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2024年4月 1日 (月)

ブランドン・ゴールドバーク Brandon Goldberg Trio 「 Live At Dizzy's」

10代の神童の技=よき時代のジャズを受け継いで現代風に展開

<Jazz>

Brandon Goldberg Trio 「Live At Dizzy's」
Cellar Live Records / Import / CMR050123 / 2024

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Brandon Goldberg (piano)
Ben Wolfe (bass)
Aaron Kimmel (drums)
Recorded at Dizzy's Club at Jazz t Lincoln Center,January 17 & 18 2023

Bgoldbergphototrw  まさに神童ピアニストとして話題の、フロリダ州マイアミ出身のブランドン・ゴールドバーグBrandon Goldberg(18歳)のサード・アルバムが登場した。2023年1月NYのディジーズ・クラブでライブ録音されたものというので、従って録音当時は17歳?)。
 彼は、3歳の頃からピアノを弾き、音楽に親しんできたと。批評家たちは彼の「揺るぎないテクニック、高度な和声理解、深いスイング感覚、そして最も印象的なのは、ほぼ完璧なまでに実行される明晰さとアイデアの多さ」と高く評価しているようだ。
 とにかく、デビュー作『Let's Play!』(2019 下左)とセカンドアルバム『In Good Time』(2021 下右)はともに、ダウンビート誌で 4つ星を獲得し、その年のトップアルバムに選出されている。2024年度ヤングアーツ優秀賞受賞、2023年度ハービー・ハンコック・インスティチュート・オブ・ジャズ国際ピアノ・コンクールのセミファイナリスト、2022年度ASCAPハーブ・アルパート・ヤング・ジャズ・コンポーザー賞を最年少で受賞という経歴も凄い。
 そして彼は今や10代でなんと、ニューポート・ジャズ・フェスティバル、サンフランシスコ(SFJazz)、PDXジャズ、リッチフィールド、ツインシティーズ、カラムーアなど、全米の主要なジャズフェスティバルで演奏し、又ディジーズ・クラブ、メズロウ、バードランド・シアター、オールド・ライムのザ・サイド・ドア、ボルチモアのキーストーン・コーナーなど、ニューヨークで指折りの有名なジャズ・クラブで演奏している。

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 ゴールドバーグ(下左)の3rdアルバムとなる本作は、彼のピアノにリズム隊はベテランのベン・ウルフ(下中央) のベース、アーロン・キンメル(下右)のドラムスという確かなメンバーによるピアノトリオ作品である。収録はスタンダードナンバーと2曲のオリジナル曲のプレイされたものだが、特に1950年代と1960年代の偉大なピアノ・トリオの音楽を彼なりきに現代風にアレンジをほどこしての新鮮な感覚でのプレイに注目、アフマド・ジャマール、レッド・ガーランド、オスカー・ピーターソン、ソニー・クラークなど、彼自身が影響を受けたピアニストや伝統に敬意を表しているというところだ。

(Tracklist)

1. Unholy Water
2. Wives and Lovers
3. It Ain't Necessarily So
4. An Affair to Remember
5. Let's Fall in Love
6. I Concentrate on You
7. Circles
8. Lujon (Slow Hot Wind)
9. Compulsion

 この若きピアニストが、古いニューヨークが舞台でのヒットを演じている。まあ昔のジャズ・ピアニストを聴き込むとこんなスタンダードが出てくるんでしょう。そしてそれにゴールトバーグが惹かれ技量発揮し、ウルフが旨くリードしキンメルの協力の結果であろう。なかなか良いトリオだ。

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M1. "Unholy Water" ピアノの快調な展開、中盤の活気あるドラムス・ソロ、トリオ・ジャズの楽しさの序奏。これが最後のM9.に繋がる。
M2. "Wives and Lovers"  軽妙なタッチのピアノの流れが聴きどころ。
M3. "It Ain't Necessarily So"   古くはLouis ArmStrongでElla Fitzgeraldが歌ったGeorge Gershwinの曲ですかね、ゴールドバーグのひいおじいさんの喜んだ曲でしょう。ここで演ずる結構軽さと展開の妙と速攻とパンチ力とが見事。
M4. "An Affair to Remember"  映画「めぐり逢い」の"過ぎし日の恋"ですね、これも古いなぁ・・・でもあの良き時代のほのぼの感としっとり感を出してますね。彼が演ずると聴く方もビックリですね、変なアドリブで攻めなくてむしろ良い感じだ。
M5. "Let's Fall in Love" 映画「恋をしてしまう」から、最近はDiana Krallが歌うので良く聴きますね。ここでは軽快な演奏。
M6. "I Concentrate on You" 映画「踊るニュウ・ヨーク」、コール・ポーターの曲ですね。やさしく演じ切るところがにくいところ。
M7. "Circles" ジュージ・ハリスンの曲なんだろうか、彼のオリジナルか良く解らないが、素晴らしい演奏。彼の新世代を演ずるスウィングへの変調の妙とインプロの技とが感じますね。
M8. "Lujon (Slow Hot Wind)" ヘンリー・マンシーニのムードを化けさせるベースとドラムス、そしてピアノの的を得たインプロに脱帽。
M9. "Compulsion" 三者の掛け合いの楽しさが満ちている。

 若い人のジャズというよりは、私の印象としては一世代前のジャズを現代風に味付けして蘇らせてくれている感がある。これが十代の演ずる世界かと、いやはや脱帽の世界。とにかくこの軽妙さぱ確かにアフマド・ジャマールの私の好きな部分を継いでくれている。なかなか味がある。

(評価)
□ 編曲・演奏  88/100
□ 録音     87/100

(試聴)

"Circles"

*
"An Affair to Remember"

 

 

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