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2023年10月24日 (火)

ケヴィン・ヘイズ HAYS STREET HART 「Bridges」

刺激を抑えた旅情や叙情性の流れがハイレベル

<Jazz>

HAYS STREET HART 「Bridges」
SMOKE SESSIONS RECORDS / Import / SSR2307 /2023

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Kevin Hays (piano)
Ben Street (bass)
Billy Hart (drums)

2023年4月13日米NYのSear Sound Studio 録音

  ピアニストのケヴィン・ヘイズ(1968年米ニューヨーク州生まれ)は、 Kevin Hays Trio 、そして近年 Kevin Hays New Day Trio などで知られるところだが、 先ごろのベーシストのベン・ストリート(米メーン州生まれ)、ドラマーのビリー・ハート(1940年米ワシントンD.C.生まれ)と組んだトリオによるこれは第 2 作目となる『Bridges』が リリースされた。
 このメンバーの前作『All Things Are』(SSD-2102/2021)を取り上げたのは2年前だが、元々、これはビリー・ハートの80歳という誕生日を祝うために集まった即席セッション・ライブを行ったもの。そしてパンデミックの最中、ストリーミング配信のためのライブ演奏であったが、リハーサルの時間もほとんどなかった 1 回きりのコンサートのつもりだったようだ。しかし、この3 人のミュージシャンが、なんとこのトリオの世界を探求に向く方向に一致して、2021 年に3人名義でのトリオのデビュー作『All Things Are』を発表した経過だ。それの評価が良かったせいか、ここに2ndが登場することになった。この世代を超えたトリオが、多分相性が良かったのだろうと思うが、どこか抒情的な中に何となく温かみみたいなものがあり、そうかといって甘くは無く冷静な世界が構築されていて聴き応えあるアルバムを老獪に造り上げている。今回は環境の良いレコーデング・スタジオでの録音である。

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(Tracklist)

1. Butterfly (Kevin Hays) 6:16
2. Capricorn (Wayne Shorter) 5:52
3. Song For Peace (Kevin Hays) 4:31
4. With A Little Help From My Friends (John Lennon / Paul McCartney) 4:34
5. Row Row Row (Kevin Hays) 4:28
6. Throughout (Bill Frisell) 5:24
7. Irah (Billy Hart) 5:44
8. Bridges (Travessia) (Milton Nascimento, Fernando Brant & Gene Lees) 6:34

 どうも"Bridge"というタイトルは、"架け橋"の意味で、このトリオ結成後、相性の良さから継続的な取り組みの成果で実現したアルバムとしての意味に繋がっているようだ。現代の巨匠3人によるアンサンブルの繊細さハーモニーの美しさは、完成度が高くまさに、現代NYピアノトリオの実力を聴かせてくれる感がある。

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 M1." Butterfly" は叙情的なヘイズのピアノが地に付いたリズム隊の流れをベースに暖かさを感ずる世界を描く。昔ハンコックのファンク時代に同じ名の曲があったが、同じなのかあまりにイメージが違って解らない。
 M2."Capricorn"はウェイン・ショーターの曲で、後半にかなり3者それぞれのマニヤックな世界が展開して面白く刺激的。しかし沈み込んでゆくが如しで旨く最後はまとめる。
 M3."Song For Peace"  ヘイズの曲で、バラード演奏は静の中に息をのむようなスリルもあって見事。このアルバムの注目曲。
 M4."With A Little Help From My Friends" ビートルズの登場、ヘイズのロック心、まあこんなところか。
 M6."Throughout " 静に宿す神秘性が描かれる。
 M7."Irah" ハートの曲、変調するリズムの味付けはやはりドラマーか。
   M8."Bridges" 締めはアルバム・タイトル曲、ピアノの優しく美しい響きでスタートして、なんとなく心にしんみり響いてくる。

  結構スウィングする中に、刺激度の抑えた演奏で温かみとか優しさというか人間愛が感じられる世界を構築している。なんといってもむしろ難解にしないところにハイレベルを感ずる演奏である。やはりストリートとハートの曲の流れを作り上げる展開に、悠々とヘイズが余裕のピアノ・プレイで聴か̪し、それはどこか人間的なところに迫ってくるところがあって、前作に続いて、かしこまらずに余裕で聴けるところが良い。

(評価)
□ 曲・演奏  88/100 
□ 録音    87/100

(試聴)

*

 

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