秋の夜長は「ショパン夜想曲」 (Jan Liieski, Koji Oikawa, Maurizio Pollini & Vladimir Ashkenazy)
<Classic>
演奏者の違いを楽しむ ??・・・フレデリック・ショパン 「夜想曲」
秋になっても、今年もまだまだコロナ感染症から卒業したわけでもなく、諸々の行事の再開はあっても、まだまだ自粛ムードがただよっていてなんとなくちょっと寂しい夜になる。そんな秋の夜長には、毎年のことではあるが、その美しさの中にどこか憂いもあっての人気曲「ショパンの夜想曲」を聴きながら過ごすのが一番良いのでは・・・そこで今夜はよく聴いているアルバムを紹介する。
① ヤン・リシエツキ 「夜想曲全集」 MQA-CD(88.2kHz/24bit)
Jan Lisiecki 「Frederic Chopin COMPLETE NOCTURNES」
Deutsche Grammophon, Universal Classics / JPN / UCCG45019/20 / 2021
録音: 2020年10月 ベルリン
(ディスク: 1)
1 3つの夜想曲 作品9 第1番 変ロ短調 (第1番)
2 3つの夜想曲 作品9 第2番 変ホ長調 (第2番)
3 3つの夜想曲 作品9 第3番 ロ長調 (第3番)
4 3つの夜想曲 作品15 第1番 ヘ長調 (第4番)
5 3つの夜想曲 作品15 第2番 嬰ヘ長調 (第5番)
6 3つの夜想曲 作品15 第3番 ト短調 (第6番)
7 2つの夜想曲 作品27 第1番 嬰ハ短調 (第7番)
8 2つの夜想曲 作品27 第2番 変ニ長調 (第8番)
9 2つの夜想曲 作品32 第1番 ロ長調 (第9番)
10 2つの夜想曲 作品32 第2番 変イ長調 (第10番)
11 2つの夜想曲 作品37 第1番 ト短調 (第11番)
12 2つの夜想曲 作品37 第2番 ト長調 (第12番)
(ディスク: 2)
1 2つの夜想曲 作品48 第1番 ハ短調 (第13番)
2 2つの夜想曲 作品48 第2番 嬰ヘ短調 (第14番)
3 2つの夜想曲 作品55 第1番 ヘ短調 (第15番)
4 2つの夜想曲 作品55 第2番 変ホ長調 (第16番)
5 2つの夜想曲 作品62 第1番 ロ長調 (第17番)
6 2つの夜想曲 作品62 第2番 ホ長調 (第18番)
7 夜想曲 ホ短調 遺作 作品72の1 (第19番)
8 夜想曲 ハ短調 遺作 KK IVb/8 (第21番)
9 夜想曲 嬰ハ短調 遺作 KK IVa/16 (第20番)
このところ一番聴いているのがこのアルバム。これはHi-Res88kHz/24bitのいろいろと話題が絶えないMQA-CDである。幸い私のオーディオ装置はMQA対応であるため、その高音質を楽しんでいる。とにもかくにも非公開の技術的部分を持ってのMQAで、その音質の良さから支持者は多いが、果たしてこれが純粋にオーディオ的に評価されるのかと疑問を投げかける勢力もあって、支持は2分してきたところである。しかし現在高音質をうたったSACDと比較して、廉価とそのデジタル・データの小ささから便利であることは間違いなく、又実際の聴き比べでも劣っていないため支持者とアンチ勢力の渦の中にある。
さてこのアルバム、演奏者ヤン・リシエツキは、1995年、ポーランド人の両親のもとカナダで生まれた天才ピアニスト。13歳&14歳の時の音楽祭での演奏が、ポーランド国立ショパン協会からリリースされCDデビュー、15歳でドイツ・グラモフォンと契約し、17歳でショパン:練習曲集(全曲)をリリース。天才的ショパン弾きによる待望の夜想曲全曲録音(25歳)であった。
21曲のショパンの夜想曲(ノクターン)は、20歳から晩年に至るまで作曲されたもので、その時々の人間的、芸術的深みがあって作風の変遷もあり人気を誇るショパンの代表作であり、演奏者の評価にも関心がもたれるところだ。
今回取り上げた4人の演奏者のものの中でも、最も一曲一曲の演奏時間が長く、ルバートが最も効かせているように聴けた。強弱、緩急の表現に心を注いで若いなりきのリリシズムの追及にも力を注いだ演奏だ。このあたりの評価はプロフェッショナルにまかせるが、なかなか現代的ともいえる。
② 及川浩治 「ショパン ベスト」SACD (Stereo / Multi-ch)
Koji Oikawa 「THE BEST OF CHOPIN」
AVEX CLASSICS / JPN / AVCL-25097 / 2006
録音 : 2006年1月 兵庫県立芸術文化センター
このアルバムは、下のリストのように、夜想曲に限ってのものではなく、練習曲、円舞曲、ポロネーズ、前奏曲そして子守歌などが収められている。CDは、SACDハイブリッド盤で5Chサラウンドでも聴ける。
アルバム自身の音質も良好であるので、彼の比較的硬さよりでない柔らかな音も澄んでいて気持ちが良い。今回取り上げた4枚のCDではやや現代的解釈が入った方に入るのかという程度のところで、ダイナミックさも極端なところが無く音の強弱、ルバートなども昔の演奏者よりは意識された感があるが、近頃の標準的かと思わせる演奏だ。
及川浩治は1967年生まれで、これは40歳前後の作品となる。90年に20歳少々で第12回ショパン国際ピアノ・コンクールで最優秀演奏賞を受賞。95年にデビューリサイタルを行っている。又99年のショパン没後150年には、「ショパンの旅」というタイトルのコンサート・ツアーを行い大成功している。
(Tracklist)
1 夜想曲 第1番 変ロ長調 作品9-1
2 夜想曲 第2番 変ホ長調 作品9-2
3 練習曲 第3番 ホ長調 作品10-3 ≪別れの曲≫
4 練習曲 第4番 嬰ハ短調 作品10-4
5 練習曲 第5番 変ト長調 作品10-5 ≪黒鍵≫
6 練習曲 第12番 ハ短調 作品10-12 ≪革命≫
7 ワルツ 第9番 変イ長調 作品69-1 ≪別れのワルツ≫
8 ワルツ 第1番 変ホ長調 作品18 ≪華麗なる大円舞曲≫
9 ワルツ 第6番 変ニ長調 作品64-1 ≪子犬のワルツ≫
10 夜想曲 第20番 嬰ハ短調 (遺作)
11 幻想即興曲 嬰ハ短調 作品66
12 夜想曲 第8番 変ニ長調 作品27-2
13 ポロネーズ 第3番 イ長調 作品40-1 ≪軍隊≫
14 前奏曲 第4番 ホ短調 作品28-4
15 前奏曲 第7番 イ長調 作品28-7
16 前奏曲 第8番 嬰ヘ短調 作品28-8
17 前奏曲 第15番 変ニ長調 作品28-15 ≪雨だれ≫
18 前奏曲 第16番 変ロ短調 作品28-16
19 ポロネーズ 第6番 変イ長調 作品53 ≪英雄≫
20 子守唄 変ニ長調 作品57
③ マウリツィオ・ポリーニ 「夜想曲集(第1-19番)」CD
Maurizio Pollini 「CHOPIN NOCTEURNES」
Deutshe Grammophon, Universal Music / Japan / UCCG9647/8 / 2005
録音 : 2005年6月 ミュンヘン
( Tracklist)
(Disc-1)
1-3 3つの夜想曲 作品9 (第1-3番)
4-6 3つの夜想曲 作品15 (第4-6番)
7-8 2つの夜想曲 作品27 (第7-8番 )
9-10 2つの夜想曲 作品32 (第9-10番)
(Disc-2)
11-12 2つの夜想曲 作品37 (第11-12番)
13-14 2つの夜想曲 作品48 (第13-14番)
15-16 2つの夜想曲 作品55 (第15-16番)
17-18 2つの夜想曲 作品62 (第17-18番)
19 夜想曲 ホ短調 遺作 作品72の1 (第19番)
マウリツィオ・ポリーニは1942年生まれであるからの60歳過ぎのノクターンの録音である(現在は81歳)。若干18歳で第6回ショパン国際コンクールで優勝という才能の持ち主である。やはり演奏は美しいですね、音楽の歴史の深いイタリアの芸術・文化からの結晶を感じます。感情の爆発の名演というのでないために意外にあっさりした印象を持つが、楽曲の本質を理解し感情的深さを見極めた誠実な演奏といった方がいいのかもしれない。そんな世界を十分堪能できるアルバムである。それぞれの曲の演奏時間も上の2枚のアルバムより若干短く中庸を得ていることが解る。
④ ヴラディミル・アシュケナージ 「夜想曲選集」CD
Vladimir Ashkenazy「CHOPIN NOCTURNES」
LONDON / Polidor / JPN / POCL-5035 / 1993
録音 : 1970-1983
(Tracklist)
1 夜想曲 第1番 変ロ短調、Op.9-1
2 夜想曲 第2番 変ホ長調、Op.9-2
3 夜想曲 第3番 ロ長調、Op.9-3
4 夜想曲 第4番 ヘ長調、Op.15-1
5 夜想曲 第5番 嬰ヘ長調、Op.15-2
6 夜想曲 第8番 変ニ長調、Op.27-2
7 夜想曲 第10番 変イ長調、Op.32-2
8 夜想曲 第13番 ハ短調、Op.48-1
9 夜想曲 第15番 ヘ短調、Op.55-1
10 夜想曲 第16番 変ホ長調、Op.55-2
11 夜想曲 第19番 ホ短調、Op.72-1
12 夜想曲 第20番 嬰ハ短調、遺作
幅広いレパートリーを持っていて、日本では人気のピアニスト。1937年ソビエト生まれだが、エリザベート国際コンクールやチャイコフスキー・コンクールなどで優勝という経歴で、西側で演奏活動をするようになった。
このアルバムは、彼が十数年かけて全てのショパン作品の録音が完成してのその中のノクターン集。今こうして聴いてみると、①のヤン・リシエツキとはかなりの違いがあることに気が付く。40-50年の変化というのは面白いですね、ここではアシュケナージは個人的特徴を出すのでなく、むしろ標準的な世界に優雅さと哀愁と優しさと華麗さを求めているように思う。基本的な演奏だ。
* *
クラシックの中でも非常にポピュラーな「ショパンの夜想曲」に、丁度夜長の秋を迎えて聴くチャンスもあって焦点を当ててみたが、ちょっと座右にあるCDだけでも聴いてみると、その違いが明瞭で聴き応えある。ここに昔のLPも復活させてみると、これも又近頃のLPとの違いが楽しめそうだ。
又、録音や再生方式の進歩などによって、音質の高度化もこうした作品で聴くのも楽しいことである。
(視聴)
Jan Lisiecki
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