« トーマス・スタンコ・カルテット TOMASZ STANKO QUARTET 「 SEPTEMBER NIGHT」 | トップページ | ファーガス・マクリーディー Fergus McCreadie Trio 「 Stream」 »

2024年7月 8日 (月)

ディミトリ・ナイディッチ Dimitri Naïditch「Chopin Sensations」

ショパンをモチーフに自己のピアノ・トリオ・ジャズを展開

<Jazz>

Dimitri Naïditch「Chopin Sensations」
Piano Ma Muse / import / AD7876C / 2024

440747732_763227585fw

Dimitri Naïditch(piano)
Gilles Naturel (bass)
Lukmil Perez (drums)

   クラシックとジャズ両ジャンルの世界で活躍しているピアニスト、ウクライナ出身でフランスで活躍中のディミトリ・ナイディッチ(↓左)がピアノ・トリオとソロで、今度はショパンの楽曲をジャズとして解釈した作品。過去に2019年バッハ集(『Bach Up』)、2020年モーツァルト集(『Ah! Vous dirai-je...Mozart』)、 2022年フランツ・リスト集(『Soliszt』) をリリースしていて、ここでも過去に取上げてきたが、それに続くものだ。
 相変わらず美しいクラシカルなタッチで、軽妙にジャズ・アプローチを行って、表現の豊かさはさすがと言うところで魅力の演奏を聴かせてくれる。そしてドラムスのキューバ人のルクミル・ペレス(1970- ↓右)とフランス人のベテランベーシスト、ジル・ナチュレル(1960- ↓中央)の現在フランスで活躍している二人との相性もなかなか良さそうだ。

Channels4_profilew_20240706164001 Gillesnaturel995wP1644450_perezw

🔳 ディミトリ・ナイディッチDimitri Naïditchは・・・・
  父は科学者で母ピアノ教師のもと、1963年にウクライナの首都キーウ(キエフ)で生まれた。幼少期よりピアノを演奏してきている。1988年から翌年にかけて、リトアニアで開催された全国ピアノコンクールとポーランドで開催された国際コンクールで優勝し、その後キーウの高等音楽学校とモスクワのグネーシン音楽大学で学び技術を磨き上げる。
  1991年にフランスに渡りクラシックとジャズのコンサート活動を続け、1994年からはリヨン国立高等音楽院で教鞭を取るようになった。その後もフランスを拠点にソロ・コンサートから交響楽団との共演まで幅広く演奏活動を行っている。また、2007年から2009年にかけて、彼はウクライナの伝承音楽に焦点をあてた Les Chants d’Ukraine, Davnina と Trio Kiev というプロジェクトで各地でコンサートを行った。

(Tracklist)

1 Nocturne du Jour
2 Valse à Trois
3 Lasse Étude
4 Improvisation sur le Prélude n°7
5 Nocturne à Peine
6 Prélude en Boléro Bémol Majeur
7 Improvisation sur la Marche Funèbre
8 Valse des Astres
9 Pleine Étude
10 Improvisation sur le Prélude n°20
11 Ballade en Bolide
12 Valse N° 2en do dièse mineur Op.64

 編曲を駆使し又自由な即興演奏を取り入れて、原曲を見事にジャズ化している。ピアノトリオ編成でショパンに捧げる叙情性たっぷりのジャズだが、彼のセンスが溢れている即興演奏は見事で圧倒してくる。つまりショパンを演ずるのでなく、ショパンの味を自己の世界に取り入れるというところにあるのである。

438080151_665130715w


 つまり収録曲のラストのM12."Valses, Op. 64: n°2 en do dièse mineur"(ワルツ第7番 嬰ハ短調 作品64-2)以外の曲は、なんと全てディミトリ・ナイディッチの作曲クレジットとしており、それぞれ曲の要所にショパンのフレーズを引用して自分の曲や即興との交流を図り自己の曲として構築し美しい世界を描くところが凄い。
 それでも原曲のモチーフである前奏曲作品28-15「雨だれ」をしっかり聴けるM6."Prélude en boléro bémo lmajeur"とか、誰でも知っている練習曲10-3の「別れの曲」をちょっとイメージを変えたM9."Pleine étude"などのような曲もあり、親しく面白く聴けるのも楽しいところである。
 唯一このアルバムでショパンを名乗るM12.は、ショパンが晩年に残した有名なワルツだが、ここでは最後にその他の曲とは一線を画し、即興をほぼ入れずに、ディミトリのソロでショパンの世界を我々に知らしめるのである。

 全体に少々残念なのは、ベース、ドラムスがうまくアクセントをつけてサポートして盛り上げているのだが、ピアノ主導の因子が強く、もう少し彼らも前面に出ての独自の世界の主張の即興などを織り交ぜてくれるとジャズ・トリオらしさが出たのではと思ったところがあった。

 過去のナイディッチのバッハ、モーツァルト、リストものに於いては、それぞれが全く異なった世界を聴かせたところは驚きであったが、このショパンものは、これ又それらとは全く異なるセンチメンタルな抒情性の美学が漂っていて、これはそれぞれの歴史的作曲家の本質を知り尽くしての技であろう。そんなところも聴き込むに価値ある演奏であった。

(評価)
□ 編曲・即興・演奏  90/100
□ 録音        88/100

(試聴)

"Pleine Ētude"

 

|

« トーマス・スタンコ・カルテット TOMASZ STANKO QUARTET 「 SEPTEMBER NIGHT」 | トップページ | ファーガス・マクリーディー Fergus McCreadie Trio 「 Stream」 »

音楽」カテゴリの記事

JAZZ」カテゴリの記事

CLASSIC」カテゴリの記事

ピアノ・トリオ」カテゴリの記事

ユーロピアン・ジャズ」カテゴリの記事

コメント

久しぶりにコチラへのご来訪に感謝です。自分はクラシックやジャズなどはなかなか入り込めないのですが、プログレ系は大いに嵌っておりました。貴殿の左側の過去INDEXを見ると大好きなアーティストがいくつかありますので、ここから覗かせて頂き蘊蓄を勉強させて頂きたいと思っております。引き続きお付き合いよろしくお願いいたします。

投稿: ローリングウエスト | 2024年7月 8日 (月) 09時09分

ローリングウェスト様
コメント有り難うございます。
音楽の趣向って、これまた不思議なモノですね。私のように偏っていると、なかなか広く網羅するのは難しいので、ローリングウェスト様のブログのように、極めんとする意欲のあるブログは、たとえば過去に聴いてこなかったものが多いとはいえ、それだけに、読ませていただくと参考になってむしろ面白いです。的確なコメントが出来なくて申し訳ありませんが・・・これからもよろしく御願いします。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2024年7月 8日 (月) 21時18分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« トーマス・スタンコ・カルテット TOMASZ STANKO QUARTET 「 SEPTEMBER NIGHT」 | トップページ | ファーガス・マクリーディー Fergus McCreadie Trio 「 Stream」 »