。そんなことをふと考える年齢になってのファースト・アルバムだということを知りつつ聴くのも良いことだ。
M4."Send in the Clowns"には、フランク・シナトラを思い出すところだが、どこか明るさ・楽しさも感じられるところが良い。
M6."Embraceable You" このラブ・バラードを、ベースのアルコ奏法の音とともに、ただ明るいだけでなくちょっと憂いを感じさせしっとりと描くところは大人の世界だ。
いやーーしかし久しぶりに芸術性のある中に、精神性を感ずるしっとりとしたヴォーカル・アルバムに出会った感がある。その声には透明感があるし表現力も見事、スタンダード曲を自分の世界に取り込んで、フランスの洒落たところも取り入れつつ一つの世界を描き切ったところは納得である。
バックの演奏も、ピアノ、ギター、ベースなどが歩調を合わせてのジャズ世界をしっとり描いていて好感がもてる。
(評価)
□ 選曲・演奏・歌 90/100
□ 録音 87/100
(試聴)
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コメント
早速、女性ボーカルをご紹介いただきましてありがとうございます。秋の夜長に聴けそうですね。
投稿: 爵士 | 2023年10月 4日 (水) 22時53分
爵士さん コメント有難うございます
お元気にご活躍の様子は拝見しています。この2-3年で世界の様相も変わって、ニューCDのリリースも減少して寂しいですが、秋の夜長になりつつあり、そろそろしっとりとした女性ヴォーカルものもいい季節になりましたね。^^
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2023年10月 5日 (木) 09時24分