ロッセ・マイヤー・ガイガー Rosset Meyer Geiger 「Live at Marsoel Chur」
耽美的な世界を漂わせ圧巻の迫力のインプロが迫る・・・
<Jazz>
Rosset Meyer Geiger 「Live at Marsoel Chur」
UNIT RECORDS / Import / UTR5055 /2023
Josquin Rosset(p)
Gabriel Meyer(b)
Jan Geiger(ds)
スイスのザンクト・ガレン出身のミュージシャン、ヨスキン・ロッセ(ピアノ)、ガブリエル・マイヤー(ベース)、ヤン・ガイガー(ドラムス)は、20年にわたり、三人明記の現役バンド「ロッセ・マイヤー・ガイガー」として活動し、いよいよ脂が乗ってきている。2010年にはファースト・アルバム『What Happened』(UTR4266)で日本でも知られるところとなり圧倒的支持を得た。前作『Live at Beethoven-Haus』(UTR4866/2021)は、ジャズ・トリオとしての長年にわたるコラボレーションのまさに最高のベスト盤となった。
さて今回のアルバムは、2021年6月、スイスの老舗団体が聴衆の前でライブアルバムを録音できるようにするJazzChur Associationのプラットフォームである「le disque blanc」の初版への招待を受け、2021年6月3日から6日にかけて彼らはクールのマルソエル・ホールで3夜を録音することができ、拍手を聞くとまさに少人数の聴衆の前でのコンサートであり、収録は好条件下であった事がうかがえる。そして5つの即興演奏を収録したアルバムとしてリリースさたものだ。それは、彼らの目指すフリー・ジャズそのものの世界で、三者の目指すところの即興演奏の極みを聴くことができる。
(Tracklist)
1.Marsoel Impro 1
2.Marsoel Impro 2
3.Marsoel Impro 3
4.Marsoel Impro 4
5.Marsoel Impro 5
いっやーとにかく圧倒されますね。立ち上がりからピアノのフリー展開、それに歩調を合わせてのドラムスのステイツク音、ベースも加わって次第に盛り上がり、M1."Marsoel Impro 1", M2."Marsoel Impro 2"の両曲、インプロヴィゼーションの嵐で調和性を逸脱した極めて難解でありながら、どこかひきつけられてしまうところが恐ろしい。M2.は前半の硬質な音のピアノの流れるような演奏が印象的で、ベースのアルコ奏法も魅力的。そして中盤ではベースとドラムスとの競演が面白い。特に録音の質の良さが三者の演奏がそれぞれ手に取るように聴き取れて、インプロの楽しさが十分味わえる。
M3."Marsoel Impro 3" 静の中に余韻を残して響くベース、ドラムスの演奏、それにピアノの澄んだ音の美しさは例えようもなく、美旋律の静謐な世界。トリオで構築する世界を満喫できる。
M4."Marsoel Impro 4" 突如現れる三者の荒々しい最速の即興の展開、ピアノの打音とドラムスが展開するリズムの激しさは冒険的。中盤から静の世界に沈み込み終盤にかけてピアノの音が美しく、そして最後は荒々しさに再び転調し締める。
M5."Marsoel Impro 5" ぐっと静かな世界から次第にピアノが語り始める。ベースとドラムスは静の中にどこかスリリングな音を響かせる。荒々しさが信じられないところから、3者が突時響かせる音には見事なインプロのスリル満点の展開を見せる。最後は再び静の中に沈んで終わる。
20年のキャリアのあるトリオの見事な自由の中に構築される直感的な相互作用の刺激による連携プレイには恐ろしさが感ぜられるほどだ。これだけ一気に進行する高速インプロ演奏が自由でありながらその集中力は見事で圧巻そのもの。そして見せる耽美的美しさが襲ってくる曲を交えてのアルバム一枚が見事に構成されていて、5曲が一つの曲として聴きとれるところも素晴らしい。
いっやー、やはりこのトリオは一筋ならない強力世界だ。
(評価)
□ 曲・即興・演奏 90/100
□ 録音 90/100
(試聴)
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