セバスチャン・ザワツキ Sebastian Zawadzki 「standards vol.1」
クラシックのベースから発展したピアノ・ソロ・ジャズ
<Jazz>
Sebastian Zawadzki 「standards vol.1」
Sebastian Zawadzki : piano
前回に続いてセバスチャン・ザワツキ(Sebastian Zawadzki、1991年10月14日 - )です。こちらはソロ・ピアノによるジャズ・スタンダート演奏集(経歴等は、前回記事参照)。
彼の近年の活動の多彩さから・・・ちょっと不思議なアルバムの登場だ。ジャズを演ずるところが彼の主力であるという事を我々に知らしめているのか、ここでは意外にもオリジナル曲でないジャズのスタンダード曲、しかもかなり古いものを取り上げているのだ。
取り敢えず近年の活動の概略をみると、2019年、ザワツキ自身のディスコグラフィーでも重要となる『Piano Works Vol.2』をリリース。この曲は、コペンハーゲンのロイヤル・アカデミーにある古いアップライト・ピアノとグランド・ピアノで録音され、Spotifyで最も人気のあるセバスチャンの作品の1つで、1曲目"Unstoppable Changes"は300万回近くストリーミングされた静かな不思議な世界に誘われる曲だ。
続いてのアルバム『Songs about Time』(2020)は、ピアノに弦楽四重奏を重ね美しく平和な世界を描き、新しい音楽の道を模索した。一方Youtubeで最も人気曲の1つである"Entropy"(ピアノの押し寄せる波の美しさは秀悦)をもリリースした。
2021年には、ジャズトリオのために制作されたシングル「Far Away」(静かな自然の美を堪能)をリリースし、ストリーミングサービスで約300万回のストリーミングを獲得しました。
更に最新作『Viridian』(2022年)と『Altair』(2022年)を登場させ、これらも彼の新展開を示すもので、『Viridian』は、ポーランドのコルブディにあるTall Pine Recordsで録音されたメロディックな即興ソロ・ピアノ曲のシリーズで、『Altair』は交響楽団、マレット、ピアノのためのロング・プレイ・アルバムである。
そしてそんな経過から、昨年2023年には、エネルギッシュにも『Pax Elysium』、前回紹介の『Vibrations』をリリースし、この今作をも登場させたのだ。
(Tracklist)
1. A Child Is Born (Cover)05:36
2. My Favorite Things #1 (Cover) 04:43
3. All of Me (Cover) 05:05
4. Estate (Cover) 05:02
5. I Didn't Know What Time It Was (Cover) 06:38
6. Interlude 01:43
7. Darn That Dream (Cover) 05:25
8. I Fall in Love Too Easily (Cover) 06:45
9. Ask Me Now (Cover) 06:44
10. My Favorite Things #2 (Cover) 03:27
11. Time Remembered (Cover) 03:09
とにかく、静と美と安らぎの感ずる演奏が良いです。
M1."A Child Is Born" 静かなピアノの優しく美しい調べでスタート。ビル・エヴァンスも演じたトランペッターのサド・ジョーンズの曲。とにかく過去の多くのいずれのミュージシャンの演奏よりも美しさが光っている。ひそかな希望と展望の感ずるところが良い。
M2."My Favorite Things" '59年のミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」のリチャード・ドジャースの曲。メロディはちゃんと演じてのクラシック・アレンジにビックリ。
M3."All of Me " とにかく古い時代のヒットものですね。
M4."Estate " 私の好きな曲ですが、これが登場とは驚いた。テーマをさらっと流してイタリアのねちこさが見事に美しさに変身
M5." I Didn't Know What Time It Was" "時さえ忘れていて"これもリチャード・ロジャースですね。とにかく古い世界に足を入れています。
M6."Interlude" ぐっと落ち着いた静の空間の間奏曲が入って・・・
M7."Darn That Dream" 女性の片思いの夢の歌ですかね。アメリカの古き良き時代を連想します。ぐっと音の余韻が生きた演奏。
M8."I Fall in Love Too Easily" "すぐ恋に落ちてしまう私"というところでしょうか、シナトラとかチェット・ベイカーの世界ですね。
M9."Ask Me Now " セロニアス・モンクの曲、ぐっとしんみりと迫る演奏
M11."Time Remembered " ビル・エヴァンスに迫って収めるところがいいですね。
スタンダードといっても、我々の生まれる前の1930-40年という古き良きアメリカ社会のヒット曲のスタンダード化した曲などを多く取り上げて、彼なりの世界を構築したピアノ・ソロが生きたアルバムだ。時にエヴァンスを想わせるところが彼の一面なんだろうと思って聴いている。
しかし、かってのスタンダードが益々高潔になってくるところが"セヴァスチャン・ザワツキの世界"なんだということが解るところだ。今後も彼には期待の高まるところである。
(評価)
□ 選曲・編曲・演奏 90/100
□ 録音 88/100
(試聴) "" Estate"
"Time Remembered"
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コメント
これも美しいジャケですね。
心がざわつきます。
冬のイメージが似合うということでしょうね、この音は。
確かに、高潔という言葉が似合っているようです。
投稿: iwamoto | 2024年2月17日 (土) 13時06分
iwamoto様
コメント有り難うございます
このジャケも素晴らしいですね・・・このような写真が撮れる環境に私は居るので、なんとか撮ってみたいと思っていますが・・・・
彼のピアノ演奏の基礎はやっぱりクラシックにありそうですね。メロディーを流してのパッセージの入れ方がクラシックを感じてしまいます。そこに高潔さが感じられるのでしょうかね。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2024年2月17日 (土) 21時18分
「アダム・バウディヒ」と、「レシェク・モジュジェル」によるデュオに続いて、またまたポーランドですか。このアルバム、欧州ピアノの真髄を感じさせるようで好きですね。紹介ありがとうございます。
投稿: 爵士 | 2024年2月19日 (月) 10時33分
爵士様
コメント有難うございます
ポーランドへ行って見て、あの国の皆さんはやっぱりショパンを心から誇りに思っていることを感じました。それだけ教育においても音楽というものの評価がちゃんとなされているのでしょうね。従ってこの国からのミュージシャンは、クラシックをベースにして発展している人がほとんどですね。はっきり言えば基礎がしっかりしている。
もう一つは、自国の独立について皆が真剣であることも凄いです。
余談になりましたが・・・日本はそろそろ原点を忘れないようにしてほしいと何時も思ってます。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2024年2月19日 (月) 16時58分