山本剛 Tsuyoshi Yamamoto Trio 「SWEET FOR K」
山本剛トリオと神成芳彦 伝説のTBMタッグが再びしっとりと美しくエロール・ガーナーを
<Jazz>
Tsuyoshi Yamamoto Trio 「SWEET FOR K」
SOMETHIN'COOL / JPN / CD / SCOL1071 / 2024
山本 剛(piano)
香川 裕史(bass)
大隅 寿男(drums)
レコーディング、ミックス:神成芳彦 2023年11月20日音響ハウス(Tokyo)にて
ここで、一昨年取り上げた前作『Blues for K』(SCOL-1062)で再会したピアニスト・山本剛(↓左)と、TBMレーベルの元録音エンジニア・神成芳彦の新作アルバムの登場。 『ミッドナイト・シュガー』『ミスティ』など画期的な高音質録音と名演奏で数々の日本発・世界的名盤を生み出して、我々の若き頃を楽しませてくれたこのコンビが、栃木県那須高原にある神成のプライベートスタジオで吹き込んだ前作品は、「ジャズオーディオディスク大賞2022 銅賞」も受賞するなど、話題と高い評価を得た。そして2023年には、「ぜひプロスタジオでの録音でも聴いてみたい!」という声も上がったとかで、神成芳彦が「東京・音響ハウス」に登場して、昔のTBMレーベルもレコーディングを行ったこのスタジオで老骨に鞭打って再び腕をふるう事となったもの。 選曲は山本剛が敬愛してやまないエロール・ガーナーを中心としたバラッド集。まあ二人にとってみればお互い歳を取って、ここにその昔の再現を試みたというのは、これまた注目していいものである。メンバーは、香川 裕史(bass↓中央)、大隅 寿男(drums↓右)と不変のトリオ。
(Tracklist)
1. Night Wind (ErrollGarner)
2. Paris Bounce (ErrollGarner)
3. When Paris Cries (ErrollGarner)
4. Dreamy (ErrollGarner)
5. Mood Island (ErrollGarner)
6. Solitaire (ErrollGarner)
7. Daahoud (Clifford Brown)
8. Polka Dots and Moonbeams(Jimmy Van Heusen)
9. Sweet for K
10. Laura (David Raksin)
11. Garner Talk
エロール・ガーナーErroll Louis Garner (1921,6,15 - 1977,1,2 右)と言えば、意外に皆が言わないのだが、現代ピアノ・トリオの元祖と言ってもいい人だ。それは1944年でありモダン・ジャズ時代のピアノ・トリオの先駆者である。つまり、ピアノ・トリオの元祖はナット・キング・コールであるが、実は、その最初のスタイルは、ピアノ、ベース、ギター編成だったんですね。それをピアノ、ベース、ドラムスの形に仕上げたのがエロル・ガーナーなのだ。我々はエロル・ガーナーといえば"Misty"ということになって、曲が最初に出てくるが、現代ピアノ・トリオの先駆者としてのピアニストの貢献が大きかった人である。
山本剛は、若い時にこのガーナーの"Misty"を演じてスター・ダムに乗ることとなったので、エロル・ガーナーには相当の思い入れがあると思う。そんなわけで意外に知らないガーナーの曲をここで聴くことになったのだ。リストを見ると6曲ここに収録されている。
エロル・ガーナーの曲は、M1.からM6.まで6曲続く、まずM1."Night Wind" は、今回の録音の最初の演奏は気合付でM2."Paris Bounce"であったようだが、このアルバムではバラード演奏で聴かせるトップ曲に出てきた。
そして、M2. "Paris Bounce" は軽快に
M3. "When Paris Cries" ぐっとピアノがしっとりと演じられる。香川の旋律のアルコ奏法がさらにムードを盛り上げる。とにかくうっとりだ。
M4. "Dreamy" 一時代前の夜のアメリカンな甘さが響いてくる。
M5. "Mood Island" 気分を変えてちょっと軽く軽快に
M6. "Solitaire" ガーナーの最後は、ピアノ・ソロで美しくそして軽い中にちょっと切なく
M7. "Daahoud" Clifford Brownの曲をバラード調で
M8. "Polka Dots and Moonbeams" ライブではおなじみのようだが、時代的な古い感じはあるがバラードでの演奏に聴き入ってしまう
M9. "Sweet for K" 山本の回顧的感謝の美しさの曲
M10. "Laura" David Raksinの曲だか、ガーナーの持ち曲でもあったようだ。うっとりと聴ける
M11. "Garner Talk" ガーナーへの想いを美しく
とにかくうっとりとして聴いていればそれでOKというアルバム。演奏は日本のピアノ・トリオの一面として貴重な世界。
問題の神成芳彦(上写真前)の録音だが、ここでも復活の気合が入ったことは十分に窺い聴くことができた。特に山本のピアノはパーフェクトに近い録音だと思う。ただちょっと残念なのはドラムスの響きとブラシの音やシンバル音の硬質な繊細な美しさがアメリオ録音の音には負けていた。ベースももうちょっとソリッドな音でリアルに前に出ても良かったのでは(好みもあると思いますが)とも思う、そこは私としては若干残念に思ったというところ。
そうは言っても、これだけ音質にも迫って良質なアルバムを求めるのは嬉しいことである。評価はしたがって良いところに落ち着いた。
(評価)
□ 選曲・演奏 88/100
□ 録音 88/100
(試聴)
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コメント
エロール・ガーナーの名は初めて知りました。現代ピアノ・トリオの元祖 、ジャズが疎い自分にとっては大変勉強になります。
投稿: ローリングウエスト | 2024年3月16日 (土) 17時09分
ローリングウエスト様
コメントどうも有難うございます
エロール・ガーナーは、曲"Misty"があまりにも有名で、作曲家として日本では一般的ですが、本来のピアニストとしての活躍も貴重なんですね。ピアノ・トリオ愛好家としては貴重な人です。^^
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2024年3月17日 (日) 11時42分