« 魚返明未 Ami Ogaeri Trio 「Terasu 照らす」 | トップページ | ダグ・アーネセン Dag Arnesen Trio 「ICE BREAKING」 »

2024年5月14日 (火)

ティム・レイ TIM RAY TRIO「FIRE & RAIN」

グルーヴ感あるバップ・ジャズに叙情性のあるバラードも

<Jazz>

TIM RAY TRIO「FIRE & RAIN」
Whaling City Sound / Import / WCS137 2024

61nbmlqrotlw

Tim Ray (piano) (keyboard on 03, 07, 11, 13) (melodica? or accordion? on 04)
John Lockwood (bass except 03) (electric bass on 03)
Mark Walker (drums) (percussion on 03, 04, 07, 12, 13)

   アメリカのベテラン・ピアニスト、ティム・レイTim Ray(下左)が、2014年からのジョン・ロックウッド(b,下中央)、マーク・ウォーカー(d,下右)を迎えてのジャズとしては私が好むピアノ・トリオ・スタイルで吹き込んだ最新作。彼はボストンを中心に活躍しているが、2021年まで伝説のボーカリスト、トニー・ベネットの音楽監督兼ピアニストであり、現在は教育者(全米芸術基金からの助成金の受給者であり、バークリー音楽大学の教授)としても活躍中。サイドマンとして100以上のレコーディングに参加しているが、リーダー作は『Excursions & Adventures』、『Windows』(Trio作品, 2016)、『Ideas & Opinions』(1st 1997,Trio作品 Lewis Nash(d), Rufus Reid(b))、『Tre Corda』(2nd, 2003)、『Squeaky Toy』(2013)、『On My Own Vol. 1』(ピアノ・ソロ)の6枚のアルバムをリリース。しかし過去に私自身は彼の作品にあまり深く関係してこなかった。

TimraytrwFac_lockwoodwChannels4_profilew_20240513130901


 今回は、彼自身が敬愛する音楽界のヒーローの作品を取り上げ、現代的にアプローチしたもので、ジャズそのものにも迫るほど良いグル-ヴ感溢るる作品ということでここに聴いてみた次第である。
 もともと彼のジャズ・スタイルは、ハード・バップ系とみてよいのだろうが、ジャズ特有のアンサンブルやハーモニーも重要視していてのどちらかと言うと私好みのブルース系とは違ったファンキー・バップ色が濃いが、メロウ&スウィート・テンダーな色合いもみせて結構楽しめるアルバムが出来ているので取り上げてみた。 

Tim-ray-pic-2017w (Tracklist)

01. Bye-Ya
02. Stolen Moments
03. NO Worries
04. The Meeting: The Jbug and the Kman
05. Mojave
06. Theodore the Thumper
07. Fire and Rain
08. Lawns
09. Moon in the Sea
10. Improv #1 (for Chick)
11. Nighttime
12. The Windup
13. Fire and Rain (radio edit)

  ダイナミックなトリオ・アンサンブルに満ち満ちている展開から、バラードとロマンティックな色合いまで聴かせる内容たっぷりのアルバムだ。

 モンクのM1. "Bye-Ya"で、ちょっと難解だが、ジャズの醍醐味のアンサンブルの楽しさでスタートし、オリバー・ネルソンのブルース調のM2. "Stolen Moments"でジャズの奥深さを聴かせる。
 M3. "NO Worries" ジャレットの曲をグルーヴィーに展開、ここではエレキ・キーボードを使用しお見事。メンバーの年期を感ずる仕上げ。
 M4. "The Meeting: The Jbug and the Kman" 家族の世界か、ぐっと美しいピアノで・・後半は盛り上げ最後は再び静の美。
 M5. "Mojave" アントニオ・カルロス・ジョビンの曲を繊細にリズムカルに。
 M6. "Theodore the Thumper" 明るめのブルースフィーリングの登場に驚き、ドラムスの響きも楽しい
 アルバム・タイトル曲のM7. "Fire and Rain" ジェームス・テイラーの曲で決して明るい曲ではないがハーモニーなど聴きどころ満載
 M8. "Lawns" 極めて静かな安堵感にも通ずる曲で、ほっとして聴ける
 M9. "Moon in the Sea" 多彩な情景が浮かぶロマンティックなムードも聴かせ、中盤のベースとピアノの静かな世界が魅力
 M10. "Improv #1 (for Chick)" ちょっとフリージャズっぽい展開
 M11. "Nighttime" 当初のイメージと異なって心に響く優しさと美しさ、後半の流麗なピアノ・プレイは圧巻、最後は再び静の世界に
 M12. "The Windup" アクティブなアンサンブルでの終結、ドラムソロが印象的

 なかなか粋なファンキー節が込められ、三者の掛け合いの味が見事なバップ系のタイプが主力で、ダイナミック・スウィンギンなジャズの程よいグルーヴ感があって良好。そしてそれに留まらずバラードや抒情性の濃いロマンティックな曲が流れてきてぐっと心をつかむのがうまい。そのあたりは結構期待以上にスウィート・テンダーなフレーズが顔を出しメロウな美メロ・センスをちゃんと聴かせるところが魅力。最終的にはなかなかの名盤という感じであった。

(評価)
□ 編曲・演奏  90/100 
□ 録音     88/100
(試聴)

*

 

 

|

« 魚返明未 Ami Ogaeri Trio 「Terasu 照らす」 | トップページ | ダグ・アーネセン Dag Arnesen Trio 「ICE BREAKING」 »

音楽」カテゴリの記事

JAZZ」カテゴリの記事

ピアノ・トリオ」カテゴリの記事

アメリカン・ジャズ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 魚返明未 Ami Ogaeri Trio 「Terasu 照らす」 | トップページ | ダグ・アーネセン Dag Arnesen Trio 「ICE BREAKING」 »