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2024年9月 3日 (火)

サンディ・パットン Sandy Patton 「Round Midnight」

ベテランのアメリカン・スタンダート・ジャズ・ヴォーカル・アルバム

<Jazz>

Sandy Patton 「Round Midnight」
Venus / JPN / VHGD10012 / 2024

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サンディ・パットン Sandy Patton - vocal
マッシモ・ファラオ Massimo Farao' - piano
ダヴィデ・パラディン Davide Palladin - guitar
ニコラ・バルボン Nicola Barbon - double bass

Produced by Tetsuo Hara
Recorded at Art Music Studio - Bassano Del Grappa - Italy
On February 26 & 27, 2024.

Festival_teachers_as_120717_204945_patto   ここに来て、アメリカ生まれの本格派ジャズ・シンガー、 ベテランのサンディ・パットンのニュー・アルバムにお目にかかるとは思っていなかった。それは意外に彼女はキャリアの割には日本ではそれ程一般的には浸透していなかったためだ。そこで興味もあり何はともあれ早速聴くこととしたもの。

 サンディ・パットンSandy Patton(→)は、アメリカ・ミシガン州インクスターに1948年に生まれ、幼少期から音楽に情熱を注ぎ、ワシントンD.C.のハワード大学とマイアミ大学で声楽を学び、マイアミ大学コンサート・ジャズ・ビッグバンドのツアーにも参加した。キャリアの初期にはライオネル・ハンプトンのバンドと共に3年間ツアーを行い、多くのジャズ界の巨匠と共演した経験を持っている超ベテラン。そして音楽活動はアメリカ国内だけでなく、ヨーロッパや中東、極東など世界中に広がっており、特にスイスのベルンにある「Hochschule der Künste」(ベルン芸術大学)では18年間ジャズボーカル教授として教鞭を執り、多くの若手ミュージシャンを育て注目されてきた。

 なんと現在78歳であるが、国際的に活躍しており、過去にフランス、ドイツ、スイス、アブダビ、セネガル、モザンビーク、ロシア/シベリア、ボリビア、韓国で世界各地で公演を行っている。現在イタリアのピアニスト、マッシモ・ファラオとの共演など、ヨーロッパの著名なミュージシャンとも精力的にコラボレーションを続けている。彼女のステージは、感情の深みと技術的な完成度で観客を魅了し、国際的なジャズシーンで高く評価されている。

 今回のアルバム、その経過は解らないが、日本のVenusからのリリースのアメリカン・ジャズ・スタンダード曲集。タイトルが「真夜中」ですから、やっぱり久々のナイト・クラブのムードのジャズ・ボーカル・アルバムとして期待して聴いた次第。

(Tracklist)
1. オールド・カントリー The Old Country (N. Adderley) 7:26
2. ゼア・イズ・ノー・グレイター・ラブ There Is No Greater Love (I. Jones) 5:23
3. ゲット・ハッピー Get Happy (H. Arlen) 2:59
4 .スクラップル・フロム・ジ・アップル Scrapple From The Apple (C. Parker) 3:31
5. ウェーヴ Wave (A.C. Jobim) 3:56
6. サック・フル・オブ・ドリームス Sack Full Of Dreams (L. Savary - G. McFarland) 4:49
7. インビテーション Invitation (B. Kaper) 5:37
8. ラウンド・ミッドナイトRound Midnight (T. Monk) 5:42
9. ラッシュ・ライフ Lush Life (B. Strayhorn) 5:42
10. ウィスパー・ノット Whisper Not (B. Golson) 6:24
11. マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ My One And Only Love (Wood - Mellin) 5:34
12. レディ・ビ・グッド Lady Be Good (G. Gershwin) 4:58

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  M1."The Old Country" オープニングから、ピアノの流れにに乗って、ぐっと深いヴォーカルでもうすっかりジャズ・クラブのムードが、ベテランの味ですね。スキャットや少しフェイクも入れてうまく歌っている。この曲かってキース・ジャレットの昔のアルバム『STANDARS LIVE』で、スタンダーズ・トリオの演奏で聴いたことがあったが、やっぱり名曲だ。
 M4."Scrapple From The Apple "は、スキャットを多用してピアノとのユニゾンでの歌は見事。
 そして、なんといってもアルバムタイトル曲M8."Round Midnight"曲は、マイルス・ディビスの演奏の代表曲("Round about Midnight")でもあり、彼女の気合の入り方も尋常ではない。マッシモ・ファラオ(上左)のピアノの美しさと共に情感と優しさが満ち満ちていて、夜のジャズの良さがしみじみと伝わってくる。ジャズ・ヴォーカルは、現在は、やっぱりなんなくこのスタイルが忘れられているが、今ここで聴くと納得なのである。
 曲によっては、バックがギター(ダヴィデ・パラディン(上右))でムードを盛り上げる曲もあって、M7."Invitation "は、映画音楽だが、なかなかピアノの情感と違って、むしろ感傷的とはいっても洒落た世界を描いている。M9." Lush Life "は、歌詞の表現に見事なテクニックを披露。

3_20240903152201  とにかく、アメリカの良き時代のジャズ・スタンダード曲の流れのおさらいのようなもので、それが又サンディ・パットンのベテランの説得力のあるヴォーカルが、一層歴史的ジャズの良さを実感させるので、広く聴いてほしいアルバム。そうそう演奏の中心であるマッシモ・ファラオ(piano)、そしてダヴィデ・パラディン( guitar)も慣れたもので、この世界を見事に描いていると思う。これはとにかくジャズ・ファンなら、いろいろと言わずに聴いて歴史的スタンダード・ジャズの良さを確認しておくことの出来る名盤の登場と言っても良いものだ。

(評価)
□ 選曲・演奏・歌 :   90/100
□   録音      :    88/100

(試聴) "Round Midnight"

*
(参考) 映画「Round Midnight」

 

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コメント

素敵な歌声
モンクってこの名曲を作っただけでも、生きた証じゃないかと思います。
レオンラッセルはロックの方ですけど、ソングフォー・ユーを書いていて、いい音楽を後世に残してくれたというところで、全然違う二人ですがどこかイメージがだぶります。
モンクってダイヤトニックスケールの隣の音を強引に弾いたりどこか不快な音を混ぜながら美しい音楽にしてしまうようなところもあり、レオンラッセルはこの歌い方と節回しでなんでこんなに美しいメロディーを紡ぐんだろうって思います

ラウンドミッドナイト
素敵な歌声
僕の中ではマイルスのトランペットのイメージもあり、ラウンドアバウトミッドナイトのほうが馴染みがあります

投稿: minton | 2024年9月20日 (金) 11時10分

minton様
ご丁寧なコメント有難うございます
アメリカン・ジャズの中でも、貴重な歴史的な流れで、こうした"Round Midnight"のような世界感が実は貴重だし、これからも愛されていくと思いますが・・・私はそんなところに魅力を感じています。
そんな意味でもモンクの世界を大切にしたいと思っているところです。
ここでSandy Pattonが、その味をしっかり表現してくれたことを大歓迎しています。

投稿: photofloyd(風呂井戸) | 2024年9月22日 (日) 11時29分

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