ヘオン・ムーン & 山本剛 Moon Haewon & Tsuyoshi Yamamoto 「Midnight Sun」
韓国のジャズ・ディーヴァ=Moon、山本剛トリオと共に満を持して放つスタンダード・ヴォーカル・アルバム
<Jazz>
Moon Haewon & Tsuyoshi Yamamoto 「Midnight Sun」
Somethin'cool / JPN / SCOL 1072 / 2024
MOON (vo) HAEWON MOON
Tsuyoshi Yamamoto (p) 山本剛
Hiroshi Kagawa (b) 香川裕史
Chicco Soma (ds) チッコソウマ
録音: Studio Tanta&54itstudio 2023.11.27-12.1
エンジニア: Shunroku Hitani
韓国のMOONと言うよりは、ジャジーポップ・グループ=WINTERPLAYと言ったほうが私は解るのだが、そのヴォーカル担当だつたのMOON (Haewon Moon ヘウォン・ムーン 文慧媛 下右) と言えば知る人ぞ知るというところか。2016年からはソロ活動を開始して、ユニバーサルミュージックからデビュー作『Kiss Me』(2018年)発表すると、日本国内ではiTunes ジャズ・チャートで1位。その後の2nd『Tendary』の好調と香港やアジア諸国でもヒット。しかし、2020年からはコロナ・パンデミックで足踏み、ようやく終息を待って日本に来ての山本剛トリオ(下左)との共演が実現してのジャズ・アルバムがここに完成して、本格的ジャス・ヴォーカルの道を歩むのである。
彼女は1984年11月15日生まれ、韓国・全州市出身のジャズ歌手。幼少よりクラシック音楽やポップスに触れ、歌手を志す。TV番組オーディションで優勝した。しかし大学の声楽科でジャズに触れ、ジャズ・クラブで歌い始める。2007年にジャズ・ポップ・グループのWINTERPLAYに参加し、日本では2009年にデビューし、翌年にはロンドンでショウケースを開催。その後、香港のTV番組やバンコクのジャズ・フェスに招かれるなどアジア各地で活躍。2016年末にWINTERPLAYを脱退し、翌年にソロ歌手として始動したという経過だ。
さてこのアルバムは"山本剛のスイングからバラードまで定評のあるトリオ演奏に乗って、Moonの透明感あふれる歌声が駆け巡る"といった構造だ。選曲は彼女のオリジナル一曲にスタンダード曲と言う構成である。
(Tracklist)
01. I Let a Song Go Out of My Heart
02. Midnight Sun
03. In the Middle of a Kiss
04. Autumn Leaves
05. Misty
06. Send in Crowns
07. I Didn't Know Wat Time It Was
08. Girl Talk
09. I Got It Bad That Ain't Good
10. Look to the Moon
11. A Cottage for Sale
12. Twisted
この選曲は見てわかるように、"Midnight Sun"とか"Misty"更に"Twisted"とくれば、誰と言うことなく山本剛の世界だから当然だろう。ジュリー・ロンドンの"In the Middle of a Kiss"は、MOON自身が選んだという。"Send in Crowns"は山本が選び、 "A Cottage for Sale" はプロデューサーの青野の選択、などなどメンバー同士が互いの魅力を考えつつ選曲してのアルバム造りであったようだ。
M1." I Let a Song Go Out of My Heart " デューク・エリントンの曲、スタートは透明感あふれるMOONの歌声が控えめな山本のピアノの前面に出て、彼女が好きだというバラードM2." Midnight Sun "と共にかなり迫ってくる。まさにヴォーカル優先のミックス・マスター造りがされていることが解る。
M03."In the Middle of a Kiss" ここでは美しいピアノから始まってしっとり演奏され、続いて彼女の歌が乗って聴かせ、これは見事なメロディアスなバラード曲として仕上がっている。なかなかいいムード。
M04,M05,M08は、あまり特徴の無い標準的な仕上げ。
M6."Send in Crowns " 寂しさをピアノサウンドと共に歌い上げる。彼女の歌のうまさが光る。
M7." I Didn't Know Wat Time It Was "(時さえ忘れて)ですね。若き純粋な恋を快活に歌い上げる。
M9." I Got It Bad That Ain't Good " デューク・エリントンの失恋の曲、ちょっと情感が少ないか。
M10." Look to the Moon" は彼女のオリジナル、快調なテンポだが意外に哀感がある。
M11." A Cottage for Sale" 知らなかったが、古いポピュラーソングの様だ。もう二人での利用が無くなった意味のなくなったコテージ、寂しい哀愁がなかなか味わい深くしっとり歌われてこのアルバムでは出色。
最後のM12"Twisted"ジャズの基礎のスウィングを軽快に歌う
さて、MOONのジャズ・アルバムとしての出来はどうだったろうか、彼女の透明感ある美声は十分に聴くことが出来る。ただ惜しむらくは、トリオ演奏とのバランスに於いて、引っ込んでいてバック演奏に埋もれてしまうのはまずいが、ちょっと逆に前面に出すぎていて曲として聴くにヴォーカルが強すぎる感があった。彼女の歌を手に取るように聴ければ満足というファンにそれでよいのかもしれないが、私的には演奏を含めての曲仕上げというところではちょっと不自然で残念であった。これはミックス・マスターを担当する録音制作側のセンスだろうと思うが。
又彼女の歌声が・・・WINTERPLAYのバンドの中のほうがマッチングが良いと感じたことだ。美しい声と共に見事に歌い上げているのだが、どこかのめり込めない・・・彼女の美しい高音が、ジャズとしての世界で演奏の中で情感持って曲を形作るという点において、どうも不自然さを感じたのだ。このところ取り上げたMelody Gardotなどと比較してしまうと、ちょっと要求が多すぎるのかもしれないが・・・・。
しかしまあ試みとしては、是非ともこれから期待できるところにあると思うので、評価したい。
(評価)
□ 選曲・演奏・歌 85/100
□ 録音 85/100
(試聴)
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