« ティム・レイ TIM RAY TRIO「FIRE & RAIN」 | トップページ | ミシェル・カミロ、トマティート Michel Camilo & Tomatito 「SPAIN FOREVER AGAIN」 »

2024年5月19日 (日)

ダグ・アーネセン Dag Arnesen Trio 「ICE BREAKING」

メロディー主導型からトリオでの多くのジャズ要素に挑戦

<Jazz>

Dag Arnesen Trio 「ICE BREAKING」
LOSEN RECORDS / Import / LOS 296-2 / 2024

20240503_8b3c11w

Dag Arnesen (piano)
Magne Thormodsæter (bass)
Øyvind Skarbø (drums except 9)

Recorded November 19– 21, 2023 by Davide Bertolini
at Griegakademiet Studio, Bergen, Norway
Mixed January 17 and 23, 2024
by Davide Bertolini at Griegakademiet, Bergen
Mastered February 2024 by Morten Lund
at Lund’s Lyd, Oslo, Norway

  1970年代から既に半世紀の評価ある活動の歴史がある中で、近年、ノルウェーの伝統的な音楽やメロディを取り入れノルウェーの音楽文化とジャズの融合を探求したアルバム『Norwegian Song』シリーズ(ⅠからⅣの4枚のCD,2007-2017)が人気を呼び、日本でもおなじみのピアニストのダグ・アルネセン(1950年ノルウェー-ホルダラン県ベルゲン生まれ 下左)の最新ピアノ・トリオ作品。彼はクラシック・ピアノからノルウェーの音楽遺産やグリーグなどの作曲家/ピアニストたちからインスピレーションを受けての美しい世界を築いてきている。

 今回のトリオは新生で、ベースのマグネ・トルモドセーター (下中央)は、ノルウェーでジャズ・ミュージシャンとして活動。作曲家でもあり、グリーグ・アカデミー(出身地ベルゲン)の准教授でとしても活躍する。 ドラムスのオイヴィン・スカルボ (下右)は、グリーガ・アカデミーのテリエ・イスンセに師事し、ノルウェー、キューバ、ナイジェリアの伝統音楽も研究している。ノルウェーの即興音楽シーンを牽引する存在であり、数多くのバンドのメンバーやオーガナイザーとして活躍している。  
 今回のアルバムは、2曲を除いて全曲アーネセンの新作オリジナルが収録。相変わらず聴く者をして一種独特な北欧の世界に導いてくれる。

A11779201315214842w1517581692892w16535029986_f5cc1919c3_cw

(Tracklist)

1. A New One 5:48
2. Ice Breaking 4:33
3. Sarah 5:00
4. That's OK 4:52
5. Podstrana 5:40
6. Bim Bam Bom 4:27
7. After Dinner 5:42
8. Jumping Around 4:34
9. A Special Memory 4:18 (p & b duo)
total time 44:54
*all compositions by Dag S. Arnesen

 メロディーが過去の彼の作品のテーマであったと思うが、このアルバムは進化と言えるのだろうか、音楽的により多くの要素が含まれた多様なアプローチがなされている。例えばリズムやハーモニーが中心的な役割と思われる曲もある。ピアノの響きはなかなか精緻で丁寧な印象でクリアー・タッチ。ベースも印象を深める貢献が大きく、ドラムスも的確にグルーヴ感とスリルを演じている。

 Dagarnesenw


 やはり従来のメロディラインが魅力的なスタート曲M1."A New One"、そして続くアルバム・タイトル曲M2."Ice Breaking "、愛猫に捧げた曲らしいM3."Sarah "では、従来の枠から一歩進んでの形を破る意味合いも込めてトリオで描くジャズ・グルーブとスリルをも楽しんでいるが如くである。
 注目は、複雑なコードの繋がりの味を楽しめるM7."After Dinner"など、彼の音楽的世界の一面を見せている。
 又昔に作曲されたM9."A Special Memory"は、ノスタルジックな味を記憶をたどるように聴かせてくれる。一方やはり古い異色の曲M6."Bim Bam Bom "などのかっての試みを再び再現しているような、これも一つの回顧なのかもしれない。
 M8."Jumping Around"も、今回のアルバムの特徴としての美メロディーに留まっていないところを主張しているようだ。

 従って、彼の『Norwegian Song』のアルバムのような北欧の風土色や独自の心象スケッチ傾向を感じさせるところもあるものの牧歌的・美メロディー、リリカルな世界に期待するとちょっと、それだけに留まっておらず、バラードからアップビートの曲もあり、躍動的なフレーズには意外性を感ずるところがあった。しかしその変化も適度でハード・バップの本道にあり、70歳超えての進化と言うかそんな姿勢だけでも頭が下がるところである。

(評価)
□ 曲・演奏   88/100
□ 録音     88/100

(試聴)

 

|

« ティム・レイ TIM RAY TRIO「FIRE & RAIN」 | トップページ | ミシェル・カミロ、トマティート Michel Camilo & Tomatito 「SPAIN FOREVER AGAIN」 »

音楽」カテゴリの記事

JAZZ」カテゴリの記事

北欧ジャズ」カテゴリの記事

ピアノ・トリオ」カテゴリの記事

ユーロピアン・ジャズ」カテゴリの記事

コメント

ダグ・アルネセンはNorwegian SongⅡぐらいまででしばらく聴いてませんでしたが、今回新生トリオとのことで興味ありです。
まずは配信で試聴してみようと思います。
良いアルバムのご紹介ありがとうございます。

投稿: baikinnmann | 2024年5月19日 (日) 12時47分

baikinnmannxyさん、コメント有難うございます
Dag Arnesenは、私はそれほどしっかり聴いてきたわけではありません、「Norwegian Song」のシリーズをよく聴いてきた程度でした。
ノルウェーはなかなかいいピアニストがいますので私にとっては宝庫ですね。(笑)

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2024年5月20日 (月) 08時31分

ノルウェー音楽とジャズの融合とpは想像もしたことがなかたです。ジャズとノルウェー伝統的文化をなやメロディを取り入れるとはまさにフロンティア精神ですすね。奥が深い・・。

投稿: ローリングウエスト | 2024年5月22日 (水) 11時12分

ローリングウエスト様
コメント有難うございます
 ノルウェーは私にとってはジャズの宝庫です。特に好きなピアニストだけでも今ヘルゲ・リエン、トルド・グスタフセン、ブッゲ・ヴェッセルトフトなどなど7人は頭に浮かびます。そして彼らは殆どノルウェーの伝統的な音楽を生かしながらジャズ(ピアノ・トリオ)を演じいます。
 もしご興味がありましたらこのブログの左のカテゴリー「北欧ジャズ」やそれぞれのミュージシャンをクリックしてみてください。かなり出てくると思います。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2024年5月22日 (水) 13時24分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ティム・レイ TIM RAY TRIO「FIRE & RAIN」 | トップページ | ミシェル・カミロ、トマティート Michel Camilo & Tomatito 「SPAIN FOREVER AGAIN」 »