マルチン・サッセ Schoenecker / Sasse / Schieferdecker 「Trio Tales」
ベテランのギター・ピアノ・ベースによるドラムレス・トリオで描く物語・・・
<Jazz>
Schoenecker / Sasse / Schieferdecker 「 Trio Tales」
JazzJazz / Import / JJ1037 / 2024
Joachim Schoenecker (guitar)
Martin Sasse (piano except 7)
Markus Schieferdecker (bass except 7)
Recorded and mixed by Klaus Genuit at Hansahaus Studios Bonn on October 8th & 9th, 2021
ドイツが誇る3アーティストが集結した。それはギターのヨアヒム・シェーネッカー(1966年旧西ドイツのザールブリュッケン生まれ 下左)を中心に、人気ピアノのマルチン・サッセ(1968年旧西ドイツのハム/ヴェストファーレン生まれ 下中央)、ベースのマルクス・シーファーデッカー(1972年旧西ドイツのニュルンベルク生まれ 下右)であり、いずれもキャリア豊富なドイツの精鋭陣が顔を揃えた連名ドラムレス・トリオのアルバムだ。
この作品はタイトルにもある通り"Tales 物語"をテーマにしており、敢えてリーダーを決めず、 メンバー3人による音楽的な会話を交わす、つまりインタープレイの楽しさを目指して作成されたようだ。この"Tale"には"むだ話"のような意味もあるので、とにかく3人がリラックスして楽しんでいるとみていいだろう。
1.Blues For PB
2.Body & Soul
3.Groovy Waltz
4.Longing
5.Green And Blue
6.One For Jeanni-e
7.Autumn In NY
8.Pannonica
9.Song 42
オープニングのM1."Blues For PB"のブルースから、なんとなく仲間意識で盛り上がって、一緒に演奏する純粋な喜びが感じられるようなゆとりのある演奏に聴こえる。それはメロディックでリズミカルでもあり快感。
また意外な繊細さが彼らのオリジナル曲M4からM6には感じられ、自然にメロディー演奏が3者に転換されて行って対等感がにじみ出ている。お互いに敬意を払ってクールに流すところもみられ、それはまさにベテランの味である。
近作マルチン・サッセのピアノトリオ新作アルバム『Longing』(JJ51035/2024 紹介下記)にも収録されているM4とM5が出色の出来を感ずる。特にM5."Green And Blue"では、ギターの味がピアノの音に先行して美しい旋律を流し、それを作曲者のサッセがほほ笑むようにピアノでホローする形で美しい音を聴かせ、その流れの微妙な繋がりが素晴らしい。それに更にベース・ソロに近い流れが加わって、この色付けが静かにしてちょっと物憂いところがジャズのムードを盛り上げていて楽しい。マイルス・ディヴィスの"Blue in Green"を大いに意識してのものであろうことは想像に難くないが、私はこのアルバムでは一押しだ。
M7."Autumn In NY"はギター・ソロで、2分20秒と短いが、なかなか編曲とアドリブとインプロが生きて変化していて、ジャジーな充実感の中にちょっと寂しい秋が実感できる。そしてM8."pannonica"へ流れ3者の間を巡る演奏によってインプロによる静かな花が咲く。
究極、彼らの演ずるストーリーは、メロディックでリズミカルな繊細さに満ちており、一方クールさでも自信の結果で安定感ばっちり。彼らの描くところ、エレガントに仕上げる年期の味が満ちていてこれも好感である。テーマやスタイル、和音やリズムを変化させる技術は経験の深さであろうと聴いた。なかなか味のあるアルバムであった。
(評価)
□ 曲・編曲・演奏 90/100
□ 録音 88/100
(試聴) "Green And Blue"
- - - - - - - - - - - - - - -
(参照) マルチン・サッセのピアノ・トリオ・アルバム
エレガントで軽快にメロディックなピアノ・トリオ作品
<Jazz>
MARTIN SASSE TRIO 「LONGING」
JazzJazz / Import / JJ51035 / 2024
Martin Sasse (piano)
Martin Gjakonovski (bass)
Joost van Schaik (drums)
Recorded and mixed by Reinhard Kobialka at Topaz Studio Köln.
上記アルバムのピアニストのマルチン・サッセの、これはついこの間リリースされた自己名義トリオによるアルバムである。彼のオリジナル曲のM03."Longing"とM06."Green And Blue"が、こちらのアルバムにも登場する。同じトリオ・スタイルでも楽器編成が異なるので、その違いが楽しいところだ。
(Tracklist)
01. How Little We Know
02. Groovy Waltz
03. Longing
04. Never To Return
05. The Soul Of Jazz
06. Green And Blue
07. Swing, Swing, Swing
08. Bennetts Blues
09. Lover Man
10. With You
サッセのピアノはエレガントであり聴くに気持ちが良い。サウンドはメロディーに乗っての軽妙さが印象的だ。収録は8曲の彼のオリジナルに、スタンダード曲M01."How Little We Know"とM09." Lover Man"が収録されているが、M03."Longing"、M06."Green And Blue"が、上記アルバム『Trio Tales』と共通であるところから聴き比べが注目点。こちらでは曲の展開はほゞ同じスタイルでありベースの演ずる役割も似ているが、純粋なアコースティック・ピアノ・トリオの良さとしてのメロディーの美しさがピアノによって描かれている為、上記のギター・ジャズ・ムードが加味されての世界とは印象が結構大きく異なる。どちらが良いかは好みというところ。
なかなか情景豊かな演奏で、ピアノ派にとっては好まれる因子のあるアルバムである。
(評価)
□ 曲・演奏 88/100
□ 録音 87/100
(試聴) "Breen And Blue"
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コメント
マーティン・サッセって初めて知りましたが、ドイツ出身のピアニストなのですね。ドイツ・JAZZ・ピアノというとケルンコンサートのキース・ジャレットくらいしか頭に浮かばないJAZZ音痴のRWでした。(苦笑)
投稿: ローリングウエスト | 2024年1月27日 (土) 20時13分
ローリングウエスト様
コメント有難うございます
そうですね、ユーロはジャズ・ピアニストは有名な人は多いですが、イタリア、北欧、ポーランドなどで意外にドイツは知られていませんね。
このピアニストも、名前は知れる業績があるんですが、私は殆ど聴いてこなかった人です。
今回この2枚で、成程って感じなんです。(笑)
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2024年1月27日 (土) 22時51分