寺島靖国 Yasukuni Terashima Presents 「Jazz Bar 2023」
今年もこのアルバムで締めくくり・・・
本来のピアノ・トリオが主体で、聴き応えあり
<Jazz>
Yasukuni Terashima Presents 「Jazz Bar 2023」
TERASHIMA RECORDS / JPN / TYR-1119 / 2023
今年も締めくくりは、やはりこの寺島靖国プレゼンツとしてのコンピレーション・アルバムだ。この「Jazz Bar」シリーズは年一回のリリースで、今年もこの12月にリリースされました。なんとスタートが2001年で、今年で23年目という事になる。私も飽きずによく聴いてきたと思うのだが、しっかりこれで23枚が並ぶことになった。
その他このように寺島靖国(左)の名を冠してのコンピレーション・アルバム・シリーズで今年既にリリースされているものは、「For Jazz Audio Fans Only Vol.16」、「For Jazz Vocal Fans Only vol.6」、「For Jazz Ballad Fans Only Vol.4」があり、4種があった。しかしここまで続く彼の選曲シリーズも、おそらく世界でも稀有であろうというより、これ以上のものは無いだろうと思う。その他「For Jazz Drums Fans Only」もあるんですが、今年も出ませんでしたね。
ジャズの楽しみ方は人それぞれですが、なんといっても私が寺島氏に協調するのは、やはりピアノ・トリオをベースとした⼼の琴線に触れるような哀愁を帯びたメロディーを重要視するところですね。それによって23年間もこのシリーズにお付き合いしているんです。近年は、ただ若干共通するところもある「Ballard Fans Only」があったり、もう長く並行してリリースされている「Audio Fans Only」との関係もあって、少し中身の充実感が下がったような気もするので、又一方若干市場からの要望への妥協もあって、彼自身の色が少し薄れてきたようにも思うので、今年はどうかなぁーーと、思うところがあるんです。
さて、今年は?・・・以下の内容でした。
(Tracklist)
1 El dia despues / Manel Fortia
2 Nightfall / Enrico Pieranunzi / Charlie Haden / Paul Motian
3 Close to Silence / Claes Magnet Trio
4 Traumerei / Trio X of Sweden
5 In Retrospect / Bernt Moen Trio
6 Echoes from Syria Part #1 / Owls
7 Romancing / Chris Lomheim Trio
8 Condolance / John Venkiah Trio
9 Le Plat Pays / Dan Tepfer Trio
10 Hommage a A. Piazzolla / Creative Art Trio
11 In the Days of Growing Darkness / Carole Nelson Trio
12 Symphony No.8 / Nesin Howhannesijan Trio
私がまず喜んだのは、今年は珍しく私が持っているアルバムは一枚のみだったことです(Trio X of Sweden「Trāumerei」)。と、いう事は私にとって新しい発見がある可能性が高いという事ですね、ただ昔のように、近作が少なくなっていますね。それはそうです、他のシリーズとダブるわけにもゆきませんから、他で紹介してしまっているという事もある訳です。これがちょっとシリーズものが増えた結果の欠点かも知れません。それと近作が、かってのように多くリリースされていないですね。これもちょっと残念なところです。
今年のテーマは、どうもジャズは「名曲無くして名演あるのみ」と言うつまり「名演が名曲を生む」という見方から・・ちょっと見方を変えて「名曲が名演を生む」といったところに逆説的にアプローチしたところにあるようだ。それも決してないわけではないと思う節もあって、これも面白いと聴いた訳である。
その為か、今年はクラシックの登場が2曲あった。それは Trio X of SwedenのM4."Traumerei"(上左) シューマンですね。それとNesin Howhannesijan TrioのM12."Symphony No.8"(上右) シューベルトのジャズ演奏だ。私はこれは全く否定しません。それは私自身がジャズを聴くようになったのはジャック・ルーシェの「Play Bach」なんです。思い起こせばもう50年以上前の話で、1960年代にクラシックと共に、このバッハのジャズ演奏に惚れ込んだのです。そして又プログレッシブ・ロックにもまった私が、音楽三昧になったきっかけでもあったわけです。そしてキース・ジャレットのファンにもなってゆくわけですが、そんなことからも、私自身はクラシックのメロディーであれ、スタンダードのメロディーであれ、そのピアノ・トリオの原曲の旋律を生かしてのインプロヴィゼーションの演奏の世界に興味があるんです。その点が、寺島氏の注目点に重なってくるんです。
今回のアルバムではその他、ベース奏者がリーダーのピアノ・トリオであるM1. El dia despues / Manel Fortia「Despertar」(上左)は、沈んでちょっとやりきれない哀愁が見事に描かれていた。
さらに M3. Close to Silence / Claes Magnet Trio「Close to Silence」 (上中央)の「静」の世界は美しさと優しさが満ちている。
そして M9.Le Plat Pays / Dan Tepfer Trio「Five Pedals Deep」(上右) のぐっと深く物思いにふけるムードはただ暗いだけでなく、哲学的な世界を感じて素晴らしかった。リーダーのピアニストのDan Tepfer(右)及びこのトリオは少々別のアルバムを探ってみたいと思ったし、これからもチェックしていってみたい。
こんなところが興味深く印象に残った。
全体に選曲されたアルバムは録音は良い方のものを選んでいるように思う。ただリリース年月がちょっと古かったものが多かったのが残念だが、まあ何とかアプローチして見たくなったので、今回は良かったという事と結論付けたい。
(評価)
□ 選曲 90/100
□ 録音 88/100
(試聴)
El dia despues / Manel Fortia
(ご挨拶)
このブログを続けて17年になりますが、何とか今年もそれなり書いてくることが出来ました。もともとはカメラ・写真、絵画、映画、音楽、オーディオなどの話題で、私の記録みたいな性質のものでスタートしましたが、写真関係は別室( 参照 : blog「瞬光残像」http://photofloyd.exblog.jp)を設けてから、圧倒的に音楽関係、それもジャズが多くなりました。平均して5日に1回の掲載ですので、それでも1年では70回以上になります。考えてみるとよく続けてきたなとも思います。音楽はロツクは減りましたが、クラシックは相変わらず聴いていますので、来年は少しはそのテーマにもと、ふと思っているところです。
いずれにしても、今年1年コメントを頂いた方々をはじめ、読んでいただいた方々に感謝申し上げます。又来年もよろしくお願いします。
最近のコメント