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2024年9月17日 (火)

マニュエル・ヴァレラ Manuel Valera Trio 「 Live At l'Osons Jazz Club 」

これぞ現代流叙情派アグレッシブ・アクション・ピアノトリオだ

<Jazz>
Manuel Valera Trio 「 Live At l'Osons Jazz Club 」
Jammin' Colors / Import / AD9036C / 2024

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Manuel Valera (piano)
中村 恭士 Yasushi Nakamura (bass)
Mark Whitfield Jr. (drums)

Recorded at L'osons Jazz Club, Lurs, France in October 2018
Recorded by France Musique for the Program Jazz Club


 キューバ出身の実力派ピアニスト、マヌエル・ヴァレラ(1980年生まれ 下左)の約9年ぶりとなるピアノトリオによる新作が登場した。2000年以降にNYにて評価を高め今や支持者も多いのだが、私は今回のこのトリオ構成は初聴きの世界である。現在NYで支持されている高評価のベーシストの中村恭士(下中央)、ドラマーのマーク・ホイットフィールド・ジュニア(下右)とのトリオで、南フランスのプロヴァンスにある会場L'osons Jazz Club(このL'osonの名に注意)でラジオ局France-Musiqueが録音したライブものである。
 このアルバムには、ヴァレラが、このトリオのために書き下ろした新曲や過去のアルバムからの曲、又モンクやポーターの曲を彼らの音楽としての新たなアレンジを施したナンバーとして作り上げての曲が収録されている。彼にとっては「音楽の魔法」と言える納得の演奏が出来たこのロゾン・ジャズ・クラブでのライブ録音は、2020年にリリースする予定でありそれと共にツアーの計画もあったようだが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって延期され、それがようやく、ここにリリース出来たという経過のようだ。

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  もともとフランス・ミュージックの生放送用に録音されたもののようで、この新トリオが、ジャズ・トリオとしての室内楽、ロックからの影響、アヴァンギャルド・ミュージックの世界、静とアクション、深遠な静とアクティブな攻撃性の世界などもろもろの音楽の多面性の領域に適応したものとして評価されていたものの結果、企画されたものではないかと推測するのである。

(Tracklist)

1. Sun Prelude 1  Mercury - The Messenger 5:59
2. From The Ashes 6:22
3. Evidence (Thelonious Monk) 5:24
4. Ballade 8:13
5. Mirage 8:22
6. Darn That Dream (Jimmy van Heusen) 6:17
7. Tres Palabras (Osvaldo Farres) 8:01
8. Neptune 7:42
9. All Of You (Cole Porter)
All compositions and arrangements by Manuel Valera, exept where noted.

 哀愁感あるロマンティシズム溢れるリリカル傾向のピアノにて、歌心ある美旋律を聴かせるも、次第に積み上げるダイナミック・アクションで迫るという戦法での演奏は、後半にドラムスのパワーを絡ませ壮快にパワフルに、攻撃的にまとめ上げる手法が全曲に見え隠れして、まさに圧巻の演奏が満ち溢れている。これがまさに現代流と言うなら、現代流叙情派アグレッシブ・アクション・ピアノトリオといったところだ。
 とにかく、彼らの曲展開はクラシカルなピアノ・トリオの美しさと現代流叙情派とアヴァンギャルドな展開の先進性とを如何に結び付けてゆくのかという世界にアプローチしているのではないかと・・・ふと思うのである。

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M1. " Mercury " オープニング、静かに異世界に案内招待されたごとき印象だ。中盤にベースの音が響き、ドラムスがアクティブな展開を見せ、それと共にピアノも転調して高速アタック、ただでは終わらせない。
M2. "From The Ashes" クラシカルな美的ピアノの流れ。
M3. "Evidence" モンクの曲が登場。アグレッシブなスリル満点のアヴァンギャルドな展開に圧倒される。いっやー恐ろしいトリオだ。
M4. "Ballade" 決して甘くないバラード。
M5. "Mirage" 中村のベースのソロでスタートして深遠な世界に、中盤からピアノ、ドラムスが絡んでのインプロ合戦
M6. "Darn That Dream" ピアノが主役での現代性の美の強調。
M7. "Tres Palabras" キューバの古典的ボレロを現代調に蘇らせ、ピアノのソロ的な美的情感でのアプローチでしっとりと聴かせる。あの攻撃性がここでは無いために聴く方はめろめろになる。  
M8. "Neptune" 冒頭から、ドラムスの嵐、ここでは後半トリオのアヴァンギャルドな世界が見えてくる。
そしてこのM9. "All Of You"は、アンコール曲なのか、コール・ポーターのあの慰め的な世界で今日のオーディエンスに安堵の世界をプレゼントしてくれる。

 いっやーー、しっとりとした美の哀感と一転してのドキドキする緊張感のある攻撃的トリオのインプロ合戦が聴ける。このトリオ結成経過は解らないのだが、お互い干渉してゆくスタイルの完成度は長年積み上げた結果のように高い。精悍で鋭いタッチのピアノが哀愁的ロマンティシズム溢れる美旋律を聴かせたかと思うと、躍動型のダイナミック手法を展開し、それに負けないベース&ドラムのアタック的サポートも圧巻という見事さで、久々に強力な現代ピアノ・トリオが聴くことができた。

(評価)
□ 曲、編曲、演奏  :   90/100
□   録音      :   88/100

(試聴)

 

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