魚返明未 Ami Ogaeri Trio 「Terasu 照らす」
抒情性、深淵なところからアクション展開まで・・・見事な世界が描かれる
<Jazz>
Ami Ogaeri Trio 「Terasu 照らす」
ReBorn Wood / JPN / RBW0031 / 2024
魚返 明未 (piano)
高橋 陸 (bass)
中村 海斗 (drums)
ReBorn Wood Studios(東京都板橋区本町)録音
2024年日本作品
気鋭のピアニスト・魚返明未(おがえりあみ、1991年生まれ 下左)の3rdアルバム登場。現代ジャズシーンで既に実績のある若き才能、高橋陸(b, 下中央)、中村海斗(ds, 下右)とのトリオ編成で、より魚返のダイナミックでありながら深淵にして繊細な演奏が満ち溢れた作品となっている。
また、彼は近年ではジャズピアニストとしての活動に加え、映画音楽の制作でも活躍中。中でも昨年公開された映画『白鍵と黒鍵の間に』で話題になり、各方面より高い評価を得ている。
魚返明未の経歴を持て見ると、 4歳からピアノを始める。1998年より東京学芸大学附属小学校・中学校経て。2007年東京学芸大学附属高等学校に入学。モダンジャズ研究部に入部し、ジャズピアノに転向。
2013年4月 東京藝術大学音楽学部作曲科に入学。2015年7月、大学在学中に初リーダーアルバム『Steep Slope』をタワーレコード限定リリース。2016年8月、ファゴット奏者岡崎耕治のアルバムにて自作曲「2つの小品」を発表。2017年3月 東京藝術大学音楽学部作曲科を卒業。 2018年10月 初のフルアルバム『はしごを抱きしめる』をリリース。現在、魚返明未トリオ(高橋陸、中村海斗)、魚返明未&井上銘(デュオ)、その他様々なバンドでライブ活動
これまでにクラシックピアノを佐藤恵美、作曲を山口博史、森垣桂一、鈴木輝昭に師事。「Point de Vue vol.12」(2018年4月25日東京文化会館)で、「Switch On, Switch Off」を発表。「Point de Vue vol.16〜TRIO VENTUSを迎えて」(2023年4月19日東京文化会館)では、作曲したクラシック演奏家によるピアノ三重奏曲「Impose Nothing」を初演。
ここに新進気鋭ミュージシャンと抒情的かつ深淵な世界を表現した待望のピアノトリオ作品。
01. 曇り空
02. 洞窟
03. 照らす
04. アルコールジェル (Alcohol Gel)
05. 間奏曲I (Interlude I)
06. 棘
07. Normal Temperature
08. 間奏曲II (Interlude II)
09. 昨日の雨
10. 夏の駅
11. かけら
(all songs written by Ami Ogaeri)
いっや・・なかなか奥深く、抒情性があると同時に深淵にして、ちょっと哲学的深さを描くところがあったと思いきや、スリリングにしてダイナミックな攻撃的演奏をも展開するという一大絵巻を展開している。トリオ・メンバーの若さが信じられないキャリアを感ずる演奏だ。
M1."曇り空" 硬質なピアノの音による深遠な世界。抒情的な美をも感ずるところ。後半の盛り上がりよる華々しさも。
M2. "洞窟" ピアノの流れるような演奏とドラムスのソロはじめ展開が印象的。
M3. "照らす" 一線の光が照らす如き、静に描くピアノそしてユニゾンするベース、静かに刻むドラムスの音。
M4. "アルコールジェル (Alcohol Gel)" アバンギャルドな展開、三者のバトルが楽しい。
M5. "間奏曲I (Interlude I)" 物思いにふけるような思索性のある世界。
M6. "棘" いばらを連想する攻めの曲、ドラムスの控えめな音によるシャープな速攻とベース、ピアノの意志の強い展開。
M7. "Normal Temperature" ジャズの醍醐味である速攻のトリオのインプロ交えてのスリル満点の8分を超える演奏は見事。このアルバムの一つの頂点に。
M8. "間奏曲II (Interlude II)" 再びゆったりと静かな世界に。
M9. "昨日の雨" ぐっと落ち着いた世界を描く、ピアノとともにベースの語りに近い演奏も聴きどころ。
M10. "夏の駅" 駅をテーマに、新たに始まる未来ある展開を期しているような雰囲気。
M11. "かけら" 前曲がこのアルバムの一つの収めにふさわしいところだが・・・ここに安堵にも近い更にぐっと落ち着いた世界を描いている。
自作曲集で見事に仕上げられたアルバムだ。魚返のピアノは適度な硬質感で流麗にして情緒たっぷりにして叙情性があり、又若さ溢れる攻撃的なアクションも聴かせるところは驚きであった。
ベースの高橋もサポート役に留まらず、うねり感ある演奏とある意味対等にM4.あたりでは攻め合うところもあって快感。ドラムスも快調な展開とかなり神経の繊細な音でシャープにリズムを刻んでくる。ちゃんとM7.はじめ曲によってトリオ・ジャズのクルーヴィーな表現も聴きとれて、この辺りもお見事。
アルバム作成に於いて、トータルとしての感覚で、間奏曲を交えての曲の組み合わせの構成も見事と言える。久々の若き日本男子の素晴らしいトリオ作品に出合えた。
(評価)
□ 曲・演奏 90/100
□ 録音 88/100
(試聴)
*
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- ヨーナス・ハーヴィストJoonas Haavisto 「INNER INVERSIONS」(2024.11.25)
- コリン・ヴァロン Colin Vallon 「Samares」(2024.11.20)
- エミル・ヴィクリッキー Emil Viklicky Trio 「Moravian Rhapsody」(2024.11.30)
- アルマ・ミチッチ Alma Micic 「You're My Thrill」(2024.11.10)
「JAZZ」カテゴリの記事
- ヨーナス・ハーヴィストJoonas Haavisto 「INNER INVERSIONS」(2024.11.25)
- コリン・ヴァロン Colin Vallon 「Samares」(2024.11.20)
- エミル・ヴィクリッキー Emil Viklicky Trio 「Moravian Rhapsody」(2024.11.30)
- アルマ・ミチッチ Alma Micic 「You're My Thrill」(2024.11.10)
「ピアノ・トリオ」カテゴリの記事
- ヨーナス・ハーヴィストJoonas Haavisto 「INNER INVERSIONS」(2024.11.25)
- コリン・ヴァロン Colin Vallon 「Samares」(2024.11.20)
- エミル・ヴィクリッキー Emil Viklicky Trio 「Moravian Rhapsody」(2024.11.30)
- アヴィシャイ・コーエン Avishai Cohen 「Brightlight」(2024.11.15)
- トルド・グスタフセン Tord Gustavsen Trio 「Seeing」(2024.09.27)
コメント
風呂井戸さん、こんにちは。
魚返さんは、ギターの井上銘さんとのDUOアルバムが凄く良かったので注目しており、今回トリオ作ということでぜひ聴かなければと入手しております。
(いろいろ買いすぎてまだしっかり聴けてませんが💦)
あと、最近の日本男子で注目しているのは望月慎一郎さんです。独自の個性を持つ良いピアニストだと思います。
投稿: baikinnmann | 2024年5月19日 (日) 12時35分
baikinnmannさん
コメント有り難うございます
私はトリオ好きですので、そんな意味でも良かったですが、魚返の世界が充実している作品と思います。今回結構深淵さと抒情性とスリリングな展開と中身は濃いですね。
彼に関しては今回初めてしっかりアルバムを聴いたというところでした。
望月慎一郎に関しても白紙でして、又聴かせていただきます。有難うございます。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2024年5月20日 (月) 08時23分