ハンナ・スヴェンソン Hannah Svensson「 THE OTHER WAY AROUND」
クール・ロマンティック・ヴォーカルで真摯な世界を歌う
<Jazz>
HANNAH SVENSSON 「 THE OTHER WAY AROUND」
Ladybird / Import / 79556874 / 2023
Hannah Svensson ハンナ・スヴェンソン (vocal)
Ewan Svensson エーヴァン・スヴェンソン (guitar)
Jan Lundgren ヤン・ルンドゥグレーン (piano)
Matz Nilsson マッツ・ニルソン (bass except 1, 2, 5, 7) (electric bass on 1, 2, 5, 7)
Zoltán Csörsz ゾルターン・チェルス (drums)
録音 2021年12月 ギューラ・スタジオ(Gula Studion)(スウェーデン)
スウェーデンの女性ジャズ・シンガーソングライター、ハンナ・スヴェンソン(1986‒)は既に6枚のアルバムをリリースしていて、これは『Snowflakes in December(十二月の雪のひとひら)』につづくニュー・アルバム。
彼女はスウェーデンでは、最も有名なジャズシンガーの一人としての地位を確立してきているようだ。生まれと育ちはスウェーデン西海岸のファルケンベルクで、彼女の音楽教育は、著名なジャズ・ギタリストである父親のユアン・スヴェンソンによるという。ピアノとギターのレッスンを受けた後、17歳のハンナはエヴァ・キャシディの歌声を聴いて、初めて歌に興味を持ち始めた。21歳の時から、ハンナは自身のグループ、"ハンナ&アコースティック3"を率い、父親もギターを弾いていた。それ以来、彼女は独自の道を切り開いて来たと。そして故郷の文化賞やスウェーデンのエグゼクティブジャズ協会の周年記念賞など、スウェーデンでいくつかの賞を受賞している。
彼女はその他、画家としても活躍している。具象と抽象のブレンドされた作品で知られているようだ。そのように特徴的なジャズ・ミュージシャンの道を歩んでいる。
さてこのアルバムだが、収録曲は"The Other Way Around"はじめ彼女の8曲のオリシナル曲に、ボブ・ディランの1曲により構成されている。したがつて内容は彼女の人生観が歌い込まれているようだ。
1. Today Is Gonna Be A Better Day (Hannah Svensson)
2. Crossroad (Hannah Svensson)
3. It's All Over Now, Baby Blue (Bob Dylan)
4. The Other Way Around (Hannah Svensson)
5. The Two Of Us (Hannah Svensson)
6. Time To Go Home (Hannah Svensson)
7. We'll Get Through (Hannah Svensson)
8. Carry On (Hannah Svensson)
9. Little Friend (Hannah Svensson)
このアルバムは、過去盤でも共演していたピアノにヤン・ルンドゥグレーンや父親のエーヴァン・スヴェンソンのギターと再び組んだカルテット編成の伴奏での一編。
彼女のヴォーカルは、自然体で優しく極めて端正で "北欧固有の冷涼な清風を吹きかけるが如きクール・ロマンティック・ヴォーカル"と評されている。透明感とやや高めのトーンのクリーン・ヴォイスによって、歌詞とメロディーをあくまで大切にし心情豊かに丁寧に語りかけてくるような歌である。
とにかく奥ゆかしさが感じられる自然体の姿で、謙虚に、真摯に切々と語るがごとくに歌うところには気品が感じられ、思わずぐっと引き込まれる。内容は自己の体験からのポジティブな意志の表現のようだ・・・そんなところからも真摯な世界に描いているのかもしれない。
M1. "Today Is Gonna Be A Better Day" 自己のオリジナル、かなり私的な心情の姿を描いて歌っているようだが、情に流されるのでなく冷静な印象。その為、いわゆるジャズ・ヴォーカルと言った世界よりはクラシックよりの雰囲気も。
M3. "It's All Over Now Baby Blue" Bob Dylanの曲、ギターをバックに情緒豊かにしかも美しく歌い上げる。私の一押しの曲。
M4. "The Other Way Around" 、M5. "The Two Of Us" ちょっと物語風の世界。
M6. "Time To Go Home" 新しい出発と未来への意志が美しく歌われる。
M8. "Carry On" 、M9. "Little Friend" 希望の感じられる明るさが見える展開がいい。
自らの経験から真摯に未来に向かっての意志を歌い上げた彼女の作詞・作曲・編曲の曲群が、聴く我々に好感を持って迎えられる因子が多い。エーヴァン・スヴェンソンのギター、 ヤン・ルンドゥグレーンのピアノも洗練されていて聴きやすい。なかなかジャズ・アルバムとしてはテーマも特異でもあるが、これも一つの世界として聴くに十分答えてくれるアルバムであった。
(評価)
□ 曲・編曲・歌 88/100
□ 録音 88/100
(試聴)
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コメント
スウェーデンのアーティストと言えばアバしか思い浮かばないワンパターンの体たらくぶりです。(苦笑)
ジャズ音楽にこんな澄んだ女性の声を聴けばとろけちゃうそうです!
投稿: ローリングウエスト | 2023年12月 9日 (土) 21時11分
ローリングウエスト様
コメント有難うございます
彼女は、私もきちっとアルバムを聴いたのは今回初めてかもしれません。自己の世界をしっかり築いているといった感じですね。
所謂、アメリカン・ジャズの流れとは別物ですね。こんな端正な歌で真摯な世界を聴かせてくれるのも、稀有なところにありますね。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2023年12月 9日 (土) 22時43分
「レッド・ツェッペリン」1970年代前中期の名盤名曲をレポートしていますのでまた覗いてみて下さい。
投稿: ローリングウエスト | 2023年12月12日 (火) 06時13分