アンドレア・モティス Andrea Motis 「Febrero」
中南米曲を中心にアンサンブル演奏をバックに歌うアルバム
<Jazz>
Andrea Motis 「Febrero」
AUTO EDITED / Import / JJAMCD00302 / 2024
Andrea Motis(vocals & trumpet)
Camerata Papageno(young Chilean classical chamber orchestra)
Christoph Mallinger(violin & mandolin)
Federico Dannemann(guitar & direction)
スペインはバルセロナ出身の人気歌手でトランペッターのアンドレア・モティス(1995年生まれ、→)の2022年の『Loop Holes』(JJAMLP00101)及び『Colors & Shadows』(kkJ187)に続くニューアルバムということで、さっそく聴いてみた。 チリのクラシック・アンサンブルであるカメラータ・パパゲーノと共演だ。レパートリーは、アンドレア・モティスが、ギタリストでアレンジャーのフェデリコ・ダンネマンとともに選曲。チリ、ペルー、アルゼンチンに由来する中南米の音楽、及び、ブロードウェイのナンバーを、親交のあるクリストフ・マリンガー(vln,mandrin)、フェデリコ・ダンネマン(g)のサポートを得て完成させたと。彼女のパートナーであるオーストリアのヴァイオリニスト、クリストフ・マリンガーとパパゲーノ文化財団とのつながりから生まれたという経過の様だ。
モティスの言うには「繊細なアレンジと録音の響きを通して録音された曲は、チリでの夏の日々に私たちみんなが一緒に過ごした穏やかさと深い喜びの感覚を思い出させてくれる」と、いうことのようだ。そして彼女は具体的には、「ガーシュウィン兄弟の2つの作品、ピクシングイーニャとジョビンの作曲、2つのメキシコのボレロ、そしてオラシオ・サリナスによるインティ・イリマニのヴァージョンを収録したこのアルバムは、作者、演奏者、未来のリスナーなど、さまざまな世代の時代を超越した瞬間の記録である」と説明している。
(Tracklist)
1.La Pajita (Horacio Salinas / Gabriel Mistral)
2.The Man I Love (George & Ira Gershwin)
3.Carinhoso (Alfredo da Rocha Viana Filho Pixinguinha / João de Barro Braguinha)
4.Noche de ronda (George and Ira Gershwin)
5.Garota de Ipanema (Antonio Carlos Jobim / Vinícius de Morales)
6.Someone to Watch Over Me (Agustín Lara)
7.Sensemayá (Horacio Salinas / Nicolàs Guillén)
8.Perfidia (Alberto Domìnguez Borrás)
9.El Carnaval (Horacio Salinas)
ちょっと心配したのは、フェデリコ・ダンネマン指揮のカメラータ・パパゲーノの音世界だ。このあたりは私の好みの問題で、おそらくソロ楽器などでしっとり落ち着いた世界というのとは全く別物であろうと踏んでいたが、まさにその通り、ストリングスの美しさもあるが、どちらかというと中南米の独特なホットな世界だ。彼女の前作『Colors & Shadows』もビック・バンドがバックであって、ヴォーカルを聴くには若干期待に反していたのだが・・・・。
今回のこのアルバムも、アンサンブル主体のカメラータの音とジャズやラテンアメリカのリズムをミックスした作品として聴くのがいいといったところ。彼女のトランペットも勿論入ってくるが、その演奏を聴くのか、ヴォーカルを聴くのか、その役割も気にしているのだが、どうも私の期待とは別の世界に仕上がっている。
M1."La Pajita " チリでは子供から大人まで広く知られた曲とか、マンドリンと共に相変わらずのちょっと可愛らしさのある歌声で優しく歌って聴かせる、このあたりは期待の世界。
M2."The Man I Love" ストリングスから始まって、更に美しくしっとりと歌いあげる
ここまでは、トランペットの登場もなくファンタジーな物語の始まりのムード。
M3."Carinhoso" ブラジルの愛の有名曲。モティスの優しい歌声。どうもバックのストリングスが私のラテン印象に合わない。
M4."Noche de ronda" これも古いメキシコの歌、彼女の巻き舌の歌は初めて聴いた感じ。
M5."Garota de Ipanema" ここでは、リズムカルな誰もが知っている曲の登場、やっぱりぐっと落ち着いた歌だ。彼女のトランペットもようやく歌い上げる。最後に変わった編曲。
M6."Someone to Watch Over Me" ガーシュウィンの昔の曲、フランク・シナトラとかエラ・フィッツジェラルドの歌、ちょっと時代ものを感ずる歌だが聴き惚れるところもある。
M7."Sensemayá" これは快調のテンポの難しい曲、メキシコの曲でこのカラメータのような多楽器編成向きの曲の様だ。モティスのトランペツトも生き生きと。
M8."Perfidia" メキシコのアルベルト・ドミンゲスの曲。ちょっと変わった編曲でスタート。テンポは快調だが・・・・とにかく超有名曲を楽しくといつたところか。
M9."El Carnaval"民族ダンス・ミュージツクの仕上げ。モティスのトランペットも加わってのお祭り的世界。
このアルバムは、勿論モティスのヴォーカルものであるが、どうもカラメータ・パパゲーノというアンサンブル演奏集団(チリの非営利団体で、クリスチャン・ボエシュが設立・会長を務めており、この財団は、地方の78の学校に通う6歳から10歳までの約2,000人の子どもたちの才能を音楽を通じて育成することを目指しているもの) の明るい演奏に大きなウエイトがあって、それ自身が私の好むジャズとしての感覚とのズレでどうも手放しに楽しめない。このようなところは聴く者の好みであるから、喝采を浴びせる人もいるのかもしれないが。
私としてはギター、ピアノなどとのデュオぐらいのほうがかえって彼女の歌を楽しめるような気がするのだ。そんなところで今回も期待とは別世界であった。しかし、トランペッターとしての期待度もあろうから、なかなか難しい、ペットといえどもチェット・ベイカーのような世界も有るし、まだまだ彼女にはヴォーカルの質が好きなので期待はしている。従って演奏と歌をどのように聴かせてゆくかは今後の課題だろう。いずれにしても私としては次回は小編成ものに期待したいところだ。
(評価)
□ 編曲・演奏・歌 85/100
□ 録音 85/100
(視聴)
"Someone to watch over me "
*
"El Carnaval"
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