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2024年4月11日 (木)

インガー・マリエ Inger Marie 「Five Minutes」

ぐっと落ち着いたヴォーカル・アルバム

<Jazz>
Inger Marie 「Five Minutes」
Stunt Records / Import / STUCD23082 / 2024

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Inger Marie Gundersen(vocal),
Espen Lind(guitar, keyboards, and backing vocals),
Torjus Vierli(piano, organ, and keyboards),
Tom Frode Tveita(bass),
Martin Windstad(drums and percussion),
Kristian Frostad(pedal steel, lap steel, and guitar),
Erlend Viken(fiddle),
Tore Johansen(trumpet)

 北欧を代表するディーヴァの一人として幅広い人気を誇るシンガー、インゲル・マリエ・グンデシェン(Inger Marie Gundersen インガー・マリエ 下左)の、5年ぶり、そしてパンデミック以来のニュー・アルバム。彼女は1957年ノルウェー南岸のアレンダール生まれで、約40年ロック、ジャズのシンガーとして活動してきて、2004年に遅咲きアルバム・デビュー(『Make This Moment』)で人気者に、既に60歳代後半だ。それにつけても頑張ってますね。

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 このアルバムは、母国ノルウェーのマルチ鍵盤楽器奏者、作曲家のエスペン・リンド(Espen Lind (born 13 May 1971) 上右)が共演・プロデュースしている。彼はテレビ・パーソナリティとしてのキャリアに加えてテイラー・スウィフトやビヨンセなどと仕事してきた国際的に評価を得ているノルウェーのレジェンド。そしてその他、スウェーデンのトム・フルーデ・トヴェイタ(Bass)以外すべてノルウェーのミュージシャン達が共演している。

(Tracklist)
01. Five Minutes(Gretchen Peters)
02. Sailing(Iain & Gavin Sutherland)
03. My Valentine(Paul McCartney)
04. We Kiss in a Shadow(Oscar Hammerstein II/Richard Rodgers)
05. Wild Horses(Mick Jagger/Keith Richards)
06. Thank You Lord(Bill Fay)
07. Why Worry(Mark Knopfler)
08. Litter Person(Jon Brion)
09. Narrow Daylight(Diana Krall/Elvis Costello)

7653648162_5d69ec80ea_z   年輪を重ねたこの低音のぐっと落ち着いたヴォーカルはいいですね。歌と共に詩情が込められていく、そして心に直接響く控えめの歌声が静かで温かい世界を築き聴くものを包んでくれる。
 彼女の息を呑むような歌声を聴かせつつ、ロックの流れやフォークぽい展開があったりの彼女なりのジャズの独特のサウンド世界が作られる。それは温かく、軽くなく、誠実で、過去に聴いてきた曲も共感を誘う新しい意味をもたらして迫ってくる。

 Torjus Vierli(ピアノ、オルガン、キーボード)の彼女のヴォーカルを支える技量も素晴らしく、彼女の描く曲の展開に大きく寄与している。何につけてもEspen Lind(ギター)が、彼のサウンドを上品に全体に乗せていて品格あるアルバムに作り上げているのは見事である。

M01."Five Minutes" 心を落ち着かせ思い描くことの為にタバコを吸うには5分間あればいいと、静かなしっとりとした説得力ある控えめのヴォーカルでスタート。
M02."Sailing" 愛しい人を求め大西洋を渡る歌と解釈されつつ、実はこれは自由と神の成就へと至る人類の精神的なクリスチャン・ソングとロッド・スチュアートがカヴァーした歌。そんな心深くに染みてくるマリエの歌。
M03." My Valentine" 多くの有名どころがカヴァーしている名曲。ささやかな愛が情感豊かに歌われる。
M04."We Kiss in a Shadow" 秘密裏の恋の喜び、歌声とピアノの相乗的効果の美しさが見事。
M05." Wild Horses" ストーンズの解釈がいろいろと言われる曲だが、マリエは何かを心に描いて訴えてくる。
M06." Thank You Lord" 低音でのリズムにのつて、ギターの響きと共にスロー・ロックの味わいを感じさせちょっと異色の曲で私のお気に入り。内容は"主に感謝の心を訴える・・・"といったところか。
M07."Why Worry" 暗い中に光明を見出して慰めてくれるような世界。
M08."Litter Person" 小さな人間の大切なものをしっとりと訴える。
M09."Narrow Daylight" 冬が終わって夏に向かう・・そこには展望か、Diana Krallの歌だが、なかなか味わい深く歌い上げている。

 人生の経験を歌い込んだような選曲と歌い込み、年齢的声量低下はエコーで若干補足はしているが、彼女の真骨頂の控えめな詩情ゆたかな世界をしっとりと聴くことが出来る。

(評価)
□ 選曲・歌 90/100
□ 録音   88/100

(試聴)


*



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2024年4月 6日 (土)

アンナ・グレタ Anna Greta「Star of Spring」

待望のACTからの2ndの登場・・・神秘的で感動的な世界

<Jazz>

Anna Greta「Star of Spring」
(CD) ACT MUSIC / Import / ACT 9748 / 2024

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Anna Gréta (piano, vocals, backing vocals, keys, organ),
Einar Scheving (drums & percussion),
Skúli Sverrisson (electric bass),
Þorleifur Gaukur Davíðsson(guitar and pedal steel),
Birgir Steinn Theodórsson(double bass),
Magnús Trygvason Eliassen(drums),
Sigurður Flosason(bass clarinet),
Albert Finnbogason(synthesizer)
Recorded at Sundlaugin Studio, Iceland during May 2023 and at Studio 1001 in Stockholm
during July - September 2023.

 前作2021 年のACTデビュー作『Nightjar in the Northern Sky』のアイスランド出身ジャズSSW、ピアニストのアンナ・グレタAnna Greta(下左)のアルバムは、久々の注目株としてここで一昨年前に取り上げたのだが、2年半の経過で待望の続編ともいえる2ndの登場で喜んでいるのである。
 最新北欧ジャズサウンドと神秘的でメランコリックな歌声に魅了されるアルバムだ。アイスランド出身のベテラン・ベーシスト・作曲家のスクーリ・スヴェリソン(下右 1966年生まれ、ルー・リード、デヴィッド・シルビアン、坂本龍一などとの共演)が今回もサポート。

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 アンナ・グレタは 2014 年からストックホルムに拠点を移しているが、生まれ故郷であるアイスランドの自然の風景の美しさと力強さからインスピレーションを得ている。2021 年の ACTデビューの前作は"鳥"にちなんでのアルバム・タイトルだったが、続編となる本作は、冬の終わりと春の到来を象徴する「春の星」とも呼ばれる"雪の輝き"という花をモチーフに選んだのだという。彼女は語るところ「春になると草原を覆い尽くし、緑から青へと変えていく姿にインスパイアされただけでなく、そうせざるを得ないから咲くという事実にもインスパイアされた」こんな意味深な言葉からも、彼女はアイスランドの美しさに留まっていない一つのコンセプトを持って曲を造り歌っていることが推測される。それは下に紹介する彼女の芸術作品からもうかがい知れるところである。

(Tracklist)

01 Her House 4:25
02 She Moves 2:23
03 Star Of Spring 3:05
04 Catching Shadows 3:47
05 Metamorphoses of the Moon 3:44
06 Spacetime 4:07
07 The Body Remembers 5:13
08 Mother Of Dreams 3:39
09 Imaginary Unit 3:27
10 Nowhere 3:53
11 Denouement 3:21

 全編美しさに魅了されるヴォーカルに満ちている

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  M1."彼女の家" 厳寒の地に春が訪れ、そこに単なる明るさでない厳しさの解放の複雑な気持ちが感じられる落ち着いた美しいヴォーカル。
  M2."彼女は移動" 開放された展開を描いているのか。
  タイトル曲のM3."春の星"は、何とも言えない独特のエレガントと言える世界、単なる明るさでなくそこには厳しいアイスランドのやや陰鬱な冬のイメージがあってのその雪の輝きの美しさの花の美を訴える。この後のM4.と共に、彼女自身のバックの高音のヴォーカルとハモって一層訴えを増す歌。
 M5."月の変身" 彼女の美しいピアノが中盤で神秘的情景を描く
 M6."時空" 珍しくちょっと陽気さが逆に気になる展開の曲。
 M7."肉体は覚えている" 60 年代から70 年代にかけてグリーンランドで起こった女性の強制出産管理をトピックにした暗部に切り込む。曲は美しいが哀しさが前に出ている。
 M8."夢の母" 郷愁の歌。
   M9."想像上の一人" 珍しいリズムカルな展開。
   M10."どこにもない" 感動的な美を神秘的に歌い上げる。後半の盛り上がりの意味を理解したい。
   N11."終局"でも、美しくしっとりと歌われるが決して明るいというものではない。自然の厳しさの中から生まれるものに深く思い入れているとしか思えない。メランコリックな中に未来を見据えた希望も感じられるところが救いである。

 とにかく彼女の素晴らしピアノ・テクニックの下、独特のヴォーカル・ラインは非常に神秘性をもって印象的に響いてくる。テーマが明るい世界ではないのであるが、なんとか美しさを求めているけなげな姿を想像させる。大自然と厳しさと美に人間性を求めて描く世界は非常に感動的で稀有な世界である。ジャズ因子はしっかり感じられる中での彼女の独特な音楽が感じられる。スカンジナビア・ジャズとしても重要なお勧めアルバムだ。

(参考)アンナ・グレタの芸術 =  「絵画」

 アンナ・グレタの話「私はいつも視覚芸術に興味を持っていましたが、私たちの多くが以前よりも少し時間を持っていることに気づいたCOVID中に自分自身を描き始めました。絵を描くことは私にとってです。自由な表現、手放しの方法、そして境界のない創造の方法。」
左から 「ブラックレイン」「すべての人の心の内側」「暗闇に唄う」(クリック拡大)

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(評価)
□ 曲・歌  88/100
□ 録音   88/100

(試聴)

 

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2024年4月 1日 (月)

ブランドン・ゴールドバーク Brandon Goldberg Trio 「 Live At Dizzy's」

10代の神童の技=よき時代のジャズを受け継いで現代風に展開

<Jazz>

Brandon Goldberg Trio 「Live At Dizzy's」
Cellar Live Records / Import / CMR050123 / 2024

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Brandon Goldberg (piano)
Ben Wolfe (bass)
Aaron Kimmel (drums)
Recorded at Dizzy's Club at Jazz t Lincoln Center,January 17 & 18 2023

Bgoldbergphototrw  まさに神童ピアニストとして話題の、フロリダ州マイアミ出身のブランドン・ゴールドバーグBrandon Goldberg(18歳)のサード・アルバムが登場した。2023年1月NYのディジーズ・クラブでライブ録音されたものというので、従って録音当時は17歳?)。
 彼は、3歳の頃からピアノを弾き、音楽に親しんできたと。批評家たちは彼の「揺るぎないテクニック、高度な和声理解、深いスイング感覚、そして最も印象的なのは、ほぼ完璧なまでに実行される明晰さとアイデアの多さ」と高く評価しているようだ。
 とにかく、デビュー作『Let's Play!』(2019 下左)とセカンドアルバム『In Good Time』(2021 下右)はともに、ダウンビート誌で 4つ星を獲得し、その年のトップアルバムに選出されている。2024年度ヤングアーツ優秀賞受賞、2023年度ハービー・ハンコック・インスティチュート・オブ・ジャズ国際ピアノ・コンクールのセミファイナリスト、2022年度ASCAPハーブ・アルパート・ヤング・ジャズ・コンポーザー賞を最年少で受賞という経歴も凄い。
 そして彼は今や10代でなんと、ニューポート・ジャズ・フェスティバル、サンフランシスコ(SFJazz)、PDXジャズ、リッチフィールド、ツインシティーズ、カラムーアなど、全米の主要なジャズフェスティバルで演奏し、又ディジーズ・クラブ、メズロウ、バードランド・シアター、オールド・ライムのザ・サイド・ドア、ボルチモアのキーストーン・コーナーなど、ニューヨークで指折りの有名なジャズ・クラブで演奏している。

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 ゴールドバーグ(下左)の3rdアルバムとなる本作は、彼のピアノにリズム隊はベテランのベン・ウルフ(下中央) のベース、アーロン・キンメル(下右)のドラムスという確かなメンバーによるピアノトリオ作品である。収録はスタンダードナンバーと2曲のオリジナル曲のプレイされたものだが、特に1950年代と1960年代の偉大なピアノ・トリオの音楽を彼なりきに現代風にアレンジをほどこしての新鮮な感覚でのプレイに注目、アフマド・ジャマール、レッド・ガーランド、オスカー・ピーターソン、ソニー・クラークなど、彼自身が影響を受けたピアニストや伝統に敬意を表しているというところだ。

(Tracklist)

1. Unholy Water
2. Wives and Lovers
3. It Ain't Necessarily So
4. An Affair to Remember
5. Let's Fall in Love
6. I Concentrate on You
7. Circles
8. Lujon (Slow Hot Wind)
9. Compulsion

 この若きピアニストが、古いニューヨークが舞台でのヒットを演じている。まあ昔のジャズ・ピアニストを聴き込むとこんなスタンダードが出てくるんでしょう。そしてそれにゴールトバーグが惹かれ技量発揮し、ウルフが旨くリードしキンメルの協力の結果であろう。なかなか良いトリオだ。

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M1. "Unholy Water" ピアノの快調な展開、中盤の活気あるドラムス・ソロ、トリオ・ジャズの楽しさの序奏。これが最後のM9.に繋がる。
M2. "Wives and Lovers"  軽妙なタッチのピアノの流れが聴きどころ。
M3. "It Ain't Necessarily So"   古くはLouis ArmStrongでElla Fitzgeraldが歌ったGeorge Gershwinの曲ですかね、ゴールドバーグのひいおじいさんの喜んだ曲でしょう。ここで演ずる結構軽さと展開の妙と速攻とパンチ力とが見事。
M4. "An Affair to Remember"  映画「めぐり逢い」の"過ぎし日の恋"ですね、これも古いなぁ・・・でもあの良き時代のほのぼの感としっとり感を出してますね。彼が演ずると聴く方もビックリですね、変なアドリブで攻めなくてむしろ良い感じだ。
M5. "Let's Fall in Love" 映画「恋をしてしまう」から、最近はDiana Krallが歌うので良く聴きますね。ここでは軽快な演奏。
M6. "I Concentrate on You" 映画「踊るニュウ・ヨーク」、コール・ポーターの曲ですね。やさしく演じ切るところがにくいところ。
M7. "Circles" ジュージ・ハリスンの曲なんだろうか、彼のオリジナルか良く解らないが、素晴らしい演奏。彼の新世代を演ずるスウィングへの変調の妙とインプロの技とが感じますね。
M8. "Lujon (Slow Hot Wind)" ヘンリー・マンシーニのムードを化けさせるベースとドラムス、そしてピアノの的を得たインプロに脱帽。
M9. "Compulsion" 三者の掛け合いの楽しさが満ちている。

 若い人のジャズというよりは、私の印象としては一世代前のジャズを現代風に味付けして蘇らせてくれている感がある。これが十代の演ずる世界かと、いやはや脱帽の世界。とにかくこの軽妙さぱ確かにアフマド・ジャマールの私の好きな部分を継いでくれている。なかなか味がある。

(評価)
□ 編曲・演奏  88/100
□ 録音     87/100

(試聴)

"Circles"

*
"An Affair to Remember"

 

 

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