ダイアナ・クラール Diana Krall 「Famous Blue Raincoat - 2024 TOKYO 3RD NIGHT」
ギター抜きのトリオ仕立てもなかなかで・・・・
<Jazz>
Diana Krall 「Famous Blue Raincoat - 2024 TOKYO 3RD NIGHT」
ORIGINAL MASTER / IEM Matrix Recording / Xavel Hybrid Master - 214
ダイアナ・クラール Diana Krall(vocal, piano)
トニー・ガルニエ Tony Gamier(bass)
マット・チェンバレン Matt Chamberlain(drums)
Live at Shouwa Joshi Daigaku, Hitomi Memorial Hall, Tokyo, Japan 10th May 2024
ダイアナ・クラール5年ぶりの今年の「2024年ジャパン・ツアー」は追加も含めて全6公演となった中、ツアー3日目であり東京3連続公演の最終日、追加公演でもあった5月10日昭和女子大学人見記念講堂でのライブの模様だ。とにもかくにも彼女は人気者ですね、どんな会場でも満席になる。私としては少なくともコットンクラブやブルーノートぐらいかそれ以下の小会場で聴きたいのだが、それは殆ど叶わぬ期待ですね。そんなわけで参加していなかった私にとっては嬉しいアルバムなのである。
このアルバムは並行して第1日(東京ドームシティホール)、第2日(昭和女子大人見記念講堂)と並行して発売されているbootlegの第3日目のものなのだが、例のごとくステレオIEMマトリクスにてコンプリート収録されている。つまりそれはまずダイアナがステージ上で使用していたイヤー・モニター・ソースを、良質デジタル・オーディエンス録音ソースと配合してステレオ・ミックスしたIEMマトリクス音源ものである。従ってダイアナのボーカルはもちろんだか、トリオによるアンサンプル演奏とのハイブリッド・サウンドにて当日の模様を忠実に再現したものである。
そして今回のツアーでは、彼女のライブものの一般的スタイルのギター、ベース、ドラムスに加えて彼女のヴォーカルとピアノというカルテット・スタイルと違って、ギター・レスのピアノ・トリオに彼女のヴォーカルが乗るスタイルである。アコースティック・ベースとエレクトリック・ベースを兼ねるトニー・ガルニエ(1956-)(上右)と、ドラマーのマット・チェンバレン(1967-)(上左)を引き連れてのステージとなった。
このトリオ・セッションの雰囲気を楽しんでほしいというダイアナの希望を取り入れた企画で、前半はスタンダード、後半はスタンダードに近いカバー曲が中心であつて、それぞれの間にオリジナル曲を挿入するという形をとっている。このパターンは今回の全会場の共通スタイルである。ただし会場ごとに曲を入れ替えしたりしてなかなか充実している。
(Tracklist)
Disc 1
01. Almost Like Being in Love
02. All or Nothing at All
03. Happy Birthday, Tony! / All of Me
04. I've Got You Under My Skin
05. Like Someone in Love
06. The Girl in the Other Room
07. Just You, Just Me
Disc 2
01. 'S Wonderful
02. Night And Day
03. Fly Me to the Moon (In Other Words)
04. Famous Blue Raincoat
05. I Was Doing All Right
06. East of the Sun (and West of the Moon)
07. You're My Thrill
08. Temptation
09. Day In, Day Out
10. Route 66
-encore-
11. Queen Jane Approximately
12. Ophelia
さて今回の録音の出来だが、ブートとしては非常に良好ではあるが、欲を言えばステレオ・ミックス法に私が聴くところでは若干の不満があった。それは明らかにダイアナ・クラールの声は見事に入っているのだが、少々セッション演奏部分が弱い、もう少しリアルにしっかりミックス録音されていると良かったのではと言うところである。前回の来日時は彼女は風邪をひいていて発声に万全でなかったのだが、あの来日時のアルバムの方に録音された音としては私は軍配をあげるのでる。
しかし、このように1ケ月足らずのうちに、こうして良質なアルバム化してくれているところは、参加していなかった我々にとっては嬉しい事である。あまり文句を言ってもいけませんね。
今回の同行者のトニー・ガルニエは1980年代後半からのボブ・ディランのバンドのベーシストとして知られるところだが、トム・ウェイツ、カーリー・サイモン、ルシンダ・ウィリアムス等との共演も好評。ダイアナ・クラールのアルバムでは『Turn Up the Quiet』(2017年)や『This Dream Of You』(2020年)に参加している。
一方、ドラマーのマット・チェンバレンは、ブルース・スプリングスティーン、レナード・コーエン、デヴィッド・ボウイ、ブラッド・メルドーなどのアルバムに参加する売れっ子セッションマンである。
まず彼らのリスム隊としての意気投合しての迫力は、Disc1のM2."All or Nothing at All"あたりで迫ってくる。 この二人が共にしたトリオ体制下での演奏は、こうしてオーディエンスの前での演奏は今回のツアーが初めてのことだという。ダイアナ・クラールのギター・レス体制でのライブものは私にとっては初聴きで、以下Disc2においての感想だが、M7."You're My Thrill"のしっとりとしたバラードもののムードも印象が過去のものと異なってなかなか新鮮であると同時にピアノの静かに描く世界の役割も大きく最高だ。又得意のM8."Temptation"は、ベース、ドラムス共にリズムを明瞭に刻み、彼女のピアノもそれに乗って跳ねるように展開し、なかなか過去のものと異なった味を見せてくれている。M9."Day In, Day Out" のスウィングする展開もなかなかトニーとマットの息もあっていて楽しい曲仕上げになっているし、M10."Route 66 "でのリズムの変調もリズム隊はなかなか面白い。M12."Ophelia"ではエレキ・ベースでダイアナの歌を盛り上げる。
いずれにしてもダイアナ・クラールの元気な姿は全く昔と変わりなく、中盤のM1."'S Wonderful"からM5."I Was Doing All Right"の彼女のソロ5曲もなかなか楽しい。又愛嬌も歳と共に増してきて、中低音のややハスキーな充実ヴォーカルも衰えずピアノ・プレイもジャズ・センスが佳くて素晴らしい。そうそうDisc1のアルバム「When I Look in Your Eyes」に収録された曲M4."I've got You Under My Skin"がなかなかしっとり大人ムードで20年の経過を実感する。
いずれにしてもそろそろ又、ジャズ因子の強い彼女のニュー・アルバムを期待したいところだ。
(評価)
□ 選曲・演奏・歌 90/100
□ 録音 87/100
(参考視聴)
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Diana Krall 2024 Live in Jakarta
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