マシュー・シップ Matthew Shipp Trio 「 New Concepts in Piano Trio Jazz」
圧巻の静から動への展開、 アヴァンギャルドにフリー・ジャズ、現代音楽を凌駕する
<Jazz>
Matthew Shipp Trio 「New Concepts in Piano Trio Jazz」
ESP-DISK / Import / ESP5085CD / 2024
Matthew Shipp (piano)
Michael Bisio (bass)
Newman Taylor Baker (drums)
Recorded August 2, 2023 at Park West Studios
80年代後半から独自の世界を演じて来たピアニスト・マシュー・シップ、ピアノ・トリオ愛好者であれば一度は挑戦してほしい彼のアルバム。それは私に言っているようなものだが、何度かかじってそのまま、つまりアルバムであればそれをしっかり何度か聴いてみるということをせずに今日まで来た。それにはそれなりの理由があるのだが、それはさておきその彼の現行トリオによる2023年録音最新作が登場だ。そして今回はなんとアルバムを通して何回と聴き、それなりの感動があったためここに登場となった。
マシュー・シップMatthewShipp(下左)は、1960年、アメリカ / デラウェア州生まれの、ポスト・ジャズ・ピアニスト/作曲家。彼の母親がトランペット奏者のクリフォード・ブラウンの友人でもあったことから、シップはジャズに強く惹かれ、5 歳でピアノを弾き始め、高校時代にはロックグループでも演奏した。1984年にニューヨークに移り、1990 年代初頭から、バンドリーダー、サイドマン、またはプロデューサーとして数十枚のアルバムに出演。当初はフリージャズをメイン・スタイルにしていたが、その後、現代音楽、ヒップホップ、エレクトロなど、多岐にわたるジャンルで高い評価を得ている。
さて本作だか、いっやー恐ろしいアルバム・タイトルですね。現在のジャズ・ピアノ・トリオ界への挑戦か、はたまた自身における革命的挑戦か、いずれにしてもここまで上段に構えるのだから尋常でなく気合が入っている。ニューマン・テイラー・ベイカー(上中央)、マイケル・ビシオ(上右)という息の合ったトリオで、聴くものに迫ってくる。
(Tracklist)
1 Primal Poem 3:28
2 Sea Song 6:24
3 The Function 7:03
4 Non Circle 6:58
5 Tone IQ 3:54
6 Brain System 4:53
7 Brain Work 3:02
8 Coherent System 11:39
5年間一緒に活動し、定期的にレコーディングをしているということだが、その結果、トリオ構成のぶれることなく推し進められる世界は見事である。そしてその流れはリーダーが支配して終わるトリオではなく、作曲されたものと3人のメンバーが打ち出すインプロヴィゼーションの兼ね合いが、それによる相互作用に基づいてスリリングに構築されるアグレッシブなアンサンブルを聴かせている事に"New Concepts"という発想に繋がったと推測する。
「ジャズの道はこれだ」とばかりに、束縛なしの自由な三者の即興演奏をアクティブに展開してみせるわけであるのだが・・・。ただし、オープニングのM1." Primal Poem"は、異次元の世界を構築しながら、ぐっと抑えて瞑想的なテーマで心をつかみ、続く・・M2." Sea Song "で自然の姿に神秘性を宿わせる。この2曲があってしっかりこのアルバムの世界に私の場合見事に引き込まれてしまう。そして彼らの示す本題の曲に繋がってゆく。
M3." The Function"から気合が入ってくる。ベースの低音のリズムが不気味にリード。ピアノはメロディーでなくスリリングな展開に、特に後半ドラムスと共に即興対立的世界に。
M4." Non Circle "ドラムスからスタートするも、三者でのバトルが印象的に進行。
M5." Tone IQ" 三者とも一つ一つの音を大切に響かせ、余韻を生かして迫ってくる。特にピアノの低音と高音の単音の響きとベースのアルコで異世界の静粛さ描き、ドラムスはちょっとスリル感を聴かせる。
M6." Brain System" ここでもベースがアルコでの異世界が続く。ピアノとシンバル音がさらにそれを高め次第にピアノがその神秘性を語り始める。
M7." Brain Work" いよいよピアノ・ソロで現代音楽的側面をにおわせて、次に続く彼らの三者の自由なインプロヴィゼーションのバトルの予感を感じさせる。
M8." Coherent System " 私から言わせるとバトルそのものだ。ピアノとドラムスが対等にたたき合い、その姿を支え整えるベース。まさに3者による干渉と緊密な構成の美が描かれる。
とにかく"New Concepts"と銘打った彼らの目指すものが、トリオ・メンバーのお互い知り尽くした三者対等なアンサンブルを信頼関係が基礎にあっての構築される世界が、十二分に描かれ演じられている。それぞれの高度な演奏技術に互いに信頼関係があってのインプロヴィゼーションを発展させての曲仕上げは恐ろしいほどだ。M1, M2で深く引き寄せ、最後は彼らの世界に引っ張り込むアルバム構成も見事。
ここまで発展してくると、聴くものが何を求めるかによって世界は明確に分化されるだろうと思う。私が日ごろ愛しているユーロ系の哀愁の美旋律ピアノ・トリオとは全くの別世界であるが、描くところにシャズ・ピアノ・トリオとしての世界の一つの美学としての姿として感じられるのは事実で、今後の発展にさらに期待するのである。
(評価)
□ 曲・演奏 : 92/100
□ 録音 88/100
(試聴)
*
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コメント
こんにちは。
一曲目は気持ち良くて、二回聞かせて頂きました。
二局目は良く分かりませんでした。
投稿: iwamoto | 2024年6月 3日 (月) 15時35分
iwamoto様
コメント有難うございます
私もこの曲でこのアルバムに引き込まれました。
そして次第に彼らのインプロヴィゼーションのバトルに引っ張り込まれ・・・何度か聴いているうちに虜になりました。^^
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2024年6月 4日 (火) 09時10分
この方の美貌ぶりは半端ないですね!音楽よりその色香に悩殺されてしまいました。大変失礼いたしました。(苦笑) でもその静かなピアノ奏でる深い音楽には感銘・・、天は2物も3物も与えるのですね。
投稿: ローリングウエスト | 2024年6月 9日 (日) 21時08分
ローリングウエスト様
コメント有り難うございます
>この方の美貌ぶりは半端ないですね!音楽よりその色香に悩殺されてしまいました。
・・・・??
いずれにしても訪問有り難うございます。
Jazz系もいかがですか
投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2024年6月10日 (月) 22時35分