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2024年2月21日 (水)

ユン・サン・ナ Youn Sun Nah『ELLES』

唯では終わらせないユンの世界が詰まっている

<Jazz>

Youn Sun Nah『ELLES』
VM Germany / Import / 5419781215 / 2024

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Youn Sun Nah: vocal, kalimba, music box
Jon Cowherd: piano, fender Rhodes, wurlitzer

Lachanteusedejazzyounsunnahw   韓国出身、現在はフランスを拠点に活躍するジャズ・シンガー、YOUN SUN NAH(ユン・サン・ナ)の4年ぶりの最新アルバム。これは彼女自身が好み、インスピレーションを受けてきたという女性アーティストの楽曲を取り上げて、あの彼女の独特のヴォーカルと、アメリカ人のジャズ・ポップス、ロックと広い分野で活躍中のジョン・カウハードJon Cowherd(ピアノやフンンダー等)とのデュオによって作り上げた作品。

 彼女は1994年からACT JAZZレーベルで多くの作品をリリースし、2014年のソチ冬季オリンピックの閉会式には、朝鮮民謡「アリラン」を歌い上げ絶賛を浴びた。そしてなんと2019年にはフランス文化省・芸術文化勲章を受章している。

 又2019年にワーナーミュージック・グループのArts Musicへと移籍し、そこからの第1作となる『IMMERSION』(ATSM5873132)をリリースしたが、試みの斬新さもあって評価は高い作品だった。そして4年の経過でここに新アルバムを完成させた。アルバム・タイトルは"彼女たち“ということのようだが、ビヨークからサラ・ヴォーン、グレース・ジョーンズやロバータ・フラック、エディット・ピアフなどなど、時代もジャンルも異なる女性アーティストたちの名曲を取り上げ歌い込んでいる。

(Tracklist)
1.Feeling Good
2.Cocoon
3.I've Seen That Face Before (Libertango)
4.My Funny Valentine
5.White Rabbit
6.Sometimes I Feel Like A Motherless Child
7.Baltimore Oriole
8.Coisas Da Terra
9.La Foule
10.Killing Me Softly With His Song

 彼女のヴォーカルのサウンドスケープは音域の広さを駆使した独特の解釈・編曲に基づいた異色の世界だが、その為か不思議に引き付ける魅力がある。一般的なジャズ・ヴォーカルとは一線を画していて、特に前作『IMMERSION』の出来が新しさを追求する姿勢に満ちた評価を獲得している為、今作は?と思ったところもあるが、多くはかなり標準的仕上げにもってゆき、時として2オクターブも上げる高音部とかアカペラ・スキャット手法などとやはりそれなりに尋常でない気配も感じさせる。それをカウハード(↓)の曲の表現が見事でこのデュオは成功していると感じた。

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M1."Feeling Good"はニーナ・シナモンに迫ってのものだが、常識的な聴きやすい歌に仕上げている。
M3."I've Seen That Face Before "は、異様なスタートだが、歌は極めて軽快なタンゴの世界。しかし後半の高音の世界は聴く方がひびる。
M4."My Funny Valentine" そしてM10."Killing Me Softly With His Song"のポピュラーな原曲以上に、彼女の世界のしっとりムードで訴えてくる、聴き応え十分。
M5."White Rabbit" こうしたロックも、ユン・サン・ナ節で落ち着くところが不思議。
M6."Sometimes I Feel Like A Motherless Child" こうしたソウルフルな世界もなかなか心を込めての歌が見事。
M7."Baltimore Oriole" クリス・コナーの味もそこなわず、彼女の歌に。
M8."Coisas Da Terra" スキャットの凄い処を聴かせる。芸術性は高そうだが、私には向かない。
M9."La Foule" シャンソンの大人っぽさもこなしきっている。

 究極はレベルの高さを感ずるヴォーカル・アルバムだ。バラード好きの私にとっても納得のヴォーカルもあり十分楽しめる。前作のように彼女らしい新世界への試みの革新的・独創的テーマが、今作は古きを回顧するところにとの違いがあって、常に期待度が大きいのでその相違に不満足というところもあるかもしれないが、このアルバムも現ジャズ・ヴォーカル界における異色面が出ていて、ただでは終わらないスタイルは見えていた。面白いアルバムだ。

(評価)
□ 編曲・歌  88/100
□ 録音    87/100
(試聴)
"Killing Me Softly With His Song"

*
"I've Seen That Face Before "

 

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コメント

風呂井戸さま、コメントとリンクをありがとうございました。

私もダニルソン、ワケニウスいう私的黄金コンビが参加した『Voyage』からファンですよ。
ACTの時から、ちょっと、、一筋縄ではいかないところもあって、
すっごく巧いのに、ヴォーカル好きのお○さまがたに、いまいち人気ないのですが、
風呂井戸さまもお好きとのことで、大変嬉しいです。😊

とても巧い方だと思ってます。
一度でいいので、生で聴いてみたいです。

私のリンクも置いていきますね。

https://mysecretroom.cocolog-nifty.com/blog/2024/03/post-56c0b3.html

投稿: Suzuck | 2024年3月22日 (金) 07時50分

Suzuck様
コメントそしてリンク有難うございます
韓国系のジャズも多種多様で・・・時には聴いてみないといけませんね
・・ということで、それほど期待しなかったんですが、やはり巧いですね。
 そこに何かがありそうなところが魅力です。更に磨きがかかったアルバム期待しています。
 お〇さまがた、アジア系ではLaufeyにとどまっていると、ちょっと無理かもしれません。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2024年3月24日 (日) 12時48分

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