エンリコ・ピエラヌンツィ Enrico Pieranunzi 「HINDSIGHT - Live At La Seine Musicale」
ピエラヌンツィ流メランコリックとグルーヴ感溢るる即興と・・・
<Jazz>
Enrico Pieranunzi 「HINDSIGHT - Live At La Seine Musicale」
Free Flying / Japan / FFPC004 / 2024
Enrico Pieranunzi (piano)
Marc Johnson (bass)
Joey Baron (drums)
私が愛するヨーロッパ・ジャズのパイオニア的な存在であり、イタリアが世界に誇る抒情派ピアノの大御所と言われるエンリコ・ピエラヌンツィ(1949年ローマ生まれ →)のここでは1年半ぶりの登場だ。今回のアルバムは彼のキャリアの中でも重要なトリオ・メンバーのマーク・ジョンソン(b, 1953年米国ネブラスカ州生まれ、下左 )とジョーイ・バロン(d, 1955年米国バージニア州生まれ, 下右)との初録音作品から35年を記念して再集結し、パリの芸術拠点ラ・セーヌ・ミュジカルLa Seine Musicaleに興奮を巻き起こしたといわれる2019年12月のライブの模様を収めたアルバムである。
コンサートの提案もピエラヌンツィ自身から始まったとのことで、演奏には、この3人で音楽を奏でる喜びの伝わってくるような演奏で、楽曲は1曲をのぞき、全てピエラヌンツィのオリジナル曲だ。そし録音・ミックスはStefano Amerioで好音質で聴くことが出来る。
(Tracklist)
1. Je Ne Sais Quoi 6:54
2. Everything I Love 5:28
3. B.Y.O.H. (Bring Your Own Heart) 7:23
4. Don't Forget The Poet 9:16
5. Hindsight 7:27
6. Molto Ancora (Per Luca Flores) 5:54
7. Castle Of Solitude 5:21
8. The Surprise Answer 6:00
メロディーやハーモニーの美は勿論、近年ダイナミックなスイング感をも重んじてのピエラヌンツィ独自の世界が見事に展開する。ヨーロピアン独特のアートな色合いもみせてのインタープレイも尊重されたリリカル・アクション演奏もやっぱり持ち味として迫ってくる。それはもともと結構訴えてくるウォームなジョンソンのベース、バロンのアクティブなドラムスが、ちゃんと見せ場を築いてピアノに迫るところが頼もしい。従ってトライアングルな相互触発によってピエラヌンツィピアノも一層アドリブ奮戦がもともと彼の持っているエレガントでいて精悍な冴えを聴かせながら爽快な演奏へと導かれる。従って究極抒情性には決して溺れないところが彼の味として近年は展開している姿がここにも表れている。
M2."Everything I Love"のみ、ピエラヌンツィの曲でなく、コール・ポーターのものだが、ここではジョンソンのベースが旋律を流しそれを追ってピアノ、ドラムスの展開が主役に変わって、トリオの楽しさを聴かせている。ヨーロッパ的世界でなくアメリカン・ジャズの色合いをトリオで楽しんだ姿をこのライブに色付けしている。
私自身はM3."B.Y.O.H. (Bring Your Own Heart)"のヨーロッパ的世界の方に好みは寄ってゆくのだが、そのM2.との対比によって一層それが強調されて、なかなか組み合わせの妙も感ずるところである。
M5."Hindsight"のアルバム・タイトル曲は、それぞれのダイナミックな演奏を交えてのての展開に再会トリオの楽しさとグルーヴ感を伝えてくれる。
M6."Molto Ancora (Per Luca Flores)"では、ぐっと落ち着いた世界に。
M8."The Surprise Answer "パワフルなドラム・ソロからスタート、そしてピアノ、ベースのユニゾン展開も激しく、トリオのインタープレイにも花が咲き聴衆と一体感の世界に突入。お見事。
もともとピエラヌンツィの端正でキレと滑らかさのクリアー・タッチのピアノが十二分に堪能できる。そして哀感の世界とバップ的グルーヴ感を曲により見事に演じ切って飽きさせない。かっての抒情性の世界にクラシック的メロディーで哀愁にどっぷり浸かる様は見られないため、その点は少々寂しいが、むしろ近年の躍動型のスリリングすら感ずる中にリリカルな世界を描くという点に注目して聴いた次第。
(評価)
□ 曲・演奏 88/100
□ 録音 88/100
(試聴)
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コメント
風呂井戸さん,こんにちは。
ストリーミングで聞いていて,いいのはわかっていましたが,現物がデリバリーされて改めて聞いて,このトリオの素晴らしさを再認識した私です。
昨今のEnrico Pieranunziのアルバムは積極的に購入していませんでしたが,これはやはり避けることができないアルバムでしたし,期待が裏切られることはありませんでした。こうでなくてはいけませんね(笑)。
ということで当方記事のリンクを貼り付けさせて頂きます。
https://music-music.cocolog-wbs.com/blog/2024/06/post-f5c293.html
投稿: 中年音楽狂 | 2024年6月29日 (土) 15時33分
中年音楽狂様
コメント有難うございます
このところ若干ピアノトリオも少々低調かと思っていましたのでEnrico Pieranunzi様には跳び付きました。(笑)
ピアノトリオの美的感覚はイタリア特有の美旋律で迫ってくるのが好きですが、近年の彼はむしろトリオとしての価値観に主眼があって、若干難しくなっていますが、このトリオのようにトリオたる演奏の魅力が全面に出てきて、ジャズのグルーヴ感に境地を見つけているように感じます。聴き込むとやっぱり一味も二味も感じてくるところがさすがですね。
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2024年6月29日 (土) 18時54分