ダニエル・ガルシア Daniel Garcia Trio 「Wanderland」
一筋にはゆかない曲展開、ちらっと美旋律も・・・
<Jazz>
Daniel Garcia Trio 「Wanderland」
ACT MUISC / Import / ACT9996 / 2024
Daniel García (piano) (toy piano on 04) (vocal on 10)
Reinier “El Negrón” (double bass except 01)
Michael Olivera (drums except 01, 10) (vocal on 06)
special guests:
Gilad Hekselman (guitar on 03)
Lau Noah (vocal on 07)
Verónica Ferreiro (vocal on 11)
2024年1月12-14日スペイン-マドリードのCamaleon Music Studio録音
私にとっては初物のスペイン出身のピアニスト、ダニエル・ガルシア・ディエゴ(1983年スペインのサラマンカ生まれ)のトリオ作が、ACT より3作目としてリリース。彼は米バークリー音大でダニーロ・ペレスに師事し、現在はマドリードに本拠を置いて活動、2016年以降リーダー・アルバムも着々と発表し評判を上げてきたとか、40歳代に入ったスペイン新世代ピアニストの期待の俊英といった存在らしい。
聴いてみると、全てガルシアによるオリジナル曲構成で、どうも一口に表現できないユーロ系の叙情派とは異なる世界だ。彼の音楽は、このヘクセルマン(B)とオリベラ(D)とは普遍の鉄壁トリオ(下写真)であり、特にこのアルバムは、本人の話としても、「人間の本質のさまざまな側面を覗くための入り口として機能し、私たちの内面の領域を垣間見ることです。それは同時に個人的であると同時に普遍的であると考えている。ここには、私たちの最も深い恐怖に立ち向かい、夢を大切にし、幻想に疑問を投げかけ、そして最終的には希望を持ち続けるための挑戦がある」と。
音楽タイプは、故郷カスティーリャ・イ・レオンの民族音楽、フラメンコなど自身のルーツに根差したものに、自国の音楽院でクラシック、その後バークリー音楽院でダニーロ・ペレスにジャズを学び、更にロック、エレクトロニック・ミュージック、中東音楽、キューバ音楽、中世音楽、グレゴリオ聖歌を学び、それらの様々な要素が反映されたものという紹介があった。そんな背景を描きながら聴いたところである。
(Tracklist)
01. Paz (solo p)
02. Gates To The Land Of Wonders
03. Wonderland
04. The Gathering
05. Mi Bolita
06. Resistance Song
07. You And Me
08. Tears Of Joy
09. Witness The Smile
10. A Little Immensity (p/vo & b duo)
11. La Tarara
12. The Path Of Life
スタートのM1." Paz "は、ガルシアの静かに流れるピアノ・ソロでアルバム導入、おおっと思わせる美しさがある。
M2. "Gates To The Land Of Wonders" 一変して展開の激しいトリオ演奏。
M3. "Wonderland"アルバム・タイトル曲、ピアノとベースのユニゾンで進行し、主題のダイナミックな演奏が、イスラエルの名ギタリスト・ギラッド・ヘルクセルマンのギターが入って展開。
M4. "The Gathering" toy pianoという不思議な音でリズムカルに展開する曲。
M5. "Mi Bolita" ピアノの旋律がようやく美しく楽しめる。
M6. "Resistance Song" 奇妙なリズムが流れ、3者のハーモニー演奏が見事、そしてドラマーのオリベエラのなかなか味のあるヴォーカルが入る。
M7. "You And Me" 突然スペイン女性SSW・ラウ・ノアのヴォーカルの登場。スローで情緒たっぷりの歌声、ピアノのバックが美しい。いい曲だ。
M8. "Tears Of Joy" ここでも美しいピアノが流れ、ベースの響きも美しく、曲は次第にドラムスと共に盛り上がる見事な展開。
M9. "Witness The Smile" トリオの連携が見事に速攻で・・・
M10. "A Little Immensity" ピアノとベースのゆったりとしたデュオ
M11. "La Tarara" ゆったりと美しいピアノのメロディーでスタート、突如女性ヴォーカルが民族的音楽の様相で登場。
M12. "The Path Of Life" 締めはトリオがそれぞれのまとめ役を演じてきちっと見事に納める。
いっやーーなかなか単純に一筋縄にはゆかない曲展開が信条のトリオ演奏だ。そこに時にトリオ・メンバーのヴォーカルが入ったり、ゲストとしての二人の女性の個性豊かなヴォーカルも入ったりと色彩豊かな演奏が響く。トリオ演奏はそれぞれの役割が単純でなく、特にドラムスの鋭い刺激が魅力的な役を成し、ピアノの美旋律、ベースの語る物語調も魅力ある。
リズム、ハーモニー、メロディの多様性もあり、楽曲ごとに異なる色彩を示すが、一曲一曲がきちっと仕上げてあるのだが、アルバムとしての配列の結果、何か一つのコンセプトを持った物語を聴いた印象になる。なるほど新世代トリオというスタイルがここにありというアルバムづくりに敬服だ。
(評価)
□ 曲・演奏・歌 : 88/100
□ 録音 : 87/100
(試聴)
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